4月後半、入学してから1ヶ月が経とうとしておりこの頃になると部活も学生生活も多少慣れてきたもんだ。そんな俺は今日も今日とて部活に精を出していた。ウォーミングアップのランニングを終え筋トレに入ろうとしていた時厳島先輩と獅童先輩からお呼びが掛かった。十中八九今度の土曜の練習試合の事だと思うんだが……
「荻野、土曜日の練習試合先発はお前でいくぞ」
「マジすか!?」
俺は驚きのあまり声を上げてしまった。登板するとは聞かされてたが先発かよ、流石にそりゃ予想してなかったぞ。獅童先輩はケタケタと笑いながら俺に話しかけてくる。
「何だよ緊張してんのか?まぁお前はとりあえず俺の構えた所に投げろって」
獅童先輩は軽ーくそんな事を言ってくるがそれが出来りゃ投手って生き物は苦労しねぇよ。
「そう緊張するな、あまりこういう言葉は使いたくないが相手は格下だ、それにお前のマウンド上での動きも見たいしな」
「安心しろよ、お前が何点取られようと厳島先輩と世良先輩がそれ以上に点を取ってくれるよ」
「いやマウンド上に立つからには点をやるつもりはねぇっすよ」
「フッ期待してるぞ」
そして時間は経ち練習試合を控えた前日の金曜日の昼休み、俺は教室で弁当をつついていた。今日は心なしか教室で簡素な飯を食う生徒が多い気がする、まぁ4月も後半だしそろそろポイントが底を尽きかけてる奴が多いんだろう。そんな俺は綾小路と堀北と昼飯を食べていたのだがどこに行っていたのか櫛田が教室へ入ってくると真っ先に俺の元へと駆け寄って来て少し興奮気味に話しかけてくる。
「荻野君!明日学校の練習試合で投げるって本当!?」
な、何故櫛田がその事を……と思っていると携帯端末が震えメールが届いていた。差出人は一之瀬、内容は櫛田に明日俺が先発で投げる事を話しちゃったごめんね☆との事だった。☆じゃねぇよ、お前絶対悪いって思ってねぇだろ。まぁ隠しても意味もねぇし、しょうがねぇか。
「あぁ、本当だよ一応先発で投げる予定だ」
「すごーい!1年生なのにもう試合でるんだね!」
オイバカやめろ櫛田、そんなでかい声で話すな……そら周りの奴等が食いついてきやがった。
「えっ!?マジ!?すごーい!」
「荻野君もう試合でるの?」
「未来のエースって事!?」
「試合見にいこっかなー」
ぎゃああああ!やめろ!特に試合とか見にくんな!と口には出せず俺は乾いた笑いをするしかない。別にハナから負けるつもりは微塵もねぇがこれでコテンパンに打ち込まれたら俺はどんな顔して来週学校に来ればいいんだよ!一之瀬の野郎、後で覚えてやがれよ。
「凄いな荻野、もう試合に出るのか」
「貴方本当に野球が上手かったのね、正直口だけだと思ってたわ」
綾小路から賞賛され堀北からは褒められてるのか貶されてるのかよく分からないお言葉を頂く。お調子者の池までやってきて後はもうお祭り状態だ。チクショウ、もうどうにでもなりやがれ。
「暇だから見に行ってもいいか?何時からなんだ?」
「お、おう9時からだな」
綾小路の提案は流石に断れねぇ……がクラスの奴等はそれを良い風に捉え口々に好き勝手言いやがる。うぜぇ、綾小路はダチだから良いんだよ!
