読者参加型TRPG風小説 作:矢端トラム
あなた達はまず、高台へ向かう事とした。
クエレブレの行動範囲を探るためである。
そも、これがわからなければどうしようもない。
諸々の準備のために動くにも、安全な区域とそうでない区域の区別もつけられないのでは亜竜の餌食になりに行くようなものだ。
汚物を仕込むための肉を狩っていたら、いつの間にか飛来したクエレブレにまとめて狩られた、などという事になりかねない。
「んじゃ、お願いねー。下からなんか湧いてきたらこっちで片付けるから」
そういうわけで、あなたは高台頂上の木に登った。
伴うのは女神官である。
あなた達のうち、視力に優れる2名だ。
残る戦士と魔術師は、木の下で警戒に当たる。
以前の調査の際には特に戦闘も起こらず、小動物や無害な鳥しか見つからなかったが、それはやや不自然だ。
緑も実りも多く見晴らしも良いこの高台は、真っ当に考えれば様々な種の巣に適した場所だろう。
大型の獣が近寄らないだけの何かがあると考えるのは自然な事。
戦士は言葉は緩いものの、眼光鋭く周囲を睨んでいる。
そんな場所にわざわざ踏み入っての観察を行うのは、クエレブレの近くに寄る方が余程危険だからだ。
発見されればそれだけで何もかもが終わりかねない。
また、そもそも空を自在に飛び回る存在を地上を駆けて追うなど非効率が過ぎる。
規格外の捕食者の襲来により、湿原全体に混乱が広がっているとも予想出来る以上、何が起こるかわからないというのも大きい。
単純に不可能事と言う他ない。
「──居ましたね。隠れる気はなさそうです」
幸いにして、対象はすぐに見つかった。
何しろ
比較対象に生物を持ち出す事さえ誤りで、最低でも家屋などと並べてどちらが大きいかと論ずるべき相手だ。
例え遠方からの観察であろうと発見は容易である。
早朝の朝靄の中から突き抜けている頭と翼が余りにも目立ちすぎていた。
翡翠に似た色の鱗を持つ、美しい亜竜だった。
すらりと伸びた長い首と尾。
大きな翼は力強く、それが風を掴む音は想像だけでも威風を感じさせる。
大地に根ざす両の脚など、年月を経た巨木のようであった。
そんなクエレブレは、川に居た。
川辺に作られたほぼ真円の窪みの中で、翼を広げてジッと佇んでいる。
「……何をしているんでしょう。まさか立ったまま寝ているわけでもないと思いますが」
| 判定内容 | 対象の観察 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 8以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+4=9(成功) |
女神官の問いに対する答えをあなたは見つけた。
どうやらクエレブレは体を乾かしているようだ。
野伏から借り受けてきた単眼鏡を覗いてそれを確かめ、女神官にも見るように促す。
クエレブレの体は濡れていた。
湿原の湿気のためという程度ではない。
「昨夜は雨は降っていないはず、ですね」
女神官が確認のために口に出し、あなたが頷く。
ならば巨体に纏わりつく水分は水浴びによるものだろう。
クエレブレの鱗の美しさを思えば、手入れを丹念に行っている可能性は高い。
あるいは日課なのかもしれなかった。
もしそうだとすれば、良い嫌がらせの手段を見つけた事になる。
川を汚染してやれば良いのだ。
具体的には、適当な沼と川を完全に繋げてやれば良い。
身を清めるための水から腐敗臭が立ち昇る様は、大きなストレスになるに違いなかった。
その後、しばし体を乾かしていたクエレブレは、やがてひとつ大きく身震いすると翼を畳んだ。
そして今度は身を収めていた窪みを掘り返し始める。
石をかき混ぜ、爪痕で模様を作り、何かしら意味のある事をやっているようだが。
| 判定 | 不要 現地調査済 知識判定成功済 |
その意味は、あなた達にとっては明らかだった。
「……本当に、宝石類が好きなんですね」
女神官も当然わかったようでそう呟く。
クエレブレはおそらく、河原の石に混じる宝石を並べているようだ。
脚も爪も大きすぎるために細かい選別は不可能だろうが、それでもああして地面をならし、できるだけ宝石が表面に現れるようにする程度は出来るのだろう。
とするとだ。
魔術師の語った伝承から、今の寝床はあの河原の窪みなのだと推察できる。
何しろクエレブレは宝の山で眠るのを好むという話である。
