ゼロの使い魔T   作:ナイトメア・ゼロ

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20話 アンリエッタ・ド・トリステイン

 王女が乗っている馬車が見えた。整列した教師達は一斉に杖を掲げ馬車を魔法学校の正門に迎え入れた。学校の玄関の前で馬車が止まると召使い達が駆け寄り、赤い絨毯をしき

 

「トリステイン王国王女、アンリエッタ姫殿下のおな~り~!」

 

 衛士の言葉と同時に馬車の中から1人の女性と老女が現れた。おそらく若い女性がアンリエッタなのだろう。アンリエッタの登場に生徒達は歓声を上げそれに応えるように絨毯の上を歩きながら微笑み手を振った。

 

「あれがトリステインの王女?ふーん、私の方が美人じゃない。ねぇ、ダーリンもそう思うでしょ?」

 

「知らねーよ。キュルケも十分美人だから張り合わなくていいだろ?」

 

 2人がそう話している中、ルイズは絨毯の上を歩くアンリエッタを見つめていた。

 と、思ったら今度は驚愕し顔を赤らめた。

 サイトはルイズの視線を追ってみると羽根帽子を被った貴族の男が見えた。どうやら、ルイズはあの男に見惚れているようだった。隣に立っていたキュルケも彼を見て見惚れていた。

 話し相手がいなくなったサイトはこっそりその場を離れると人気の少ない場所でゆっくりとタバコを楽しんだ。

 

 

 無事に式典が終わり夕食の時間、ルイズは何やらボーッとしながら食事をしていた。食事を終えた後も落ち着きがなかった。あまりにも落ち着きがなかったため銃の整備をしていたサイトは、イラつき。

 

「さっきからウロウロ鬱陶しいな!!どうしたんだよ!!あの王女が来てからおかしいぞ!?」

 

と、怒鳴った。

 

「べ、別になんでもないわよ!!」

 

 なんでもないと答えたのでサイトは再び銃の整備を始めると。

 

コンコン

 

 突然ドアがノックされた。

 

「?誰かしら?こんな時間に」

 

 ルイズは上を羽織って扉を開けると外には、真っ黒な頭巾を被った少女が立っていた。少女はそそくさと入り、扉を閉めた。突然のことにルイズは驚きサイトもM1911(ハンドガン)を抜いた。

 

「アナタは?」

 

 ルイズは少女が誰なのか訊ねた。サイトもM1911(ハンドガン)のスライドを引きいつでも撃てるようにした。

 少女は口元に指をあてた後杖を取り出し魔法を唱えた。

 

「ディテクトマジック?」

 

「どこに耳があり、目が光っているかわかりませんから」

 

 サイトは警戒しながら銃口を向けると少女は頭巾を取り顔を見せた。彼女の顔を見たルイズは驚いた顔で

 

「姫殿下!」

 

と、言った。

 ルイズは慌てて跪いた。

 

(こいつ、確かこの国の王女の・・・・・アンリエッタだっけ?)

 

「お久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ」

 

 アンリエッタは跪いているルイズに合わせて姿勢を低くするとルイズを抱き締めた。

 

「ああ、ルイズ!懐かしいわ!」

 

「ひ、姫殿下、いけません!この様な下賤な場所へお越しになるなんて!」

 

 どうやら2人は知り合いのようだった。サイトはM1911(ハンドガン)をホルスターに直した。

 

「ああ、ルイズ!そんな堅苦しい行儀なんてやめてちょうだい!私と貴方はお友達なのよ?」

 

「勿体無いお言葉です、姫殿下」

 

「やめてったら、ルイズ!ここには枢機卿も、お母様も、あの上辺だけの友達もいない、私の本当の友達の貴女しかいないのよ!せめてこの場でくらい、あの頃のままでいさせて」

 

「姫様」

 

 ルイズもアンリエッタを抱き締めた。

 何やら、盛り上がっている2人を見たサイトは空気を読んでとりあえず銃の整備を中断し片付け始めた。

 

「でも光栄です。私の様な者を覚えていて下さったなんて・・・もう、お忘れになられておられたかと思いました」

 

「忘れたりなんかしないわ。あの頃は本当に毎日幸せだったもの」

 

