「よっと。これで街は問題ねぇぞ」
『………』
士道達の前に降り立ったグラトニーがそう言うも、彼らは口を開け唖然としていた。
「アレを……食べた……」
てっきり上空で破壊するものと思っていただけに、まさか最終的に空中艦を喰らうのは予想できなかったのだ。
「な、なあグラトニー……今のって……」
「おっと、詮索はしねぇって約束だろ?」
「あ、ああ、そうだったな……」
「……まあ一つだけ言うなら、オレのこの天使はあらゆるもんを喰らうことができることだ。そう、なんでもな」
「なんでも……」
「……話しは終わりだ。そろそろオレは行くぞ」
そう言うとグラトニーは天使を消失させ建物を乗り移りながら去っていった。その後士道達はDEMに鞍替えした折紙と出会うことになるのだが、グラトニーが知ることではなかった。
「はあ……はあ……」
全てが終わった夜の天宮市で、誰もいない街中をボロボロの姿のエレンが歩いていた。デバイスをグラトニーに破壊されてしまい、CRユニットが纏えない彼女は歩きながらウェストコットの元は向かっていた。
「………!」ギリギリ
しかしエレンの頭の中にはひたすらにグラトニーのことばかりあった。もはや元々の目的も忘れかけている程にエレンはグラトニーへの憎しみに取り憑かれていた。
プルルルル
「ん……?」
すると、持っていた携帯が鳴り、エレンはポケットからそれを取り出す。
連絡主はウェストコットだった。
「はい、何でしょうかアイク」
『エレン、またしてもグラトニーに敗れたらしいね』
「っ!?そ、それは……」
電話に出るなりウェストコットから出された言葉にエレンは言い淀む。何しろエレンはグラトニーに3連敗している。同じ相手に何度も負けるなど最強の魔術師としてあってはならないことであった。
『そこで考えたんだが、キミには暇を出すことにしたよ。まあ分かりやすく言えばクビだね」
「…………は?」
エレンはその言葉の意味をしばらく理解できなかった。クビ?誰を?ずっとアイクのために動いてきた自分を?
「ま…待ってくださいアイク!!私がクビ!?ならアデプタス1は!?誰が務めると言うのですか!?」
『ああ、それについては問題ないさ。もうアテはあるんだ。キミと同格と言える実力を持った魔術師がね』
エレンの苦し紛れに言った問いはウェストコットの無慈悲な答えで返される。
『そう言う訳だ。今までご苦労だったね』
「ちょ、ちょっと待『ブツッ、ツー、ツー、ツー』…そ…そん…な……」
最後は名前を呼ばれることもなく通話を切られてしまった。
「私は……どうすれば……」
DEMもといウェストコットから切り捨てられたエレンは、たった1人、その場に膝をついた。
「まさかあなたが士道さん達にに手を貸すとは、意外でしたわ」
「……ただの気まぐれだ。アイツオレに頼む時地面に頭擦り付けてたからなぁ」
「あら、それはちょっと見てみたかったですわね」
天宮市のとある場所で、狂三と士道達の前から去ったグラトニーが話しをしていた。
グラトニーはどこからか掻っ払ってきたのか、大量のローストチキンの入った袋を持っており、話しながらそれに齧り付いている。
「それにしても、やっぱりあなたの天使は強大ですね。あらゆるものを喰らい取り込むことができるのですから、わたくしの攻撃すらも……」
「おう、お前の刻々帝、役に立ったぜ」
「全く……あなたがその力を手に入れるまでにわたくしの分身体がどれ程犠牲になったか、忘れないでくださいね?」
「くどいぞ。何回目だよ、それをオレに言うのよぉ」
狂三の言葉にグラトニーはうんざりした表情を浮かべながら骨ごとチキンを噛み砕く。
「まあ良いですわ。それで、あなたはこれからどうするのですか?」
「ああ、少しこの街を離れるつもりだ。なあに、ちょっとしたらまた戻ってくるよ。この街はいろんなことが定期的に起こるからなぁ」
そしてグラトニーは最後のチキンを食べ終え、空になった袋を投げ捨てる。
「さてと、食ったことだしオレは行くぞ。また近いうちに会おうじゃねぇか、時崎」
そう言いグラトニーはその場から消失し姿を消した。
「ふう……幸いあの刻々帝は劣化版なのが救いですわね。もしわたくしのと同じでしたらどうなるか、恐ろしいですわ」
狂三はそう呟くと、彼女も影の中に潜り姿を消した。
刻々帝・リミット
グラトニーが狂三の分身体を喰らったことで手に入れた刻々帝の劣化版。能力自体はオリジナルと同じく使用できるが、使用弾数に制限があり、一回の顕現につき一発しか弾を補充できない。