読者参加型TRPG風小説   作:矢端トラム

35 / 55
報酬精算フェイズ

 

 

 

森での依頼から数日後。

あなたはいつものように宿の一階、酒場のカウンターに座っていた。

 

供されているのは乾物だ。

秋に村の川を遡ってきた魚、鮭である。

その内臓と卵を抜いた身を細長く切り、塩をすり込んで干したものだ。

凝縮された魚の旨味としっかりした塩気により美味が保証された保存食として重宝されている。

 

薄く削いだものをそのまま食べても当然絶品。

さらには様々な料理にも利用でき、あなたがこの冬何度も口にしているシチューなどはその代表格に当たる。

他にはちょっと贅沢に果実油で煮込んでチーズと合わせたものも人気だ。

酢に漬け込んでピクルスにしたものなどは、サッパリした風味と程よく戻った柔らかさで食べやすく、定番の部類に入るだろう。

 

そして、そのどれもがなんとも酒に合う。

 

「俺の干し肉(ジャーキー)も自信作だけどよ。なんでかコレに勝てる気はしねぇんだよな……」

 

特に麦酒との相性はすこぶる良い。

今も木製のジョッキ片手に野伏がしみじみと敗北を受け入れた。

 

「味の派手さ、香りの強さでは君の作るジャーキーの方がよほど上だろう。こっちは地味な味わいの代わりに、飽きずに延々と手がのびてしまうタイプだ。つまりジャンル違いで、単純比較しても意味がないんじゃないかい? どちらを好むかは人次第だと思うけどね。ちなみに私は大好きだよ、ジャーキー! あの鼻にツンと抜ける刺激がたまらないんだ!」

 

「けっ。持ち上げてもなんも出ねーぞ」

 

そこに魔術師が擁護を入れ、野伏が満更でもなさそうに口の端を緩める。

そして、何も出ないなどと言っているくせに老婆に伝える。

つまり、宿に保管している野伏特製ジャーキーを魔術師の皿にいくらか出してやってほしいとだ。

 

「──同感。美味しいよねー、アレ。口に入れた途端にガツンと来てわかりやすいの、すっごいイイ。そこにお酒流すとねー、たまらんよね」

 

「……わっかりやすく便乗しやがって」

 

「私はねぇ、それで簡単に浮かれて奢っちゃうあんたもあんただと思うよ。もうちょっとしっかりしてくれないと心配だねぇ……」

 

それを見て戦士が私にもとニコニコ胡麻をすり、野伏がちょろさを発揮する。

これには老婆も呆れ顔だ。

 

あなたもそこに参加したかどうか。

参加したとして、上手く調子に乗らせて羊肉のジャーキーを手にしたかどうか。

それはあなた自身が知っているだろうから、ここでは割愛する。

 

 

 

さておき。

こうして集まった以上、やる事はひとつだ。

定例の情報交換である。

 

今日の初手は、あなただ。

 

 

 

報酬①
経験点+3

 

 

 

あなたはまず、森に出現した魔種、シュリーカーの基本的な情報を伝えた。

その見た目。

習性。

そしてもちろん、扱う魔術の詳細を。

 

「うっわ、だるそう……そういうの苦手だわ私」

 

耳にした戦士は『うえー』と舌を出した。

確かに彼女の嫌いそうな相手と言える。

わかりやすい真っ向勝負を好む戦士と、呪いを撒き散らし仲間を呼びながら逃げ回り続けるシュリーカーは、あまり相性は良くなさそうだ。

射程に捉えられさえすれば決着は一瞬ではあろうが、それまでに呪いで弱らせられていれば危うい場面もあるかもしれない。

 

その呪いだが、あなたは今回全く受け付けなかった。

日頃の修練の成果と言って良い。

意思を固く、精神を平らに保つ事に関しては、あなたはこの宿でも随一に違いない。

 

これは今後もあなたの大きな武器となるはずだ。

いっそう鍛えていくと良いだろう。

 

 

 

ステータス上昇
『精神』

16+1=17

 

 

 

「んで、中々面倒そうな奴だが……どうやって捕まえたんだ?」

 

野伏の質問にあなたは答える。

大山猫との偶然の遭遇。

そしてそれを利用した敵の進路特定と、罠を利用した討伐について。

 

「あー、そりゃいい。多分一番楽な手だな。やっぱ罠だよ罠。型に嵌めてヤっちまうのが賢い冒険者ってやつよ」

 

「そうかな? 一帯まとめて吹っ飛ばす方が楽だと思うよ!」

 

「それ出来んのはお前だけなんだわ」

 

「簡単なんだけどねぇ。いいかい? コツはこの世が所詮は粘土細工だって事を理解して──」

 