これもまた良い材料だ。
この寝床、クエレブレにとって多少なりとも価値のある宝を台無しにする事が叶えば、それも良い一撃になるだろう。
ただし、寝床に沼の汚物をぶち撒けるなどは出来るだけ避けるべきだ。
それは余りにも加害者の存在を匂わせすぎる。
クエレブレにはあくまで、
森にてあれだけの残虐性を見せつけた個体である。
周囲の生物を片っ端から殺戮するような事態の悪化を招きかねない。
当然、それにはあなた達も巻き込まれる事になる。
有効だと思われるのは洪水だ。
川水が溢れ、寝床の表層をまとめて押し流すような事があれば良いのだが、それには相当な雨量が必要だろう。
クエレブレも分かっているらしく、通常の増水では影響のない位置に寝床を構えている。
突発的な豪雨でもなければどうしようもなさそうだ。
こればかりは運に頼る他ない。
| 判定内容 | 気象知識 |
| 判定方法 | 2D6+知識SB(魔術師) 13以上で成功/困難 |
| 判定結果 | 2D6+6=11(失敗) |
「雨乞いの研究でもしておけば良かったかな。そういうのはカミサマにお願いできないのかい?」
「流石にそれは。神々は私どもを見守られるのみ。必要なものは全て人の手の中にあり、加護と恩寵は必要なだけすでに与えてくださっています。新たにと願っても、お応えになられる事はありません」
「ふぅん。そんなものか」
雨に関してはそんなところだ。
人工的に雨を呼ぶような手段にあなた達は心当たりがない。
出来るのは夜毎に天の機嫌をうかがい祈るぐらいの事だろう。
あなた達のクエレブレ観察は継続される。
朝と呼べる時間帯が終わり、昼に近付いて朝靄が徐々に消えていく。
自然、川辺の様子はさらに良くわかるようになった。
| 判定内容 | 対象の観察 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 10以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+4=9(失敗) |
「予想通りですが、他の動物は何もいませんね」
そこには当然の光景が広がっていた。
川の周囲、見える範囲にはクエレブレ以外の何者も存在しない。
湿原の中央を北から南へ貫く川。
その両岸を縄張りとしていた数え切れないほどの水牛は影も形もない。
もちろん、それと行動を共にしていたヒューリクもだ。
「……! あそこ、寝床の少し南にあるのは食べ残しではないですか?」
女神官が指摘する。
あなたもまた、そこへ目を向けた。
確かにそこには、半ば以上を食われているが獣の死骸のようなものがある。
さらには何やら棒状のものがいくつか転がってもいる。
肉の薄い脚の部分だろうか。
……だが、それ以上の細かいところは見て取れない。
遠眼鏡を使ってなお小さなそれは、馬のものにも見えるし牛のものにも見える。
確かな事と言えば、少なくともアイアンシザーの死骸ではなさそうだ、という程度だ。
より詳しく知りたいならば、近くまで足を運ぶしかないだろう。
ともあれ、やはり肉食なのは間違いなさそうだ。
水牛達は強大すぎる捕食者に追われ逃げ出したに違いない。
どこへ、とまではわからないが。
ただ、クエレブレは東側の岸辺に寝床を構えている。
素直に考えれば西へ逃げたというのが自然ではなかろうか。
と、その時だ。
木の下、地上に緊張が走ったのをあなたは感知する。
……茂みが揺れている。
何者かがこの場に近付いてきているようだ。
戦士が前に出てハルバードを構え、魔術師は後方に下がり杖を掲げる。
例えそこからグリズリーが飛び出そうが十分な迎撃が出来るようにと。
肌を刺すようなチリチリとした空気の中。
やがてそれは姿を現した。
「…………アナグマ?」
ハルバードに籠められていた力が霧散する。
戦士の口から漏れたのは気の抜けた一言だけ。
大きさは一般的な猫ほど。
黒い体に背中だけ白の毛皮が印象的。
瞳はつぶらで、ずんぐりとした体格と合わせてなんとなく愛嬌を感じさせた。
そのアナグマらしき生き物はあなた達を恐れた様子もなく、トコトコと歩み寄ってくる。
鼻をヒクヒクと動かしている辺り、興味を抱いているのだろうか。