「私も絶対に見に行くからね!」
「分かった、分かったから騒がしくだけはすんなよ、俺が先輩に怒られるからな」
おおぅ……もう……本当にどうにでもなりやがれ。こうして俺の高校初登板は嬉しいやら悲しいやらクラスメイトWith一之瀬に見守られる事が決定したのだった。
という訳でその日の放課後、一応先輩達にクラスメイト達が応援に来るらしい事を伝えると大爆笑された。主に獅童先輩にだが。
「ハハハハ!腹いてぇ!流石未来のエース様はやることがちげぇな!」
「流石黄金ルーキー様やねぇ、こら明日気合い入れんと俺等一年で笑い者になるで……そうはさせんでくれるよな未来のエース様?」
乙坂先輩からは若干トゲのあるありがたーい一言を頂いた。あと獅童先輩は後で覚えてやがれよ。
「どうせ大会は衆人の前でプレーをするんだ、良い刺激になるだろう、だがあまり他校が不快に思うような応援だったら止めて貰うぞ?」
「ッス!そこは釘差しておいたんで大丈夫だと思います!」
「ガハハハ!腕がなるなぁ荻野ォ!」
「ッス!見せつけてやって下さい世良先輩!」
練習試合で応援にくる生徒の存在が珍しいからか先輩達は特に難色をを示さずむしろ歓迎ムードが漂っている。後は明日俺がきっちりと相手打線を抑えられれば問題はない。
「そうだ、言い忘れていたが明日の試合点数に余裕があれば入江と郷田も試合に出そうと思っている」
「って事らしいからよろしく頼むよ荻野くん」
「……死んでも抑えろ……そして俺達を試合に出させろ」
「んにゃろう……やってやろうじゃねぇか」
またいらねぇプレッシャー掛けてきやがって……これで炎上なんてしたら俺は恥ずかしさと情けなさで死ぬかもしれねぇ……絶対に負けられないと意気込み練習に励むが自主練習は明日先発だからやめておけと獅童先輩に言われたためクールダウンを終えた俺はいつもより少し早く寮へと帰宅していた。
「つってもやる事もねぇしな、しゃーねぇたまには自分で飯作るか」
自炊……というにはあまりにもお粗末ではあるがミートスパゲッティを作り食べる。
「っかしーな、作り方は変わんねぇのになんで一之瀬が作ったやつの方がうめぇんだ?」
首を捻りながら咀嚼するがやはり一之瀬が作った方が旨い。今度料理のコツでも聞いてみるか。その日はいつもより長めに風呂に入り早めに寝床に就く。体の程よい怠さが眠気を誘い俺は意識を手放すのだった。
翌日
「ッし!」
「ナイスボール!」
俺は試合開始前の最後の調整としてブルペンで投げ込みを行っていた。ストレートの走りは良いし心無しかいつもより球も伸びでいる気もする。スプリットもよく指に掛かるし低めに集まる。
何が言いてぇかと言うと調子は悪くないって事だ。
「おーし、ここまでにしよう」
「あざした!」
「調子は良いみてぇだな、これならコントロールさえ乱れなきゃそう簡単には捉えられねぇ、後はビビらず俺のミットに投げ込んでこい!」
「了解ッす!リードよろしくお願いします!」
俺が頭を下げると獅童先輩は任せろよと言ってバッティングの練習へ向かう。俺は水分を摂るためベンチの方へ向かうと既に一之瀬や綾小路、櫛田、そして軽井沢や佐藤、篠原、池と山内と言った面々が応援に来てくれたのを見つけたため駆け寄る。
「おう!応援来てくれてサンキューな!」
「いや~私も初めて荻野君が試合で投げる所見るから楽しみだよ!」
「友人の応援は友人の務めだからな、まかせろ」
綾小路は心無しかいつもより表情がイキイキとしており一之瀬は興奮が抑えられないようでいつにも増してテンションが高い。
「へへ、負けても骨は拾ってやるぜ!」
「当たって砕けろ荻野!」
「うるせぇよお前ら、試合が終わったら覚えてやがれよ!」
池と山内は応援をしているんだがしてないんだか、コイツ等に関しては櫛田が目当てなんだろうな、今も視線はチラチラと櫛田の方に向いてるし。
「私よく野球分かんないけど頑張ってね荻野君!」
「「頑張れー!」」
「かっこわりぃとこは見せらんねぇな!」
櫛田や佐藤、篠原からもエールを貰い元気と一緒に野郎二人の嫉妬も貰ったがまぁそれは些細な事だろう。そして俺はここに居るとは微塵も思ってなかった意外な人物に声を掛ける。
「軽井沢もサンキューな」
「……まぁ頑張れば」
コイツはなんつーか水泳の授業以降意図的に避けられてる気がする、いや別に今まで距離が近かった訳じゃねぇから俺の気のせいかもしれねぇが、どこか壁を感じる。しかしなら何で来てくれたんだ?佐藤と篠原の付き合いとかか?そんなこんなしていると相手高校が到着したため俺はチームの輪に戻っていく。両高軽いノックをした後整列しいよいよ試合が始まる。
「プレイボール!」
じゃんけんの結果表の攻撃は相手さん、裏の攻撃が俺等となった。俺はまだ新しい踏み均されてないマウンドの上で深呼吸しながら昨日先輩に教えて貰った相手高校の情報を整理する。最近勝率を上げてきた都立の高校で積極的な走塁と小技で投手を撹乱し確実に一点をもぎ取りにくるスタイルらしい。だがよぉそれは裏を返せば……!
