蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの裏方 作:アイリエッタ・ゼロス
「....」
「やっぱり目が死んでる....」
次の日、教室に来た私は虚ろな目で身体を揺らしている花帆を見てそう呟いた。
「菫さん、おはようございます....って、花帆さんどうかしたんですか....?」
私が花帆を見ていると、後ろからさやかに声をかけられた。
「さやか、おはよう。花帆は、規則の多さで絶望してこうなってる」
私はさやかの言葉に対してそう返した。
「な、なるほど....」
「花帆、学校のパンフレットとか読んでなかったんでしょ?」
「うん....」
「バ花帆過ぎるよ流石に....」
「えぇ....」
花帆の返事を聞いてさやかは少し引いていた。
「受験勉強確かに忙しかったけど、せめて入学しようとする学校のパンフレットは読みなよ」
「はい....」
「か、花帆さん! 今日の放課後から部活紹介があるみたいですよ! きっと花帆さんにあった
部活が見つかると思いますよ!」
「部活かぁ....部活に入れば、あたしの牢獄みたいな高校生活にもぱーっと光が差し込んで
くるのかなぁ....?」
「それは分からないけど....」
「で、でも! 動かなくっちゃ何も変わりませんから! わたしもご一緒しますから!」
「えっ....さやかちゃんも?」
「....も?」
花帆の言葉を聞いて私は疑問に思った。
「そんな顔でずっと隣にいられても困ります!」
「さやかちゃん....優しいねぇ....あ、泣いちゃいそう....」
「何なんですかあなたは! もう!」
「本当にごめんさやか....」
思わず私はさやかに謝罪の言葉が出た。
「じゃあ放課後に一緒に行こうね! 菫ちゃんも!」
「私の意思は....?」
「放課後が楽しみだなぁ....!」
「(少しは人の話聞きなよ....)」
「はぁ....」
「どうしたの菫ちゃん? 何だかテンション低いけど....」
「....誰のせいだと思ってるの」
そう言って、花帆の発言に少しムカついた私は花帆にデコピンをした。
「いった!?」
「大げさすぎ....」
~放課後~
「それで、花帆はどこに?」
「それが....どこかに走って行ってしまって....」
「あのバ花帆....」
放課後になり部活紹介を見に行こうとしたのだが、私は先生に呼び止められた。私は二人に
先に行ってと言い、先生と話しが終わった私は二人と合流しようとしたのだが何故か花帆の姿は
なかった。
「どっちの方に走っていった?」
「あっちの方です」
「そう....じゃあ私が連れ戻してくるよ。さやかは先に他の部活紹介を見ていて。時間が
もったいないからね」
「わ、わかりました。では、また後ほど」
「うん」
そう言ってさやかと別れた私は花帆が走っていった方に向かった。
~数分後~
「見当たらない....」
しばらく花帆を探しているが、花帆の姿はどこにも見当たらなかった。
「(あと何処を探して....倉庫の方は探してなかったな....)」
そう思って倉庫の方に行くと、何故か上級生にお姫様抱っこされている花帆がいた。
「....」
「(どういう状況....?)」
私の頭の中にはてなマークが浮かんだが、一先ず花帆に話しかけようと思い花帆の方に
歩いて行った。
「花帆」
「あ、菫ちゃん!」
「あら、お友達?」
「はい! あたしの親友です!」
「二年生の先輩ですよね....? 花帆がご迷惑をおかけしてすみません。....花帆、これは
どういう状況?」
私はタイの色で二年生の先輩だと判断して先輩に頭を下げた。そして花帆にそう聞いた。
「え、えっと、その....」
「彼女が足の力が抜けちゃったみたいだから私が支えていたの」
花帆に聞いたが、先輩がそう答えてくれた。
「そうだったんですか....」
「セ、センパイ! もう大丈夫ですから! すぐ立ちますから! 下ろしてくださいー!」
「そう?」
花帆が先輩に慌てたようにそう言うと、先輩は花帆を下ろした。
「少しでも気になることがあったら無理しちゃダメよ?」
「は、はい!」
「先輩、ありがとうございました」
「いいのよ。....それよりも、あなたは山で何をしてたの?」
「山....?」
「えぇ。彼女、山の方から走ってきたの」
「何で部活紹介を見に行くのに山にいるの....?」
私は頭に浮かんだ疑問を思わず口に出してしまった。
「えーっと....! 脱走....じゃなくて! 道に迷っちゃって!」
「ちょっと待って。今脱走って言った?」
「い、言ってない!」
花帆の言葉を聞いて、私は花帆が逃げないように肩に手を置いた。
「そう、迷っちゃったの。大変だったわねぇ」
「先輩、この子嘘ついているんで信じないでください」
「う、嘘だなんて失礼な....!」
