33話の続きになります。
「はい、これがキミの知りたかったこと全てだよ」
二亜は狂三に頼まれ囁告篇帙で調べた全ての内容を伝え終えた。
「……ありがとうございます」
「微妙な表情だね。まあ情報が情報だから、覚悟してても完全には呑み込めないか」
30年前に誕生した全ての精霊の始祖、始原の精霊。ずっとその全貌を知りたがっていた狂三だが、囁告篇帙により判明した数々の真相に受け入れきれていないようだった。
「とにかく、教えることは全て教えた。これを知った上でどうするかはキミ次第だよ」
二亜はそう言うと手に持っていた囁告篇帙を消滅させる。
「ええ、教えて頂き感謝しますわ。では、わたくしはこれで失礼いたします」
「あ、ちょっと待った」
影に潜ろうとしていた狂三を二亜は引き止める。
「どうするかは勝手だけど、あたし達の関係ないとこでしてね?キミも不用意にグラっちを刺激して殺られたくはないでしょ?」
「ッ!……分かっていますわ」
二亜の忠告に狂三は一瞬ビクリとするもすぐに平静を装う。狂三はよく知っているのだ。グラトニーの気まぐれさを。
グラトニーは自身が気に入った人物は基本殺しはしないのだが、気まぐれによっては一気に捕食対象へと変わる。狂三が戦った際殺されなかったのも、グラトニーがその時の気分で情けをかけたからだ。
二亜が言っていたように、自分はグラトニーを心の底では恐れている。分身をいくら喰われ邪魔をされても手を出さないのは、出しても返り討ちに遭うのが分かっているから。
「ご忠告どうも。では今度こそ失礼しますわ」
「バイバーイ。相手は強大だけど、まあ頑張って〜」
影の中に消えていく狂三を、二亜は見送りながらそう言葉を掛けた。
「……ふぅ〜、帰ったかぁ。にしても、彼女も精霊の正体に気づいてたなんてねぇ」
再び1人になった自室で、二亜は口からそう漏らす。そう、狂三と同じくかつて自分も囁告篇帙の力で知ってしまったのだ。
今にしてみれば知らない方が良かったのかもしれない。その事実を知った瞬間、正確には
人の本性も調べられてしまう自身の天使、自身の生まれ、そして精霊の真実を知ってしまった二亜は我慢できず、かつて親しかった者達のことも調べてしまった。
結果、二亜は1人ぼっちになった。親しかった人達の汚い部分を知ってしまい現実に絶望し、二次元へと逃げるようになり、漫画の執筆にもよりのめり込むようになった。
それからしばらく経った時だった、DEMに捕まり囚われの身になったのは。
終わることのない実験や拷問の日々、人のどす黒い悪意をこれでもかと味わい、二次元に逃げることも漫画を描くことも許されない。それどころ死んで楽になることもできず、助けての声も届かない。
というより、現実に絶望している自分が、一体誰に助けを求めるというのか。
そうして囚われてから5年が過ぎ、もう何もかもどうでも良いと思い始めていた頃、二亜は施設を襲撃して来たグラトニーと出会い助け出された。
最初はあの地獄から助かったことに安堵したが、一安心するとやはり芽生えてしまう。何故グラトニーは自分を助けたのか、何か思惑があって助けたのではないか、と。
そう思いダメと分かっているのに、グラトニーのことを調べてしまった二亜。その
それが分かってから、二亜はグラトニーに依存した。本人に自覚はなかったが、誰も信用できない中純粋に自分を助け一緒にいてくれるグラトニーに、落ちるのはすぐだった。
それからグラトニーと共にDEMに復讐を始め、百というもう1人心を許せる存在もできた。
憎しみに身を焦がす二亜だが、2人と一緒に過ごす時間は彼女にとっては幸せなものだった。
「あたしはグラっちと百ちゃんに救われたけど、彼女はどうなるのかねぇ〜」
1人で戦い続ける狂三のことを考えながら、二亜はグラトニーと百の帰りを待つのであった。
グラトニーが人造精霊ということを知っているのは現状二亜1人だけです。
当時人造精霊計画はトップシークレットで行われていたのと、グラトニーが構成員を全滅させ研究所も全焼したことで資料も残ってないので、誰も知り得ないのです。
狂三は私情もあり始原の精霊を殺すことを考えていますが、二亜はそれよりも自身から漫画家としての人生を奪ったDEMの壊滅を悲願としています。