(・・・・・・なんか・・・・贅沢な悩みを持つ女だな)

 

「貴女が羨ましいわ。自由って素敵ね、ルイズ」

 

「何を仰いますか。アナタはお姫様ではありませんか」

 

「一国の姫なんて、捕らわれの鳥同然よ。飼い主の機嫌一つで何時でも飛び立たなければならないのだから」

 

(・・・・・なーんかめんどくさくなってきたなー)

 

「結婚するのよ、私」

 

「それは・・・・おめでとうございます」

 

 ルイズは悲しげな声で答えた。アンリエッタは壁にもたれて成り行きを見ているサイトに気がつくと。

 

「あら、ごめんなさい。もしかして、お邪魔だったかしら?」

 

と、言った。

 

「お邪魔?何故ですか?」

 

「だって、そこの彼、貴女の恋人でしょう?嫌だわ、私ったら懐かしさにかまけてとんだ粗相をしてしまったわね」

 

「はぁ!?ち、違います!あれは、私の使い魔です!恋人なんかじゃありません!」

 

 ルイズは顔を真っ赤にしながら全力で首を振った。

 

「ルイズ、お前そいつと知り合いだったのか?」

 

 サイトがそう訊くと。

 

「無礼よサイト!彼女はアンリエッタ・ド・トリステイン殿下!このトリステインの王女で私達貴族が忠誠を誓ったお方なの!姫様がご幼少の頃、恐れ多くも遊び相手を務めさせて頂いたのよ」

 

「そうなのか」

 

「使い魔?」

 

 アンリエッタはサイトをまじまじと見つめた。

 

「使い魔って、人にしか見えませんが?」

 

「人間だ」

 

「サイト!申し訳ありません姫様!彼はちょっと特殊な環境で過ごしていたので常識があまりなく」

 

「構わないわ。そう、そうなのね、ルイズ。貴女は昔からどこか変わっていたけれでも、相変わらずね」

 

 ルイズは恥ずかしそうにしアンリエッタが深い溜め息を漏らした。

 

「姫様、何かあったのですか?」

 

「いえ、ごめんなさい。何でもないわ。あなたに話しても、迷惑でしかないのに私ってば」

 

「仰って下さい。あんなに明るかった姫様が、そんな風に溜め息を漏らすなんて、何か悩みがあるのでしょう?」

 

「いえ、話せません。ごめんなさい、ルイズ。悩みがあるなんて、忘れてちょうだい」

 

「いけません!私をお友達と呼んで下さったのは姫様です!友達を放っておくなんて、私には出来ません!仰って下さい!」

 

「私をまだお友達と呼んでくれるのね。嬉しいわ、ルイズ」

 

「大事な話するならオレは外した方がいいか?」

 

 サイトがそう訊くとアンリエッタは首を横に振った。

 

「メイジにとって使い魔は一心同体。席を外す理由はありません」

 

 そしてアンリエッタは語り始めた。

 アルビオンの貴族達が反乱を起こし、王室が敗れそうな事。反乱軍の次の狙いはトリステインである事。

 それに対抗するには、ゲルマニアと同盟を結ぶしかない事。そして、その同盟を組むには、アンリエッタがゲルマニア皇帝に嫁ぐ事アンリエッタが知る限りの事を全て話した。

 

「そんな事が」

 

「いいのよ、ルイズ。好きな殿方と結ばれるなんて、物心ついた時から諦めていたから」

 

 アンリエッタは諦めた表情で言った。

 

「アルビオンの貴族達は、当然ながらトリステインとゲルマニアの同盟を望んではいません。ですから、今アルビオンの貴族達は、私とゲルマニア皇帝との婚姻の妨げになる材料を血眼で探しています」

 

「もしかして、姫様はその材料に心当たりが?」

 

 アンリエッタは両手で顔を覆った。

 

「おお、始祖ブリミルよ!この愚かな姫をお許し下さい!」

 

「言って!姫様!一体姫様の婚姻を妨げる材料とは何なのですか!?」

 

 ルイズがアンリエッタの肩を掴み、強い口調で問い詰めた。その姿を見てサイトは

 

(ハァー。また面倒なことになりそうだな)

 

と、心の中でため息を吐くのだった。

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