| 判定内容 | ???? |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB(戦士) 9以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+2=7(失敗) |
だが、流石に愛らしいからと撫でにいくような戦士でもなかった。
今は警戒の真っ最中だ。
小動物を可愛がって遊ぶような時ではない。
「ほら、あっちいきな。シッシッ」
初手は足で泥を飛ばし。
それでも去らないために鼻先近くでハルバードの刃先を振るう。
しかし。
「キュ」
「……なんだこの子?」
「随分と豪胆というか、いや、呑気なのかね?」
謎の白黒アナグマは短い鳴き声を上げるだけで、まるで立ち去ろうとしない。
それどころかハルバードの間合いを踏み越えて戦士にさらに近付く。
これには戦士や魔術師も困惑した。
どう考えても野生の小動物の振る舞いではない。
自分よりも遥かに大きな獣に対し、自分からこうも容易く接近するなどまともとは思えないが──
| 判定内容 | ???? |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB(あなた) 9以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+4=9(成功) |
──その瞬間。
あなたは咄嗟に叫んだ。
つまりは、
| 判定内容 | ????????の攻撃 |
| 判定方法 | 2D6+器用SB(命中力) 技能補正命中+7 2D6+筋力SB(攻撃力) |
| 判定結果 | 2D6+12=19(命中力) 2D6+2=8(攻撃力) |
「っ!?」
その声に戦士は即座に反応した。
あなたの指示にあれこれと考えるよりも速く、ハルバードを体近くに引き戻しながら後方に飛ぶ。
しかし遅い。
否、敵が余りにも疾い。
あなたが叫んだ段階でおそらくはもう手遅れだった。
アナグマはそれまでの愛らしさを脱ぎ捨て、狂気を滲ませる凶相で戦士の体を駆け上がる。
| 判定内容 | 戦士の防御 |
| 判定方法 | 2D6+耐久SB(戦士) 技能補正+1 命中力以上で成功 |
| 判定結果 | 2D6+6=14(失敗) |
| 判定内容 | ダメージ計算 |
| 攻撃力 | 8 |
| 補正 | +4/技能 |
| 最終ダメージ | 12 |
| 戦士HP |
| 59-12=47 |
鮮血が舞う。
「こいつ……ッ!」
それは首筋から、ではなかった。
正確に急所を狙う牙が突き立ったのは、咄嗟に差し込まれた腕だ。
だが、防御に成功したとは言いがたい。
アナグマは戦士の首に固執しなかった。
奇襲が完璧な形では通らなかったと見るや、戦士の体を蹴って飛び退り、湿った草の上に着地する。
その口。
草食や雑食にはありえない、純肉食の獣に特有の鋭利な牙には、たった今ごっそりと抉り取ったばかりの腕の肉が防具の一部と共にぶら下がっていた。
| 技能判明/ |
| 『致命の一撃』 常に命中力+3 戦闘の最初の一撃のみ、さらに命中力+4 攻撃が直撃した時、攻撃力+50% |
| 固定エンカウント/危険度9相当(数) |
| 1D2=1 |
風が吹き抜ける。
不自然な大気の動きだった。
高台とはいえ今の天候、無風の空の下に吹くような風ではない。
「──えぇい見た目に騙された! 数は1匹! 他にひっかかるのはなかったよ!」
そういった場合、まず疑うべきは魔術だ。
どうやら魔術師が風を起こし、それをもって周囲の索敵を行ったらしい。
結果、付近に獣はなし。
唯一存在するのは、口元を戦士の血で染めた眼前のアナグマだけだ。
| 戦闘開始/1ターン目 |
| 前衛防御失敗/乱戦発生 |
| 判定内容 | 行動順の決定 |
| 判定方法 | 2D6+敏捷SB 比べ合い/数値が大きい順に行動 |
| 判定結果 | 2D6+3=12(戦士) 2D6+1=6(魔術師) 2D6+6=13(ボーパルバジャー)
①ボーパルバジャー ②戦士 ③魔術師 |
「シャアアァァ!!」
アナグマは鋭く威嚇を発すると地面を駆け回り始めた。
その動きはやはり速い。
単純に速度がある上に、小柄な体躯が厄介さに拍車をかけていた。
それは戦士をして易々とは捉えられないほど。
白黒の残像を残して翻弄するように。
| 判定内容 | ボーパルバジャーの攻撃 |
