読者参加型TRPG風小説   作:矢端トラム

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→ 開拓村へ撤退する



エピッククエスト『湿原の 戮力の 調査任務』(8/8)

 

 

 

あなたは──調査の中断を決断した。

 

これ以上を湿原で過ごすには危険が大きい。

あなた達は心身をひどく消耗し、当初よりも物資も減った。

 

その上、ヒューリクの起こした小規模な洪水のために周囲の獣の縄張りが乱れた混乱状態にある。

これは一時的なものではあろう。

時間が経てば落ち着きはするはずだ。

が、それがいつになるかは未知数だ。

日が落ちる前にあっさりと解決するかもしれないし、明日の日の出まで待たねばならないかもしれないし、あるいは数日を要する可能性もなくはない。

 

そのような状況に加え、この土地には不確定要素が多すぎる。

天候や熱病などがいつ牙を剥くかもわからない。

 

ならばいっそ一度湿原から去るべきだとの判断には野伏も賛同した。

 

「同感だ、それでいこう! なぁに、初回調査としちゃ上出来も上出来だぜ」

 

野伏は荷の一部を軽く叩くとあなたへニヤリと笑った。

あなたの記憶が確かなら、今叩いた箇所の奥には砂金を収めた瓶が入っていたはずだ。

確かに彼の言う通り、第1回の事前調査としては十分な成果を手にしている。

今ここで撤退したところで、文句をつけられる者もいまい。

 

「よし、んじゃ俺が先導する。せめて少しでも楽そうな道を探すぞ! 気張れよ、しっかりついてこい!」

 

 

 

判定内容周囲の警戒
判定方法2D6+感覚SB(野伏)

9以上で成功/やや難

判定結果2D6+6=14(成功)

 

 

 

野伏が身を低くし、駆け出す。

先の戦闘でも見せた音のない走法だ。

あなたもまたその後ろを行く。

 

 

川辺から続く草地はやはり混沌に包まれていた。

そこかしこで獣が喚き立て、追われたものが逃げ惑い、互いに縄張りを侵害したと牙と爪を振るう。

 

その中に、野伏は道を見出した。

 

「こっちだ! 寄ってくんのは無視しろ! 深追いはしてこねぇ!」

 

彼が先導した先には獣の集団が居た。

夕暮れの赤が落ちる中、10頭弱がひと所に集まっている。

そこに突っ込むなど自殺行為ではないか……などと、あなたが疑ったかどうか。

しかし疑念を抱こうが判断を信じようが、やる事は同じだ。

 

野伏はすでにそちらへと走り寄っている。

分断が死を招きかねない以上、ついていかないなどという選択肢はない。

 

あなた達は集団の横を通り過ぎた。

 

もしあなたに獣の様子を観察する余裕があったなら気付いただろう。

その集団の中心には、立派な体躯の草食獣が横たわっていた。

頭部から生えた角の様子と頭や体の形からおそらくは鹿の仲間だ。

喉元を噛み破られ半身を真っ赤に染めたそれは、まさにたった今事切れたところのようだ。

この混乱に乗じて仕留めた獲物に違いない。

 

集団はあなた達に対し吠えたてるだけで、追跡する事はなかった。

折角のご馳走から離れて深追いし、他の獣に掻っ攫われる愚を避けたのだろう。

確かに、これならば比較的安全な道と言えた。

 

 

 

しかし、全てが全てそのような都合の良い道ばかりでもない。

 

気付けばいつしか、一定の距離を保ってあなた達に並走する何者かが現れた。

これもまた集団のようだ。

肉食の本能を剥き出しに、襲い掛かる機を窺っている。

 

特に、あなたをだ。

あなたは川辺で深手を負い、血にまみれた。

その臭いは彼らを招き寄せるものに他ならない。

弱った肉がここにあるぞと宣言して歩くようなものだ。

 

 

 

判定内容威圧
判定方法2D6+精神SB

9以上で成功/やや難

判定結果2D6+6=10(成功)

 

 

 

ならばと、あなたは対処を決定した。

 