「山に入るには正門を出て敷地外から入るか高いフェンスを乗り越えなきゃいけないの
だけれど....」
「うっ....」
「でもあなた、運がよかったわね」
「「えっ?」」
先輩の言葉に私と花帆はハモった。
「実は毎年、山で遭難する新入生が多くて大半が行方不明になっちゃうの。私のクラスメイトも
随分と戻ってこなかったわ....」
「えぇぇぇ!? 行方不明!?」
「....花帆、先輩の嘘に決まってるでしょう。それが本当なら、山へ入る道が封鎖されてる。
それにもっと警備を頑丈にしてる」
「あら、バレてしまったかしら?」
先輩はお茶目な笑顔を浮かべながらそう言った。
「流石に今のは噓ってわかりますよ」
「それもそうよね。....でも、これに懲りたら山に入っちゃダメよ。この辺りには怖い
動物も出るから」
「えっ....は、はい....すみませんでした....」
花帆はそう言うと先輩に頭を下げた。
「ありがとうございます、先輩」
「いいのよ。あ、ちょっと待って」
先輩はそう言うと花帆の制服に付いている砂埃を払った。
「よし、綺麗になったわ。せっかくの下ろしたての制服、よく似合っているんだから大切に
着てあげてね」
「あ、ありがとうございます!」
「それじゃあ、私は行くわね」
先輩はそう言うと、何かで使うと思われる機材を持ち上げた。
「センパイ! お手伝いします!」
「私も、お手伝いさせてください」
「そう? じゃあ、お言葉に甘えさせてもらおうかしら」
こうして、私と花帆は先輩のお手伝いをした。
~~~~
「助かったわ。部室まで運ぶの、少し気が滅入っていたところなの」
「スクールアイドルクラブ....先輩、スクールアイドルだったんですね」
私は部室の外にかかっているプレートを見てそう聞いた。
「えぇ」
「スクールアイドル?」
「花帆、知らないの?」
「うん。菫ちゃんは知ってるの?」
「まぁなんとなくって言ったところだけど....簡単に、わかりやすく言えば部活動として
アイドル活動をしてる人だよ」
「簡単に言えばそうね」
先輩はそう言うと部室の扉を開けた。
「機材はそこに置いてもらって大丈夫よ。....二人とも手伝ってくれてありがとう。あ、
そういえばまだ名前も聞いていなかったわね」
「花帆です! 日野下花帆っていいます!」
「月村菫です」
「日野下さんに月村さんね。私は乙宗梢、二年生よ。さ、二人とも座って。手伝ってくれた
お礼にお茶をご馳走させて」
「良いんですか! ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
私と花帆は乙宗先輩に紅茶をご馳走になった。すると、乙宗先輩が花帆にこう聞いてきた。
「それで、どうして脱走なんてしようとしたの?」
「むぐっ....!? その話、終わったんじゃないんですか!?」
「別に終わってはないでしょ....」
「原因を聞いておかないと。また同じことをされたら私も責任を感じちゃうもの」
「じ、実はですね....」
そう言って、花帆は脱走した理由を話し始めた。
「なるほどねぇ....自由が欲しくて脱走した、と」
「乙宗先輩、これに関しては学校の事についてしっかり調べていない花帆が悪いです」
「うぅ....耳が痛い....で、でも! 菫ちゃんも何で教えてくれなかったの!」
「流石に自分で調べてると思ったからだよ。入学したい学校のこと調べてない受験生なんて
普通いる?」
「ぐぅの音も出ない程の正論ね....」
私の言葉に乙宗先輩は苦笑いしてそう言った。
「あの! センパイはどうですか? ここで一年過ごして、窮屈って思ったりしません
でしたか?」
「....自由って、目に見えるものだけじゃないから」
「....?」
私はそう言った乙宗先輩の表情が曇ったのを不思議に思った。
「ねぇ二人とも、もしよかったら一つお願いを聞いてもらってもいいかしら?」
「お願いですか?」
「えぇ。きっと楽しんでもらえると思うわ」
~~~~
乙宗先輩のお願いとはライブを見に来て欲しいというものだった。そんな中、私は体育館に
ある音響設備を操作していた。
「乙宗先輩、これで大丈夫だと思います」
「あ、ありがとう。よくわかったわね....」
「説明書ここにありましたから。それに、兄の影響で電子機器には少し知識があるので」
「そうなのね....ありがとう、本当に助かったわ」
「いえいえ。....ステージ、楽しみにしていますね」
私はそう言って花帆との待ち合わせ場所に向かった。すると、待ち合わせ場所には
花帆だけでなくさやかもいた。
「花帆、それにさやかも」
「菫さん! 菫さんも来ていたんですか」
「乙宗先輩っていう人に誘われてね。花帆も一緒に」
「そうなんですね。わたしもある先輩に声をかけていただいて」
「そうなんだ」
そう話していると、先輩のステージが始まった。