| 判定方法 | 2D6+器用SB(命中力) 技能補正命中+3 2D6+筋力SB(攻撃力) |
| 判定結果 | 2D6+8=11(命中力) 2D6+2=9(攻撃力) |
| 判定内容 | 戦士の防御 |
| 判定方法 | 2D6+耐久SB(戦士) 技能補正+1 命中力以上で成功 |
| 判定結果 | 2D6+6=8(失敗) |
| 判定内容 | ダメージ計算 |
| 攻撃力 | 9 |
| 補正 | +4/技能 |
| 最終ダメージ | 13 |
| 戦士HP |
| 47-13=34 |
「がっ──! この、ちょこまかとッ!」
さらに血が舞う。
続く一撃は戦士の足元から。
厚く丈夫な革の服を突き抜けた牙は膝裏を鋭く抉った。
それであなた達は理解しただろう。
この小さな獣、一見愛らしいアナグマは完全なる殺し屋だ。
狩りというものを熟知している。
膝裏の腱を断ち動きから素早さを奪ってしまえば、例え自分より大きな獣であろうといかようにも殺せるとわかっているのだと。
「シィィィィ……グゥ、ヴゥゥッ」
一撃離脱。
膝裏に噛み付いた戦士の手が白黒の毛皮を掴む前にまたも飛び退いたアナグマが、独特の鳴き声を漏らす。
牙を剥き出しにしたそれは威嚇だろう。
さぁ、お前達の中の1匹は手負いにしたぞ。
もういつでも殺せる。
この肉を見捨てて逃げると良い。
鳴き声を人の言語に訳したならば、きっとそのようなものになるだろう。
「……あぁ、くそ。舐めさせたか。ぬるい事やっちゃったなぁ」
だが、あなた達には通じない。
野の獣ならば散り散りになっただろうそれは、冒険者の一党を崩壊させるような威は持っていなかった。
むしろ連携をより強く固めさせ、動揺を消し去る時間を与えたに過ぎない。
「援護は必要ですか!?」
「いらない。捕まえ方はもう思いついた。降りてこないでいい、そっちは亜竜見てて!」
アナグマの勝機は、おそらくここで潰えた。
抉り取った分の肉で満足して逃げ去るか。
あるいは威嚇などせず、息つく間も無く怒涛の攻勢を仕掛け続けるか。
どちらかにすべきだっただろう。
| 判定内容 | 戦士の攻撃 |
| 判定方法 | 2D6+器用SB(命中力) 装備&技能補正命中+4 2D12+筋力SB(攻撃力) |
| 判定結果 | 2D6+8=14(命中力) 2D12+7=24(攻撃力) |
「泥ちょうだい!」
「はいよ。こんなものでどうだい」
戦士の要請に魔術師が応える。
手の中でクルリと回った長杖の先端が地面を叩いた。
途端、その接触点を中心に水が湧く。
大量にではない。
魔術の行使というものには集中が必要だ。
要する深さは魔術の規模と比例し、瞬時に呼び起こせる水の量などたかが知れている。
が、今回はそれで十分だ。
湿原のただ中にあるこの高台も、他の区域と同様に元々がぬかるんでいる。
そんな所に水など追加すればどうなるか。
「グゥッ!?」
必然、辺りは泥濘に沈む事となる。
アナグマは突如様相を変えた地面に足を取られる。
それだけではない。
「──うるぁっ!」
ハルバードの先端が泥を掬い飛ばした。
勢いよく放たれたそれは、横に大きく広がった幕か、あるいは壁のようにアナグマに迫る。
人間に対してならばさほど効果はなかっただろう。
しかしアナグマは小さく軽い。
直撃した泥の塊は、その体を硬直させるに十分だった。
当然、その隙に何もしない戦士ではない。
腱の切られた脚を無理矢理に動かしての踏み込みから、斧槍の一閃は余りにも鋭く振るわれた。
| 判定内容 | ボーパルバジャーの回避 |
| 判定方法 | 2D6+敏捷SB 命中力以上で成功 |
| 判定結果 | 2D6+5=9(失敗) |
| 判定内容 | ダメージ計算 |
| 攻撃力 | 24 |
| 補正 | -3/技能 +3/技能無効化 |
| 最終ダメージ | 24 |
| 技能判明/ボーパルバジャー |
| 『柔硬な背皮』 クリティカルヒット以外の物理ダメージを常に-3 |
「ギャウッ──!」
苦鳴と共にアナグマが宙に浮く。
その腹は大きく裂けていた。
重要な臓器がこぼれ、折れてはならない骨が砕けている完全な致命傷。
「──っふぅ」
追撃は、当然いらない。
残心の後、戦士はひとつ息を吐く。
その時にはもう、吹き飛んで木に衝突したアナグマの体は、裂け目からふたつに分かたれて生命を失っていた。
| 戦闘終了 |
「はー……やらかしたぁ」
