蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの裏方 作:アイリエッタ・ゼロス
花帆side
「すごい....!」
幕が上がり梢センパイのステージが始まった。そのステージに、あたしは見惚れて
しまっていた。
「こんな世界、知らなかった....! 菫ちゃん、梢センパイすごい....!」
あたしは隣にいた菫ちゃんにそう言おうとしたのだが、菫ちゃんの顔を見て言葉が止まった。
何故なら、菫ちゃんは梢センパイのステージを見て目を輝かせていたからだ。菫ちゃんの
こんな表情を、あたしが見るのは初めてだった。
「(菫ちゃんがこんなに興奮してるの、初めて見た....)」
そう思っていると梢センパイのステージが終わり、次に綴理センパイと言う人のステージが
始まった。
「かっこいい....!」
「(梢センパイとは違った凄さがある....! 凄いなぁ、スクールアイドルって!)」
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菫side
「(こんなに魅了されたの、初めてだな....)」
乙宗先輩のステージを見て、私は完全に心が奪われてしまった。歌とダンス、そして衣装は
先輩の表現するステージに完璧に一致しており、私は一瞬で先輩の創りだした世界の虜に
なってしまった。
「(撮りたいな....先輩の輝く姿....)」
そう考えていると、乙宗先輩がこっちに歩いてきた。
「乙宗先輩!」
「二人とも、どうだったかしら?」
「梢センパイ! えと、あの、とにかく凄くて....!」
「私、先輩のステージに心が奪われました。こんなに興奮したの、初めてです....」
「そ、そこまで言ってもらえるなんて....嬉しいわ」
「楽しんでもらえたらよかったよ」
すると、乙宗先輩の後ろからもう一人のステージに立っていた人が現れた。
「あ、えと....」
「ボクは夕霧綴理。こずと同じ、スクールアイドルクラブの二年生だ。ちなみに好きな教科は
数学だよ。答えが決まっているっていいね」
「あ、はい....えっ?」
「(ステージ上とステージ外では凄いギャップ....)」
夕霧先輩の発言に私はそう思った。
「ごめんなさいね。この子、距離感がちょっと独特でしょう? でも、ステージ上での
パフォーマンスは素晴らしいのよ」
「そうですね。ステージを見てよくわかりました」
「あ、あの! 夕霧先輩!」
すると、突然さやかが夕霧先輩の前に立った。
「今日はお誘いいただいて、ありがとうございました! 夕霧先輩の舞台、本当に
きれいで....!」
「ありがとう。褒められて嬉しい。うん。ここまでとは思わなかったけど。....じゃあ、
例の件、考えてくれた?」
「例の件?」
「はい....わたし、夕霧先輩にご指導お願いしたいです。どうか、スクールアイドルクラブに
入れてください!」
「えっ? えぇぇぇ!? そうなのさやかちゃん!?」
花帆はさやかの発言に驚いたのかそう叫んだ。
「はい。わたし、決めたんです。せっかく自分を変えるためにこの蓮ノ空にやってきたん
ですから、この学校で、新しいことを始めてみようって」
「(自分を変える、か....)」
「というわけで」
私がさやかの宣言を聞きそう考えていると、夕霧先輩がさやかの背後に立っていた。
「きゃっ」
「きょうからよろしくね、さや。ボクと一緒に、スクールアイドルになれるよう、がんばろう」
「は、はい! よろしくお願いいたします!」
「ふふ、良かったわ綴理。あなたの後輩ができて。これで少しは上級生としての自覚が
芽生えるかしら?」
「そうだといいね」
「何で他人事みたいに言ってるんですか....」
私は夕霧先輩の発言に思わずツッコんでしまった。
「そうよ。あなたのことでしょうあなたの。もう....」
乙宗先輩はそう言うと、私達の方を向いた。
「というわけで....日野下さん、月村さん。今は私とこの子の二人でスクールアイドルクラブ
活動をしているの」
「でも、今日から三人。嬉しいなぁ。よしよしよし」
「ちょ、ちょっと夕霧先輩....は、恥ずかしいです....」
「....」
「(花帆....?)」
さやかが夕霧先輩に頭を撫でられている時、花帆は何か複雑そうな顔をしていた。
「ねぇ日野下さん、月村さん。あなた達がもしよかったらなんだけれど....」
「え、あっ、あの、はい....」
「また来週にもライブがあるの。だけど、見ての通り、全然手が足りていなくて。よければ、
手伝ってもらえないかしら?」
「あ....はい。それぐらいなら、あたしでよかったら....」
「何かお手伝いできることがあるなら、手伝わせてください」
乙宗先輩の言葉に花帆と私はそう返した。
「そう。ありがとう、嬉しいわ」
「あ、あの! 梢センパイ....ラ、ライブ....素敵でした。それだけは言いたくて! それじゃあ、
さようなら!」
そう言うと、花帆は突然走り去ってしまった。
「い、行ってしまったわね....」
「そうですね....あの、乙宗先輩。お手伝いがある事があったら1組の教室に来てください。
私と花帆、クラスは1組なので」
「わかったわ。もしも私に用がある時は2組の教室に来てちょうだい」
「わかりました。....今日はありがとうございました乙宗先輩。ライブ、楽しかったです」
そう言って、私はこの場から去った。
~その日の夜~
「さて、届いた....」
寮に戻ると、私は寮母さんから大きな段ボールを受け取った。送り主はお父さんで、私は
部屋に段ボールを運んで中を開けた。
「(カメラ届いたことだし、早速乙宗先輩に頼んでみようかな....)」
そう思いながら段ボールを開けている時、私は中を見て固まった。
「....」
「(ちょっと待って....これ、新品のレンズじゃん....しかも滅茶苦茶高いやつだし....)」
私は新品の箱に入っているレンズを見てそう思った。そして、私はお父さんに電話をかけた。
『おぉ! 菫か! カメラと機材は届いたか?』
「届いたけど....この新品のレンズは? 普通にびっくりしたんだけど....」
『俺からの入学祝いだ! 今までレンズは俺のお古だっただろ? せっかくの機会だから新品を
買ってあげようと思ってな! ボディも買おうと思ったが流石に母さんに止められてな』
「(ありがとうお母さん....)」
私はお父さんを止めてくれたお母さんに心の中で礼を言った。
『ま、そのレンズは好きに使うといい! 良い写真が撮れたら送ってくれ!』
「....わかった。ありがとう、お父さん」
『おう! じゃあな!』
そう言うと、お父さんの電話は切れた。
「(取り敢えず、綺麗に整理しておこ....)」
そう思いながら私はカメラと機材の整理を始めた。