そんな訳で10話どうぞ!
「おーおー、その顔、ちったあ男前になったんじゃねぇか?」
顔に引っ掻き傷を付けられた士道が七罪のいる部屋から出ると、同じく引っ掻き傷の付いた琴里とニヤニヤとした笑みを浮かべたグラトニーが出迎えた。
「え、なんでグラトニーがここに……?」
「あんたが七罪と話してる間に1人やって来たのよ。あんたが七罪にやられてる所を見にわざわざね」
そう言いながら琴里は嫌そうな顔で隣に座っているグラトニーを見る。
「否定はしねぇよ、五河妹。オレは飢餓程じゃねぇが退屈なのも嫌いなんでな。面白いことになんのが分かってんのに見に来ねぇなんてありえないぜ」
「趣味悪いわね………」
「いくらでも言えばいい。別に言われた所でオレは痛くも痒くもねぇからなぁ」
琴里の吐く嫌味にもグラトニーは動じずむしろ愉悦の笑みを深める。しかし顔が美人なだけに非常に様になっていた。
「……ちょっと、何ボーッとしてんのよ!このバカ士道!」ドスッ!
「ぐえっ!?」
その表情を見て頬を赤らめていた士道の脇腹に琴里は肘打ちを入れる。
「(分かってんの?彼女もいずれ攻略しなきゃいけない精霊なのよ?士道がデレさせなきゃいけないのにあんたがデレてどうすんのよ!)」ヒソヒソ
「(ご、ごめん……)」ヒソヒソ
琴里の言うことは最もだ。デレさせるべき相手に逆にデレてしまってるようでは意味がない。
………それ以外にも愛する兄が他の女にデレデレしてるのが気に食わないという私情も混じっているが。
それに素顔が美人と分かっても、目の前にいるこの女は最凶と呼ばれている精霊なのだ。
「(一刻も早く七罪を治療するためとはいえ、グラトニーまで回収しちゃったのは軽率だったわね……)」
今は大人しくしてくれているが、一度気が変わると何をするか分からないのだ。司令という立場から警戒するのは当然だった。
「さーてと。面白いもんも見れたし、オレはこの施設から出ていかせてもらうぜ」
「なっ!?いくらなんでも気まぐれ過ぎるわよ!?」
「オレはオレの思うままに動く。それにオレを勝手に回収したのはそっちじゃねぇか。ここに留まってたのは五河と話しをしたかったからだ。もう用はねぇ、じゃあな」
そう言ってグラトニーは消失する形で施設から去っていった。
「………」
琴里はグラトニーあまりの気まぐれぶりに口を開けたまま放心していた。
「お、おい琴里」
「ハッ!?……もう!なんなのよー!!」
士道から声を掛けられ我に返った琴里は頭を掻きむしりながら荒い声を出す。グラトニーのことで悩んでいるのにその張本人の自由っぷりを見てはこんな声も出したくなるもの。
「ハア…ハア……とにかく、グラトニーはいなくなったわ。士道は七罪に集中して。今の精神状態じゃ封印なんて到底無理よ。身体が回復して天使が使えるようになる前に打ち解けないと」
「うーん……」
琴里の言う通り、七罪を攻略する上で厄介なのはあの凄まじいネガティブさと本当の自分への強烈なコンプレックスだ。あれを何とかして緩和しない限りまともに話しもしてくれないだろう。
「……あ」
と、腕を組んで考え込んでいた士道はあることを思いつきポンと手を打った。
「なあ琴里。上手くいくかは分からないけど、こんなのはどうだ?」
士道は琴里に自身が思いついた案を簡単に説明する。
「……なるほどねぇ。……いいわ。他に手段もないし、試してみましょう。必要なものは全部こっちで用意してあげるわ」
「ああ、頼む。俺はみんなにも協力してもらえるか聞いてくる」
「ええ、お願いするわ」
琴里は口に咥えていたチュッパチャップスを指で挟み、唇の端を上げた。
数日後……
グラトニーside
「ふぅ……」
あの施設から去ってから数日、オレはとある廃ビルで適当に殺し捕らえた人間を食い終え一息ついていた。2、3人程度食った所でたかが知れてるが、何か口に入れたい気分だったからなぁ。
あれから素顔はずっと剥き出しにしている。仮面は失ったのは少し残念だが、割れちまったならただのゴミだ。それに顔を知られた所でオレには何も思う所はねぇからな。
ウウウウウウウウウウ!!
「ん?」
そんなことを思ってると、突然街に警報が響き渡った。窓から外を見てみると、人間達が次々とどっかに避難して行っている。
「どうなってやがんだ?精霊じゃあなさそうだなぁ」
外に出て歩き回ってみるが、一向に空間震が起こらねぇ。コイツは精霊が出たから鳴った訳じゃなさそうだなぁ。
「七罪ー!七罪どこだー!」
すると遠くの方から聞き覚えのある声が聞こえ、そっちに目を向けると五河が誰もいなくなった街を走り回っていた。
「っ!グラトニー!」
どうやらオレに気づいたようでこっちにやってくる。
「グラトニー、七罪を見かけなかったか?施設から逃げちまったんだ」
七罪?……ああ、あの緑髪のガキの精霊か。
「いんや、オレは見てねぇな」
「そうか……あっ!ならお前も早く逃げた方が良い!もうすぐこの街に人工衛星が降ってくるらしいんだ!」
……成る程、ならこの警報はそれを誤魔化すためのカモフラージュって訳か。
「オレは七罪を探さないといけないから、お前は早く逃げろ!じゃあなっ!」
そう言って五河は走り去っていった。
「……人工衛星か、面白え…!」
オレは五河に言われたことを思い返してニヤリと笑みを浮かべた。