読者参加型TRPG風小説 作:矢端トラム
あなたは踵を返すと、ここまで来た道を引き返し始めた。
森の中央、泉へ向かうためである。
シュリーカーはどうやら狼に似た生物だ。
ただ追うには分が悪いかもしれない。
では先回りはどうか。
これは幾分目があるが、賭けになる部分が大きい。
定期的に上がる叫びのためにある程度の予測は可能だが、完全な予測は不可能だ。
ならば取るべき手段は、呪われた獣の捜索。
あなたはそう判断した。
考える限り、シュリーカーによる呪われた獣の用途はふたつだ。
ひとつは食料として。
先ほど見た鹿のように、自身の逃走経路に配置して貪る。
これがまず考えられる。
次に、武器として。
シュリーカーは今、敵に追われている。
これは種全体の宿痾だろう。
生きている限り、無数に外敵を作り続ける事がシュリーカーの弱点だ。
これを補うための、敵に対する矛、あるいは盾として使っているものと思われる。
どちらにせよ、呪われた獣はやがてシュリーカーに呼び出される。
つまり、あなたを標的の元へ案内してくれるはずだ。
そのためにすべきは、まずは獣の発見である。
そして獣を追うならば、この森においては泉から始めるのが定石だ。
あなたは森を南下し、再び湧水の泉へと向かう。
見え始めた泉、聞こえ始めた水音にあなたは期待したかもしれない。
たまたま運良く弱った獣が水を飲みにでも来てはいないかと。
もしそのような事があれば、あなたの探索は最小限で済むだろう。
| 判定内容 | 幸運な出来事 |
| 判定方法 | 2D6+幸運SB 10以上で成功/難 |
| 判定結果 | 2D6+3=5 ファンブル |
……だが、現実はそう甘くない。
弱った獣などそこにはいない。
あなたの背筋に緊張が走った。
危険な何者かが、
| 判定内容 | エンカウント危険度 |
| 判定方法 | 1D10 大きいほど危険 環境による補正『-3』 |
| 判定結果 | 1D10-3=6 |
音などしない。
影も見えない。
熟練の暗殺者のごとき気配の薄さでそれは迫った。
それはひどく気が立っていた。
己の新たな縄張りと定めた森。
そこに不躾にも踏み入った、頭の中を掻き乱す咆哮を繰り返す新参者。
己の分を弁えぬ害虫を抹殺せんと待ち構えてみれば……やってきたのはまたも
それの怒りは限度に達した。
不快な叫びのために眠りさえ妨げられたそれは半ば正気を失い、ただ己の激情をわずかでも発散するために、木々の上を無音で駆け──
| 判定内容 | 危機感知 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 8以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+4=16(成功) クリティカル |
──そして首筋目掛けて飛び掛かった瞬間に、素早く振り向いたあなたと目が合った。
「────!?」
それは驚愕に目を見開いた。
音は無かった。
影も見せなかった。
己が最も得意とする意識外からの奇襲は、常の通り繰り出してみせたはずだと。
だが、あなたは冒険者だ。
人の生息圏外、人外の領域に踏み込む事を生業とする手練れである。
ならば当然知っていた。
森の中の泉。
そこは多くの生物が求める水場であるがために、この森で最も危険な区域であると。
そんな場所に踏み込むにあたって、警戒を怠る理由などありはしない。
音もなく影もない。
なのに殺意だけは感じられる。
そういった局面において、敵がどこを狙ってくるかもまた熟知していた。
それの全身の毛が逆立つ。
まずい、と本能が警鐘を鳴らす。
だがもう遅い。
それがどれほど願おうとも、すでに空中にある体を引き戻すことなど出来はしない。
あなたは即断をもって踏み込んだ。
わずか2歩。
だがその2歩で襲撃者の爪牙は目標にもはや届かず。
そして、
| 判定内容 | あなたの攻撃 |
| 判定方法 | 2D6+器用SB(命中力) 装備補正+1 2D6+筋力SB(攻撃力) |
