なんで投稿が遅れたか?フロムゲーさいこ〜
釘崎さんに言われた言葉に、頭が真っ白になった。
「あんたの演技は私から見ても凄いわ。劇団ララライの天才俳優•••でも
その言葉に、頭を金槌で殴られたような衝撃が走った。
視界がクラクラする。
前にも同じようなことを言われたような?
突如、黒川あかねの脳内に溢れ出した
『私はアンタみたいなのが一番嫌い!!』
子供の頃、憧れの人に帽子を地面に投げ捨てられた時のことを思い出した。
『私の真似なんかするな!!』
今になってやっと意味が分かった。
自分は良しとしてやってきた演技は他人には、真似される人からは不快だったのだ。
何で気づかなかったのかな。
もう演技をやめよう。
所詮私には、誰かの真似事しかーー「ねぇ、今日予定空いてる?」
「え、特に予定はないですけど••••」
「へぇ・・・一緒に出かけましょ」
「へ?」
ドアを開けて外に出る釘崎さんを、私は慌てて追いかける。釘崎さんの足取りは力強かった。学生時代の写真とは違ってショートの髪はロングになり、左目に眼帯をつけている釘崎さんは、とても凛として綺麗だった。
「しっかり見てて。私が、私らしいところ、見せてあげる」
■□■
東京都内、撮影スタジオから30分の大型ショッピングモール。
「う〜ん、やっぱこのバック似合わないわね。次行きましょ!」
「えっ、は、はい!!」
あかねは釘崎の買い物に付き合わされていた。洋服、アクセサリー、コスメ、etc・・・それぞれの店に連れてかれ、試着して、あかね自身も試着して、ものすごい行動力がある買い物をした。
あかね自身は買い物には消極的で、演技や撮影では色々な服や衣装を着るが、日常生活にはある程度のものしか買っていない。だから釘崎に連れられ物を買うのはすごく新鮮に見えた。楽しそうに見えた。
2人はある花屋の前を通り、淡い赤色の薔薇の枝が釘崎の目に止まった。
「綺麗な薔薇ね・・・あ、2本ください!!」
薔薇を2本買い、1本の薔薇をあかねに差し出した。
「はいこれ。あと、少し用事あるからちょっと待ってて」
「は、はい」
(凄いな、釘崎さん。改めて私と正反対の人だな•••素体が良いから何着ても似合うしーー)
「お待たせ!」
「ーーえっ!?」
戻ってきた釘崎を見て、あかねは唖然とした。眼帯で覆われていた左目の代わりに、薔薇の花が咲いている。
眼窩に嵌められた何かに引っ掛けているのだろうさっき買った赤い薔薇が赫赫たる様子をしていた。当然、眼帯はつけていない。周りの人からの声がひそひそと聞こえる。だが彼女は一切気にしていない。
「私、きれい?」
「えっ、えっと・・・これ何か試されてます?」
「いや?私がしたかっただけよ。私はね、誰の視線も声も気にしない。めんどくさい奴なのよ」
くるりと前を向き、ズカズカと力強く歩いていく。
「周りから求められる完璧にも、周りから要求される理不尽にも、全て応えて受け入れる義務なんてないわよ」
「私はオシャレしてる私が好きなの。強くあろうとする私が大好きなの。私が私らしくあることが大大大好きなの・・・私は釘崎野薔薇だって、はっきり言えるから」
「あんたも、あんたが好きな自分でありなさい」
(•••あの村にいたら、この娘壊れてたかもね)
自分が自分らしく振る舞うことを否定するゴミ田舎。集団の中で望まれるように振る舞い続ける祖母や母、親戚の様子は、何でかあの娘と重なった。東京に来てから、もう会ったこともない。いや、会わなくていい。
ふみと沙織ちゃんにも再会できた。一緒に街を歩いて、オシャレな服や化粧品を買って、美味しいスイーツを食べて・・・楽しかったなぁ。この娘はまだ若い。自分の好きに生きて、好きに恋したらいい。
「住んでる世界は違うけど、人が可愛くなる条件はおなじだからね」
「ーーはい!!」
・・・・マリアもこの娘くらい素直だったらいいんだけど。
■■□□
深夜、曇天の埼玉県
ドラマ撮影も大詰め。
その日の撮影場所は、八十八橋だった。
