「………腹が減った」
この世に誕生して最初に自覚したことは飢えだった。生まれた当初は目の前にいた人間共を殺すことしか考えられなかった。そして全員を殺してから初めてそれを自覚した。
腹が減っていたオレは殺した人間共を食った。数十体はあった死体全てを。
大して腹は満たされなかったが、一つ気づいたことがあった。それは………
人間の肉はなかなか美味かったということだ。
7年後………
「………」グチャバリボリ
あれから7年が経った。相変わらず学習しねぇ奴らだ。オレの周りには武装した人間共の死体がいくつも転がっている。
あの研究所から去ってからしばらくして、オレは何度もこんな武装した人間共と出くわした。恐らくオレが精霊だからだろうな。
オレは自分が人間に作られた人造精霊ということを知っている。研究所で奴らが興奮気味に口走っていたからな。そして研究所にあった資料やデータからオレ以外にも精霊が何人かいることも知っている。
「……あぁ?もう最後の1人か」
そう考えてるうちに死体はほとんど食い尽くし、残ってる人間はあと1人になっていた。
「ぐぅ……グラトニーィィ……!」
残っていた1人はまだ生きていたようで、こちらを睨みながらオレの名前を口に出す。
グラトニー、それがオレの名だ。元々人造の精霊として生まれたオレには名前なんて無かったが、コイツの仲間がオレのことをそう呼んでいたからそれを自分の名としている。
「お前のせいで……この化け物が…!」
「………ハァ」グシャ!
オレはため息をつくとそいつの頭を踏み潰した。最後まで怨嗟の声を吐いていたが、だからどうした?オレからして見れば、人間がどうなろうがどうでも良い。だから罵倒されようが恨み言を言われようが、オレには響いてこない。
「……ダメだ、まだ満たされてねぇ」
そんなことよりもオレが気にしていること、それはいくら食っても一向に満たされないこの飢餓だ。
研究所で奴らを殺し尽くしてから自覚した自分の飢餓。それを埋めるためにこうして人間を喰らってるのに、全く埋まらねぇ。まるで食っても溜まる前に全て消えていく感覚だ。
「ちっ、行くか……」
全く満たされてないが、この場にいた人間は全て食ったためここから立ち去ることにした。
「
そう呟き、オレはその場から消えた。
【フラクシナスside】
「全滅ですか……」
「ええ……うぷ」
「司令!」
はるか上空にある空中艦、フラクシナス内にある司令室では先程手に入れたばかりのグラトニーの映像が流れていた。
「大丈夫よ……でも何度見ても慣れないわね……」
そう言った司令と呼ばれた少女、五河琴里はモニターを見て苦々しい表情を浮かべた。
「識別名《グラトニー》。7年前に突如現れた新種の精霊で……通称、最凶の精霊」
「数百人の大隊を全滅させる程の強さも理由の一つでしょうが、何よりも彼女を最凶たらしめるのは……」
「人を食べる、それも物理的に……」
グラトニーが最凶と言われる最大の理由、それは人間を喰らうというもの。モニターには彼女が人を食らう映像が流れており、クルー達は揃って顔が青ざめ、何人かは耐えきれず部屋を出て行った。
しかもグラトニーは人を食らうだけでなくその食べる量も尋常じゃない。数百人もの人間を骨も残さず一度に食べ尽くしてしまうのだから、もはや暴食といえる領域だ。
「間違いなく攻略難易度はルナティック。まだ天宮市に現れたことはないけど、時間の問題ね」
琴里の言う通り、グラトニーが天宮市に現れたことはまだ一度も無い。しかし世界のあちこちに現れては人間を襲い食らっているのだ。ただでさえ精霊の出現率が高い天宮市に現れない保障はないのだ。
「……とりあえず、グラトニーについてはまた後で考えましょ。今はナイトメアよ。向こうから士道に接触してくるなんてね。これは好都合よ」
琴里はグラトニーのことは後に回すことにし、モニターを切り替える。そこには町でデートする士道とナイトメアこと時崎狂三が映っていた。
今は普通に狂三とデートをしている士道。しかしすぐに彼は思い知ることになる。最悪の精霊と呼ばれる時崎狂三の凶悪さを。
そして彼はまだ知るよしもない。まさか狂三よりも遥かに人間に無慈悲な精霊が存在することなど。
読んでいただければ分かりますが、グラトニーはオレっ娘かつ男勝りな性格です。容姿イメージは双星の陰陽師の神威の女バージョンと思って頂ければ。