まあ愚痴はこれくらいにして、どうぞ!
「ほら、ここだよ百ちゃん」
「ん……」
少女に本条百という名を付けてからしばらく経った頃、二亜は百を連れてショッピングモールの洋服コーナーにやって来ていた。
理由は百の服を買うためであり、今までは二亜が着なくなった服を来たりしていたのだが、それでもサイズが合ってなかったため、我慢できなくなった二亜が百の新しい服を買うことを決めたのである。
現在百は二亜の服で1番サイズがマシだったものを着て外に出ている。
「ほら!これなんか百ちゃんに似合うと思うよ!」
洋服コーナーで二亜が百に似合いそうな服を選んでは百に見せてくる。百は特に表情を変えないが、二亜のそれを嫌がることはなく薦められるまま服を試着している。
「おっ!似合ってるよ百ちゃん!超可愛いよ!」
そんな中、何着か着た所で二亜が強い反応を示した。今の百は黒のジーンズに白のカーディガン、そして首には彼女の髪と同じ黄色のマフラーが巻かれている。
「よし……すいませーん!これ一式くださーい!」
二亜は店員を呼ぶと、百の着ている服と他にもいくつか衣服を購入した。
「さてと、服も買ったし後は食べ物買わないとねー。グラっちからついでにって頼まれてるし」
そう言いながら二亜は百と一緒にショッピングモール内を歩いている。
「……♪」
一方服装を一新した百は無表情だが嬉しげなオーラを出しており、特にマフラーを気に入ったのか手で何度も触っている。
「百ちゃん新しい服はどう?あたしが着てたのと違ってサイズもピッタリだから着心地良いでしょ?」
「はい。とても温かいです。ボクのためにありがとうございます、二亜姉様」
「っ!くぅぅ〜、ホントに可愛いなぁこの子は!」
ほのかに笑みを浮かべながらそう言う百に、二亜は相変わらずメロメロだった。
その後食品コーナーで食べ物を大量に購入した2人は、帰路についていた。
「いやぁ〜、買った買った。袋がパンパンだよ」
「ハムハム……」
二亜は両手に持った大量の袋を見て苦笑し、百は先程二亜に買ってもらったドーナツを頬張っている。
「ふふ……ん?」
そんな小動物の様な百の姿にほっこりする二亜だったが、ふとあるものに気づき足を止める。
二亜の視線の先には青髪の見知った少年が歩いてきていた。それは以前自分にナンパをしてきた五河士道であった。
「?」
足を止めたまま士道を見ている二亜に、何も知らない百は首を傾げている。
「あ……」
と、士道の方も二亜に気づいた様で、明らかに気まずいといった感じの表情になった。
「やあやあ少年、また会ったねぇ。あたしのこと覚えてる〜?」
「あ……えーとぉ…」
「変に誤魔化さないでよ?あたし知ってるんだから、あの時あたしにナンパしたことも覚えてないんでしょ」
「え……」
二亜のその発言に士道は一瞬固まった。まさか、覚えてないとはいえ、自分が二亜にそんなことをしていたなんて思わなかったからだ。この件については士道が単独で行動していた時のことのため、琴里達も知らないのである。
「いやぁ、あん時の少年クサいセリフ言ってたよ。運命の出会いだの、自分は幸せ者とか言ってたからねぇ」
「う、嘘だ……そんなこと言ってたのか俺…!?」
士道にとっては忘れていた方が良かった話題を二亜は容赦なく口に出す。
「ふっはは!良いねぇ、その顔。……すっごいゾクゾクするよ」
先程までの軽快な感じから一転、愉悦に浸った歪んだ表情を浮かべながら士道の焦った姿を見る二亜。
「さて、良いもの見れたしあたしらは帰るよ。じゃあね〜」
「あ!?ちょ、ちょっと待ってくれ!」
百を連れてその場を立ち去ろうとする二亜を士道は慌てて引き止める。
「も、もう少し話さないか?」
「………分かった。百ちゃん、悪いけど先に帰っててくれる?
「はい」
二亜はそれを了承すると、百に服が入った袋を渡し先に帰らせた。
「さて、ここじゃあアレだし、場所変えようか」
次回は二亜と士道が本格的に対話します。ちなみ実は士道に内緒で小型カメラで見ていたので、琴里達はこのことを知っています