「嘘……おにーちゃんが、あんなあっさり……」
「流石はグラっちだねぇ。簡単に止めちゃった」
グラトニーによって士道の暴走がいとも容易く止められた光景に、琴里や折紙は唖然とし、二亜は浮かべていた笑みをさらに深めた。
「そういう訳で……」
ヒョイ
二亜は琴里の手からダインスレイフの端末を取り上げる。
「これもいらないよね?」
「あ……」
「これはこっちで処分させてもらうから」
「あなた一体、何者?一般人の筈はないし、どこかの組織の者としても色々知り過ぎてる……」
折紙が怪訝な表情を浮かべながら二亜にそう問いかける。
「ん〜?まあ、隠す必要はないか。あたしが何者か、こういう者だよ。《
二亜は自身の天使を顕現させることで正体を明かす。
「なっ…精霊!?」
それを見て呆然としていた琴里も我に返り驚愕した表情を二亜に向ける。
「そ、あたしは本条二亜。この世で二番目に誕生した精霊、どうぞよろしく」
そう自己紹介すると、二亜は吸い終えていた煙草を吐き捨て新たな煙草を咥え火を付ける。
「キミ達のことは知ってるよ、5年前に精霊になった五河琴里ちゃんと、つい最近精霊になった鳶一折紙ちゃん」
「っ!?どうして…!?」
二亜の口から出た発言に2人は激しく動揺する。何故ならそれは本来絶対に知り得ないことだからだ。特に琴里が精霊という事実はラタトスク以外だと一部の者しか知らない筈なのである。
「琴里!シドーはどうなって……ん?お前は……」
「っ!みんな…!」
「あーらら、他の子達も来ちゃった」
するとそこに折紙の後を追ってきていた十香達もやってくる。
ザッ
「よっと……おおっ?全員揃い踏みじゃねぇか」
そこにちょうど気絶した士道を担いだグラトニーも降り立つ。
「ほら、五河は返してやる」
「シドー!」
グラトニーが士道を雑に床に置くと、十香達は一斉に士道の元に集まった。
「いやぁ〜、凄いね〜グラっち!あたし感激しちゃったよ!」
「まあ、そんなに大した強さでもなかった。おい、五河はもう問題ねぇぞ。暴走した霊力は正常になった」
「ほ、本当ですか…!」
「ああ。その代わりとして、そいつの中にあったお前らの霊力、いくらか貰ったからな」
そう言ってグラトニーは自身の身体から様々な色のオーラを出して見せた。
「っ!私達の霊力を……」
「奪ったっていうんですか…!?」
「そうだ。そのおかげでオレはさらなる力を手に入れた。例えばこれだ、《
グラトニーがそう口にすると、彼女の履いていた黒のブーツが風をモチーフにしたような物に変わる。
「それってまさか……」
「衝撃。夕弦達の力…!?」
八舞姉妹は自身の天使を形が異なるとはいえ、グラトニーも顕現させたことに揃って目を見開く。
「これを見りゃあ分かるように、オレは既に手にしてい時崎の力に加えて、お前らの力の一端も手に入れた。オレがこうして五河を助けたのは、何かしら収穫があるかもしれないと踏んでのことだ。その予感は正しかったぜ」
「そういうことだったのね……確かにタダで助けてくれるとは思ってなかった。でも、今回ばかりは助かったわ。お礼を言わせて、ありがとう」
どんな打算があったとはいえ、士道の暴走を止めてくれたことには変わりない。兄を殺す必要がなくなった琴里はグラトニーにお礼の言葉をかけた。
「暴走は止めてやった。こっからはお前らで何とかするんだな。本条、行くぞ」
「はいはーい」
グラトニーに呼ばれ二亜は彼女の隣に移動する。
「待って!最後に聞かせて、あなたとグラトニーはどういう関係?そんな気軽にやり取りできるなんて……」
琴里はグラトニーと共に立ち去ろうとしている二亜にそう問いかける。
「オレは話しちまっていい、お前次第だ」
「あらそう?じゃあ……あたしはグラっちと手を組んでるの。お互いの相互利益のもとでね」
「なっ…!」
二亜とグラトニーの関係を知り、琴里や他の精霊達も驚いた様子を見せる。
「そういうことだ、あばよ」
ビュンッ!
グラトニーは二亜を片手で抱えると、目にも見えない速さで姿を消した。
その後士道は意識が戻り暴走の問題もなくなったのだが、グラトニーに殴られた顔面の痛みに数日悩まされることになるのは別の話。
颶風騎士・リミット
グラトニーが八舞姉妹の霊力を吸収したことで手に入れた颶風騎士の劣化版。顕現させると風の如く高速で移動することが可能。
(分かりやすく言えば仮面ライダーカブトのクロックアップに近い)
天使は使用者によって形が変わるとあったので、グラトニーが使用する天使は元の精霊と同じ物もあれば全く違う物にもなります。