「はむはむはむ!うう、美味しいよぉ……!」
「はぁ……」
あのラボから二亜を助けてから一夜明け、2人は町のある飲食店にやって来ていた。ちなみにお金はラボにいた研究員達の財布から出しており、二亜が今着ている服もグラトニーが服屋で適当に選んで買ったものである。
「ぷっはぁ〜……生き返ったぁ。まともなご飯食べたのなんて何年ぶりだよ」
「そうかよ」
満腹になり生き生きしている二亜とは対象的に、グラトニーは微妙な表情を浮かべていた。
「(柄にもねぇことしちまったぜ……)」
グラトニーは二亜を助け出したことについて考えていた。普段だったら迷わず殺している所だったのだが、ラボで実験を受けていたということが彼女の何かを刺激したのである。
「おい、食ったならもう行くぞ」
「はいはーい」
そして店を出てひとまずの根城としていた廃ビルに戻ってきた2人だったが、ふと二亜が口を開いた。
「ねぇグラっち」
「ああ?なんだよそれ?」
突然変な呼び方をされグラトニーは眉をひそめる。
「呼び名だよ!グラトニーじゃあたし的にしっくりこないからグラっち!まあ良いじゃん!」
「………好きにしろ。で、何だよ?」
「あたしとグラっちって精霊じゃん?」
「ああ、それがどうしたんだよ」
「グラっちって、ただの精霊じゃないよね?」
「っ!成る程、それがお前の能力か」
自分が誰にも口にしたことのない事実を二亜が口にしたことにグラトニーは一瞬目を見開くも、すぐに二亜の天使の力とあたりをつける。
「そ、あたしの天使は囁告篇帙、自分の知りたい情報をぜーんぶ知ることができるんだよ」
「オレが寝てる間に調べたのか」
「まあね、ホントはこれあんまり使いたくないんだけど、こうして調べちゃうのはあたしの悪いとこだね。そこはごめんね……」
恩人のことを勝手に調べたことに罪悪感があった二亜は素直に謝罪する。
「別に良い。口にしねぇだけで隠してた訳でもねぇしな。そんで、知ったんだろ?オレが人間に作られた人造精霊だってこと」
「うん。普通の精霊じゃないのは分かってたけど、まさかあんな生まれなのは予想してなかったなぁ……」
「で、どう思ったよ?オレが生まれるまでの過程も見たんだろ?」
「……何年も捕まってたあたしが思ってた以上に、この世はクソッタレな奴らばっかだって思ったよ」
二亜は吐き捨てるようにそう言った。
「そうか……ま、オレにはそんなもんどうでも良いけどな。オレはただこの飢餓さえ埋められるならなんでも構わねぇ」
「グラっち昨日から何度も言ってるよねそれ。それがグラっちの望みなんだね」
「まあな。本条はどうなんだ?捕まる前は何かあったんじゃねぇか?」
「………」
グラトニーがそう言うと二亜は顔を俯かせ黙り込むが、やがて悲しげな表情で口を開いた。
「あたしさ、捕まる前は漫画家やってたんだよ。連載してる作品だってあった。けどDEMに捕まって……それからは拷問や実験漬けの地獄みたいな毎日。こうして自由になっても、あの痛みや苦しみが頭から離れないんだよ」
話し出した二亜の口は止まらない。
「あの地獄から解放されて、また漫画を描きたいのに……何も浮かんでこないんだよ。思い浮かべようとしても、出てくるのはあの辛い記憶ばっかり」
どうやら長い間DEMに囚われ続けたことで、二亜は精神こそ持ち堪えたが、心に深い傷を負ったようで、そのショックで漫画を描くことができなくなってしまったのである。
「こんなんじゃ、もう漫画家なんてできないよね。アイデアが出ない漫画家なんてね、ははは……」
「おい、取り繕うな。かえって惨めだぞ」
「…っ……うぅ」
作り笑いを浮かべる二亜だったが、グラトニーにそう言われるとすぐにその表情が崩れ、大粒の涙を流し始める。
「やだ……やだよ……う、ううぅ…ひっく…」
「………」
グラトニーの胸元に顔を埋め、二亜はしばらくの間泣き続けた。
ここの二亜は囚われていた時の記憶がそのままあるため原作と比べて精神も心もかなり危ういです。