| 判定結果 | 2D6+3=10(命中力) 2D6+2=6(攻撃力) |
| 判定内容 | ???の回避 |
| 判定方法 | 奇襲成功により回避不可 |
| 判定結果 | 強制クリティカルヒット |
| 判定内容 | ダメージ計算 |
| 攻撃力 | 6 |
| 補正 | 致命/+6(クリティカル) |
| 最終ダメージ | 12 |
| 追加効果 | 朦朧Lv1(クリティカルにより確定) |
振り上げられたメイスはそれの胸骨に直撃した。
威力の逃げやすい空中であったために、砕くには至らない。
だが、あなたの手には確実に罅を入れた感覚が返る。
必然、突き抜けた衝撃は重く深く、それの心臓を大いに揺らしただろう。
吹き飛び、雪の上でもんどり打ちながらもあなたから距離を取ろうとするそれの動きは遅い。
奇襲に対する完璧な逆撃は獣の四肢から力を奪い、思考を鈍らせていた。
| 判定内容 | 動物知識 |
| 判定方法 | 2D6+知識SB 7以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+4=8(成功) |
あなたは襲撃者の姿を確認して、理解した。
太い四つ脚。
黒い斑点のある灰色の毛皮。
ツンと立った耳。
大山猫だ。
人よりやや小さい体躯を持つ大型の猫で、森や山に棲み、奇襲を得手とする獰猛な肉食獣である。
魔種のように特殊な能力は持たないが、鋭い爪と牙、そしてしなやかな身のこなしは十分な脅威として知られている。
大山猫は未だ戦意を失っていない。
自身に痛みを与えたあなたを決して許さぬと、全身の毛を逆立てて唸り声を上げている。
| 戦闘準備フェイズ |
| 秘蹟使用『守護』 MP消費『17-3=14』 |
| 戦闘開始/1ターン目 |
| 判定内容 | 行動順の決定 |
| 判定方法 | 2D6+敏捷SB 比べ合い/大きい方が先制 『朦朧』により大山猫に『-2』 |
| 判定結果 | 2D6+3=8(あなた) 2D6+2=13(大山猫)
大山猫の先制 |
逆撃は成功したが、油断の出来る相手ではない。
敵手の爪はあなたの盾をすり抜ける可能性を十分にもつ。
慎重に、堅実に。
あなたは自身に秘蹟の光を纏わせる。
"貶めるなかれ。軽んずるなかれ。貴方達は弱く、脆く、
紡がれるのは聖句である。
黄金のイィル=マガが人にもたらした教え、その一説。
一音一音を唱える度に、あなたは偉大なる者の視線をその背中に感じたはずだ。
峻厳の法をもって人を律する女神の加護の下、あなたの肉体は護られる。
そのわずかな間隙に、大山猫はすでに動き出していた。
雪を蹴立てて後方へ。
逃げたのではもちろんない。
あなたの肌を刺す殺気は未だ健在だ。
大山猫のしなやかな四肢は無音の疾走を可能とする。
その上、ここは森の中だ。
木々の間を駆け回る大山猫の姿を捉え切る事は、あなたをしても困難だった。
どこから来るか。
それはいつか。
チリチリと首筋を焼く緊張感があなたの警戒心を高めていく。
| 判定内容 | 大山猫の攻撃 |
| 判定方法 | 2D6+器用SB(命中力) 朦朧補正-2 1D10+筋力SB(攻撃力) |
| 判定結果 | 2D6+0=9(命中力) 1D10+2=8(攻撃力) |
| 判定内容 | あなたの防御 |
| 判定方法 | 2D6+耐久SB 装備補正+1 命中力以上で成功 |
| 判定結果 | 2D6+5=12(成功) |
| 判定内容 | ダメージ計算 |
| 攻撃力 | 8 |
| 補正 | 防御/-4 装備/-4 秘蹟/-5 |
| 最終ダメージ | 0 |
タン、と。
木の幹を蹴る音にあなたは反応した。
柔らかい雪の地面ではなく、硬い幹を利用して速度を稼いでの飛び掛かり。
そう思わせるような音はあなたの背後から響いた。
それをあなたは、
確信する。
1度目の音はフェイントだ。
音につられて振り向けば、待つのは──
「──ッ!」
──別角度からの一撃。
幹を蹴っての跳躍は攻撃のためでなく、撹乱と移動のため。
音に反応した獲物の側面を突く襲撃が大山猫の選択であり。
