暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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あけましておめでとうございます!

今年も更新なんとか頑張ります!


32話

「ただいま……」

 

日が暮れて来た頃、士道は家に帰って来ていた。しかし二亜との対話失敗と実質的な決裂に気分は落ち込んでおり、普段と違って声のトーンは低かった。

 

「やっと帰ってきたわね」

 

「え…琴里?それにみんなも……」

 

リビングに入ると琴里だけでなく十香達全員が集まっていた。

 

「随分へこんでるわね。ま、あんなことになっちゃねぇ……」

 

「あんなって……琴里、お前見てたのか!?」

 

「ええ、十香達にはさっき話をした所よ。グラトニーと手を組んでるっていうから何かしらあると思ってたけど、想像を遥かに越えてきたわね」

 

「ああ……」

 

琴里の言葉に士道はそう返す。グラトニーと一緒にいる時点で、決して軽い事情ではないであろうことはなんとなく分かってはいた。しかし……

 

「DEMに囚われていた……ねぇ」

 

琴里にとってそれは思ってもみないことだった。まさかDEMが精霊を既に捕獲していたということに。しかし彼女はグラトニーに助け出され、そのまま復讐のため手を組んだ。

 

「……っ」ガリッ

 

琴里は思わず口に咥えたチュッパチャップスに歯を立てる。今回はこれまでの中でもかなり厄介なものだからだ。二亜はDEMへの怒りと憎しみに満ちており、しかもあの時の対話の際彼女の士道への好感度はマイナスへ振り切れてしまっていた。

 

「それに、グラトニーの言ってたことも無視できないわ……」

 

グラトニーの発言で二亜の天使が情報系のものだと言うことが分かったが、それはこちらの秘密なども全て向こうに筒抜けということ。あの憎悪の強さを見るに、二亜が本気でその気になれば最終手段(情報公開)に出る可能性は大いにあった。

 

「ちょっとあんた達、私達置いて2人で話してんじゃないわよ」

 

「っ!」

 

そんな声が聞こえそちらに目を向ければ、不機嫌な表情を浮かべた七罪がソファー越しにこちらを見ていた。いや、七罪だけでなく他の精霊達も何人か心配そうに士道と琴里を見ている。

 

「2人だけで話してないで私達にも相談してくださいよぉ」

 

「そうだぞシドー、琴里!もう私達も事情を聞いているんだからな!」

 

美九が拗ねた表情で、十香がドンと胸を張りながらそう言う。

 

「本条二亜の抱いてる気持ち、私はよく分かる。自分を狂わせた元凶に対して何も思わない方が無理がある」

 

そう話す折紙の言葉には説得力があった。かつて折紙も両親を精霊によって失い復讐に身を焦がしていた。彼女の場合は誤解であったことや士道という存在がいたから和解することができた。

 

しかし二亜にはそういった存在がおらず、囚われている5年間、ずっと負の感情だけを溜め込んできたのだろう。

 

「士道はどうしたいの?もし仮に手を引くのなら、私はもう何も言わない」

 

「俺は……」

 

折紙がそう言うのは、二亜の行動する理由をよく分かっている故だ。確かにグラトニーも言っていた通り、DEMへの復讐はそこまで間違いではないのかもしれない。しかし……

 

「俺は……やっぱり、二亜に復讐を辞めさせたい」

 

どうしても諦めきれない。二亜が今進んでいる道は破滅の道だ。その復讐がどんなに正当性さがあるとしても、その末路が予測できてしまう以上、やはり見てみぬふりはできない。

 

「……憎しみはそう簡単に捨てられない。ましてや本条二亜の抱えるものはかつての私よりも大きい。士道、改めて聞かせて。さっきの言葉は本気?」

 

想い人であっても半端な答えは許さないとばかりに、折紙はそう問いかける。

 

「……ああ、本気だ。例えいくら拒絶されても、偽善だったとしても、二亜を止めたいんだ」

 

そう言いきった士道は先程の暗い感じが無くなり、覚悟の籠った瞳をしていた。

 

「……士道の決意が固いのは分かった。なら、私はそれに手を貸すだけ」

 

と、これまで表情を変えることの無かった折紙が口角を上げながらそう言った。

 

「啖呵切ったわね。言ったからには、何としてでもやり切ってもらうわよ」

 

士道の宣言を聞き、琴里も口に咥えていたチュッパチャップスを士道に向けそう言う。

 

「分かってると思うけど、二亜を止めるということは、グラトニーとも確実に接触することになるわ。それと新しく加わってたあの黄色髪の子、その子にも十分に気をつけなさい」

 

「頑張れシドー!私達も協力するぞ!」

 

「くくく……案ずるな。いざという時は我が力、存分に振るってやろう」

 

「翻訳。耶倶矢はいつでも力になるから心配はいらないと言っています」

 

「ちょ、夕弦!いちいち言い直さないて良いし!なんか恥ずかしいじゃん!」

 

「わ、私達も、お手伝いします……!」

 

『そうそう!よしのんがいれば百人力だから、大船に乗ったつもりでいなよ士道くん!』

 

「みんな……ありがとう…!」

 

「ふっ……さ、話もまとまった所で、ちょっと見てもらいたい物があるわ」

 

そう言うと、琴里はテーブルにある物を置く。それは『SILVER BULLET』と言うタイトルの一冊の漫画で、作者欄には本条蒼二と書かれていた。




というわけで士道達サイドのお話でした。

士道達はグラトニー一派とも戦うことを決めました。というよりグラトニー達がDEMを追い詰めてきているため、今後士道達が戦う相手が変わるかもしれません。
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