読者参加型TRPG風小説 作:矢端トラム
「あー、そら無理よ。投げ網の猟はひとりでやるもんじゃねぇから。逃げ道塞いで追い立てて、飛び立つ方向を限定させた上で"置いとく"ように投げるもんだからな」
ちょうど今回インプに対して行ったように。
と、野伏は投げ網の正しい使い方をレクチャーした。
なるほどとあなたは頷いた事だろう。
インプには有効に働き、鳥はろくに捕まえられなかったのは、使い方の問題であったようだ。
空中に設置する罠として考えなければ、その効果は十全に発揮されないのだ。
動きを読むか、何らかの要因で移動先を限定させるか。
獲物が自分から網に飛び込むようにしなければならなかった。
対インプの場合は向こうから人間へと向かってくるからそれを自然に満たせただけ。
そういう事らしい。
「ま、でもインプは殺せたわけだし依頼は無事成功でしょ。おつかれー。蛇ちゃんも貢ぎ物少ないくらいで怒らないって」
「お前には、って話じゃねぇのかそれ」
「でもあの子が人間殺したーみたいな話ないじゃん」
「前例はな」
女戦士がカラカラ笑い、野伏が考えが甘いのではと指摘する。
戦士はサーペントに対して過去に恩を売っている。
昨年、卵詰まりを原因とした病に苦しんでいた彼女を助けているのだ。
サーペントの側でもそれは理解し、また記憶してもいるらしく、戦士に対しては対応の諸々が甘いらしい。
なんでも、額あたりの鱗を撫でさせてもらった事もあるのだとか。
ツヤツヤスベスベで気持ち良かったと、戦士は楽しそうに語っていた。
そんな状態であるからか、戦士はサーペントを強いものとは認識していても、いまいち恐ろしいものと実感していない節がある。
野伏はそれを余り良くない傾向だとたしなめたいようだ。
叱責一歩手前ほどの目つきで睨まれ、戦士はバツが悪そうに両手を上げる。
相手の言い分を認める、という意思表示だろう。
冒険者は冒険をする者だ。
だがそれは無闇に危険に向かって突進するようなものではない。
危険を危険と理解した上で、冷静な判断と一握の勇気のもとで成されなければならない。
こと辺境の冒険者においては特に、それが出来ない者は半年ともたずに死ぬのが常だ。
戦士もまた冒険者である。
その心得は当然知っており、サーペントに関しての自分の考えは危うかったと認めたようだ。
さて、そんな光景を眺めながら。
あなたは今語って聞かせた湖畔の依頼について、頭の中で再度軽くまとめた。
| 報酬① |
| 経験点+3 |
今回まず最も大きな経験は、インプ討伐の最後の段だ。
あなたはインプを自分に引きつけ、奇襲を誘う事を選んだ。
それは相手を網に捕え、より確実にインプを殺すためであったが、目的は他にもうひとつある。
これから自分を奇襲する生き物の、殺気を感じ取る事だ。
自分から誘導しての事とはいえ、貴重な経験である。
それを自分が優位の状態で、しかも失敗しても依頼は達成されるだろうという状況でなど、千載一遇と言って良いはずだ。
実際、あなたの首筋には未だにインプが襲撃の瞬間に発した愉悦混じりの殺意の感触が記憶されている。
これは明確な強みとなるだろう。
今後同じように不意打ちを狙う者があなたの背後に迫った時、この経験が助けになる可能性は高い。
| ステータス上昇 |
| 『感覚』 12+1=13 |
精神面での経験も大きい。
サーペントとの言葉を用いない交渉。
それに、インプを偶然発見した際に動揺などを全く漏らさなかった点。
もちろん、先述の誘導の際に行った演技もだ。
いずれもなかなか出来る事ではない。
内心を制御し、他者との関係を構築する術において、あなたは長けていると言って良いようだ。
| ステータス上昇 |
| 『精神』 17+1=18 |
| 経験点余剰発生 |
| ランダム振り分け/1D7 3=敏捷 |
他には……と考えて、最後にあなたの脳裏に浮かんだのは白鳥の姿だ。
確かに狩猟失敗の主原因は網の使い方の誤りかもしれない。
だが、あなたがもう少しだけ素早ければ、もしくは身を隠しながら正確に動く──つまり身体制御にあとわずかだけ長けていれば。
無理矢理にはなるが捕獲を成功させられていた目はある。
言ってしまえば後悔だ。
この部分ももう少し鍛えておいたなら、という。
そして抱いた後悔は早めに解消するに越した事はない。
あなたは近く、そういった点を重点的に鍛えるだろう。
| ステータス上昇 |
| 『敏捷』 9+1=10 |
「……んで、そっちはまだいじけてんの?」
「いじけてないが?」
「すげぇよな。そんな格好で言い張れるの逆にどうなってんだ」
あなたの話は終わった。