「やらかしたねぇ。君も私も」
戦闘はあなた達の勝利に終わった。
が、戦士の負った傷は浅くない。
その上、それは相手の愛らしい見た目に油断して受けたもので、もしあなたの警告がなければさらに大きな被害を受けていた可能性は高い。
勝利の喜びなどあるわけもなく、地上の2人は頭を抱えるばかりだ。
魔術師など自身の失態に恥辱を覚えているのか、耳や首元まで赤くしている。
「私が手当てに行きます。先輩はこちらで」
そんな2人の元へ、女神官が向かった。
スルスルと木を降りて近付いていく。
治癒の秘蹟の使い手はこの場に2人いるが、より効果の高い治療が行えるのはあなただ。
ならばあなたの精神力は緊急時のために温存すべきである。
今は任せるのが良いだろう。
| 女神官の『治癒』 |
| 行使成功 MP19-5=14 回復量/1D6+6=10 |
| 戦士HP |
| 34+10=44 |
| 女神官の『治癒』 |
| 行使成功 MP14-5=9 回復量/1D6+6=12 |
| 戦士HP |
| 44+12=56 |
継続的な秘蹟の光により、戦士の傷は少しずつ癒えていく。
並行して、あなた達は確認しあった。
どうやらこの高台には小動物や鳥しかいない。
それは足跡などの痕跡からおそらく確かだ。
だが、ならば安全かというとそうではないらしい。
この異郷の地においては、小動物だから害はない、などというぬるい常識は通用しないようである。
「……まさか魔種でもないただの獣が、この体格差で襲い掛かってくるとはね。その上しっかりと格上を殺し得る剣も携えているときた。この湿原の過酷さが窺い知れるようだよ、まったく」
それも、下手をすればそこらの大型肉食獣よりもよほど脅威かもしれない。
小型故の動きの速さと気配の小ささは、さながら自然の暗殺者だ。
この高台もまた、アイアンシザーの支配する森同様の危険区域と考えるべきだろう。
「場所を変えますか?」
「んー、でも他に良いとこないっしょ。大丈夫、次は油断しないからさ」
「そう、ですね……聖火が使えれば良かったのですが」
対策となり得る聖火も、今は使えない。
何しろ、それは原野の中に唐突に『人の領域』を生じさせる秘蹟だ。
一定以上の知能を持つ相手や、あなた達を付け狙う者に対しては逆に違和感により存在を気付かせてしまうだろう。
しっかりと隠れていれば問題はなかろうが、ここは木々もまばらな見通しの良い高台の頂上であり、そして亜竜を観察できる場所はつまり、亜竜からも視線が通る場所だ。
危険な獣を遠ざけるための聖火が、逆に最も凄惨な死を呼び込みかねない。
本末転倒も良いところである。
出来ることはひとつだ。
襲撃があれば都度対処しつつ、踏みとどまって亜竜の観察を続けるしかない。
| 判定内容 | 対象の観察 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 襲撃(小)補正-1 8以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+3=8(成功) |
さて、そんなトラブルの中でもあなたは亜竜から目を逸らさなかった。
広い湿原の中央、川辺から亜竜が飛び立つ瞬間も確かに捉えている。
大きく強靭な翼を広げたクエレブレは、高く飛んで湿原の空を周り始めた。
当然、あなたは地上に警告を送る。
3人は即座に従い、各々茂みに潜んだ。
あなたもまた、枝から乗り出していた身を引いて枝葉で体を隠す。
そして──それを見た。
「──到底文字に起こせない悍ましい咆哮!!!!」
まず発されたのは、到底文字になど起こせないおぞましい咆哮だった。
湿原の全域に響き渡ったそれは、瞬時にあらゆる獣に恐慌を引き起こした。
湿原には幾つかの地形が存在する。
あなた達の今いる高台。
点在する森と沼、それらの間を埋める草地。
そして中央を貫く川。
その全てから、極度の混乱状態に陥った獣達が飛び出して逃げ回る。
先日のヒューリクが起こした洪水の時とは、全く規模が違う。
恐怖に支配された湿原の住民は少しでもマシな逃げ場を求めて相争い、各地がたちまちのうちに流血に染まっていく。
例外となるのは沼だけだ。
そちらに逃げた者は狂乱のままに沼の腐汁に飛び込み、抜ける事も叶わず底無しの泥濘に沈んでいく。
クエレブレは、遥か高みからそれを見下ろして嗤っていた。