やることは簡単だ。

殺意をこめて睨みつける。

ただそれだけである。

 

「……ッ! ァアゥ!」

 

しかし単純さに反して効果は抜群であった。

怯えたような鳴き声と共に、あなたを囲う獣の群れがやや遠ざかる。

 

寄らば殺す。

弱っていると思うならかかってくるといい。

その時がお前の終わる瞬間だと気配に乗せる、武威を背景にした脅しは真に迫っている。

 

これによってあなた達の周囲に空隙が生まれた。

例え混乱のただ中にあったとしても、強大な敵に近付きたいと思う者は少ないのだろう。

 

「いいねぇ、調子戻ったか!?」

 

その余波を感じ取ったか。

野伏も雰囲気を軽くして言う。

それは虚勢なのかもしれないが、足取りを僅かに軽くしてはくれたはずだ。

 

 

 

判定内容エンカウント危険度
判定方法1D10

大きいほど危険

状況補正『+3』

進路補正『-2』

威圧補正『-2』

技能補正『-2』

判定結果1D10-3=4

 

 

 

だが、残念ながら全ての敵が威圧を理解するわけでもない。

 

「チッ、こいつ、面倒な……!」

 

巨大な蟲だ。

ヒトの半分ほどまでに大きくしたトンボにムカデの脚を生やし、オマケで尾の先に針を付け足した、そんな異様である。

それは虫故に威圧や駆け引きなどまるで関係なく、乱れに乱れた縄張りから巻き起こる興奮に任せてあなた達の前に躍り出た。

 

 

 

戦闘開始/1ターン目

 

判定内容行動順の決定
判定方法2D6+敏捷SB

比べ合い/数値が大きい順に行動

判定結果2D6+3=9(あなた)

2D6+7=19(野伏)

2D6+3=14(飛びムカデ)

 

①野伏

②飛びムカデ

③あなた

 

 

 

「相手にすんな、追っ払うだけでいい!」

 

野伏の声に、あなたは頷いた。

当然ながら相手にする気はあなたにもない。

 

現在の最優先目標は湿原からの脱出だ。

まともにやり合う利点は何一つ存在しない。

むしろ戦闘がさらなる混乱を周囲に与え、乱戦に次ぐ乱戦を引き起こす可能性を考えれば、決してやってはならない選択だろう。

 

 

 

判定内容野伏の逃走
判定方法2D6+敏捷SB

比べ合い/数値が大きい方が勝利

敗北時、アイテムを消費して成功に変更

判定結果2D6+7=16(野伏)

2D6+3=7(飛びムカデ)

 

逃走成功

クリティカル

 

 

 

「シィッ!」

 

走りながら、野伏は鋭くダガーを投げ放った。

威力はない。

肘から先だけを使った最小の力による、しかし事前動作のほぼ存在しない最速の投擲だ。

そして、今回の相手に対してはそれで十分である。

 

速度と進行方向を読み切った軌道は虫の羽根を直撃するコースを取っていた。

大きく、しかし薄く脆い羽根は半ばから千切れ、ムカデかトンボか判断のつけにくいそれはバランスを失って空中でじたばたともがく。

 

後はそこに、野伏の後方についていたあなたが盾を掲げて体当たりを見舞わせれば終わりだ。

轢き飛ばされる形となった虫は目を回して地面に落ちる。

あなた達の障害はあっさりと消えてくれた。

 

 

 

「──よし、ついてる! いいのが居るじゃねぇか! アレに紛れるぞ!」

 

そして、ここに来て幸運があなた達に味方した(クリティカル特典)

草食獣の群れである。

突然の魔術の気配に慌てふためいたそれらは大集団を形成し、安全な場所を求めて狂ったように走り回っている。

 

そこに紛れ込めば、草食獣の壁が他の獣に対する盾になってくれるだろう。

血肉を求めるもの達も、まさか狩りやすい相手が周囲にいくらでもいる中で、武威を匂わせるあなた達に手を出す事もあるまい。

今現在において、最も安全な道と考えて良い(追加エンカウント自動回避)

