暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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第37話。今回は士道達VS百の戦闘です。ちなみに百はあくまで改造され埒外の力を手にした人間です。精霊と異なり普通に歳は取りますし、病気にもかかります。


37話

士道達の前で臨戦体制に入った百。対する士道達は百のある言葉に動揺を隠せないでいた。

 

「改造……人間…!?」

 

百の口から出た衝撃的過ぎる事実。改造人間、明らかな非人道感が滲み出ているその単語に、士道は愕然とする。

 

「い、今のはどういう意味なんだ!?教えてくれ!」

 

「言う筋合いはありません。それよりそんなことを言っている暇があるんですか?」

 

士道の問いに答えるつもりのない百は槍の穂先を士道に向け、そこから電撃を放つ。

 

「シドー!」

 

咄嗟に十香が横から押し倒したことで、放たれた電撃は士道と十香の頭上を通り過ぎる。その際十香の髪の毛先を僅かに掠り、ジリジリと焼け焦げる音を立てた。

 

「大丈夫か、シドー!」

 

「あ、ああ……」

 

「2人とも!前!」

 

琴里の声に2人が前を向くと、百がこちらに迫り槍を振り下ろそうとしていた。

 

「ッ!」

 

ガキンッ!

 

「……受け止めましたか、良い反射神経です」

 

十香は咄嗟に鏖殺公を顕現しそれを防ぐ。攻撃を防がれた百はすぐに後ろにジャンプして距離をとる。

 

「殺すようなことはしません。あなた達はグラトニー様のお気に入りでもありますので。ですが、引き下がらない以上多少痛めつけて帰っていただきましょう」

 

そう話す百の表情は全く変わらず、それが却って不気味さを感じる。

 

「士道よ、こうなってはやるしかないぞ」

 

「賛同。何もしかったらこちらがやられます」

 

百が力ずくで追い返すと言っている以上、対話による交渉は不可能。ならばこちらも力ずくで強行突破しかない。そう判断し八舞姉妹は限定霊装を身に纏う。

 

その2人を皮切りに、他の精霊達も限定霊装を展開する。

 

「士道、今回ばかりは他に方法がないわ。ここは飲み込んで」

 

「くっ…… 鏖殺公!」

 

先程の百の発言が頭をよぎるが、琴里の言葉にそれを一度頭の片隅に置き、鏖殺公を顕現させた。

 

「ボクを倒すつもりですか?本来の力の1割もない状態のあなた達が」

 

そう、百の言う通り今の十香達は霊力を封印され元の力の1割にも満たない、ハッキリ言って大幅に弱体化している状態だ。

 

ちなみに百が何故これらを知っているかというと、グラトニーや二亜から士道達ラタトスクについて事前に聞かされていたからである。

 

「そんなのやってみなきゃ分かんないですよぉ!」

 

「力が制限されてる以上、出し惜しみはしない……!」

 

その後精霊達と百の戦闘が始まるが、精霊達の攻撃は百の雷撃で全ていなされ、逆に百の放つ電撃や槍による攻撃に押されるなど、やはり霊力封印による弱体化の弊害が出ていた。

 

そして精霊達の何人かの息が上がり始めるが、対する百は息切れ一つなく、まだ余裕を保っている。

 

「理解に苦しみますね……素直に引き下がればこの場を穏便に済ませられるのに、何があなた達をそこまで突き動かすのですか?」

 

「俺は、決めたんだ。例え俺のやってることが偽善だとしても、二亜を、精霊を救うって!」

 

「救う……?二亜姉様を?」

 

士道のその言葉に、これまで表情が変わることの無かった百が初めて眉をひそめた。

 

「【雷霆(らいてい)】」

 

そして手に持った槍を逆向きに持ち替え、その穂先を地面に突き刺した。

 

バリバリバリッ!!!

 

その瞬間、地面に向けて特大の雷が流され周り一帯へと放出された。

 

『きゃああああああ!!』

 

『ぐっ……』

 

広範囲に放たれたことで精霊達も避けることかできず、十香と折紙は持ち堪えたが、他の者達は大き過ぎるダメージを受け地面に倒れ伏してしまった。

 

「み、みんな……!ぐぅ……」

 

士道も鏖殺公を杖代わりにしてなんとか立っているが、彼自身も百の雷撃を受け身体が動かない。

 

「傲慢甚だしいですね、あなたは。今のあなた達がやろうとしているのはただの救いの押し売りです。自分達がそうだったから二亜姉様に対しても同じことをしようとしている。第一、恐らくあなたに二亜姉様を救うことはできません」

 

無表情だが、冷徹な瞳で士道達を見ながら百はそう言い放つ。百からすれば二亜の事情を知っているだけに、士道がやろうとしていることは傲慢極まりなく見えるのだ。

 

「……少し気が変わりました。追い返すのではなく、ここで全員気絶してもらいましょう。すでに倒れている方々はもう意識を失っておりますし」

 

そう言うと、百は電撃を放ち十香と折紙の意識を刈り取る。そして痺れで動けない士道にゆっくりと歩み寄った。

 

「では、さようなら。あえてこう言っておきます、良いお年を」

 

ガンッ!

 

そして百は士道の頭を槍の柄で殴り気絶させる。気絶したことで支えとしていた鏖殺公が消滅し、士道はそのまま地面に倒れ込んだ。

 

「……終わりましたね」

 

全員気絶させたことで百は建御雷神を解除、持っていた槍と全身を巡っていた電力は消滅した。

 

「それじゃあ、ボクも戻りましょうか。二亜姉様とグラトニー様の元へ」

 

邪魔者達を鎮圧させた百はそう呟きながら、2人のいる公園の方はと戻っていくのであった。当初の目的だった飲み物を買うのと忘れずに。

 

 

 

 

 

その後士道達はフラクシナスに回収された。彼等にとってこの展開は予想外で、全員が顕現装置による治療を受けることになった。




グラトニーは途中から百と士道達の交戦に気づいていましたが、百なら問題ないと判断し、加勢に行きませんでした。
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