あなたが覗いた遠眼鏡の中、裂けるほどに大きく吊り上がった口元には、明確にドス黒い悪意が滲んでいる。
そのまま、しばし。
やがて湿原の混乱がわずかに落ち着いた頃、クエレブレは降下した。
西の森へと降りていき、何かを掴んでまた飛び上がる。
大きな爪に隠されて詳細はわからないが、大型の獣だ。
方向と、微かに四肢が見えるあたりから推測すれば、水牛かもしれない。
そうして寝床に戻ったクエレブレは、それを貪り始めた。
実に効率が良い。
自身の持つ威を生かした、全く労のない狩猟と言える。
飛び上がって、ただ吠える。
それだけで腹を満たすに足る死体が、下々の争いによって勝手に生産されるわけだ。
新たにわかった事をあなたは整理する。
まず、クエレブレに仕掛けを施した肉を食わせるのは難しくなさそうだ。
発見の容易な場所に新鮮な死体を転がしておけば、おそらくそれで済む。
次に、飛ぶ範囲はそう広くなかった。
肉に満足したのか、クエレブレは寝床に身を横たえ、宝石を愛でるように首を擦り付けている。
明らかに愛着を見せており、どうやら長くは離れたくないようだ。
湿原の中央を避ければそうそう遭遇する目には合わないだろう。
比較的──あくまでも比較的に──安全に湿原内を移動する手立てを得た事になる。
残る点は、悪い部分だ。
このクエレブレは明らかに頭が良い。
自身の強さと他者の弱さを良く良く理解し、有効に扱う術を心得ている。
しかも、その格差を楽しむ性根の醜悪さ持ち合わせている。
その様はまさに、御伽話に現れる悪竜そのものだ。
| 特殊条件判明 |
| 湿原の 悪辣な クエレブレ |
| 残虐性が著しく上昇 知能が上昇 行動指針が『他者の苦しみが最大化する行動』に固定される |
「…………」
「…………これ、もう帰った方が良くない?」
「すぐに支援が届くなら、そうすべきと思いますが……」
魔術師が沈黙し、戦士と女神官が消極的な相談をかわす。
残念ながら、そうした場合は湿原はどうしようもなく荒れ果てるだろう。
得られたはずの資源は多くが失われる事は疑いない。
向上した薬品類の質は再び下がり、他の区域の調査にも遅延が生じるはずだ。
国への救援要請ならば村長がすでに出しているが、軍などの大戦力を動かすには時間がかかるために、その前に何とか出来るならとあなた達が派遣されているのだ。
ここで戻ったところで、何も出来る事はない。
時は過ぎる。
昼を越え、やがて夕刻へ。
湿原は落ち着いていた。
……正確には、埒外の恐怖によって縮こまっていた。
何もかもが沈黙する中、クエレブレのみが悠々と生を謳歌する。
| 判定内容 | ランダムエンカウント |
| 判定方法 | 2D6+幸運SB 状況補正+2 9以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+5=13(成功) |
| 判定内容 | 対象の観察 |
| 判定方法 | 2D6+感覚SB 8以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+4=16(成功) クリティカル |
食事の後、優雅な昼寝を挟み。
今度は軽い運動と洒落込むようだ。
狙いに定めたのは近くの森である。
先程とは違い低空を飛んだクエレブレは、空から森へと何度もブレスを放つ。
そうして十分に毒を撒き散らしてから、木々を薙ぎ倒して着陸した。
「────楽しそうな咆哮」
響くのは獣達の悲鳴と、実に愉快そうなクエレブレの咆哮だ。
何が行われているかはあなた達はすでに目にしているはずである。
アイアンシザーの解体は、どうやらこの亜竜の楽しみであるらしい。
もしかすれば、鋼色の強固な甲殻はちょうどいい玩具なのかもしれない。
再び飛び上がったクエレブレはやはり上機嫌なようだ。
近場をぐるりと回り、また寝床へと戻る。
その途中、
飛び回る中、クエレブレは幾つかの森を上空から覗き込んでいた。
おそらくは品定めか。
次に襲撃する森はどれにしようかと、菓子を選ぶ子供のようにウキウキと見比べていたのだろう。
これは有力な情報である。
近いうちにクエレブレが訪れるだろう土地が高い確度で把握できた。
森に仕掛けを施すなら、その効果はより大きくなるはずだ。
その後は、クエレブレはただ眠るのみだった。
寝床に丸くなり静かに寝息を立てている。