魔術師による魔術講座は大体の場合において聞き流される運命にある。

理論ではなく才能、というのは魔術の常識だ。

彼らの言をどれほど真面目に聞いて学んだところで扱えるようにはならないと、数多の先人が生涯をかけて証明してくれている。

そもそも魔術師達の語る理論は個人ごとに全く異なり、体系だった筋道というのが一切無い。

他に話題の無い時ならばともかく、今は耳を貸す価値はないと宿の誰もが認めていた。

もしかしたらあなたもかもしれない。

 

ともかく、あなたはさらに詳細に戦士と野伏に語った。

あなたが出会した不運のような幸運のような、おそらくは悪運とでも呼ぶべき何かと、持ち合わせた単純な道具による罠作成の工夫を。

もっとも、罠の部分は専門家たる野伏にとっては大した参考にはならなかっただろうが。

 

 

 

ステータス上昇
『器用』

7+1=8

 

ステータス上昇
『幸運』

9+1=10

 

 

 

そうしてあなたの話が終わると、次は野伏の番だ。

彼が請けた依頼は雪山のワーム討伐である。

 

「いやまぁ、ぶっちゃけ楽だったな。今年の俺は山と相性が良いのかもしれん」

 

これは簡単な依頼だったようだ。

ワームというのはそもそも大した強敵でもない。

特殊な能力もなく、知能も低く、脅威の度合いは狼に毛の生えた程度と言えるだろう。

強いて言えば外骨格はそこそこ硬いが、短剣でも貫けるほどでしかない。

群れればいくらか厄介となるのだが、今回は単体での出現だった。

 

さらに言えば、今回山で暴れていたのはワームの中でも弱い部類で、明らかに筋力に劣る『非力な』個体だったそうだ。

 

「いわゆるはぐれだな。弱すぎて群れから追い出されて、冬籠りの組に入れてもらえなかったんだろ。そんで、凍った地面をひとりで掘り切る事も出来ずにさまよってたわけだ。哀れなもんだな」

 

俗に言う穴持たずのワームだ。

掘れなかったか、見つけられなかったか。

なんらかの理由で巣穴にありつけず冬籠りに失敗した個体は、それでもなんとか生きようと餌を求めて冬の中を暴れ回るのだ。

 

だが結局はそうなるだけの理由を持つ個体だ。

冬を越えられる事はほとんどない。

今回は野伏に狩られる事となったが、そうでなくともせいぜい残り1ヶ月ほどの命だったろう。

雪山の天気が急変しないか、そちらの方がよほど心配だったと野伏は締め括った。

 

 

 

次は戦士と魔術師だ。

こちらの依頼はブロブ退治である。

 

ブロブは中々厄介な生き物である。

何しろ全身が筋肉だ。

普段はしなやかで柔らかく、そして力を籠めると強力に縮む性質は多くの武器と相性が悪い。

打撃はその柔らかさによって流され、斬撃は刃が入った瞬間に収縮し掴むように勢いを殺され、十全の威力を発揮出来ない。

 

が、この2人にしてみれば特に問題はなかった。

 

「あーゆーのには一点突破よ。突きでグサーッとね」

 

まず戦士はハルバード使いである。

斧の刃と槍の穂先を併せ持ち、様々な種類の攻撃を自在に繰り出せる万能武器だ。

そして槍の刺突は、ブロブのような手合いへの有効な回答足り得る。

一点に力を集約する事で守りを貫通するのだ。

 

そうして重要な臓器を貫き縫い留めたところに、今度は魔術師の炎が襲い掛かる。

 

「そりゃあ良く燃えたさ! 脂の乗りは抜群だったらしい。霜降りってやつだね。……今思えば少しくらいつまんでみるのも良かったかな?」

 

「お前マジで言ってる?」

 

ブロブの性質には魔術を防ぐような効果は全くない。

完全な有効打だ。

これではいかにブロブもひとたまりもない。

 

その体の特質を除けば、厄介なのは天井に張り付いてからの奇襲程度。

そんな『一般的な』個体では彼女らに抵抗するには足りなかったようだ。

 

 

 

 

 

情報交換はそれで終わった。

すべき事が無くなり、あなた達はいっとき義務から解放される。

つまりは休日だ。

 

「んー……やっぱり冬は暇だなー。こう仕事が少ないと体がだるくなってきちゃうや」

 

「おやおや? 普段はめんどくさいだのなんだの言ってるのが珍しい事言うじゃないか。もしや明日は吹雪かい?」

 

「それはそれ。これはこれー」

 

戦士の言う通り、依頼が無いのである。

冬は一般的に獣も魔種も活動を控える時期だ。

ウェンディゴなど寒い時にこそ活発化する例外的な魔種も居るが、基本的には静かな季節と言って良い。

今回、3つも依頼があったのが珍しいのだ。

 

