読者参加型TRPG風小説   作:矢端トラム

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依頼選択フェイズ

 

これは『必ず』と言って良い話であるが。

開拓村と名のつく集落には、まず間違いなく教会が存在する。

もちろん、あなたが滞在している開拓村にもだ。

 

むしろ、教会がなければ開拓村は立ち行かない。

ここは人間の領域から外れた、獣と魔種が跋扈する土地だ。

木の柵を張り巡らせた程度でそれらのもたらす害を防ぎ切れるわけもなく、住人には怪我人が相次ぎ、作物は良いように荒らされるに決まっている。

 

そこで教会の出番だ。

 

 

 

あなたは訪問した開拓村の教会の中で、天を仰いだ。

自然、目に入るのは天井だが、そこにはあなたが住まう大地『リ・ブレシア』と、それを見守る神々の似姿が描かれている。

 

東方の山中に横たわり、ふもとに突き立てた指の先から麦と果樹を生み出している地の女神、イィル=マガ。

南方の天に座し、雲の上から翼の生えた羊たちを放り投げている風の男神、リオルルフ。

北方の海に浴し、魚と共に歌い舞う水の女神、ニムストゥル。

西方の砦に君臨し、纏った炎で人外の領域を覆う闇を晴らさんとする火の男神、ヴァロウ。

 

千年前にこの大地を作ったとされる四柱の創世の神々だ。

そして神々と共に描かれているのは、それぞれの神が人間に与えたもの。

麦、果実、羊、魚、そして炎。

これらは、神々によって『人のためにある』と定められている。

 

どういうことかを魚を例にとって説明すると。

あなたが川に踏み入り、そっと掌を皿の形にして水中に浸したとする。

すると数秒のうちに、近くを泳いでいた川魚が()()()()()()()()()()だろう。

 

もちろん、食われてあなたの腹を満たすためにだ。

この世界はそのように作られている。

 

 

 

開拓村における教会の必要性に話を戻そう。

 

魚と同様、火神から与えられた炎もまた人間のためにある。

火神は言った。

灯を掲げ、地を拓けと。

ならば当然、火には人に従い地を拓くための力が備わっている。

 

具体的には、教会の中心にて聖火を絶えず灯し続けることで、人間と人間に従う獣以外を排除する領域が形成できるのだ。

 

あなたは天井から視線を戻し、教会の中心を見た。

当然そこには聖火が灯っている。

通常の赤い炎とは異なる青白いそれは静かに揺れ、時折舌を伸ばすように、あるいは蛇のように長く身をくねらせては台座に戻るのを繰り返している。

 

聖火の威光が十全に及ぶのは村を囲う柵の内側。

ここに人間以外、例えば魔種が立ち入るには、それこそ()()()()()の強力な後押しでもなければ不可能だろう。

が、その外では若干弱く、畑が広がるあたりの区域には忌避感を誘発する程度の効果ではある。

 

それでもあるとないでは大違いだ。

先日のレッドキャップの出現で人的被害が出なかった事も、聖火の結界があったがためだろう。

 

 

 

開拓村には、必ず教会が存在する。

というよりもむしろ、教会によって安全が確保された土地に開拓村が作られるのだ。

 

 

 

さて、それはともかく。

あなたが今教会を訪れたのは、何も火神に感謝の祈りを捧げるためではない。

奉仕活動のためだ。

 

あなたは聖典に従い、己の生活を律している。

すでに語ったのは日々の食事についてだが、当然ながらそれだけというわけもない。

神が定めた『人として正しい在り方』は他に幾つもの戒律が存在する。

 

そのひとつにはこういうものがある。

 

"お前が培った知と技を、子らにもまた同じだけ与えよ。

 お前の後ろに続く者のためならば、お前は惜しみなく手放さなくてはならない。"

 

あなたはこれを実践するために来たのだった。

 

 

 

メェー、メェ、と教会の裏手に鳴き声が響く。

無論、羊だ。

 

依頼で稼いだ金を使い、あなたが買い付けた個体である。

村の羊飼いに売り渡すために行商に連れられてきた羊たちのうち、2頭分の代金を肩代わりするかわりに今日一日借り受けたのだ。

用途は、教材として。

 

後進を教え導く事が人の義務と聖典が定めている都合、古くから教会は学び舎としての側面を強く持っている。

特に、人のために与えられたものの扱いについてはどこの教会であっても定期的に学習会が開かれるものだ。

 

 

 

「おっ、いいウンチだ。へへ、知ってるか? こういうウンチするヤツはいい乳出すんだぜ」

 

得意そうな、訳知り(ドヤ)顔の少年が言う。

村の羊を管理する一家の三男坊だ。

俺は詳しいんだぞとばかりに胸を張って鼻息を荒くしている。

 