「塁に出なきゃ怖くねぇって事だろ!」
俺の投じた球は唸りを上げながら真ん中高めに突き刺さる。
「ストライク!」
相手の高校はどうやら一年生が先発投手と舐めていたようだが俺のストレートを見て言葉を失っていた。相手が度肝を抜かれている間に1番バッターを三振、2番バッター、3番バッターも続けて三振に切ってとる。
「しゃあ!」
「ナイスピッチ荻野!」
「ナイスピッチだ、見てろ点とって楽にしてやるぜ」
高度育成ナインから声を掛けられ俺はベンチに下がっていく。さぁて先輩達は何点とってくれるかなっと。ちなみに俺は投球に専念するために打順は9番になっている。別にバッティングも苦手って訳じゃねえがここは先輩達の気遣いをありがたく受けとるのが後輩ってもんだろう。そして十数分後、何故か俺はネクストバッターサークルに立っていた。スコアボードには4の文字が刻まれており今8番バッターの望月先輩がゴロに倒れようやく一回裏の長い攻撃が終わった。オイオイこれじゃあ俺が点取られなきゃ五回コールドもあるんじゃねぇか?そしてその予想は当たり一巡目で相手校は俺のストレートとチェンジアップに対応しきれず三振と凡打の山を築く。そしてこっちのスコアボードには着々と点数が刻まれていき気がつけば5回の表開始時点でスコアは10対0、つまり俺がこの回を抑えきればコールド成立って訳だ。つーか滅茶苦茶つえぇじゃねえか先輩達!そして昨日の宣言通り入江と郷田が守備に着き相手の攻撃が始まろうとしていた。
「あと三人!油断せずきっちり締めろよ!」
獅童先輩から発破をかけられつつ俺は相手打者を見つめる。この回は4番からスタート、何がなんでも塁にでようという気持ちが前面に出ている……がこの回からストレートとチェンジアップに加えてスプリットを解禁し、ついぞ相手のバットから快音は鳴り響かず5回コールドとはいえ俺はノーヒットノーランを達成。高校野球の滑り出しとしてはこれ以上ない結果を残す事が出来た。
「ハハ……出来すぎだろ……」
試合終了の際相手チームが俺の事を信じられない物を見るような目で見てきやがった。だがようやく中学の頃からの努力が実った、左腕ピッチャー荻野吾郎として俺は蘇りそしてマウンドに上がる資格をようやく得た。さていつもならここから練習となってもおかしくはないらしいが試合の内容が出来すぎていたため特例で試合終了後は解散となった。まさかの早すぎる部活動の終了に驚きを隠せねぇが5月の連休には合宿も用意されているためそこに備えておけとの事。そういう訳でいつもより早く解放された俺は応援に来てくれた一部の面子綾小路、池、山内と少し早い昼飯に来ていた。一之瀬はクラスの友人と約束があり櫛田と軽井沢のグループの三人はどうやら平田と先約があったらしい。そんなこんなで残り物の俺達はラーメンを食べに来ていた。
「改めて応援に来てくれてあんがとよ」
「圧巻だったな、全然ボールが前に飛んでなかったぞ」
「クソー!モテるためにはあれくらいしなきゃ駄目って事か!?」
「つーか男四人で飯ってのも悲しいもんだな、ここに須藤がいれば完璧だったんだけどな」
確かに池の言うとおりどうせなら須藤もいれば良かったのだが須藤はバスケ部の練習のためこの時間は大体部活に励んでいる。
「まぁここは1つ男しかいないからこそ出来る話しでもしよーぜ」
「ってなるとやっぱクラスの中で誰が1番タイプがって話だよな!」
「いやお前ら二人はどうせ櫛田だろ」
