蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの裏方   作:アイリエッタ・ゼロス

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先輩のお手伝い/兄からの電話

「乙宗先輩、おはようございま....」

 次の日、部室に行くと乙宗先輩はギターを弾いていた。

 

「あら、ごめんなさいね気づかなくて」

「い、いえ! というか梢センパイ、ギター弾けるんですか!? 凄いですね!」

「人並みだけれどね。我が家はみんながみんな、音楽に携わっているの。それで、

 子供のころから一通り」

「一通りって....ピアノとかバイオリンも弾けるんですか?」

「えぇ。他にもフルートやサックスなんかも」

「か、かっこいい....!」

 花帆は乙宗先輩の言葉を聞いて感動していた。

 

「ただ、作曲をする時はギターかキーボードを使っているかしらね」

「作曲もできるんですか....!」

 私はその言葉に驚いて思わず大きな声が出てしまった。

 

「え、えぇ。せっかくだから、新入生歓迎会で新しい曲を披露しようと思って。まだ途中まで

 しか完成していないのだけれどね。....そうだ、よかったらだけど作った曲を聞いてもらえない

 かしら? まだ途中までだけど」

「良いんですか?」

「えぇ」

「聞きます! 聞きたいです! 聞かせてください!」

「ありがとう。それじゃあ、何か気になることがあったら指摘してもらえるかしら」

「気になることって....私と花帆、作曲なんてやったことない素人ですよ?」

「そうですよ! 無理です!」

 花帆はそう言って胸の前に腕で×マークを作っていた。

 

「そんな元気いっぱいに断らないで。....良い曲を作りたいのよ。お願い、マネージャーさん」

「....わかりました。でも、あまり期待しないでくださいね?」

「こんな業務があるなんて初耳ですよ~....」

 乙宗先輩の表情を見て、私と花帆は少し困りながらも了承した。

 

「今付け加えました。貴方達のために、心を込めて歌うから。ねっ?」

「逃げ道塞がれた....」

「うぅ、ずるいですよそんな言い方....わかりましたよぉ....」

「ありがとう。じゃあ歌うわね」

 そう言って、乙宗先輩はギターを弾きながら歌い始めた。

 

 ~~~~

 

「どうだったかしら....って」

 乙宗先輩が歌い終わると、花帆は拍手をしていた。

 

「凄い、凄いです梢センパイ! 声綺麗ですしハリもあって伸びやかで! 世界一上手でした!」

「あ、ありがとう....何だか照れるわね....ここまで力いっぱい褒められることはあまり

 ないから....」

「そうなんですか? ....私も、凄く美しくて透明感のある声だなって思いました。正直、

 粗を探すのが難しいというか....とにかく、それぐらい凄かったです」

 花帆に続いて、私も正直に思ったことを言った。

 

「菫ちゃんの言う通りです! パーフェクトです!」

「ふふ....二人とも、本当の本当にそう思ってくれているのね。そこまで言ってもらえると

 自信がわいてきちゃうわ」

「はい! 梢センパイの歌で、みんなの笑顔をいーっぱい花咲かせちゃいましょう!」

「良いこと言うね花帆」

「良いわねそれ。じゃあ、もっと頑張ったらうちのマネージャーさんの笑顔も花咲いて

 くれるのかしら?」

 そう言って乙宗先輩は花帆の方を見ていた。

 

「そ、それは....多分、はい....」

「うふふ。だったら、やっぱり頑張らなくっちゃ」

「(乙宗先輩、もしかして....)」

「さて、曲を聞いてもらった事だし次に行きましょうか。二人ともついてきて」

 乙宗先輩の言葉について考えていると、乙宗先輩はそう言って立ち上がった。

 

「はい」

「っ、はーい!」

 

 ~~~~

 

「梢センパイ! 次はどこに行くんですか?」

 部室を出た私達は、職員室で書類を受け取りそれを何処かに運んでいた。

 

「新入生歓迎会の本部よ。今年から新入生歓迎会の実行委員も拝命しちゃって、やらなきゃ

 いけないことが多いのよねぇ....あ、これも持ってもらっていいかしら?」

「うぐぇ....」

「花帆、私の方に乗せな」

「あ、ありがとう菫ちゃん」

「さ、焦らずゆっくり急ぎましょう。一時間以内に終わらせて作曲の続きもしなきゃ」

「えぇ!? この後また部室に戻るんですか!?」

「えぇ。ステージだって作っている途中なんですもの」

「乙宗先輩....こんなに仕事して大丈夫なんですか? 仕事量とんでもないですが....」

 私は乙宗先輩の仕事量を見てそう聞いた。

 

「それだけ信頼してもらっているって事だから。それに嫌々やっているわけじゃないのよ? 