そして、あなたはそれを読み切った。
大口を開き、牙を剥き出す大山猫へ向けてあなたは逆に突進した。
助走をもって稼いだ勢いのまま盾を振るい、その鼻先を強打する。
シールドバッシュだ。
「ギャゥッ! ──ルァァッ!」
哀れを誘う高い悲鳴。
だがその次の瞬間、大山猫は切り替えた。
攻撃手段を牙から爪へ。
目の前にある、盾を突き出したあなたの腕に抱き着くように四肢を走らせ、肉を引き裂かんとする。
| 判定内容 | あなたの攻撃 |
| 判定方法 | 2D6+器用SB(命中力) 装備補正+1 2D6+筋力SB(攻撃力) |
| 判定結果 | 2D6+3=8(命中力) 2D6+2=10(攻撃力) |
| 判定内容 | 大山猫の回避 |
| 判定方法 | 2D6+敏捷SB 朦朧補正-2 命中力以上で成功 |
| 判定結果 | 2D6+2=7(失敗) |
| 判定内容 | ダメージ計算 |
| 攻撃力 | 10 |
| 補正 | なし |
| 最終ダメージ | 10 |
それはあなたにとって、むしろ好都合であった。
大山猫の爪はあなたの肉に──食い込まない。
秘蹟の守りは固く、あなたを害するものを通さない。
大山猫の追撃は大悪手となった。
それを悟ったか呆然とする獣がしがみついたままの腕を力任せに振るい、地面へと叩き付けて雪へと埋める。
さらけ出されたのは当然、またも腹である。
先ほど痛打を与えたそこに、もう一度の衝撃が直撃する。
| 判定内容 | 状態異常抵抗/大山猫 |
| 判定方法 | 2D6+耐久SB(大山猫) ダメージ量以上で成功 |
| 判定結果 | 2D6+2=8(失敗)
朦朧Lv2付与 |
すでにひび割れた胸骨が、今度こそへし折れる。
深々と肉に埋もれたメイスの打撃は、骨の守りを貫通して臓器に取り返しのつかない損傷を与えた。
「ガッ、ヒュ……ア゛、ァ゛ッ!?」
肺が破れでもしたか。
明らかに命に関わる呼吸の乱れが大山猫に生じる。
それは即座に身体機能の崩壊へと繋がった。
絶望的な酸素不足だ。
意識は掻き乱され、自慢の四肢からは俊敏性が失われていく。
それでも未だもがくのは本能故か。
大山猫は懸命に脚をばたつかせ、雪をかいてあなたから離れようとする。
その眼にはもう戦意はない。
思い知ったのだろう。
この相手には勝てない。
これは自分の獲物になり得ない。
ここに居ては死は免れぬと、残った全生命力を逃走へと注いでいた。
| 戦闘2ターン目 |
| 判定内容 | 大山猫の逃走 |
| 判定方法 | 2D6+敏捷SB 比べ合い/大きい方が勝利 『朦朧』により大山猫に『-4』 |
| 判定結果 | 2D6+3=13(あなた) 2D6+0=7(大山猫)
逃走失敗 |
だが、あなたはそれを許さない。
ごく当然の判断として、あなたはこの大山猫を逃す理由を持たない。
この森は村の資源として利用されている森である。
冬となり人の出入りが減った事で侵入を許したのだろう大山猫だが、このまま居着かせて良い事など何一つない。
特に、人を恐れず奇襲を仕掛けるような個体ならばなおさらだ。
そしてもうひとつ。
あなたは
シュリーカーの持つ、呪われた獣を操る魔術にだ。
呪いを受けて弱った獣はシュリーカーの手に落ちる。
では、
目の前の獣は
試す価値はあると、あなたは判断した。
| 判定内容 | あなたの抑え込み |
| 判定方法 | 2D6+筋力SB 比べ合い/大きい方が勝利 |
| 判定結果 | 2D6+2=12(あなた) 2D6+2=9(大山猫)
抑え込み成功 |
逃れようとする大山猫へと、あなたは覆い被さった。
喉を抑えて頭を雪に押し付ける。
腹には腰を落として動きを封じた。
そして暴れる前肢は……そのまま放置する。
それがあなたの肌を傷つけられるなら逃走の目もあっただろう。
だが鋭いはずの爪は虚しく秘蹟の青白い光の上を滑るだけだ。
そうして、あなたは待った。
定期的にシュリーカーが森に響かせる、呪いの叫びをだ。
大山猫を組み敷いたまま、時が流れる。
