「手紙ですか?」
「えぇ、私が以前したためた、一通の手紙です。それがアルビオンの貴族の手に渡れば、すぐにゲルマニアに報告されるでしょう」
「その手紙には、一体何が?」
「それは・・・・・言えません。ですが、手紙の内容を知れば、ゲルマニア皇帝は私を許さないでしょう。そうなればこの国は破滅です」
(破滅って・・・・・この女、何書きやがったんだ?」
アンリエッタの話を聞いていたサイトは彼女が手紙に何を書いたのか興味が出てきた。
ルイズは深刻そうな顔で手紙はどこにあるのか尋ねると手紙はアルビオンにあると答えた。
「アルビオン!?まさか、もう既に敵の手に!?」
ルイズがそう言うとアンリエッタはすぐに否定し手紙の持ち主を教えた。
「その手紙を持っているのは、今アルビオンの貴族達と骨肉の争いを繰り広げている、王家のウェールズ皇太子です」
「プリンス・オブ・ウェールズ?あの、凛々しき王子様が?」
ルイズの言葉に反応しアンリエッタは絶望し叫んだ。
「嗚呼!破滅です!遅かれ早かれ、ウェールズ皇太子は反乱軍に敗れてしまいます!そうなればあの手紙は明るみに!そうなれば同盟は反故!たった一国であのアルビオンと対峙しなければなりません!」
「お前、マジで何書いたんだ!?たかが手紙ごときでそんな大事になるんならよっぽどのこと書いたんだよな?」
「サイト!」
スカイネットとの激しい戦争のせいでサイトは手紙を書いたことは一度もなかった。それどころか報告書も書いたことがない。だいたいの報告は直接、隊長や司令官に報告していたから手紙なんかで国が崩壊するとは考えたこともなかったのだ。
「こほん。では、姫様が私に頼みたい事と言うのは」
ルイズは咳払いし改めてアンリエッタの望みを訊いた。
「無理よ、ルイズ!考えてみれば、王家と反乱軍が戦を繰り広げる戦地に、貴女を送るなんて出来ないわ!危険過ぎる!」
「何を仰います!姫様の御為とあらば、このラ・ヴァリエール公爵家が三女、ルイズ・フランソワーズは地獄の釜だろうと、屍が歩く地獄だろうと向かいます!姫様とこのトリステインの危機を、見過ごす訳にはいきません!」
そう言って跪いた。
「『土くれ』のフーケを捕らえたこの私めに、その一件、是非ともお任せ下さいますよう!」
「私の力になってくれると言うの!?ルイズ・フランソワーズ!懐かしきお友達!」
「勿論ですわ、姫様!」
2人の美しい友情を見てサイトは「ダメだこりゃ」と、言いたげに顔に手を置いた。
「このルイズ・フランソワーズ、何時までも姫様のお友達であり、1番の理解者でございます!永久に誓った忠誠を、忘れたりはしません!」
「これぞ、これぞ誠の友情と忠誠です!私は貴女との友情を忘れません!ルイズ・フランソワーズ!」
そう言って2人は抱きしめ合った。
「『土くれ』のフーケを捕まえた貴女達なら、きっとこの困難な任務をやり遂げてくれると信じています。アルビオンの貴族達は、王党派を国の隅まで追い詰めていると聞いています。敗北も、時間の問題でしょう」
「では、明日の早朝に発ちます」
ルイズはそう言うとサイトの方を向き。
「サイト。明日の早朝、アルビオンに向かうわよ」
と、言った。
「断る」
「え?」
この時、アンリエッタは、まさか使い魔が主人の命令を拒否するとは予想もしていなかった。しかし、ルイズは分かっていた。サイトはこの任務を絶対に受けないことを。
「お願い、サイト!私にとって、姫様は全てなの!大切な、友達なの!その姫様が、私を頼ってくれた!誰からも馬鹿にされてる、この私を!私はその想いに応えたいの!」
ルイズはそう言ってサイトを説得し始めた。