できる事なら永遠にそうしていて欲しいと、湿原のあらゆる獣が心から願ったに違いない。
これで、亜竜のおおよその行動は把握できた。
湿原に見切りをつけさせるための嫌がらせの手法は、考えられる限り以下の通りだろう。
対象はどうやら水浴びを欠かさぬ綺麗好きだ。
川を汚染すれば精神的に打撃を与えられるだろう。
そのためには上流の沼と川を繋げれば良い。
腕力と体力が要求されるだろうが、時を費やして準備しておけば決行は叶うはずだ。
| 判定内容 | ひらめき |
| 判定方法 | 2D6+精神SB 8以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+6=14(成功) |
また、そう出来た場合、新たな水浴びの場を求めるだろう。
候補となり得るのは森の中だ。
水没したそこは川ほどの深さではないが水が溜まっている。
そうして訪れた時にそちらも汚染されていれば辟易の度合いはさらに増すはずだ。
次に、汚物を仕込んだ肉。
クエレブレは自分で獲物を襲うのではなく、混乱で死んだ獣を持ち帰っていた。
そこに複数頭を紛れ込ませたなら、成功の目は高い。
どの種を好むかは寝床近くを探ってみなければわからないが、わからないならわからないで数を用意すれば良い。
他には遊びを邪魔する手もあるのではないだろうか。
近場の森のアイアンシザーはどうやらクエレブレの玩具だ。
これを先んじて狩る、あるいは追い立てて移動させておけば、楽しみを奪う事になる。
そして、夜の眠りはどうやら深く長そうだ。
余りの強大さ故に寝込みを襲う外敵など存在しないのだろうから当然ではある。
眠りを妨げられた経験はほとんどあるまい。
夜に叩き起こされる事態が何日も続けば大きなストレスになるに違いない。
このための手立てとして、あなた達はすでにバリスタを所有している。
が、万一の事態に備えてクエレブレに撃ち込むために矢を温存しておきたいなら、大きな音を発する道具を用意しておくと良い。
そうして、最後に。
あなたは魔術師を見た。
「…………」
魔術師は重苦しい表情で女神官を見ていた。
もしあなたが女であるのなら、その視線はあなたにもチラリと向いただろう。
湿原に到着しての最初の議論の折、クエレブレについて知る魔術師は何かを隠したようだった。
その内容は、あなたには想像がつく。
クエレブレという亜竜に対して、特に効果が期待される足止めの方法だ。
亜竜とは、すなわち竜のごときものを指す。
竜とは、例外なく神である。
創世の四神しかり、フェノゼリーの太祖しかりだ。
そして、亜竜は往々にして何らかの神の大きな寵愛を受けているか、あるいは血の一端を継いでいる。
クエレブレは後者だ。
祖の名は、閉じた水底のラーニィス。
このラーニィスにはひとつの逸話がある。
水神ニムストゥルに恋慕して幾度となく愛を囁き、しかしまるで相手にされる事なく顔を打ち払われ海を追われた、というものだ。
そのためにラーニィスは地底湖に潜り、悠久の時を悲しみに暮れて過ごしているという。
だからだろうか。
クエレブレという亜竜は、水神の加護を受けた乙女に目がない。
最も有名なのはとある地方に現れたクエレブレと、ニムストゥルに仕えた金髪の巫女との物語だろう。
種を超えた恋は様々な試練を乗り換えて成就し、1人と1頭は仲睦まじく生涯を寄り添ったそうだ。
その愛の名残の地には、今も巫女の小さな墓と、それを護るように横たわるクエレブレの遺骸が残っているとされる。
……だが、もちろん湿原のクエレブレにそのような愛は期待できまい。
かの亜竜の性根を鑑みれば、伴侶としてではなく、生贄として扱われる事は想像に易い。
丁寧に丁寧に、その身の全てを味わい尽くすような陵辱と暴虐を経て精神と生命を破壊される事はまず間違いない。
だが、その代償として足止めは叶う。
生贄が生きている間、クエレブレは他の楽しみを全て放り出して生贄を弄ぶはずだ。
捧げる際に、各種の宝石や金で身を飾ればなお効果は高いだろう。
そうして時を稼げば、生贄の無惨な死より前に軍の到着が間に合うかもしれない。
湿原の被害は最小限のまま、依頼は一応の成功扱いとなるだろう。
もちろん、それをあなた達が良しとするかは別として。
魔術師は、そのまま沈黙を続けた。
湿原のクエレブレが温厚な個体であるのならば、手段のひとつとして彼女も提案したかもしれない。