 

これ幸いと、あなた達はその中へと飛び込んだ。

 

 

 

 

 

そうして。

走りに走ったあなた達は、ようやく落ち着いて息を吐ける状況を手に入れた。

 

「とりあえず、ここまで来りゃ一安心だな」

 

青白い火、あなたの灯した聖火を前に、野伏が力を抜く。

場所は──未だ湿原の外ではない。

 

撤退を始めたのは夕暮れだ。

夜が来る前に抜け切る事は叶わず、ひとまずどこかで身を隠すべきとあなた達は判断した。

そのために選んだのは、森である。

すでにある程度以上の探索を終え、実際に夜を明かした経験のある森は野営にはうってつけであった。

川からそれなりに離れている森を選べば、混乱による影響もほとんどない。

 

ただしあくまで浅層だ。

奥まで踏み入れば何かあった時──例えばすでに確認したように、雨が強く降った時などに問題が生じる恐れがある。

また、今は特に出会いたくないだろうアイアンシザーの存在もある。

 

 

 

手痛い敗戦であった。

物理的にも心理的にも、であろう。

 

あなたの体は今も痛みに苛まれている。

精神的な部分でも、半ばまでは順調に戦闘を進められていた分、悔恨は深いのではないだろうか。

もちろん、実際のところはあなたしか知る由はないが。

 

「──ま、生きてるだけ上等だ。いやマジで。俺がお前と同じ目にあってたら2、3回は死んでんじゃねぇか……?」

 

おどけたような、半ば以上本気なような。

そんな言葉を口にしてから、野伏は続ける。

 

「先に休んどけ。火の番は俺がやっとく。怪我が重いのはそっちだろ。それにアレだ。冒険者歴が長いのはこっちだぜ。先輩面できる貴重な機会は楽しませてもらわんとな」

 

あなたはその言葉に従うべきだろう。

明日の陽がのぼってからどのような経路で湿原を脱出するにせよ、あなたの扱う秘蹟は重要となるはずだ。

消耗を少しでも癒し、行使できる回数を増やしておかなければならない。

 

 

 

あなたの疲労は色濃い。

身を横たえれば眠りの誘いはすぐにやってくるだろう。

 

その中で、あなたは今回の探索の成果を思い浮かべた。

 

湿原の生物達のスケッチと、生態のメモ。

実る果実やキノコの効能と、実物のサンプル。

川や森そのものの、人類にとっての有益性に関する情報。

 

どれもが価値あるものだ。

翌年に控える西征の是非を決定するための、確かな判断材料となるだろう。

初回の調査でこれだけの情報を集められた事は、讃えられるべきであり、蔑む事を村の者は誰一人許すまい。

 

 

 

もちろん、あなたには幾つかの心残りもあるだろう。

 

探索の初めに野伏が見た、西の空を飛ぶ魔種。

灰の大地にこれほど根付くはずのない、生命に満ちた緑。

これらは一体なんだったのか。

川辺の主、ヒューリクにも色々と不自然な点はあった。

さらに言えば沼も未探索で立ち入ってさえいない。

 

だが、それは何も今、あなたが明かさなければならない事ではない。

 

今回の調査はあくまで第1回目のものだ。

これから1年をかけて湿原を調べ上げる予定はすでに村長が組み上げている。

 

残る疑問や見落としは、その中で村に答えがもたらされるだろう。

もしかしたら、次回の調査もまたあなたに依頼が回ってくる可能性もある。

 

 

 

つまるところ。

あなたは成功した。

例え、その途中に死を予感する敗北を経たとしても。

こればかりは、あなた本人であっても覆す事の出来ない事実である。

 

それをどう受け止め、噛み砕くかは、あなたがこれから決めれば良い。

 

 

 

やがて、眠気は限界点を超えた。

あなたは明日に備え、抗う事なく目を閉じる。

 

意識が途絶える前、最後に見たキャンプの灯火は青白く、未知へと立ち向かった冒険者を労うように揺れていた。

 

 

 

クエスト終了

 

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