「お前、自分がどこに行こうとしてるのか分かってんのか?」
サイトはルイズを睨みつけながら訊いた。サイトの鋭い目を見て一瞬、怯んだがそれでも説得を続けた。
「この国の一大事なの!危険なのは分かってるし姫さまと国の為なら命をかけれるわ!」
ルイズはそう言って今度はアンリエッタの方を向いた。
「失礼ながら姫様。もし、今回の任務を達成した場合褒美をいただけるのでしょうか?もし、いただけるのなら私の使い魔にはそれなりの褒美を与えていただきたいのです!」
報酬を支払うことを条件に説得を試みるも。
「報酬どうこうじゃねーよ。オレの仕事はルイズを守ることだ。だから、この国がどうなろうとオレの知ったことじゃねーよ」
と、言われた。
「・・・・サイト!これはご主人様の命令なのよ!お願いだから言うことを聞いて!」
「いい加減にしろ!」
そう言ってサイトは部屋のイスを蹴り飛ばした。大きな音が鳴りルイズとアンリエッタの身体がビクッと跳ねた。
「さっきから黙って聞いてたらふざけたことぬかしやがって・・・・ナメてんのか?オレのことナメてんでろ!?戦場で生まれて戦場で育ったオレによくもまー覚悟があるなんて言えたな!!」
そう言ってサイトはM1911(ハンドガン)を抜き銃口をアンリエッタに向けた。
「そもそもなんでコイツの尻拭いをお前がしなきゃなんねーんだ?ルイズは貴族かもしれねーけど根っこは戦闘経験ゼロの民間人なんだぞ?そんな奴によくもまーそんな危険な仕事を任せられるなー!」
「サイト!銃を下ろしなさい!無礼よ!」
「お前も気づけよ!お前はただ利用されてるだけだろ!こんなクソみたいな女に利用されていいのかよルイズ!」
「!!姫様のことを悪く言わないで!!」
ルイズは大声でそう言った。
「利用されてる?結構よ!私は姫様に永久の忠誠を誓ってるのよ。姫様に利用されるなら私は本望だわ!!それにサイトだって人のこと言えないでしょ!アンタだって、故郷を取り戻すことを条件に利用されてるんじゃないの!?」
この時、ルイズはミスをした。アンリエッタのことを悪く言われ頭に血が上ったルイズはサイトに酷いことを言ってしまった。
「ッ!あ、その、サイト、今のは」
「・・・・・チッ。タバコ吸ってくる」
サイトはハンドガンをしまうと扉に向かった。
「・・・・無駄だと思うけど一応、言っとく。平和な土地で呑気に生きていたお前じゃ秒で死ぬぞ。それとお姫様」
「!?な、なんでしょうか?」
「ルイズに無理な頼みすんじゃねーよ。次、ルイズに無理難題を押し付けたらお前の脳みそに風穴開けてやるぞ」
そう言って扉を蹴り開けた。
「フゲッ!!」
何かが扉にぶつかったみたいだがサイトは気にせず中庭に向かった。
噴水に腰を下ろしタバコを咥えライターを取り出そうとしていると。
シュボッ
「ほれ」
いつの間にかオスマンが隣に座っていた。サイトはオスマンから火をもらうとオスマンもタバコを取り出し火をつけた。
「ハルケギニアの科学レベルは確かに低い。じゃが、それでもこのような娯楽品を作り出すくらいの技術はあるんじゃよ」
「ハルケギニア産のタバコ?量産していたのか?」
「友人の遺産の一つじゃよ。・・・・・友人のことを隠す必要があったから開発者はワシということにしておいたがのぅ」
そう言って2人はゆっくりとタバコを吸った。
「昔を思い出すわい。あやつと一緒によくタバコを吸ったんじゃよ」
「・・・・・・フゥー」
「ミス・ヴァリエールと殿下が会ったようじゃな」
「・・・・・さてはどっかから盗み見してやがったな」
「サイト君、少し頼まれてくれんか?」
そう言ってオスマンは、サイトに依頼を出すのだった。