綾小路がラーメンを啜りつつ冷静な突っ込みを入れるがこうなった二人はちょっとやそっとの事じゃ止まらない。その証拠に突っ込みを入れた綾小路に矛先が向かっていた。
「綾小路はまぁ堀北ちゃんか」
「だな、お前位だろ堀北と仲良いの」
「本人に聞かれたら俺は殺されてしまうぞ」
確かに綾小路は席が隣の関係からかよく話すのを見掛ける。俺も最近じゃ少しだけ言葉を交わす仲にはなったが言ってしまえばその程度の関係だ。こんな俺ですら恐らくクラス内で堀北と話す方に分類されるんだろうからアイツの交友関係の狭さは相当な物だろう。
「アイツの容姿が優れているのは否定せんがだからといってそういう関係を疑われるのは困るな」
「まぁ普段の様子を近くから見てる身分からするとお世辞にも恋仲とは言えねぇわな」
俺と綾小路の発言に池と山内はつまらなそうにするがすぐに矛先を俺へと向けてくる。
「ほーう、なら我等がエース様はクラス内だと誰が1番好みなのかな?」
「一之瀬ちゃんは無しだぞ!あくまでクラス内での話だかんな!」
「あ?あー……」
ぶっちゃけクラスの女子をそういう目であんまり見たことねぇが強いて上げるとすれば……駄目だ、思い付かねぇ。それはそれで失礼な話だとは思うが今の俺は野球が一番だしな、別に櫛田とか普通に可愛いと思うがタイプか?と聞かれたらなぁ?なら別方向でアプローチだ、そう例えば意識する奴とか……あ……。
「軽井沢とか……か?」
「は?オイオイマジかよ、お前からその名前が出てくるとは」
「でも残念だったな!軽井沢は平田と出来てるって噂だぜ!野球の試合では勝てても恋のバトルには勝てなかったな荻野!」
「へぇ……意外と平田も手がはえぇんだな、あんましそういうタイプに見えなかったからそれりゃ意外だ」
「かっこつけんなよ!やーい失恋してやんの」
コイツ等の軽口は適当に流すとして、成る程、軽井沢は平田を好きなのか……まぁ今日も平田と遊びにいってるみたいだしそうなんだろな。しっかしなんつーかアイツの俺に対する態度は引っかかる物がある。具体的などこが?と言われれば自信はねぇんだが……うーんよくわかんねぇ、いっそ本人にでも聞いてやりたいがアイツいっつも誰かと居るから微妙に話しかけづれぇんだよな。その後も他愛ない話をした俺達は飯を食ったら解散し暇をもてあました俺は結局バッティングセンターに籠り休日を終えるのだった。
翌週月曜日
もう5月に差し掛かろうとしておりクラス内では早くポイントの支給日が待ち遠しいと持ちきりだ。さてそんな中1-Dクラスでは突発的に小テストが行われており俺はテスト用紙を前にして頭を抱えていた。というのもこの小テストの内容が中学の時に習った初歩的な物中心なのが問題だった。これがこの学校に入学してからの問題ならば多少は解けた自信があるが、中学の時の俺は義務教育だから何をしようと卒業出来るのを良いことに授業中であろうと左手に慣れる事に集中していた事やクラスメイトの下らねぇイジメのせいでとても授業なんて聞けたもんじゃなかった。俺の中学の教養は全て受験勉強で培ったといっても過言じゃねぇ、しかも一之瀬が作った入試問題に特化したものしかやってないから俺の中学過程の知識はかなり偏りがある。しかもアンバランスな事に何故か最後の3問に至っては今までの問題とはどう見ても釣り合いの取れないクソ難しそうな問題だしよ。何とか埋められる所を埋めるが正直半分も解けなかった……が茶柱先生曰く成績には反映されないらしいのでそんなに悲観する事もないだろう。だとしたらこのテストをやる意味がよくわかんねぇな。テストなんて成績以外でなんか意味があんのか?