定例の情報交換は今日はあなたがトリである。
なので後は各自自由に過ごすわけなのだが……。
魔術師はあからさまに萎れていた。
落ち込んでいるのか、不貞腐れているのか。
宿のカウンターに突っ伏し、魔女らしい大きな帽子で頭を隠している。
その帽子の中からコリコリパリパリと聞こえてくるのは、野伏から強奪した
「そこまで落ち込まなくてもいいでしょうに。半分以上は戻ってきたんだから成功だと思うけどねぇ。依頼人も喜んでた事だし」
「私は全部取り戻すつもりだったんだよぉ……」
「まぁまぁ強欲だこと」
宿の主人、老婆が慰めるも効果は薄い。
魔術師の声は一段と低くなり、ジャーキーを噛み砕くペースも上がった。
せめて味わって食えよとの野伏の冷たい視線は黙殺される形となる。
魔術師がこうなっているのは依頼が原因だ。
積荷を身のうちに入れたまま草原に逃げ出したミミック。
その捕縛を彼女が請け負ったのである。
いわく。
「ミミックの捕縛なんて簡単さ。いいかい? あいつらには必ず『作られた目的』というものがある。そしてそこから外れる行為は一切しない。気まぐれや衝動とは無縁の存在なのだよ。それさえわかっていれば対処は実に容易い事さ!」
との事。
魔術師に対するには魔術師が適任。
そう言って自信満々に宿を立ったわけだが……。
このミミック、3つの箱は少々特殊な連中だったらしい。
はじめの1体を草原の奥で発見した時、魔術師を見つけるや甲殻類のような6本足──金属製、箱の留め金を流用したものらしい──で駆け寄ってきて、なんと華麗に踊り出したのだという。
これには流石の魔術師も面食らった。
目的が窃盗ならありえない行動である。
……これは後日わかった事になるが、下手人たる魔術師は行商の男の気を引きたかったらしい。
客の前に立つ時以外は難しい表情を崩さない彼を楽しませるため、ミミックによるダンスパーティーをと目論んだようだ。
わけがわからない、頭の中の常識が私達とは全くズレている……とは、この女魔術師の取り調べを担当したパレルヴァの衛兵の言だ。
ともかく、魔術師──冒険者の方──は踊る箱を見て理解した。
踊るために作られたミミックなら一緒に踊ってやれば良い。
目的を達成させてしまえば役割を失い、ミミックは動きを止めるはずだと。
それは確かにその通りだった。
月明かりに照らされた夜の草原にて魔術師はこの『陽気な』ミミックと共に踊り歌い、そして予想通りに大人しくなった箱の回収に成功する。
……が、その前に魔術師が思い出すべきだったのは箱の中身だ。
薬品や油、である。
つまり、瓶や壺などが入っていたわけだ。
もちろん緩衝材はあったろう。
だが馬車での運搬に耐えられるものであっても、流石に箱自体が飛び跳ねて踊るような事態は想定されていない。
結果、中身に生き残りはほとんどいなかったそうだ。
幸いだったのははじめに遭遇したのが単体の箱だった事だろう。
残り2体は魔術師に気付き踊り始める前に、周囲の土を隆起させて閉じ込める事で動きを封じて捕獲できた。
そちらの中身は大半が無事で、半分以上の荷は回収できた事となる。
依頼人も喜び、十分成功。
なのだが、自信満々で宿を出た当人としては到底満足のいく結果ではなかったようだ。
あるいは恥じらいなのかもしれない。
まぁ、仕方のない事だ。
そんな日もある。
なお、捕まった下手人の処遇だが、動機は悪意ないもののようだったがそれはそれ。
無許可のミミック製造はそれなりに大きな罪である。
たっぷり数年は獄中暮らしとなり、釈放後も重い行動制限がかかる。
具体的には国の魔術研究機関における永遠に昇進できない下っ端としての生涯が約束されたようなものだ。
辞められず、逃げれば追手がかかり、そもそも監視の目もつく。
彼女が行商の男と再会する事は、おそらく2度とあるまい。
「今回一番当たりだったのは俺らだな。楽が出来るのはいい事だ」
「簡単すぎて暇だったのはどうかと思うけどね……」
そして、残るひとつ。
森林でのローパー駆除はなんら問題なく終わったそうだ。
例年通りうぞうぞと大挙してやってきた触手の群れは、例年通り蔓植物に擬態して樹木に巻きついていた。
その数は多少面倒だが、まだ若い春の渡り個体であれば外見でも見分けはつけやすい。
毒の耐性に自信があるならば、近付いて襲ってきたらローパー、襲ってこなければ植物という力技の判断もできる。
そして見分けてしまえば、支給された専用の毒を吹きかければ終わりだ。
戦士と野伏、さらに村の狩人と、新しく村に加わった兵が数名。
人手も十分にあり、森に入り込んだローパーは今年も適切に駆除された。