「ま、それももう少しの辛抱だろ。春からは忙しくなりそうだし、今の内に暇な時間を堪能しとけ。特にあれだ。夏前には西の調査があるんだからよ」

 

仕事がありすぎても嫌、無さすぎても嫌。

そんな愚痴をこぼす戦士に、野伏が言う。

雪が溶け、季節がもう少し進んだ後の予定についてだ。

 

 

 

秋の終わり、村には兵舎が完成した。

西征に備えて兵が駐屯する施設である。

今はまだ無人だが、雪解け次第パレルヴァからやってくる予定だ。

この開拓村はそれだけの人数を支えられると上は判断したらしい。

 

そしてそうなると、街道や草原、川辺などの近場の守りは彼らに任せられる事となる。

兵の体を鈍らせないためにも、村の周囲は兵らによる掃討が定期的に行われる予定だ。

 

では、これまでそれを担っていた冒険者はどうなるか。

もちろんお役御免なわけがない。

あなた達は身一つで辺境を歩むプロフェッショナルである。

手放すのも遊ばせるのも余りに惜しい。

 

 

 

よって、あなた達は春が終わった後は今までよりも遠くへ足を運ぶ事となる。

その第一歩が──

 

「ああ、前に村長が言ってたね。荒野に、湿原に、あとは火山だったかい?」

 

──その3箇所の調査だ。

 

以前に戦士が訪れた渇き切った荒野と、それに隣接するように発見された活火山。

そして火山を挟んで荒野と逆側に位置し、環境さえ真逆になったような水に溢れる大湿原。

現在、西征の候補地として上がっている土地達だ。

 

これらの調査があなた達、宿の冒険者に課せられる。

2人1組となって未知の地域へ踏み込み、この辺境伯領の開拓村は次にどこを目指すべきか、その指針となる情報を集めてこなければならない。

 

不足する2名分の人員は村に駐屯する兵から1人、西征に参加予定の神殿勢力から1人が加わるとの事だ。

 

 

 

エピッククエスト情報
春のクエスト終了後に発生

いずれかを選択して参加する

 

①荒野の 協同の 調査任務

②火山の 連携の 調査任務

③湿原の 戮力の 調査任務

『協同の/連携の/戮力の』

友好的NPCを1人選んで同行させられる

 

TIPS/エピッククエスト
難易度の区切りとなるクエスト。

目的地、特殊条件、主目標が固定されている。

 

 

 

あなたはそっと懐を探った。

そこには直近の依頼で得た報酬が収まっている。

 

 

 

報酬②
成長点+1

 

 

 

これをどう使うかは、春の後、重要な調査の成否を分けるものとなりかねない。

選択の重要性はこれまでよりも増していると思って良いだろう。

 

いかにすべきか。

あなたは干し魚と麦酒を味わいながら、熟考した。

 

 

 

選択肢効果詳細
鍛錬を行うHP&MP上昇

上昇量は各1D10

技能を磨く技能習得

次回習得は『不動』

受けたダメージが極めて小さい時、

直後の行動が成功しやすくなる

奉仕に勤む秘蹟習得

次回習得は『聖域』

休息の安全性&回復量上昇

武具の新調バックラーの防御成功率強化

装備追加『クロスボウ』

射程が短く、連続使用が出来ないが、

威力と貫通力に優れた遠隔武器

村人と交流クエストでの友好的NPCの能力向上

現在Lv2

 

 

 

名前(あなたが自由に決めて良い)
職業神官

 

HP36/36
MP17/17

 

筋力8SB=2
耐久14SB=4
敏捷9SB=3
器用8SB=2
感覚12SB=4
知識14SB=4
精神17SB=5
幸運10SB=3

 

装備性能
メイス+1『2D6+筋力SB』の物理ダメージ

命中力+1

バックラー+1防御成功時、

物理ダメージを『耐久SB』軽減

防御成功率+1

 

特殊技能詳細
重撃攻撃命中時、『朦朧』判定

クリティカル時、『朦朧』確定付与

信仰秘蹟の使用権を得る
治癒初歩の秘蹟、消費MP5。

肉体をあるべき姿に戻す。

『1D6+精神SB』のHP回復。

守護初歩の秘蹟、消費MP3。

肉体があるべき姿を保つ力を強める。

『精神SB』だけ全ダメージを軽減。

効果時間は1戦闘。

賦活初級の秘蹟、消費MP5。

肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。

状態異常を回復。

 

アイテム詳細
チェインメイル1度だけ死亡を回避

 





【選択肢】

鍛錬を行う
技能を磨く
奉仕に勤む
武具の新調
村人と交流

【外部投票所】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。