そんな謎の小テストを終え、茶柱先生が教室から出る際何かを思い出したように立ち止まり俺に声を掛けてくる。
「そういえば荻野、先日私に聞きたいことがあると訪ねてきたみたいだな、少し星乃宮から話を聞いた、私も詳しく聞こう、着いてこい」
ようやく聞けんのか、つうかぜってぇ今の今まで忘れてただろ、まぁ別にいいけどよ。
「何だ荻野?お前茶柱に聞きたいこと事なんてあんのか?」
テストを終えだるそうに机に突っ伏す須藤が顔だけ横に向けて声を掛けてくる、つかナチュラルに担任呼び捨てかよ。須藤だけじゃなく他のクラスメイトの内何人かからの視線まで集めちまってる。
「あぁちょっとな……つーことで行ってくるわ」
本当なら俺も綾小路か堀北辺りにさっきの訳の分からねぇ小テストについて話したかったが……まぁ帰ってきてからでも出来んだろ。
俺は駆け足で茶柱先生の元へ迎いそのまま着いていくと茶柱先生が向かったのは生活指導室という何とも物騒な字面の教室だった。てっきり職員室だと思ったんだけどな。
「あのー、何か俺マズイ事でもしました?」
「いいから、入れ」
んだよ!問答無用かよ!俺結構真面目に学生やってた筈なんだが……まぁ選択肢なんてねぇから入るけどよ。つーかただでさえ冷たい雰囲気の人なのに今日は何時もの3割増し位でこえーよ、この人こっちが素なのか?
さて生活指導室に入った感想は殺風景の一言に尽きる。俺は茶柱先生に促されるまま先生と対面する形でパイプ椅子に腰掛ける。
「それで……まさか私のクラスで真っ先にこの学校の核心にせまる生徒がお前とはな、少々驚いたぞ」
「核心って……そりゃ大袈裟過ぎやしませんか?別に変な質問じゃないでしょ」
「事この学校ではそうじゃないという事だ、それで?留年と退学の基準だったか?まぁ留年については少し調べれば分かる事だから答えてやろう、この学校に留年という概念は存在はするがかなり難しい」
「は?なんすかそれ?まるで退学の方が簡単みたいな言い草っすね」
留年については質問というより確認という意味合いが大きかった、まぁ余計分からなくなったがむしろ今の質問でより重みを増したのは退学の明確な基準だ。
「退学の明確な基準は答えられない」
「それ学校としてどうなんすか?」
「ふっ……そういう所なんだよここは」
「いやフツーあるでしょ!例えば成績が赤点とか!暴力沙汰起こしたとか!」
「……ノーコメントだ」
答えられねぇってそれじゃあまるでそれ以外にも……もっと別な退学する可能性があるみたいじゃねぇか、オイオイ冗談じゃねぇぞ……。
「ふむ、ちょっとリップサービスが過ぎたか、ちなみに今日話した内容は明日の1時間目のLHRが終了するまで口外は禁止だ」
「ハァ!?何でだよ!」
「何でもだ、口外すれば貴様を退学処分とするからそのつもりでいろ……まぁその変わり良いことにを1つだけ教えてやる、明日がポイントの支給日だからといって今日ポイントを使いすぎない方がいいぞ……」
ちっ……てことはやっぱり貰えるポイントの額は確実に今月より少ないって事じゃねえか。まぁ幸い俺は野球部の歓迎レクリエーションで大量のポイントを持ってるから減ってもそんなに痛くはねぇ、それ抜きにしても無料品とか割引品とか基本的に使ってるから節約は出来てる。問題は支給されるポイントがどれくらい減るかだ、それによっちゃあ明日、クラス内は阿鼻叫喚だろう。もし仮に来月振り込まれるのが10000ポイント位だとしたら相当悪質たぜ、4月にポンと10万ポイント渡しておいて次の月はその10分の1とかだったら確実に金銭感覚狂ってるだろうから碌な事にならねぇだろ。
「まぁ発想は凡庸だが着眼点は悪くなかったぞ、惜しむべくはもう少し深く考え尚且つ早く気付き行動に移すべきだったな……話は以上だ、戻っていいぞ」
「けっ……全然惜しくもねぇじゃねぇか、クソッ」
「そう悲観するな、疑問を持っただけまだマシな方だよお前は……そら休み時間がなくなるぞ」
俺は茶柱先生に促されるがまま生活指導室を後にする。おじいちゃんとおばあちゃんに迷惑を掛けねぇで野球をするためにこの学校に入学したんだが……こりゃめんどくせぇ事になりそうだ。今まで以上に自分の置かれてる環境に疑問を持ってそれを解消してかねぇと……まいったな、こういうのはガラじゃねぇんだが……悪くはねぇな。
「おもしれぇ……俺が夢の舞台に駆け上がるためにもやってやろうじゃねぇか」
こうして俺の高度育成高等学校のこの学校風に言うならば実力の試される3年間が幕を開けたのだった。