読者参加型TRPG風小説 作:矢端トラム
ポタポタと、液体が垂れる。
汗だ。
あなたの頭から流れ出たそれは額や頬を伝い、水滴となって地面に落ちた。
もちろん、1粒2粒程度の話ではない。
「78……! 79……! 80、ッ!」
場所は兵舎に併設された訓練場。
そこに男達の声が響いていた。
数字をカウントしながら繰り返されるのは基本的な筋力トレーニングだった。
今現在は腕立て伏せである。
駐屯する90名の兵は4つの班に分かれていた。
村の周辺を巡回し獣や魔種に対処するもの。
村に待機して緊急事態に備えるもの。
訓練を行い体を鍛えるもの。
体を休め溜まった疲労を癒すもの。
これを順番にぐるぐると回すのが彼らのやり方であるらしい。
正確には、9名ほどは他の兵の食事の用意や清掃などの雑用を行う者であるそうだが、そこまで詳しく知る必要もないだろう。
あなたはそんな兵達の訓練に参加していた。
折角兵舎が建ち、兵が駐屯を始めたのだ。
村人や冒険者との関係も悪くない以上、利用しない手はない。
ひとり黙々と宿の訓練場に籠るよりも効率的である。
「99、100……っ!」
カウントが進み、100に達した。
腕立て伏せはこれで終わり。
次のメニューに移るまではインターバルとなる。
が。
この
「腕立てやめ! さぁ立て! 走れ! もたもたするなッ!」
教官役たる隊長、騎士の鋭い号令に兵達はややふらつきながらも従った。
あなたもすぐさま立ち上がり、地を蹴って走り出す。
朝も早くからこれの繰り返しだ。
筋肉に負荷をかけるトレーニングの後、即座に訓練場外周を延々周るランニングが開始される。
そして走り終えたなら、当然のようにまた次の部位のトレーニングが始まる。
もしあなたがこの訓練が始まる前に兵達の顔を見回していたなら、そこに宿る負の覚悟と諦観を読み取れただろう。
逃げられるものなら逃げ出したい。
そう顔に書いてある者は少なくなかったはずである。
特に、この村では彼らがパレルヴァにいた頃よりも厳しいギミックがあるためになおさらだ。
「先生、お願いいたします!」
「うむ。やる。にげる、いいぞ!」
騎士の声に応えたのは、重く低く、そして大きな声だ。
人間の言葉にまだ慣れきっていない片言の返答。
同時に、ズン、と巨大な質量が地面を揺らす。
明るい茶色の大毛玉。
開拓村に住まう最も大なる者。
フェノゼリーであった。
毎日毎晩子供達に洗われ続け、洞窟暮らしの汚れがすっかり消えた彼は、そのフカフカふわふわの体を勢い良く跳ねさせた。
腕と足の両方を使った、いつかあなたも岩山で見た走法だ。
多少の手加減はあるようだがそれでもなお速い。
ちょうど、筋肉に溜まった疲労で手足が重いあなたや兵達が絞り出せる全力ギリギリでどうにか等速といったあたり。
「ははは! とどくぞ! つかまるぞ! にげろにげろ! かわいい、な!」
フェノゼリーが追い、あなた達は逃げる。
騎士の考案した『より必死に鍛錬に励むための工夫』とやらは兵達に大好評であった。
主に、騎士の目がない場所での愚痴が大盛り上がりになるといった形で。
何が悪いと言えば片言なのが最悪だ。
フェノゼリーと対話を重ね、その性根を知るあなたなら意訳は出来る。
"どうしたどうした、そんなものか? もう俺の手が届いてしまいそうだぞ。お前達はもっとやれるだろう? ──うむ、素晴らしい気迫だ。良いものだな、好ましいぞ!"