初めは激しかった抵抗は徐々に力無いものに変わっていった。
余力がなくなっているのか、それとも諦めに支配されつつあるのか。
おそらくは両方だろう。
そして、大山猫の抵抗が完全に止んだ頃。
それは森中に響き渡った。
| 判定内容 | 状態異常抵抗 |
| 判定方法 | 2D6+精神SB 6以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+5=10(成功) |
「────ォォォォォオオオオォゥ──」
声は先に聞いたものよりやや遠い。
森の北西から西へ走ったシュリーカーは、そのまま森の外周近くをぐるりと回っているようだ。
距離が離れたためか魂に爪を立てるような不快感も幾らか減じている。
それは呪いの強度にも影響する。
が、それでもなお成功の目は大きいとあなたは睨んでいた。
何しろ呪いを弾くには強い意思が必要だ。
そして、あなたが組み敷く大山猫からは、すでにそんなものは失われている。
| 判定内容 | 状態異常抵抗/大山猫 |
| 判定方法 | 2D6+精神SB 6以上で成功/普通 朦朧補正-4 |
| 判定結果 | 2D6-3=4(失敗) |
「ニィ……ァアゥ」
大山猫の口から声が漏れる。
カクカクと顎を震わせて。
一見して死戦期呼吸とも取れるそれは、しかし全くの別物とあなたは確信した。
ゆっくりと、あなたは大山猫の上から降りた。
大山猫もまた、ゆっくりと動き出す。
ふらつく四肢を地面に立てて、静かに身を起こした。
……その瞳に、もう色はない。
あなたに追い詰められ、すでに瀕死だったところに呪いを浴び、大山猫はシュリーカーの傀儡となったようだ。
身も心も自由を失い、後はシュリーカーのために命を捧げるだけのものと化している。
あなたの推測はどうやら当たった。
とんでもない不運からの遭遇だったが、こうなっては逆に幸運だろう。
森を探索する必要もなく、あなたは狙いの呪われた獣を発見した事となる。
| 戦闘終了 |
大山猫は、口の端から血をポツポツとこぼしながらも歩き始めた。
今の今まで争っていたあなたの事などもはや見えてすらいないのか、まるで意に介さない。
向かう先はシュリーカーの元だろう。
腹を満たす糧としてか、それとも追手に対する尖兵としてか、大山猫は主人に求められているようだ。
大山猫の歩みは西へ西へと、少しずつ速度を増していく。
折れた胸骨を抱えて苦痛が生じているだろうに、大山猫に慈悲は与えられない。
余人が哀れに思ったとして、出来る事はすでに痛みを感じる機能が停止している事を祈るのみだ。
あなたはそれを追う。
足跡を重ねないよう軸をずらしてだ。
これに苦労はない。
何しろ、大山猫はひどく遅かった。
壊れた体による物理的な限界だ。
そんな追跡をどれ程続けたか。
| 判定内容 | 状態異常抵抗 |
| 判定方法 | 2D6+精神SB 8以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+5=11(成功) |
歩みは遅くとも、シュリーカーとの距離は縮まっていた。
どうやらシュリーカーは大山猫との合流を選んだようだ。
空を見上げれば太陽は斜めに傾きはしたが、まだ高い。
鹿を朝に貪ったばかりと考えると、食料としてよりも兵として使うと決めたものと思われる。
すれ違うように足跡を重ならせ、追ってきた狼達にぶつける魂胆と考えて良さそうだ。
ならばと、あなたは大山猫を追い越して走った。
今し方聞こえたシュリーカーの叫びと、大山猫とを結ぶ直線上。
そこに先回りし、罠を仕掛けるためにだ。
シュリーカーは、あなたが知った通り狼達から逃げている。
魔術によって手下を集め、数の優位を作る事も出来るだろうにだ。
戦闘への積極性を持たず、呪いをばら撒いて逃げ隠れを続けるのがシュリーカーの戦法だとは容易に想像がつく。
確実な討伐には逃走を阻止する手段の用意か、完璧な奇襲による一撃での決着が有効だ。
これを達成するために、あなたは先手を打った。
そうして。
あなたは仕掛けを終え、木陰に身を隠してシュリーカーの到着を待った。