だが、現状では誰かに贄になれなどと口にする気は毛頭ないようだ。
| 判定内容 | 幸運な出来事/天候 |
| 判定方法 | 2D6+幸運SB 7以上で成功/普通 |
| 判定結果 | 2D6+3=12(成功) |
| 地形効果発生判定 |
| 1=熱病判定 2=寄生判定 3-6=判定なし (ボーナスにより発生率低下)
1D6=6(判定なし) |
| 判定内容 | 幸運な出来事/?? |
| 判定方法 | 2D6+幸運SB 10以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+3=8(失敗) |
暗い空から雨が降り始める。
ただ、残念ながら普通の雨だ。
これが3日間降り続いたところで、クエレブレの寝床を押し流すような洪水は起こるまい。
余程の幸運にでも恵まれない限り、望みは薄そうだ。
| 判定内容 | ひらめき |
| 判定方法 | 2D6+精神SB 9以上で成功/やや難 |
| 判定結果 | 2D6+6=17(成功) |
ただ、その雨を見てあなたはふと閃いた。
湿原において、洪水と結びつく記憶はヒューリクの魔術である。
もしあれを利用出来たなら、多少の雨だろうと大きな洪水を作る事もできるのではないだろうか。
例えば上流にて一度堰き止め、大量の水を溜めるなどしてだ。
もっとも、簡単な交渉とは到底いくまい。
湿原の現状を考えれば、ヒューリクの警戒心は最大限に高まっているはずだ。
そもそも意思の疎通がはかれるかさえ怪しい。
野の獣に作戦の指示を理解する能力があるとは考えにくい。
現状の情報では、荒唐無稽と評する他ないだろう。
| 野営回復 |
| 3D6=8(HP) 3D6=11(MP) |
| 戦士HP 56+8=59(最大値) |
| 女神官MP 9+11=19(最大値) |
暗闇の高台にて、あなた達は野営を行いながら相談をかわす。
残る猶予は2日。
さて、次は何をすべきだろうか。
| 名前 | (あなたが自由に決めて良い) |
| 職業 | 神官 |
| HP | 41/41 |
| MP | 25/25 |
| 筋力 | 9 | SB=3 |
| 耐久 | 15 | SB=5 |
| 敏捷 | 10 | SB=3 |
| 器用 | 9 | SB=3 |
| 感覚 | 13 | SB=4 |
| 知識 | 15 | SB=5 |
| 精神 | 19 | SB=6 |
| 幸運 | 10 | SB=3 |
| 装備 | 性能 |
| メイス+1 | 『2D6+筋力SB』の物理ダメージ 命中力+1 |
| バックラー+1 | 防御成功時、 物理ダメージを『耐久SB』軽減 防御成功率+1 |
| 特殊技能 | 詳細 |
| 重撃 | 攻撃命中時、『朦朧』判定 クリティカル時、『朦朧』確定付与 |
| 信仰+ | 秘蹟の使用権を得る 信用、説得、言いくるめに補正+2 1Tに1度、初歩の秘蹟の行動権消費を無効 初歩の秘蹟を強化 |
| 治癒 | 初歩の秘蹟、消費MP5 肉体をあるべき姿に戻す 『2D6+精神SB』のHP回復 |
| 守護 | 初歩の秘蹟、消費MP2 肉体があるべき姿を保つ力を強める 『精神SB』だけ全ダメージを軽減 効果時間は1戦闘 戦闘準備フェイズで行動権消費なし |
| 賦活 | 初級の秘蹟、消費MP5 肉体と魂をあるべき姿に引き戻す 状態異常を回復 |
| 聖域 | 初級の秘蹟、消費MP6 小規模な聖火の結界を顕現させる 休息中のみ以下の効果 通常エンカウント停止 環境ダメージと休息妨害を無効化 一部状態異常を即時回復 回復判定ダイス数+1 |
| アイテム | 詳細 |
| チェインメイル | 1度だけ死亡を回避 |
| ハイポーションx5 | 3D4のHP回復 |
| ネクタルx3 | 2D4のMP回復 |
| 解毒剤x4 | 猛毒のダメージを2回無効化 |
| 解熱剤x4 | 熱病の進行を抑える |
| 試製炸裂バリスタ | 1D50の必中物理ダメージ 残弾3/1戦闘1回のみ |
【選択肢】
川と沼を繋げる準備をする
大型の獣を探して肉を狩る
森のアイアンシザーを先んじて狩り尽くす
騒音を発するアイテムを作成する
宝石や金を集める
クエレブレの寝床を探索する
ヒューリクを探して交渉を試みる
【外部投票所】