とまぁ、こんなところだろう。
ただしこれはあなただから分かる事。
村で過ごし始めて日の浅い兵達にとっては全く話が異なる。
彼らからしてみれば、自身の背を追う巨大な魔種に捕まれば頭からバリバリ喰われそうだとしか思えないに違いない。
それも、じわじわいたぶって反抗を楽しむタイプのだ。
これまでは幸運にも誰も捕まってはいないが、いつか誰かが犠牲になるのではと兵舎の食堂では恐々語られていたりもする。
騎士はなかなか良い性格をしているようだ。
あるいは、手段を選ばず最高効率を求める性質か。
ただ、少なくとも公正な人間ではあるらしい。
「列を乱すな! 周囲を見ながら走れ! 仲間ともつれて転んでは笑い話にもならんぞ!」
騎士もまた訓練には加わっていた。
あなたや他の兵と同じ事をしながら、常に状況を把握し、都度必要な指示を叫ぶ。
言うは易いが簡単に出来る事ではない。
兵達の愚痴があくまで愚痴でおさまり、悪罵に発展しないのはそこが要因なのだろう。
訓練はその後も続いた。
鍛える筋肉の部位を変えては走りを、さらに追加で4セット。
体力精神力ともに人並外れたあなたをして疲労は避け得ないだけの運動量だ。
騎士も最後のあたりは息も絶え絶え、声は掠れ切っていた。
だからこそ
そして恐るべき事に、いっときの休息を挟んで武器を振るう訓練までもが待っている。
村長などはパレルヴァから精兵が来ると何度も言っていたが、まさにと言えた。
日頃からこれだけの鍛錬を積んでいるならば、それは鍛え上げられもする。
あなたにとっても良い経験になったはずだ。
体を酷使し、精神を追い込み、あなたはひと回り成長する。
訓練は半分ほどが消化された。
あとひと踏ん張りである。
気力と根性を振り絞り、メイスを構えると良い。
全てが終わった後には、たっぷりと奮発したおかげで豪華になっている宿の食事があなたを待っている。
精のつく羊の肉──昨年秋に潰した羊の干し肉ではあるが──をふんだんに使ったご馳走もまた、あなたの肉体を強く作り直してくれるに違いない。
| HP上昇 |
| 1D10=5 |
| 36+5=41 |
| MP上昇 |
| 1D10=8 |
| 17+8=25 |
そんな風にしてあなたは過ごし、やがて時は流れた。
春の終わりが近付き日毎に気温が増していく中。
あなたは冒険者の宿の1階、酒場のテーブルに座り、話を聞いていた。
「──であるからして、この調査には開拓村の、ひいてはパレルヴァ、いや辺境伯領自体の未来すら──」
村長の長話をである。
……聞いているのが『あなた』であり『あなた達』でないのは、つまり。
「…………」
「流石に良い味だな……産地はどこだ?」
「すー……すー……んごっ」
こういう事だ。
戦士はあからさまに興味がなく聞いている振りで虚空を見つめ、野伏は村長が景気付けにと持ち込んだ酒を吟味する方に集中し、魔術師にいたっては堂々と居眠りをする始末。
もちろんこれが依頼達成に重要な内容であれば全員耳を傾けただろう。
だがこういった場面で村長が実のある話をする事はまずない。
よって、村長が長広舌を終えて満足するまでは各々好き勝手に聞き流すのがお決まりとなっている。
冒険者達だけでなく、村全体としてもだ。
あなたが聞いているように見えるのも、もしかしたらあくまでそう見えるだけかもしれない。
村長の妻たる宿の老婆もよくわかっている。
あなた達の前には酒以外にも簡単な食事が並んでいるが、どれもゆっくり時間をかけて食べた方が美味いものばかりだ。
適当に放っておいて、これでも楽しんで時間を潰しなさいと、そういう事だろう。
確実に聞いていると断言できるのは……。
「あの、せ、先輩方……聞かなくて良いのですか?」