それに、おぉそうなんだと無邪気に反応する者。

なんだ偉そうにと唇を尖らせる者。

そも初めから聞いておらず、のんきに羊の顔を覗き込む者。

様々な子供たちが10人少々勢揃いしていた。

 

子供達の視線を、あなたはパンパンと手を叩いて集めた。

そして今日やる事を説明する。

 

神から人のために与えられたもの、といってもだ。

獣である羊にも感情というものがある。

ある程度は身を捧げてくれるとはいえど、雑に扱ってしまえば彼らも献身を放り出してしまう事も少なくない。

羊が気持ちよく人間に従い、毛や乳の質を上げるための適切な世話の仕方を学ぶ事は信徒の義務だ。

 

今日のあなたはそんな学習会の教師役だ。

羊の移動の誘導法、与える餌の量の計算法、健康管理のやり方。

そういった辺りを教え込んだ後、最後には毛刈りで締める予定である。

 

 

 

「はい! はい! 神官様! 俺やる! やるぅ!」

 

では最初に誘導をやってみたい子は、とあなたが口にしたところで、先ほどの少年が熱烈に立候補した。

あなたの指名を待つまでもなく羊に駆け寄り、他の子らを振り向くと。

 

「お前らよーく見とけよ、俺が手本見せてやっから!」

 

と、歯を見せてニッカリ笑う。

その視線が特に強く向かう先にはひとりの女の子がいた。

少年が羊の便に言及した際に、無邪気に感心していた少女である。

彼女は今回もまた、頑張ってー、などと素直に応援している。

どうやら少年は彼女に、自分の得意分野で良い所を見せたいらしい。

 

 

 

微笑ましい事だと思ったか、それとも面倒そうな子だと思ったか。

それはあなた次第である。

聖典の戒律に心の内を縛る文言がない以上、そこは自由だ。

 

内心はどうあれあなたは子供達をしっかりと教え導き、諍いやトラブルがあれば優しく諭した事だろう。

それが出来ない者が、秘蹟の行使が許されるほどに信仰を認められるわけもない。

あなたが子供達の前に立った以上は学習会の成功は必定であり、これ以上語るべきことはない。

 

ともかく、あなたは確かに『財や手間を惜しまず後進を育てる』義務を果たした。

功徳がまたひとつ積まれた事となる。

当然の帰結として、遠からずあなたは新たな秘蹟の光を宿すだろう。

 

 

 

秘蹟習得
『賦活』

初級の秘蹟、消費MP5。

肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。

状態異常を回復。

 

 

 

 

 

それからまた、数日がたった。

 

今、あなたは宿のカウンターに座っている。

時刻は早朝。

目の前にはすっかり食べ慣れた味の麦粥。

依頼前の栄養補給といったところだ。

 

「……んぁー、ダメだ決まんね」

 

「まーたそれかよ。私が最初に選ぶぅ、とか言っといてよぉ」

 

「んなこと言ったってさぁ! 全部気乗りしないんだってぇ!」

 

「いつもの事じゃねぇか、今更ガタガタ抜かすなや」

 

そんなあなたの隣でグダグダと会話しているのは、宿に所属する冒険者だった。

あなたの先達である。

 

依頼書の木札を眺めて「どれもやりたくない」と愚痴っているのは背の高い女だ。

長大なハルバードを得物とする戦士で、筋肉の鎧に覆われた浅黒い体に刻まれた数々の傷跡が歴戦のほどをうかがわせる。

優れた守りの技術をもつあなたをして、正面きっての戦闘ではまず勝ち目はないだろうと確信させるベテランだ。

 

玉に瑕なのは熱意の薄さだろうか。

あなたが開拓村を訪れてからまだ日は浅いが、仕事に出たくないと泣き言を漏らす姿はもう何度も見ている。

 

そんな女戦士に対し、干し肉(ジャーキー)を齧りながら「さっさと決めろ」と促しているのは野伏の男だ。

背が低く細身である。

得物は短剣とスリングだというが、おそらくそれだけではないだろう。

こういった類の冒険者は隠し球をふたつみっつ持っているのが相場というものだ。

女戦士とは対照的に、ただ殴り合うだけなら容易に圧倒できる相手だが、わずかでも目を逸らせば次の瞬間『詰み』にハメられかねない恐ろしさがあるとあなたは見ている。

 

村には彼らの他にもうひとり、魔術師もいるのだが今は不在だ。

パレルヴァに出向く用事があった村長の護衛として出払っている。

 

 

 

「あ゛ー……うん、ヨシ!」

 

それから少し女戦士は唸っていたが、やがて意を決したように声をあげた。

野伏がそれに「おっ」と反応して、じっとりしていた目を開ける。

 

