「よう、待ってたぜ」
「ああ……」
なんとか学校を早退してきた士道は、自宅に帰って来ていた。士道だけでなく同じく理由をつけ学校を早退した十香と折紙、士道から連絡を受けた琴里や他の精霊達も揃ってる。
リビングには既にグラトニーがおり、ソファに座り寛いでいる。部屋を物色したのか、片手には食いかけの菓子パンが握られており、テーブルには空になった袋がいくつもあった。
「それで?あなたから話しを持ち掛けてくるなんて、珍しいじゃない?」
「まあそう気を張るな。今回はホントに話しをしに来ただけだ」
警戒した様子で言う琴里に、グラトニーは菓子パンを齧りながらそう返す。
「二亜は、いないのか?」
グラトニーだけで二亜がいないのを見て、士道はそう聞いてみる。
「ああ。本来は本条も来る筈だったんだが、お前と会いたくねぇって拒否してなぁ。相当根に持たれてるぜ、お前」
「うっ……」
やはりあの時の"復讐なんて"という発言で、二亜との間に深い亀裂が入ってしまったらしく、士道と会うこと自体嫌悪してるようだった。
「それより、お前らこの前本条に会いに行く途中百に妨害されてやられただろ?」
「っ……知ってたのか」
「そりゃあな。けどあん時は邪魔が入っていい状況じゃなかったんでなぁ。百の判断は間違ってたとは言わねぇ」
「そんなことを言うためにわざわざ士道の学校にまで出向いたの?」
グラトニーを睨むように見ながら琴里がそう言う。
「いんや違う。後で聞いたんだが、どうやらお前ら百の雷撃で中々痛い目にあったんだってなぁ。今回はその詫びも兼ねていい情報を持って来てやったんだよ」
「情報?」
「ああそうだ。本条からも話していいって言われたしな。まず一つ目……お前ら精霊が一体どういう存在なのかだ」
「精霊が……?」
「お前ら精霊が元々なんなのか、そして何故この世に現れたのか、気になると思わねぇか?」
「それは……気に…なります」
四糸乃がグラトニーの問いに答えたが、他の者達も同じだ。未だに謎の多い精霊、その正体が分かるかもしれないのなら気にはなる。
「とりあえず、お前らが今知ってることを言ってみろ」
「……私と美九、折紙はファントムっていう謎の存在によって精霊になった元人間、それ以外の子は純粋な精霊よ」
「まあちょっと合ってるが、ハズレだな」
「なんですって……?」
「精霊ってのはなあ、一部の例外を除いて全員そのお前らの言うファントムによって精霊になった元人間だ」
『え………?』
グラトニーの口から出た事実に、全員が目を丸くした。琴里達だけじゃなく、他の精霊達も元々は人間だったと明かされ、驚きを隠すことができない。
「時崎や本条もそうだ。アイツらもファントムによって精霊になった元人間だ」
「じゃ、じゃあ、グラトニーもそうなのか?お前も、元々は人間だったのか…?」
動揺が収まりきってない中、士道はグラトニーもかつて人間だったのか問う。
「いや、オレは最初からずっと精霊だ。………まあいい、この際だから話してやる。オレの出生をな」
「え、いいのか…?」
「ああ、別に隠してた訳でもねぇしな。これはオレが知る限り本条しか知らないことだ、百は知らねぇ」
そう言うと、グラトニーは手に持っていた最後の菓子パンを食べ終え、さっきと比べて真剣味を帯びた表情になった。
「オレの出生についてだが……少し昔の話でもするか。今から10年程前、ある組織が精霊や勢力を拡大するDEMに対抗するべく、極秘の計画を進めていた」
「計画……ですかぁ?」
「人造精霊計画だ」
『なっ!?』
士道達の驚愕を他所に、グラトニーは話しを続ける。
「そいつらは世界各地で現れる精霊達のデータを集め、組織の総力を上げて計画を進めていった。そして7年前、ついに1体の精霊を造り出すことに成功した」
「ま、待ちなさいよ…!あなたが初めて現れたのも7年前じゃない……。…っ!!ま、まさ…か…」
「流石に察するか。そうだ、その人造精霊計画で造り出された精霊こそが、このオレだ」
『………』
グラトニーの口から語られた彼女自身の正体と衝撃の生まれに、士道達は言葉が出なかった。
まさか過去にそんな恐ろしい計画が進まれていて、グラトニーがその人造精霊だったなんて。
「……な、なあ」
「ん?」
「お前の他にも、いるのか?その…人造精霊って」
「いや、その組織は誕生して間もないオレによって全滅したし、ラボも全焼、死体も全て喰らった。だからこの世に存在する人造精霊はオレただ1人だ」
「そ、そうなのか……グラトニー、お前は何とも思わないのか?自分の生まれとかそういうのに悩んだりしないのか?」
どうしても気になったのだ。余りにも異質過ぎるグラトニーの出生。人間の勝手な都合で生み出され、その組織を滅ぼしたことで、結果生み出された理由がなくなった。
その後自らの飢えを満たすため人間を喰らいながら7年間1人で生き続けてきた。そのことに何か思うところは無いのかと……。
「特にねぇなぁ。オレは自分が人造精霊なことに悩んだことはねぇし、恐らくこれからもねぇ。飢えが満たされねぇのには思うところはあるが、まあ気長にやるさ。喰らう獲物はそこら中にいる。それに本条と百との生活も案外悪くねぇしな」
しかしグラトニーは凶悪な笑みを浮かべ、自分の生まれについて何も思ってないことを士道に話す。
『……!』
それを見て士道達は理解する。グラトニーの言っていることは全て本心ということに。そして改めて実感する。目の前の彼女はまさしく最凶と呼ばれるべくして生まれた存在だと。
「さて、これでこの話は終いだ。次の情報だ。こっちが今のお前らには重要なもんな筈だ」
話を切り上げたグラトニーは二つ目の情報を提示する。
「新しい精霊の情報だ。まだどこの組織にも確認されてねぇ新種のな」
グラトニーが完全な捕食外及び非殺傷対象に定めているのは現状二亜と百の2人のみです。それ以外は基本餌として見ており、お気に入りとしてる人物も生かしておいた方が自分を退屈させないスパイスになるからで、旨みがなくなれば即捕食対象に下がります。
それとグラトニーはファントムの正体も二亜の囁告篇帙を通して知っていますが、そこまで話す必要はないと思い言いませんでした。