暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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第23話です。

原作と展開がちょっと?変わります。


23話

「……ん?おい、本条!今の感じたか?」

 

「うん、凄い霊力だよ」

 

少女のことについて話している途中、2人は強い霊力反応を感じた。

 

「すぐに場所を特定しろ、ただ精霊が出現したって訳じゃなさそうだ」

 

「はいはい、了解!」

 

グラトニーから言われ二亜はすぐさま霊力の発生源を探し始める。

 

「出たよ!どうやら街外れの森の中から反応があるみたい。とても精霊一体分だけじゃここまで膨大な霊力は出ないよ」

 

「膨大な霊力……五河か」

 

二亜のそれを聞き、グラトニーは霊力の主を士道と確信した様子。初めて対面した際に士道が自身の身体に霊力を封印できると言っていたため、彼ならこれ程の霊力を溜め込んでいるだろうと推測したのだ。

 

「どうするグラっち?」

 

「決まってるだろ、反応があった場所に向かうぞ。それにオレの勘が告げてんだ。行って無駄骨にはならねぇってな」

 

「はいよー!」

 

グラトニーの指示を受け、二亜は目的地に向けて舵を切り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、琴里は大きな選択を迫られていた。これまで何体もの精霊の霊力を封印しその身に溜め込んできた愛する兄、士道。

 

しかし人間である士道が霊力を、それも8体分もの霊力を取り込んでいてタダで済むはずもなく、結果暴走してしまった。このままでは士道は霊力爆弾と化し、日本全体が空間震に飲み込まれてしまう。

 

「………っ」

 

端末を持つ手が震える。これについているボタンを押した瞬間、士道は死ぬ。何千万人の命と士道1人の命、どちらを天秤にかけるかなど考えるまでもない。

 

「ハァ…ハァ…」

 

だがラタトスクの司令官とはいえ琴里はまだ14歳の少女。そんな彼女が大好きな兄を殺すのに迷いを捨てられる筈が無かった。

 

「……ごめんなさい、おにーちゃん…」

 

しかしそれでも、必死に自身の気持ちを押し殺し端末のボタンに指をかける。衛星軌道兵器、ダインスレイフの起動ボタンに。

 

カチャ

 

「っ!!」

 

その瞬間、琴里は自身のこめかみに冷たく堅いものが押し当てられるのを感じた。そして同時に刺すような殺気が向けられる。

 

「五河琴里、何をしているの?」

 

「折紙……」

 

琴里が目線だけを動かし殺気がする方を見ると、精霊の1人、鳶一折紙が自身に向け拳銃を突きつけていた。

 

「っ!あなた、その顔……」

 

折紙は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった琴里の顔を見て僅かに目を見開く。

 

「……あなた、その手に持ってるのは何?説明して」

 

さっきよりも殺気を弱め折紙は琴里にそう尋ねる。折紙に対して誤魔化しなど効かないと理解した琴里は観念し白状した。

 

「これはダインスレイフの起動端末。……これで、士道を殺すわ」

 

琴里がそう言うと、折紙の表情が険しいものになる。

 

「どういうこと?それもラタトスクの命令だとでもいうの?」

 

「……半分当たりで半分外れ」

 

琴里は折紙の問いにそう答えると、ダインスレイフがどんなものか、そして士道を殺す理由を全て打ち明けた。

 

「だから、このまま士道を放っておくと、何百、何千万人が犠牲になってしまうの」

 

「………!」ぎりっ

 

琴里から説明され、折紙は奥歯を噛み締めた。

 

「……ふざけるな…!」

 

僅かな沈黙の中、折紙の口から出たその言葉には明らかな怒気が込められていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かに、ホントにふざけてるよねぇ」

 

「っ!?」

 

「誰……!」

 

突如背後から聞こえてきた第三者の声に琴里は後ろを振り向き、折紙は声のした方に銃を向ける。

 

「やあやあ、ごきげんよう」

 

そこにはシスター服の様なものを身に纏った女性が壁に寄りかかる形で立っており、口には煙草を咥えている。

 

「精霊を保護する組織が聞いて呆れるよ。封印した霊力が暴走したから殺す?そもそもあの少年に精霊を対処させてたのはラタトスクだってのに、手に負えなくなったらはい処分なーんて、随分身勝手じゃない」

 

「……っ!」

 

女から出る言葉の数々が琴里に突き刺さり、琴里はギュッと手を握りしめる。

 

「あなたは何者?なぜそこまで知ってるの?」

 

本来知り得ないことを話す女に警戒を強めた折紙はそう問いかける。

 

「あたしが誰かなんて今はどうでもいいじゃない。ま、あの少年なら別に殺す以外にも方法ならあるよ」

 

「っ!?」

 

女から放たれた発言に折紙は目を見開く。

 

「今の彼は霊力を溜め込んだから暴走してる。方法としては2つ、1つは体内にある霊力を安定させる。もう1つは、霊力を他者が吸収することだね」

 

「……無理よ。今の士道は近づくことすらままならない状態。ましてや吸収するなんてできる者なんていないわ」

 

「いるよ、現に今から始まるだろうから」

 

「……?あなた。さっきから何を…?」

 

 

ドォォン!!

 

 

『っ!?』

 

その時、凄まじい轟音が響き渡った。音のした方へ琴里と折紙が目を向けると………

 

 

 

 

「ぐ……がぎゃあ!」

 

「おいおい、大人しくしろよ」

 

『っ!!士道(おにーちゃん)!!』

 

2人の目に飛び込んで来たのは、グラトニーによって士道が地面に叩きつけられ押さえつけられている光景だった。




グラトニーが喰えるのは何も固形物だけではありません。悪食之腕はその名の通り悪食ですので。
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