「なんだようやく決まったか?」

 

「決まらん! へーい新入りちゃん。先に好きなの取ってよ。私あまりもんにするわー」

 

「おまえよぉ……」

 

が、それは選択を放棄しただけのようだ。

女戦士の決断は何も進まず、あなたの前に3枚の依頼書が丸投げされる。

 

野伏は心底呆れた様子で溜め息を吐いたが、どうやら異論はないらしい。

現在宿に持ち込まれている依頼のうち、最初に札を選ぶ権利はあなたに譲られたようだ。

 

 

 

判定内容依頼の目的地
判定方法1D10

1-2/街道

3-4/草原

5/川辺

6/森林

7/荒野

8/谷底

9/洞窟

0/山中

判定結果クエスト①/1D10=6(森林)

クエスト②/1D10=8(谷底)

クエスト③/1D10=3(草原)

 

判定内容依頼の特殊条件
判定方法1D10

1-2/??な

3-4/????の

5-6/?い

7-8/???い

9-0/???の

判定結果①1D10=6(?い)

②1D10=9(???の)

③1D10=1(??な)

 

判定内容依頼の主目標
判定方法1D10

1-2/採取

3/護衛

4/ゴブリン

5/狼

6/トロル

7/蝶

8/レーシィ

9/グリズリー

0/ネズミ

判定結果①1D10=5(狼)

②1D10=9(グリズリー)

③1D10=0(ネズミ)

 

 

 

1枚目の依頼書の内容はこうだ。

 

場所は村から多少歩く場所にある森林。

村で使う木材の切り出しや自生する薬草の採取など、開拓村にとって重要なそこで近頃、大型動物の糞が何度も見つかっているらしい。

動物に詳しい狩人の見立てでは、おそらく狼。

少なくとも5頭以上の群れとの話だ。

今のところ村人の前に姿を見せてはいないが、このまま縄張りが重なり続ければ襲われるのも時間の問題だろう。

可能ならば討伐、少なくとも人間の脅威を教え森から追い払う事が求められている。

 

 

 

続いて2枚目。

 

村には川が通っているが、これを遡れば谷となっている。

その谷でグリズリー、凶暴な熊が目撃されたようだ。

報告者の話では身の丈は人の倍ほどとの事で、成熟した個体と思われる。

発見時の状況としては、ノッカー、つまりは洞窟に好んで棲む魔種の死体を何体も積み上げてはらわたを貪っていたらしい。

ノッカーは外見的には人間に近い部分も多く、血の味を覚えたグリズリーが村近くまで足を伸ばさないとも限らない。

こちらもまた、撃退か討伐が必要だ。

 

 

 

最後に3枚目。

 

これは他ふたつとは少々毛色が異なっていた。

何しろ依頼の対象がネズミである。

町中に出るようなものと異なり、人の頭ほどのサイズがある大ネズミとはいえ、狼や熊とは危険度が段違いだ。

とはいえ、厄介さでは並ぶと言える。

何しろこの大ネズミの大規模な群れが草原に住みつき、結界による忌避感もものともせずに定期的に畑を荒らしているのだそうだ。

初めは村人や狩人が対処しようとしたものの、数の多さとすばしっこさに匙を投げて冒険者に話が回ってきたらしい。

なんでもいいから畑に寄ってこないようにしてほしい、との事だ。

 

 

 

「……絶妙にどれもかったるそうなんだよねぇ」

 

女戦士はウンザリとした声をもらしてカウンターに突っ伏した。

やや長めの髪がバサリと広がりスープの皿に入りかけたのを、野伏の男が無言で除けてやっている。

 

そんな光景を横目に、あなたは請けるべき依頼を選び取った。

 

 

 

名前(あなたが自由に決めて良い)
職業神官

 

HP36/36
MP17/17

 

筋力7SB=2
耐久13SB=4
敏捷9SB=3
器用6SB=2
感覚10SB=3
知識12SB=4
精神13SB=4
幸運8SB=2

 

装備性能
メイス『2D6+筋力SB』の物理ダメージ
バックラー防御成功時、

物理ダメージを『耐久SB』追加軽減

 

特殊技能詳細
信仰秘蹟の使用権を得る
治癒初歩の秘蹟、消費MP5。

肉体をあるべき姿に戻す。

『1D6+精神SB』のHP回復。

守護初歩の秘蹟、消費MP3。

肉体があるべき姿を保つ力を強める。

『精神SB』だけ全ダメージを軽減。

効果時間は1戦闘。

賦活初級の秘蹟、消費MP5。

肉体と魂をあるべき姿に引き戻す。

状態異常を回復。

請ける依頼は?

  • 森林の ?い 狼
  • 谷底の ???の グリズリー
  • 草原の ??な ネズミ
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