「「釘崎!?」」
「問題ない。アンタはモグラを叩け」
「はいカット!!黒川さんいいよ〜」
「変わったね。黒川さん」
釘崎とのショッピング以降、あかねは変わった。なんというか自発的に話すし、よく笑うようになった。ちなみにそのショッピングに行った話を虎杖にしたら『やばい•••俺ひょっとして飽きられてるかも?』と落ち込んでいた。その後、釘崎にケツ蹴り上げられ、今度の休みにデートしてもらう約束を泣きながら懇願したとのこと。
「姫川さんと黒川さん撮影お疲れ様です」
「お、明星か。伏黒さんたち元気か?」
「あぁ〜多分禪院家の買取手続きで暇じゃないかと」
禪院家が禪院真希と家入美夜、柏山零により崩壊したのをきっかけに誰もいない廃墟となった屋敷を数人だけに使わせるのはなんか寂しいため、4年前に売った。しかしさすがは由緒ある名家である、文化財がひとつふたつその他諸々••••てなわけで任務の合間に売買の手続きをやっている。その伏黒の手伝いをしているのが押しかけ妻の来栖と姉の津美紀など。
「あ〜最近顔見てなかったのそれが原因か〜•••てか俺に労いは?」
「え•••虎杖先輩はこのくらいで根を上げるような人じゃないですよね」
事実、虎杖は成人男性5人を片手に乗せって腕立て伏せする。
「辛辣•••てかマリアは?」
「近くのコンビニに•••好きなアニメのフィギュアくじがあるとか」
「ついて行かなかったの?」
「『たまには1人にさせて』と。どの口が言ってるんだか」
一方マリアは•••
「君すごい美人だねぇ〜!!」
「え?え?」
ナンパされていた。
最近、ことあるごとに明星がついてきて少し鬱陶しく思ってきた。そこで彼女は明星を遠ざけ、コンビニに向かった。任務にも見学に行くにも必ず隣にいる。いつまでも子供みたいに扱われるのは少し癪だった。R15アニメキャラのフィギュアくじだったので、年齢確認のため学生証を出し、本人かどうか確認してもらうためにサングラスとマスクを外した。フィギュアを手に入れてコンビニを出て、今日は大収穫って思っていたら、出た瞬間にこの男に絡まれた。しかもサングラスとマスクをつけ忘れていた。
「ねぇ、君1人〜?俺と遊ばない?」
「え、え、えっと」
「ん?あれ!?キミさぁ"アイ"そっくりだね!?」
「っっっ!!?」
トラウマが蘇る。
息が荒くなる。頭から血が抜けていく。
こわい、こわいこわいこわいこわいっ!!!
「ねぇ返事してよ〜あ、OKってことかな?」
あ、意識が消えーーガシっ!!
私の腕を掴んでいた男の腕を掴んで、冷めた十字の瞳孔を向ける明星がいた。
「ーーー」
「は、離せくそっ!!う、訴えーー」
「お前、状況理解できない犬畜生じゃないから分かるでしょう?」
ミッッッシィィィィ•••••バキッ!!!
「今際の際ですよ?」
■■□■■
腕を折られた男は金色の縄に締め上げられ、ゴミ捨て場に投げ込まれた。
ポツポツと、雨が降り始める。撮影現場近く、つまり八十八橋真ん中に辿り着く頃には本降りになっていた。明星は黄金の傘を作り、マリアにも渡していた。マリアはマスクとサングラスをかけてフードをかぶってビクビクしている。
「あの、ありがとうございます••••私本当に顔見られるのコンプレックスで、虎杖さんに言われてますっけ。私昔のアイドルに似てるから、それだけで変な人がよってきて、それが、すごく怖くって••••」
明星は足を止める。
「・・・よし、叫びましょうか!!」
「へ?」
「自分の嫌なこと大声で叫ぶ、兄と姉から教えてもらった我が家秘伝のストレス発散方法です。貴女はどうです?気持ち楽になりたいでしょう?」
「えっ、えっと・・・「叫ばないんですか?んじゃ僕から・・・スゥーウッゼェぇんだよ五条家の勧誘ジジイ共ォォォォ!!!母さんのことあーだこーだ言いやがってぇぇ!!!いつまで"俺"が赤ん坊だと思ってるんだぁ!!!いつかテメェらの■■■引きちぎってまとめてファラリスの雄牛にぶち込んでやらぁぁぁ!!!!!!!
