「提督、ごきげんよう」
あぁ、三隈か。どうした?
「どうしたもこうしたもありませんわ。三隈、近頃出番が少なくて暇でしてよ?」
そういえば、今はサーモン海域への出撃艦隊から外しているな。妹の熊野も暇しているはずだが、そっちは当たらないのか?
「もう!提督は呆けてしまって?私の妹の熊野は、提督の第一秘書艦ではありませんか!とても忙しそうで声なんてかけられませんわ。」
…そうだった。今朝もたくさんの仕事を任せたんだった。ふむ、いかんな、私もボケが進行しているようだ。
「まだまだ働き盛りなのに何をご老体のようなことを仰っていて?…仕方ないですわ。くまりんこが提督のボケ防止にお話しして差し上げますわ。」
私にそんなことしている暇があるように見えるか?
「えぇ、とてもお暇そう。」
…まぁいい、ちょうど一区切り付いたところだ。後の時間は三隈と過ごそうか。どこか希望の場所はあるかい、くまりんこ?
「…さすがに他人からそのように呼ばれると恥ずかしいですわ。そうですね、街に繰り出したいですわ。」
そうか。よし、外出しよう!出かける準備をして玄関受付まで来なさい。支度が整い次第私もそこに向かう。
「はい。それでは提督、また後で。」
そして私は机に書置きを残した
ー熊野へ 少し出かける。夕食刻までには帰るので留守を頼む ー
…ふむ……
「提督〜、お待たせしましたわ!」
よし、来たか…ほう
「…なんですの?ジロジロ見て…」
あ、いやすまん、よく似合ってるぞ。
「!!…ほんと?」
あぁ。今日は日差しが強い。麦わら帽子がよく映える日だな。
「ふふっ、褒めていただいて三隈、嬉しいですわ。さぁ早く行きましょ?」
そうだな。バス停からバスに乗って街に向かうぞ。
「はい!」
「バス、空いていましたわね。のびのびと乗れましたわ。」
ちょっと道が悪くて揺れるのには困ったが、空いていてよかったな。
「あら?もしかして乗り物には弱くて?」
いやいや、乗り物酔いではないぞ。だいたいそうならば海軍将校になれないだろう。
「ふふっ、そうでしたわ。提督が船酔いするお方だったら、今頃こうして提督とお出かけすることもできませんでした。提督が乗り物酔いしない方で良かったです。」
全く、変な物言いだな。だが、私も自分が乗り物酔いしないことに感謝しておこうか。
さて、どうしようか?ちょっと通りの店でも眺めてみるか?
「そうですわ!ウィンドウショッピングとやらをしてみたかったの!提督、お付き合いいただけて?」
喜んで、くまりんこ。
「だからその呼び方は…もう!ほら、お店に行きましょう!」
そっちは海だ。
「……………」
ははは、すまん、からかいすぎたな。さぁこっちだ。行こうか、三隈?
「…ずるいですわ。」
ん?
「いえ!行きましょ?」
「あぁ楽しかった!たくさんの品物が飾られていて見るだけでもとても楽しめましたわ!」
そうか。一つくらいなら買ってやらんこともないが、いいのか?
「いいえ、私が提督から何か頂いたら、熊野に怒られてしまいます。お気持ちだけありがたく頂きますわ。」
そうか。ならば、形として残らないものにしようか?
「…え?それって…」
ほらあそこに。うってつけの場所がある。あの店は私のお気に入りの場所だ。入ろう。
「!!嫌ですわ。確かに提督から指輪を頂いて絆を結んだこの身ですけれど、そんなことしたら熊野に申し訳が…」
?三隈、何か勘違いしていないか?
「勘違いというか、過ちを犯そうとしているのは提督でしてよ!目を醒ましてください!」
…三隈、後ろをとりあえず見てからもう一回話そう。
「見なくてもわかりますわ!鈴谷から聞いたことがあります。懇意の男女が夜な夜な……………」
Cafe Compas
「………………」
まぁなんだ。とりあえず中に入ろう。
「………………はい。」
「提督。」
ん?なんだ。
「先程の顛末、誰にも言わないでくださる?」
そうだなぁ。青葉あたりが喜びそうな話だよなぁ。ふむふむふむ
「!!!!!ダメ!ゼッタイダメです!新聞にまとめられたら私、もう鎮守府にいれませんわ!」
冗談だよ冗談。わかったわかった。誰にも言わないよ。安心なさい。
「むぅ〜」
面白い姿を見せてもらったお礼だ。何でも食べていいぞ。ここのケーキはどれも絶品だ。
「ものに釣られるような女では…まぁ、どれも美味しそう。」
だろ?ケーキセットでも頼むといいぞ。
「それならば、モンブランとチャイのセットをお願いしましょう。」
私はブラックにするか。
「あら?提督は何も食べませんの?」
こう見えて私はこの店のケーキは既に全て楽しんでいてね。また新作が出ればその時頂くつもりさ。
「あら、殿方のくせに女々しい趣味をお持ちですのね?」
む、甘いものに目が無いだけだ。全く。ほら、ウェイトレスさんを呼ぶぞ。
「ふふっ、ムキになって。」
「は〜美味しかったですわ!」
そうか。それなら良かった。
「提督は何がそんなに嬉しくてニコニコしていらっしゃるのかしら?」
ん?そうだな、自分のお気に入りの店を気に入ってくれたようで嬉しいんだよ。この店を知っている人は少ないからな。
「あら?その言い方だと、私以外とも来たことがあるように聞こえますわ?」
そうだな、三隈が2人目だ。
「1人目は?」
あ〜、流石にここで言うのは野暮では無いか?
「い・ま・さ・ら。本当に野暮だとお思いなら思わせぶりな口を謹んでくださいな。」
それもそうか。
「それで?だ〜れ?」
1人目は熊野だ。というかこの店は熊野と見つけたんだ。
「あら、良かった。」
?どういうことだ?
「いえ、もし1人目が熊野以外の方でしたら失望していたところでしてよ?」
そうか、それは危なかった。
「えぇ。提督のことは信頼しているのですから。私の妹のことを大事にしてくださる提督のこと、私もお慕い申し上げましてよ?」
面と向かって言われると照れるな。だが、ありがとう。
「それで?どういういきさつで見つけたのですの?」
そうだな、あれは矢矧捜索作戦失敗の後だったかな………
「すっかり遅くまで外出してしまいましたわね。みんなに心配されてしまいますわ。」
少し思い出話をし過ぎたな。夕食ギリギリの時間になってしまった。
「私も楽しくて時間の流れを忘れてしまいましたわ。提督、今日は一日ありがとうございました。」
出かけたのは半日だがな。
「ふふっ、なら、今日は半日ありがとうございました。」
言い直すことも無いだろう。今日は歩き回って疲れているだろうから、ゆっくり休んで明日の業務に差し支えのないようにしなさい。
「了解。提督もゆっくり…できそうにないですね。」
?提督業務はひと段落付いたはずだが…
「う・し・ろ。」
…あぁ。これは一つ説教を喰らいそうだ。果たして朝を迎えられるだろうか…
「ご武運を。」
あぁ。それじゃあ三隈、明日からも頼んだぞ。
「はい!航空巡洋艦 三隈、精一杯頑張らせて頂きます!」
「提督、このご恩、いつかお返しさせて頂きますね。いつか、必ず。」