暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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今回はちょっと展開を変えます。

そしてグラトニーの天使初披露です!


12話

『士道!聞こえる!?』

 

「ど、どうしたんだ琴里」

 

2機目の人工衛星を破壊し、七罪の霊力を封印した士道は、インカムから聞こえてきた琴里の焦った声に眉を潜める。

 

『空に魔力反応が観測されたわ……さっき取り逃した空中艦から爆破術式の反応が……!』

 

「何だって……!?」

 

それを聞き士道は息を詰まらせた。

 

「む?どうしたのだシドー?」

 

明らかに様子が変わった士道を見て、十香達が首を傾げながら話しかけてくる。士道は空を見上げながら口を開いた。

 

「……どうやら、まだ終わりじゃないらしい。また、さっきと同じもんが落ちてくるんだってよ」

 

『な……!?』

 

士道がそう言うと、精霊達も一斉に顔を緊張に染めた。そして士道と同じく空を見上げ再び落ちてくる殺意の塊を迎え打とうとする。

 

しかし七罪の霊力はもう封印してしまっており、他の皆も力を消耗してしまったため、先程と同じように迎撃するのは難しいだろう。

 

それでもやるしかないと、士道は右手に精神を集中させる。

 

「ぐぁ……っ!」

 

が、塵殺公が顕現する前に、全身に凄まじい痛みが走り、その場に膝をついてしまう。

 

「シドー!」

 

それを見て十香が心配そうに駆け寄ってくる。しかしこの間にも敵が待ってくれる筈もなく、対象は徐々に落下してくる。

 

「くそっ……どうすれば……」

 

このままでは天宮市そのものが落下によって壊滅してしまう。しかしもう自分達に迎撃できる力は無い。フラクシナスも動いてくれているみたいだが、落下する前に間に合うか分からない。

 

絶対絶命な時だった、

 

 

 

 

 

「よう、五河」

 

グラトニーが現れたのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よう五河。どうしたそんな面して?」

 

いつもと変わらない様子で現れたグラトニーは士道を見てそう言ってくる。

 

「人工衛星は破壊したんだろう?その割には随分空気が重いじゃねぇか」

 

「グラトニー……じ、実はまだ終わってないんだ!さっき破壊したのと同じやつがまた落ちてくるんだ!」

 

「何だとぉ…?」

 

士道から告げられたことにグラトニーは意外そうな表情を浮かべた。2度も迎撃したためもうないと思っていたのである。

 

「頼む!このままじゃ皆死んじまうんだ!迎撃するのに協力してくれないか!」

 

『士道!何言ってるの!?』

 

インカムから琴里の声が聞こえるが、士道にはそれに反応している余裕は無かった。もう自分達に対処できる力は無い。フラクシナスも間に合うか分からない以上、今頼れるのはグラトニーしかいなかったのだ

 

「………」

 

「悔しいけど、もう俺達にはアレを破壊できる力は残ってない……。七罪の霊力も封印しちまったから、もうお前しか頼れないんだ!頼む!この通りだ!」

 

「し、シドー!?」

 

その行動に十香達は驚愕した。なんと士道はグラトニーに土下座してまで頼み込んだのだ。しかし十香達も分かってはいるのだ。このままじゃ街そのものが消えてしまう。それを阻止できるのがもうグラトニーしかいないことに。

 

『士道……』

 

その行動を琴里もモニター越しで見ていた。そして拳を握りしめた。今の自分達じゃ落下までに間に合わないことも分かっているからだ。

 

「………」

 

士道からの必死の懇願に、グラトニーはしばし無言でいたが……

 

 

 

 

「……分かったよ、やってやる」

 

やがて口を開きそう返した。

 

「ほ、本当か!?」

 

「ああ、ただし条件だ。オレがこれから使う力について詮索しねぇなら良いぞ」

 

「え?あ、ああ、分かった」

 

「よし、じゃあ早速やるとするか」

 

士道の返答を聞き、グラトニーは空を見上げた。すでに上空には落下してくる空中艦が見え始めており、もう一刻の猶予もない状況だ。

 

「まずは動きを止めねぇとなぁ」

 

そう言うとグラトニーは右手を宙にかざした。

 

 

 

 

 

「来い……《刻々帝》・リミット」

 

その言葉と共にグラトニーの背後に士道にとって見覚えのある巨大時計が出現した。

 

「え……!?な、なんでグラトニーが、狂三の天使を…!?」

 

士道はグラトニーが狂三の刻々帝を顕現させたことに信じられない様子だった。インカムからも琴里やクルー達の動揺する声が聞こえる。

 

「止まれ、【七の弾(ザイン)】」

 

そんな士道達を他所に、グラトニーは右手に顕現させた短銃を空中鑑に向けると、引き金を引いた。

 

銃口から放たれた弾は一直線に空中艦に向かっていき、やがて命中する。

 

すると、天宮市上空で空中艦はピタリと停止した。

 

「さーて、じゃあやるとするかな」

 

グラトニーはそう言って刻々帝を消滅させる。そして不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

「《悪食之腕(アリエル)》」

 

そう口にした瞬間、グラトニーの周りに黒いオーラが立ち上り、それが彼女に集まり包み込む。

 

やがてオーラが消えると、グラトニーの両腕が黒いガントレットに覆われ、背中には禍々しい6本の腕が生えマントの如く垂れ下がっている。

 

「さあ、いくぜぇ」

 

自らの天使を顕現させたグラトニーは勢いよく跳躍すると、空中で停止している空中艦へ向かっていく。

 

「《悪食之腕(アリエル)》、【捕食手(プレデター)】!」

 

グラトニーがそう叫ぶと、彼女の背中にあった腕が巨大化し、閉じていた手が開く。

 

ガパァ

 

その掌には大きな口がついており、その歯も刃の如く鋭いものになっている。

 

「行け」スッ

 

その一言と共にグラトニーが空中艦に手を向けると、6本の巨腕が凄まじい勢いでその方向へ伸びていく。

 

ガシッ!

 

そしてそれぞれの腕が空中艦の表面を掴んだ。

 

ギギギギギ………

 

その直後、地上の士道達にも聞こえる程の大きな音が響き渡り、それと同時に空中艦が徐々に小さくなっていく。

 

そして空中艦は上空で爆発することもなく、グラトニーの巨腕6本に押し潰された。

 

「よし、戻れ」

 

グラトニーがそう言えば、6本の腕の内5本は元の大きさとなり、再び背中に垂れ下がる。

 

そして残った腕の手には、極限まで圧縮され鉄屑となり果てた空中艦だった物があった。

 

バクンッ

 

その鉄屑も掌についた口に飲み込まれ、空中艦は完全に消失した。

 




はい、グラトニーの天使は悪食之腕ことアリエルです!そしてグラトニーの刻々帝・リミットについては狂三が関係しています。
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