生真面目そうに小声でそう問い、ちゃんと聞くべきですよと態度で示す女神官と。
「うむ──まさに────然り──」
頷きながら時折相槌を打っては村長を気持ち良く喋らせている、騎士。
この2人だけだ。
後者の騎士は早くも村に馴染みつつある駐屯兵の長である。
翌年の西征本番には後方の補給線を支える立場での参加だが、それには現地の状況を良く知る事が重要だ。
そのために己の目で確かめたいと、今回の調査に名乗り出た形となる。
前者の女神官は、昨年の秋の祭に派遣され、空送りの儀を補助したあの神官だ。
あれからパレルヴァで冒険者として活動していたらしい。
上々の活躍を見せているそうで、それ以前の何年もの修行により多くの秘蹟を扱える事からも西征への参加が許可されたとの事。
後は騎士と同じく、志願しての調査参加というわけだ。
この2人に宿の冒険者4名を加えた、計6名。
これが西方調査の人員となる。
大勢で向かわないのは、数の多さが動きの鈍さに繋がるためだ。
完全な未知の区域で活動するにあたり重要なのは、即時の判断を瞬間的に行動に移す身軽さである。
人数が増えるほど指示の伝達に必要な時間は増え、不正確な内容が混じるようになり、意思の統一が困難になってくる。
1人では無謀だが、多ければ良いというものでもない。
最低2人、多くとも4人。
少数精鋭がこういった場合の通例と言える。
さて、村長の演説はようやく終わった。
騎士が上手く乗せて舌を回らせたためか、話し切るまでの時間は普段よりもやや短かったように思える。
宿の冒険者諸氏は『やるなぁ』と目線に乗せて讃え、騎士は『それほどでも』と口の端でかすかに笑んだ。
それを確認した女神官は『これいいの? 本当に?』と不安げに眉を下げている。
あなたがどこに属していたかは、さて、あなただけが知る事だ。
ともかく、村長は3ヶ所の調査予定地について語る。
今度は全員が、真摯にその内容に集中した。
| エピッククエスト生成済 |
| ①荒野の 協同の 調査任務 ②火山の 連携の 調査任務 ③湿原の 戮力の 調査任務 |
| 『協同の/連携の/戮力の』 友好的NPCを1人選んで同行させられる |
まずひとつめ。
村の遥か西方、正確には西北西に位置する荒野だ。
以前に戦士が簡易調査に向かい、散々な目にあった土地である。
そこは渇いた土地だという。
見渡す限り赤土と岩ばかりが転がり、水という水は消え果て、常に強風が吹き荒ぶ。
さらには煌々と照り付ける昼の陽光は容赦なく体力を奪い、かと思えば夜間は気温の低下により体の自由が奪われ、満足な休息さえ許されない。
過酷という言葉はこの荒野のためにあるようなものだ。
しかし、そんな場所にも生きるものは居る。
少数ながらたくましく根を張る獣達は、いずれも敵を逃さずその身の一片までも喰らい尽くす凶暴さを持つようだ。
食料も水も少ない土地における当然の適応なのだろう。
ここには何があるか、まだ殆どわかっていない。
珍しい鉱物が眠るかもしれないし、生息する獣そのものが有用かもしれないし、そのどちらでもないただの荒れ地でしかないのかもしれない。
全ては、調べてみなければわからない事だ。
| 入手経験点 | +3〜6 |
| 入手成長点 | +1〜2 |
ふたつめ。
荒野の南、村から見れば西南西の、活火山だ。
灰と炎に支配された死の山である。
天を衝くような標高の山体を漏れ出す溶岩の赤に染め、日々形を変え続けているのだという。
当然ながら人間が真っ当に闊歩出来る環境ではない。
溶岩がこぼれ続ける山頂付近などは近付く事さえすべきではない。
それ以外の箇所でも新しい山肌は崩れやすく、時折毒の大気が吹き出す事もあるようだ。
運が悪ければ噴火の脅威にも晒されるだろう。