声はますます距離を縮めた。
想定は正しく、シュリーカーは大山猫へとまっすぐに向かってきている。
進路のブレを想定して幾つか設置した罠のうち、使用できそうなものの候補をあなたは少しずつ絞っていく。
| 判定内容 | 状態異常抵抗 |
| 判定方法 | 2D6+精神SB 9以上で成功/難 |
| 判定結果 | 2D6+5=9(成功) |
「ウゥゥオオオォォウゥ──!」
そして、その時が来た。
未だ葉を残す西の区画、常緑樹の森の中を狼に似た形の獣が駆けてくる。
それは……ひどく醜かった。
乱れ、あちこちに塊を作った長い毛は遠目にはまるで爛れ落ちた皮膚のよう。
毒々しいほどに赤い舌は見苦しく口外に垂れていた。
口元の肉はめくれ上がり、乱杭の歯をみっともなくさらけ出す。
あなたはかつて読んだ書の中、書き記すのもためらわれるほど醜かったという文言を思い出す。
おそらく、それは報告を誤魔化すためのデタラメか何かだったのだろう。
だが奇しくも的の端程度は射ていたようだ。
| 判定内容 | 隠密 |
| 判定方法 | 2D6+敏捷SB(あなた) 2D6+感覚SB(シュリーカー) 比べ合い/大きい方が勝利 地形効果によりシュリーカーに『-2』 |
| 判定結果 | 2D6+3=10(あなた) 2D6-1=5(シュリーカー)
クリティカル(あなた) |
ともかく、あなたはシュリーカーに意識を集中した。
途中いくらかは休んだのだろうが、追い立てられて疲労を溜めたシュリーカーの注意は鈍い。
ここが森である事も功を奏した。
密集した木々はあなたを隠してくれている。
もし本来の狼のように鼻が利く獣ならば視界の問題は感覚を鈍らせなかったかもしれない。
だが、シュリーカーはどうやら呪いの扱いに特化した生き物だ。
おそらくは索敵も呪いに頼っている節がある。
他の感覚は相応に鈍いようだ。
見るからに、
むしろ追手はまだ遠いと、油断さえ滲ませて駆けている。
あなたは息を殺して機を見計らう。
その瞬間まで残り。
3。
2。
1──
| 判定内容 | 罠 |
| 判定方法 | 2D6+器用SB(あなた) 2D6+感覚SB(シュリーカー) 比べ合い/大きい方が勝利 隠密状態補正/あなたに『+2』 クリティカル補正/あなたに『+3』 |
| 判定結果 | 2D6+7=13(あなた) 2D6+1=6(シュリーカー) |
その瞬間、あなたは手元の細い縄を全力で引いた。
仕掛けたそれはごく単純なものであった。
引けば締まるように結ばれた輪。
いわゆる『くくり罠』だ。
これを予想される進路の何ヶ所かに設置し、雪に隠し、足跡を都度埋め戻してあなたはトラップゾーンを作り上げた。
その結果は。
「ァアゥ!?」
情け無い悲鳴と共に前肢の片方を締め上げられ体勢を崩したシュリーカーが示していた。
あなたの作戦は完全な成功を見た。
くくり罠の片方はすでに前もって巨木に結び付けてある。
シュリーカーがこの場から逃走をはかるには、脚を締め上げる縄を外す他に手はない。
そしてもちろん、あなたにそれを許すつもりなどなかった。
盾を構え、メイスを抜き、あなたはシュリーカーの前へと躍り出る。
一瞬驚愕に身を固くしたシュリーカーも、それでこの事態の原因があなたとわかったのだろう。
乱杭歯を見せつけるように口を開き、戦闘に備えるように四肢を踏み締めた。
| 戦闘準備フェイズ |
| 秘蹟使用『守護』 MP消費『14-3=11』 |
| 戦闘準備フェイズ/シュリーカー |
| 魔術使用『束縛:呪詛』 |
互いの初手はそれぞれ秘蹟と魔術であった。
あなたは青白い光を纏い、シュリーカーは瞳に禍々しい赤を灯す。
「ゥゥゥウウウオオオオォウ──!」
呪いの咆哮、ではない。
声に籠められた魔術はあなたを通り抜け、遠く遠く彼方へと伝わっていった。
その目的は明らかだ。
魔術による、呪いを受けた獣の操作。
援軍の要請だろう。
戦いに時間をかけすぎれば、あなたの形勢はわずかずつ不利に傾くに違いない。
