蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの裏方   作:アイリエッタ・ゼロス

16 / 16
雨と、風と、太陽と/不思議な観客

「....ふぅ」

 部室に戻った私は衣装をハンガーに掛け、ハンガーラックに吊るしていた。

 

「(一先ず骨折とかじゃなくてよかった....)」

 私は乙宗先輩の怪我の事を思い出しながらそう考えていた。

 

「あとは花帆か....電話にもメールにも気づいてないし、どこにいるんだか....」

 私はそう呟きながら携帯の画面を見ていると部室の扉が開かれた。部室に入ってきたのは

 夕霧先輩だった。

 

「夕霧先輩」

「あ、すみだ。すみも帰って来ていたんだね」

「はい。と言っても本当にさっきですけど」

「そっか。色々と大変だったみたいだね」

「まぁ、そうですね....あ、でも乙宗先輩の怪我、そこまでひどくなかったです。数日

 安静にしていたら大丈夫だそうです」

「それならよかった」

 そう言うと、夕霧先輩は安心したような表情になった。

 

「....そういえば夕霧先輩、花帆どこかで見ませんでしたか?」

「かほ? かほならさっき会ったよ。こず探してたみたいだから、今は大倉庫にいると思うよ」

「大倉庫ですか....ありがとうございます、ちょっと行ってきますね」

「うん、いってらっしゃい」

 夕霧先輩はそう言いながら私に手を振っていた。

 

 ~~~~

 

「(いるとしたら、スクールアイドルクラブの所かな)」

 大倉庫に着いた私はそう考えながら、この前アルバムを見ていた場所に向かった。そして

 スクールアイドルクラブの資料置き場の近くに着くと話し声が聞こえてきた。私は棚の裏から

 声の方を見てみると、そこにいたのは花帆と乙宗先輩だった。

 

「(何か話してるな....)」

 私は二人に気づかれないように移動して二人の声が聞こえるぐらいの場所から二人の

 話を聞いた。

 

「日野下さん、あなたがしたのはよくないことよ。あなたが怪我をしたら、私が悲しいわ。

 次からは、もうしないで」

「....はい」

「(怒られとる....)」

「それじゃあ、次は私の番。私も、あたなに叱ってもらわなくっちゃ」

「え?」

 乙宗先輩の言葉に花帆は不思議そうにそう言った。

 

「ライブの日取りを強引に決めてしまったでしょう? そのせいで無茶をさせてしまった。もっと

 あなたの不安と向き合って話し合うべきだったわ」

「でも、それは叱られるようなことじゃ....」

「あなたが誤ってしまったように、私も完璧な先輩ではなかった。....どうかしら。だから、

 お互いにこれから、手を取り合って一緒に歩いて行くというのは」

「梢センパイ....」

「(....私はお邪魔かな)」

 そう思いながら私は足音を立てないようにこの場から離れ大倉庫から出た。すると、大倉庫の

 入り口に大賀美先輩がいた。

 

「....大賀美先輩?」

「ん....? あぁ、菫か。どうしたんだ?」

「....それはこっちのセリフですよ。大倉庫の前で止まってどうしたんですか?」

「特に理由は無いさ。少し考え事をしていただけだよ」

 そう言うと大賀美先輩は大倉庫の方を見た。だが、すぐに視線は私に戻った。

 

「それで....菫こそここでどうしたんだ?」

「あー....花帆を探しに来たんですけど、ちょっとお邪魔だったみたいで....」

 そう言って私は大倉庫の方を見た。

 

「あぁ、なるほどねぃ....そういえば梢、重症じゃなくて安心したよ」

 大賀美先輩は思い出したかのようにそう言ってきた。

 

「今日の件、もう知っていたんですね」

「あぁ、一応学園の方に電話があってね。....ホント、重症にならなくて安心したよ」

「そうですね....」

「あぁ、本当に....」

 そう言いながら、大賀美先輩は拳を握り締めていた。

 

「....?」

「さて、そろそろあたしは行くよ。菫も遅くならないようにするんだよ」

 大賀美先輩はそう言って手を振ると校舎の方に歩いて行った。

 

「....距離感近い先輩だなぁ」

 私は大賀美先輩の姿が見えなくなるとそう呟いた。

 

「(にしても、本当に何を抱えてるんだか....)」

「あれ、菫ちゃん?」

 そんな事を考えていると背後から声をかけられた。振り向くと、そこには花帆と

 乙宗先輩がいた。

 

「花帆....それに乙宗先輩も」

「こんな所でどうしたの?」

「....アンタを探してたの。そしたら大倉庫にいるって聞いたから来てみたら

 ちょうど出てきたって感じ」

「そうだったんだ。....ごめんね、菫ちゃん。ライブ、楽しみにしてくれたのにこんな事に

 なっちゃって。それにあの後、色々と後処理やってくれたって....梢センパイから聞いたんだ。

 私も手伝わなきゃダメだったのに....」

「いや、謝るのは私もだよ。昨日、私がちゃんと止めておくべきだった。だから今回の

 起きた件に関しては私も同罪」

 私は申し訳なさそうにそう言った花帆にそう返した。

 

「だからごめん、花帆」

「菫ちゃん....」

「....良い関係ね、二人とも」

 するとこの様子を見ていた乙宗先輩がそう言ってきた。

 

「それはもちろん! だって親友ですから!」

 花帆はそう言うと私の腕に抱き着いてきた。

 

「ま、そうだね」

「あ、そうだ菫ちゃん! 実はね....」

 

 ~数日後~

 

「初めまして皆さん!」

「私たちは、蓮ノ空に受け継がれてきたユニット....」

「「スリーズブーケです!」」

 あの事故が起きた数日後、蓮ノ空女学院のステージでスリーズブーケのライブが行われた。

 私は観客席の後方におり、脚立の上に乗ってカメラを構えて二人を撮っていた。そんな時、

 私は壁際にいるある人物に気づいた。

 

「....ん?」

「(あの人は....)」

 その人は以前、大倉庫のアルバムに写っていた人だった。その人はどこか安心したような

 表情で乙宗先輩の方を見ていた。

 

「(今日のライブ、見に来ていたんだ。でも、何であんな遠い場所で....)」

「「それでは聞いてください。スリーズブーケで....」」

 そう考えていると二人のライブが始まった。

 

「(一先ず後にするか....)」

 そう思い私はステージにいる二人にカメラを向けた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。