調査などするまでもなく、この山は避けて通るべきだと当初は思われていたのだが、とある生物群が発見された事から話は変わってくる。
炎に溢れるような高温の環境に適応した特殊な魔種達だ。
こういった魔種は決まって強敵ではあるが、その体そのものや、時には老廃物さえ希少かつ極めて有用な資源となる場合が多い。
調べる価値はあると、事前の意見が覆されるまでは時間はかからなかったそうだ。
| 入手経験点 | +3〜6 |
| 入手成長点 | +1〜2 |
みっつめ。
火山からさらに南。
果てしなく広がる大湿原だ。
前ふたつとは打って変わり、こちらは水と命に溢れている。
緑は息づき、数え切れないほどの獣や魔種が沼や湖に巨大な生態系を築く。
その種は未だ人類が対面した事のない者達であり、植生もまた同様だ。
目に映る何もかもが未知の、まさしく異郷と呼ぶにふさわしい。
新種の生物、新種の樹木、草、苔、あるいは茸類。
よりどりみどり、全てが調査すべき対象だ。
そして、その異郷という点こそが探索の敵となるだろう。
数多の生物が棲むという事は、縄張りが入り組んでいる事が簡単に予想される。
踏み入るとなれば相応の代償は払わねばならないだろう。
また、未知であるのは目に見えるものだけではない。
過去にこのような土地に踏み入り調査にあたった者に、例外なく襲い掛かった脅威がある。
対処法などまだ誰も確立していない、病と寄生虫だ。
湿原を進むにあたり、水を避けて通る事など出来ない。
そして水中にこそ病は多く潜む。
湿原には身を削るような激しさこそないが、他と同様に過酷な土地であると理解すべきだ。
| 入手経験点 | +3〜6 |
| 入手成長点 | +1〜2 |
村長から示された資料は以上だ。
この中から、どこを自身の担当する調査区域に選ぶか。
あなたはよくよく熟考する。
| 名前 | (あなたが自由に決めて良い) |
| 職業 | 神官 |
| HP | 41/41 |
| MP | 25/25 |
| 筋力 | 8 | SB=2 |
| 耐久 | 14 | SB=4 |
| 敏捷 | 10 | SB=3 |
| 器用 | 8 | SB=2 |
| 感覚 | 13 | SB=4 |
| 知識 | 14 | SB=4 |
| 精神 | 18 | SB=6 |
| 幸運 | 10 | SB=3 |
| 装備 | 性能 |
| メイス+1 | 『2D6+筋力SB』の物理ダメージ 命中力+1 |
| バックラー+1 | 防御成功時、 物理ダメージを『耐久SB』軽減 防御成功率+1 |
| 特殊技能 | 詳細 |
| 重撃 | 攻撃命中時、『朦朧』判定 クリティカル時、『朦朧』確定付与 |
| 信仰 | 秘蹟の使用権を得る |
| 治癒 | 初歩の秘蹟、消費MP5 肉体をあるべき姿に戻す 『1D6+精神SB』のHP回復。 |
| 守護 | 初歩の秘蹟、消費MP3 肉体があるべき姿を保つ力を強める 『精神SB』だけ全ダメージを軽減 効果時間は1戦闘 |
| 賦活 | 初級の秘蹟、消費MP5 肉体と魂をあるべき姿に引き戻す 状態異常を回復 |
| 聖域 | 初級の秘蹟、消費MP6 小規模な聖火の結界を顕現させる 休息中のみ以下の効果 通常エンカウント停止 環境ダメージと休息妨害を無効化 一部状態異常を即時回復 回復判定ダイス数+1 |
| アイテム | 詳細 |
| チェインメイル | 1度だけ死亡を回避 |
【選択肢】
荒野の 協同の 調査任務
火山の 連携の 調査任務
湿原の 戮力の 調査任務
【外部投票所】
【6/30 8:10追記】
投票が大接戦(追記時点で票差0)のため、15時に締め切られるまで続きを書き始められません
次話投稿は普段よりも遅れると思われます