その事実をあなたに突き付けるように、シュリーカーはニタリと口の端を吊り上げ笑ってみせた。
| 戦闘開始/1ターン目 |
| 判定内容 | 行動順の決定 |
| 判定方法 | 2D6+敏捷SB 比べ合い/大きい方が先制 |
| 判定結果 | 2D6+3=10(あなた) 2D6+0=7(シュリーカー)
あなたの先制 |
だが元より、あなたはこの戦闘に時間をかけるつもりは無かった。
そしてその手段は文字通りあなたの手の中にある。
もうすでに、シュリーカーは罠にくくられているのだ。
そんな敵に確実に一撃を与えたいならばどうすれば良いかは自明である。
ただ単に、縄を手繰れば良い。
「……ォッ、アッ!?」
締め上げられた脚を不格好に釣り上げられ、シュリーカーがあなたの前へとまろび出る。
後はもう、その顔面に鉄塊を振り下ろすだけの簡単な仕事だった。
| 判定内容 | あなたの攻撃 |
| 判定方法 | 2D6+器用SB(命中力) 装備補正+1 2D6+筋力SB(攻撃力) |
| 判定結果 | 2D6+3=10(命中力) 2D6+2=8(攻撃力) |
| 判定内容 | シュリーカーの回避 |
| 判定方法 | 2D6+敏捷SB 罠補正-5 命中力以上で成功 |
| 判定結果 | 2D6-5=1(失敗) クリティカルヒット |
| 判定内容 | ダメージ計算 |
| 攻撃力 | 8 |
| 補正 | 致命/+8 |
| 最終ダメージ | 16 |
「ヴィギィッ!?」
いともアッサリと。
シュリーカーは意識を失った。
濁った叫び──呪いを全く含まない真っ当な苦鳴を最後に醜い獣は体を倒す。
見れば、シュリーカーの体にはいくつかの傷跡があった。
何度か追手と交戦したのだろう。
もう弱っていた体にあなたの一撃は重すぎたようだ。
こうなっては、後はトドメを刺すだけだ。
もう一度振り上げられたメイスが、同じ軌道でシュリーカーへと吸い込まれる。
それで全ては終わった。
森を脅かした外来の魔種はこうして、あっけなく死んだ。
なんとも『儚い』命であった事である。
| 戦闘終了 |
| 特殊条件判明 | |
森林の 儚い シュリーカー| 最大HP半減 | 全てのステータス1D6弱化 敵対者が配置される |
これであなたの義務は果たされた。
この狼に似た獣が呪いを放つ姿をあなたは確認し、逃す事なく仕留めたのだ。
シュリーカー討伐に間違いなく成功したと、誰に対しても胸を張れる成果である。
他にすべき事と言えば、と。
あなたはシュリーカーの死骸を見つめた。
これを追っている狼達と、操られていた大山猫に関する事だろうか。
後者に関しては引き返してトドメをさせば良い。
あの状態ではろくに移動も出来ていないだろう。
捕捉は簡単なはずだ。
そもそも負傷の具合からして、もう死んでいる可能性も高い。
前者の狼達は仕留めるか、見逃すか。
あなたには余力がある。
どちらを選ぶにしても問題はない。
シュリーカーの死体を囮に残ったくくり罠を再利用しても良いし、樹上に陣取って狼へ奇襲を加えても良い。
あえて姿を晒す手もあるだろう。
あなたを見つけた狼が逃げるようならば人を恐れるという事だ。
そういった群れならば放置してもさほどの問題はない。
村の人間とてこの森全体を独占しているわけでもない。
村から遠い北部で慎ましく暮らすというならわざわざ命を刈り取る必要もなかった。
そのどれを選んだかはあなたが知っていれば良い。
ここに書き記す必要のない事だ。
大きく消耗しているならともかく、万全のあなたが今さら3頭の狼程度に遅れを取る事もないだろう。
依頼を無事解決し、証拠となるシュリーカーの死体を村に持ち帰った事は疑いない。
まだ日は沈まず、今から村に帰っても夕刻を迎える程度のものだろう。
荷に詰め込んできた保存食の出番さえないようだ。
後は落ち着いて帰路につき、宿で身を休めると良い。
冬に入って早くも慣れ親しんだ村の名物、老婆特製のシチューがきっと今日も待っている。
依頼を無事にこなした日の一杯は特に味が良いと、もうあなたは知っているはずだ。
| クエスト終了 |