蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの裏方 作:アイリエッタ・ゼロス
教室でさやかと話していると、眠そうな眼をした花帆が入ってきた。
「二人ともおはよ~....」
「あ、花帆さん。おはようございます。今日はいつもより早いですね」
「花帆、今日から朝練してるんだって。乙宗先輩と一緒に。どうだったの?」
「何とか乗り切れたって感じ....全身筋肉痛だよ~....でも、頑張るって決めたから!
弱音を吐いても頑張るよ!」
「おっ、良い心意気じゃん」
「わたしも応援してます。何か出来ることがあったら何でも協力しますから」
「ありがとう二人とも! ならさっそくなんだけど、明日からあたしの代わりに朝練を....」
そう言って、花帆は私達に懇願するようにそう言った。
「無理です」
「花帆がやらないと意味がないんだから。私も無理」
だがその頼みを私達はすぐに拒否した。
「....だよねー」
~~~~
「放課後だ~!」
「花帆ちゃん達はこれからスクールアイドルクラブ?」
放課後になると、えながそう聞いてきた。
「そうだね。さやかは夕霧先輩探しに先に行ったし」
「なら途中まで一緒に行こ」
「うん! でもその前に購買部に寄らないと!」
「購買?」
「注文していたマンガがやっと届いたの! ずっと楽しみにしてたんだ!」
「あぁ、あれか。そういや新刊出るって前に言ってたね」
私はこの前話していた内容を思い出してそう言った。
「じゃあそれ取りに行ってから部室に....」
「さ、日野下さん。練習に行きましょ」
私がそう言って立ち上がろうとしたら、花帆の背後から乙宗先輩が現れた。
「こ、梢センパイ!? で、でもあたし! 購買寄らないといけなくて! 生活必需品が....!」
「マンガなら、購買部が取り置きしてくれるから大丈夫よ。それにそうね....ライブが
終わった後のご褒美にするのはどうかしら? ライブまでさらに頑張る理由ができたわね」
「そ、そんな餌をぶら下げられなくても頑張りますから! せ、せめて30分! いえ10分だけ
でも!」
「うふふ」
「うわーん! 助けて菫ちゃーん!」
「「「「....」」」」
「(連行された....)」
花帆の言葉も空しく、乙宗先輩は花帆の首根っこを掴み部室の方に歩いて行った。
「先輩、綺麗で優しそうな人だと思ったけど....」
「実はすっごく厳しかったりする....?」
「....あながち間違いではないかな。取り敢えず、私も追いかけるから。じゃあ、また明日」
私は三人にそう言って花帆の後を追いかけた。
~~~~
「ぜぇ、はぁ....ぜぇ、はぁ....」
「....大丈夫? タオルは一応用意して来たけど....」
「あ、ありがとう菫ちゃん....」
外での練習風景を撮影していた私は休憩に入った花帆にそう言ってタオルを渡した。
「乙宗先輩もどうぞ」
「ありがとう。あ、日野下さん。これ、滋養強壮のドリンクを作ってきたからよかったら
どうぞ」
「わぁ、ありがとうございます!」
そう言って花帆は一口飲んだのだが....
「これ、苦いですぅ....!」
花帆の表情は一瞬にして曇った。
「そんなに....? ....おぉ、確かに目が覚めるような味」
私は花帆から一口貰いそう呟いた。
「でも、とっても身体に良いものなのよ? ....どうしても口に合わなかったら残して
くれても大丈夫だけど」
「いえ....! これもライブの、みんなのため....!」
花帆はそう言うと一気にドリンクを飲み干した。
「ごちそうさまです....」
「よろしい。....ごめんなさい日野下さん。もう少し早く、どうしたいのかを聞くべき
だったわね。そうすればもうちょっと余裕をもって練習できたかもしれないわよね....」
花帆がドリンクを飲み干すと乙宗先輩は申し訳なさそうに花帆にそう言った。
「だ、だめですよ! 梢センパイにそんな風に優しくしてくれるとあたし、際限なく
甘えたくなっちゃいますから! ライブが終わるまで、あたしに対して厳しくしてください!」
「え....」
「あら、面白いことを言うのね」
そう言った乙宗先輩の目は、どこか楽しそうな目に変わった。
「(このバカ....何で自分から地獄に片足突っ込んだ....)」
私は花帆の発言に一人頭を押さえた。
「で、でも今より厳しくされるとへこたれちゃうので....い、いややっぱりもうちょっと
厳しくされても大丈夫なような....」
「そう? じゃあさらに厳しく....」
「ぴっ」
「なんてね。オーバーワークは怪我の原因よ。今だってかなりギリギリなんだから。
だからもうちょっと休憩していてね」
「ほっ....」
「良かったね花帆」
そう言って私は花帆の隣に座って撮った映像と写真の確認をした。
「あ、そういえば今回のイベント。蓮ノ空のスクールアイドルとして参加するのに、
出るのはあたしと梢センパイだけなんですよね?」
「....イベント?」
私は花帆の突然の言葉にそう聞いた。
「月村さんには言ってなかったわね。四日後に市で開かれるライブイベントに参加することに
したの」
「そうなんですか。....このイベントですか?」
私はスクコネを開きライブイベントを検索して画面を乙宗先輩に見せた。
「えぇ、このイベントよ」
「これ、さやかと夕霧先輩は出ないんですか?」
「綴理達はもう少し練習期間を設けるみたいなの」
「そうなんですね」
「でも、蓮ノ空のスクールアイドルクラブって不思議ですよね。クラブの中にユニットが
いっぱいあるのって」
「蓮ノ空には元々三組のユニットがあったの。だからそれに倣っているのよ」
花帆の言葉にそう返した乙宗先輩の発言に私は疑問に思った。
「三組ですか? でも今って、スリーズブーケとDOLLCHESTRAの二つしかなくないですか?
もう一つのユニットって....」
「確かに....部員も他にいないですよね?」
「....そう、ね。今はいないかしらね。時期によっては部員が足らなくて三組が揃わないことも
あったみたいだから」
「(乙宗先輩の表情、一瞬曇った....?)」
私はそう言った乙宗先輩の表情が一瞬悲しそうな表情になった事に気づいた。だがそれは
一瞬の事で、すぐにさっきまでの表情に戻っていた。
「(私の気のせい....? いやでも....)」
「....様々なものが伝統として受け継がれているの。今でも蓮ノ空というだけで応援して
くれる人が多いのはそのためなのよ」
そうして一人で考えているうちに、乙宗先輩の話は進んでいた。
「なるほど、愛されているんですね。....なら、あたし、とにかく頑張ります!」
「えぇ。それじゃあそろそろ再開しましょうか」
「はい! 行ってくるね菫ちゃん!」
「....うん、いってらっしゃい。片づけたらすぐに追いかけるよ」
そう言うと、花帆と乙宗先輩は走り込みを始めた。
「....少し気になるな」
そう呟きながら、私は周りのものを片付けて二人の後を追った。