どうやら今年の群れには『幼い』個体が多かったらしく、毒の効きも良く大変に楽な──逆に楽すぎて困る仕事だったそうだ。
ローパーよりもむしろ、春の訪れにより活発化している獣達の対処の方が時間がかかったとは戦士の言である。
以上が今回の情報交換の結果だ。
参考になる部分は抑え、どうでも良い部分は肴にでもすると良い。
「時間を戻す魔術とか、なんとか開発できないものかなぁ」
「そんなのよりこっちの方が効果的だと思うけどねぇ」
「……これは?」
「蒸留酒。うちの人のとっておきさね。結構適当なとこあるから、まぁ1杯2杯くらいじゃバレやしないさ。ひっひ」
「なるほど。単純だけれど強い解だ」
そして、恥ずかしい失敗は酒に流すに限る。
聖典にはそんな言葉はないが、古来から伝わる人の知恵であった。
そうして数日が経った。
兵達は兵舎を整え終え、生活の基盤を固めた。
村に溶け込むために軽い宴も催され、人々はこの新しい住人達を歓迎している。
軋轢や衝突といったものはほとんど見られなかった。
これには村に余裕があったという点が大きい。
村近辺で発生したこれまでの危難は冒険者に依頼を出せばすぐに退けられ、村人の様々な活動は妨げられる事がなかった。
そのために食料増産や西征に向けた物資の備蓄、新規研究なども極めて順調に進んでいる。
村の余裕は明確な失敗なく依頼をこなし続けた冒険者がもたらしたものであり、西征の準備である兵の駐屯に戸惑いや反発がほぼ無いのは余裕のため。
遠回りではあるが、あなた達の功績とも言える。
もちろん、あなた達だけの、というわけではないが、誇って良い成果だ。
そしてこれは、間近に迫った西方調査にも影響する。
あなた達冒険者は2人1組となって、荒野、湿原、火山のいずれかに踏み入るが、その際に受けられる支援の質は最高のものとなるだろう。
豊富な薬品類に、潤沢な物資、過酷な環境に適応するための靴や衣服。
これらは村内のスムーズな連携あってこそのもので、つまりはあなた達が勝ち取ったものだ。
ただ、それだけで足りるかというとそうでもない。
何しろ向かうのは未知の地域だ。
情報は少なく、どのような脅威があるかさえわかっていない。
備えはより多くあるに越した事はないはずだ。
| 報酬② |
| 成長点+1 |
つまり、調査前最後の依頼報酬。
今あなたの懐の中にある財の使い道は重要である。
何に使うべきか、あなたは慎重に検討する。
| 選択肢 | 効果詳細 |
| 鍛錬を行う | HP&MP上昇 上昇量は各1D10 |
| 技能を磨く | 技能習得 次回習得は『不動』 受けたダメージが極めて小さい時、 直後の行動が成功しやすくなる |
| 奉仕に勤む | 秘蹟習得 次回習得は『信仰+』 信用、説得、言いくるめの成功率上昇 初歩の秘蹟を強化 |
| 武具の新調 | バックラーの防御成功率強化 装備追加『クロスボウ』 射程が短く、連続使用が出来ないが、 威力と貫通力に優れた遠隔武器 |
| 村人と交流 | クエストでの友好的NPCの能力向上 現在Lv2 |
| 名前 | (あなたが自由に決めて良い) |
| 職業 | 神官 |
| HP | 36/36 |
| MP | 17/17 |
| 筋力 | 8 | SB=2 |
| 耐久 | 14 | SB=4 |
| 敏捷 | 10 | SB=3 |
| 器用 | 8 | SB=2 |
| 感覚 | 13 | SB=4 |
| 知識 | 14 | SB=4 |
| 精神 | 18 | SB=6 |
| 幸運 | 10 | SB=3 |
| 装備 | 性能 |
| メイス+1 | 『2D6+筋力SB』の物理ダメージ 命中力+1 |
| バックラー+1 | 防御成功時、 物理ダメージを『耐久SB』軽減 防御成功率+1 |
| 特殊技能 | 詳細 |
| 重撃 | 攻撃命中時、『朦朧』判定 クリティカル時、『朦朧』確定付与 |
| 信仰 | 秘蹟の使用権を得る |
| 治癒 | 初歩の秘蹟、消費MP5 肉体をあるべき姿に戻す 『1D6+精神SB』のHP回復。 |
| 守護 | 初歩の秘蹟、消費MP3 肉体があるべき姿を保つ力を強める 『精神SB』だけ全ダメージを軽減 効果時間は1戦闘 |
| 賦活 | 初級の秘蹟、消費MP5 肉体と魂をあるべき姿に引き戻す 状態異常を回復 |
| 聖域 | 初級の秘蹟、消費MP6 小規模な聖火の結界を顕現させる 休息中のみ以下の効果 通常エンカウント停止 環境ダメージと休息妨害を無効化 一部状態異常を即時回復 回復判定ダイス数+1 |
| アイテム | 詳細 |
| チェインメイル | 1度だけ死亡を回避 |