 仕事を通じて知り合った人達から色々な創造力を受け取ったり、中には私達の活動を手伝って

 くれる人達もいるの」

「そうなんですね....にしても多いですけど。夕霧先輩に手伝ってもらわないんですか?」

「綴理は....そうね、頼めばやってくれるのだけれど、急に突拍子もない事をするから....

 それで余計に時間が、ね....」

 乙宗先輩は遠い目をしながらそう言った。

 

「な、なるほど....」

「い、良い子なのよ! ただちょっと自由が過ぎる子なだけなの!」

「(褒めてるのかディスってるのかどっちなんですか....)」

「さ、さ! そろそろ行きましょう。まだまだやることはたくさんあるわ」

 そう言って、乙宗先輩は私達の前を歩き出した。

 

 ~~~~

 

「今度は振り付け、ですか?」

 書類を運び終わり、部室に戻ってきた私達は動きやすい服に着替えていた。

 

「えぇ。メロディが出来て歌詞が出来て、それで終わりじゃないの。次はパフォーマンスの

 お時間よ。ぴったりの振り付けを考えて、もっと素敵にしちゃうんだから」

「それは分かりましたが....私達が着替えた理由は....?」

「それはね....二人には、さっき作っていた曲に振り付けが合っているかどうかを確認する

 ために踊ってほしいの」

「あ、あたし達がですか!?」

「普段は綴理にお願いするんだけど、今は村野さんの指導に夢中みたいだから。大丈夫、

 簡単にステップを踏むだけよ。私の真似をしてみてちょうだい」

「えっ....」

「あ、あたし達に拒否権は....」

 花帆は乙宗先輩にそう言ったが、乙宗先輩はニコニコしていた。

 

「(圧が凄い....)」

「花帆....やるしかないみたいだよ....」

「うん....圧凄いね....」

「口に出して言うのはやめときな....」

 私は花帆に小声でそう言うと乙宗先輩の真似をしてステップを踏んだ。

 

「その辺りはね、もう少しピンと背筋を伸ばして、指先まで針金が通っているイメージでね」

「こんな感じですか?」

「そうそう、二人とも上手よ。それじゃあ次は、私のギターに合わせて最初から踊ってみて」

「「わかりました!」」

 

 ~数日後~

 

「....ん?」

 今日の手伝いが終わり、部屋でパソコンを触っているとスマホが鳴った。スマホの画面を

 見ると、二番目の兄からだった。

 

「もしもし」

『はぁ~い菫!』

 電話に出ると、テンションの高い兄さんの声が聞こえた。

 

「どうしたの兄さん。急に電話なんて」

『可愛い妹がどうしてるのか気になってねぇ....どう? 学校は? 友達出来た? 部活は何か

 入った?』

「良い所だよ。花帆は規則多くて絶望してたけど。友達もできたよ。部活は....今はある先輩に

 誘われてスクールアイドルクラブの手伝いをしてるよ」

『スクールアイドル! 良いじゃない良いじゃない! もしかしてステージに立って踊って

 歌ったりするの!』

「まさか。私が目立つのは苦手なの兄さんも知ってるでしょ? あくまで私は裏方。ステージに

 立つことは無いと思うよ」

『あら、それは残念。菫の立つステージ、良いステージになると思うのだけどねぇ....』

 兄さんは心底残念そうな声色でそう言ってきた。

 

「それに....ステージに立つとあの人の写真が撮れないからね」

『あの人....?』

「スクールアイドルクラブに誘ってくれた先輩。その先輩のステージに、心が奪われて....

 あの人の輝く姿を撮りたいんだ....」

『あら....! あらあらあら! ちゃんと青春してるのね! それを聞いて安心したわ! なら、

 後悔のしない学生生活を送るのよ!』

「うん。....ありがと、兄さん」

『いいのよいいのよ! 菫には、色々と迷惑かけちゃったからねぇ....心機一転、その学校で

 楽しい学生生活を送るのよ! あ、それとこの前の旅行のお土産送っておいたから! 届いたら

 また教えて!』

「わかったよ」

『じゃあ、また電話するわね!』

 そう言うと、兄さんからの電話は切れた。

 

「相変わらず、テンションが高いなぁ....」

「(というか、お土産ってどこに行ってたんだろ?)」

 そんな事を思いながら、私は視線をパソコンの画面に戻した。

 

 

 

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