・・・ふぅ〜スッキリした。次は貴女ですよ」
「えっと•••その••••あ、自分ばーか••••」
咄嗟に自分に文句を言う。その様子を見ていた明星は呆れながら自分の考えを告げた。
「•••貴女が嫌いなのって貴女自身っていうより、星野アイじゃないですか?」
「ーーーーは?」
彼の考え、「星野アイが嫌い」は正解であり同時に彼女の地雷を踏んだ。
虎杖先輩に頼まれた以上彼女の面倒は見ないといけない。だが、このままでは自分やクラスメイトたちに依存してしまう。ならば荒療法で治すしかない。
「ぶっちゃけますけどねぇ•••お前我が弱過ぎるんだよ。学食選ぶにも"俺"か真倫が選ばないといけない、朝起きるのも自分じゃできない、虎杖先輩に頼まれてないとこんな面倒な女の手伝いしねーよ」
昔の一人称に変わる。
「•••••るさい」
「うるさくない。何をするにも誰かのお荷物にならないと生きていけない。そんな人間に呪術高専での居場所はねーよ。お前、顔だけは良いんだから他の仕事探せ•••
「うるさいうるさい!!!なんなの!?みんな私を腫れ物みたいに扱って!!!みんな母さんと同じ!!!私をアイ、アイ、アイアイアイアイアイっって!!!あの女のせいで私の人生めちゃくちゃだよぉぉぉ!!!」
マリアは大声を上げて怒った。普段の彼女を知っている人間がいたらかなり驚くだろう。息を荒くしながらフードを上げる。
「アイのファンに聞かれたら殺されそうだな•••」
「あぁはいそうですよぉぉ!!私は全くダメな人間だよぉぉぉ!!!ずっと悠仁さんと野薔薇さんの影に隠れてきた!!そんな私と比べて、家入くんはまるでお星様だよ!!私みたいな日陰者も照らす明けの明星!!!でもそのせいで私の存在まで光で塗りつぶされそうなんだよぉぉ!!!」
「••••はっず。僕のことそう思ってたの?」
「私だってねぇ!?望んでこんな顔になったんじゃねぇよ!!お陰様でぇ!?小学生の頃は知らね〜男子に告られてぇ、女子にイジメられたわ!!!」
「おぅ・・・人間の嫉妬ほどうざいのないですよね」
「つーか"アイ"って人何なの!!?街歩けば視線浴びるしぃ!!医者にも塾の教師にも間違って"アイさん"って呼ばれたしぃ!!?もう私が誰だかわからないんだよ!!!」
「そうそう、もう思いっきり叫んで!!」
「私は"アイ"じゃなぁぁぁい!!!!私はァ!!"虎杖マリア"だぁぁぁ!!!!」
気づけば傘が消え、2人ともずぶ濡れだった。理不尽に怒り散らし同級生の前で醜態を晒したマリアの頬は紅潮して、その様子を明星は笑っていた。もうビクビクしていたアイの代用品のマリアはいない。虎杖悠仁と釘崎野薔薇の養子のマリアがそこにいた。
「・・・気分は?」
「・・・最高」
さあ急いで傘をーーー視線の先には地蔵菩薩印を結んだ虎杖がいた。
「ちょっまってーー「何でマリアが泣いてんだ?」ーーあ、死んだ」
「領域展開」
この日、明星はまじで死にかけた。
□■□
『よぉ、親友』
「•••ん?どうしたのコハク」
『いや、頼みがあるんだが•••お前音楽できる?』
「???まぁ楽器全般できるけど•••」
『頼む••••俺らと一緒にバンドやってくれ』
「いいよ、親友の頼みだ」
次回からコハク側です。