「どうだ、少しは落ち着いたか?」
「……うん、いっぱい泣いたらいくらかすっきりした」
長い間泣いたのだろう、目元を赤く腫らした二亜がグラトニーから離れる。
「ま、しばらくは一緒にいてやる。その間にこれからどうすんのか考えとけ」
「ありがとう、グラっち……」
赤くなった目を擦りながら、二亜はお礼の言葉を口にした。
その日の夜、部屋の一室で二亜とグラトニーは眠りについていた。しかし二亜は眠ることができず、横になりながらずっと考えていた。
「なんで……なんであたしがこんな目に……せっかくあの地獄から解放されたのに……」
グラトニーに助けられて、ようやく自由の身になったというのに。1番やりたかった漫画を描くことはできなくなり、代わりに囚われていた時の記憶が呪いのように頭に残り続けている。
「なんでこんなに苦しまないといけないの……?あたしが一体何したっていうのさ……」
考える度に出てくるのは己の身に降りかかった理不尽な拷問や人体実験の数々。そして次に出てくるのは自分をそんな目に遭わせたDEMの奴等。
特に1番記憶に残っているのは、苦しむ自分を見て笑みを浮かべていたあの目に光の無い白髪の男。
「ふざけんな……ふざけないでよ……」
次第に二亜の口から、自分をこんな目に遭わせたDEMへの怨嗟が漏れ始める。それにより二亜の心が憎しみに染まっていく。
「潰してやる……あんな会社も、クソッタレな奴等も……全部潰してやる……!」
悲しみが怒りと憎悪に変わった瞬間だった。
「あ〜〜ぁ……ん?」
翌日、大あくびをしながらグラトニーが起きると、すでに二亜は起きており、自身の天使である囁告篇帙を開いていた。
「あ、おはようグラっち」
グラトニーの起床に気づいた二亜は、顔を彼女の方へ向ける。
「っ!本条、お前……」
振り返った二亜は昨日までの彼女とは違っていた。眼鏡の奥の目つきは鋭くなり、その瞳には憎しみの炎が燃えているように感じられた。
「昨日の夜中ずっと考えてたんだけど、あたしさ、もうどうでもよくなっちゃってさあ。漫画は描けなくなって、頭の中にはあの地獄の記憶が焼きついてる」
そう言いながら二亜は囁告篇帙を持っていない方の手で頭を掻きむしる。
「こんなことになったのも全部あのDEMのクソ野郎共のせい。あいつらのせいで……!……だから決めたんだよ。DEMに復讐する、潰してやるって」
そう話す二亜は無意識に歯を食いしばり、ギリギリと歯軋りをしていた。
「それでね、今囁告篇帙でDEMについて調べてたんだけど、もう出るわ出るわ。非人道な人体実験、大量の不祥事の隠蔽、口封じの一般人殺害。所属してる奴らも
二亜がグラトニーに説明してる間にも囁告篇帙のページは更新され続けており、いかにDEMが裏で様々なことをしていたのが見て取れる。
「顕現装置を作ってるとかなんて関係ない。もうこんな会社あるだけではらわたが煮えくり返るの。だから全部壊しちゃう」
「……成る程なぁ」
グラトニーは二亜の言葉を黙って聞いていたが、彼女が話し終わった所でそう一言呟く。
「お前のやりたい事は分かった。その上で一つオレから提案がある」
「提案?」
その言葉に二亜は首を傾げる。そして二亜の正面に座り込んだグラトニーはニヤリとした笑みを浮かべ口を開いた。
「どうだ本条、オレと手を組まねぇか?」