暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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改めて原作読みましたけど、精霊達の中で二亜と狂三は古株なのは分かってましたけど、四糸乃がそれに次ぐ古参だったのが意外でした。

という訳で、第41話です。


41話

「今戻ったぞ」

 

「おー、お帰りグラっち」

 

「スゥ…スゥ……」

 

五河家から去ったグラトニーは二亜の自宅へと帰って来ていた。部屋に入ってきたグラトニーをこたつに入っていた二亜が出迎え、百はこたつに入りながらスヤスヤと寝息を立てている。

 

「で、どうだった?上手くいきそう?」

 

「ああ、案の定食いついてきたぜ。多分今頃フラクシナスで確かめてんじゃねぇか?」

 

「そう、じゃあ後はラタトスクがやってくれるね。宇宙まで行くのは流石に面倒くさいから」

 

そう話す二亜の顔は悪い笑みを浮かべていた。

 

「……そういや話は変わるが本条。お前、オレが渡したアレ、まだ決心はつかねぇのか?」

 

話しを切り替えたグラトニーは二亜にそう尋ねる。言われた二亜は赤い宝玉を取り出し手で転がす。

 

「あー、これね……いや分かってんだよ、これを取り込んでも絶対大丈夫だってことは。これがあたしと1番適合率が高かったんでしょ?」

 

「ああ。お前が今持っているのより遥かにな。オレは確信してんだ。お前は本来その力を持った精霊になるべきだったんだってな」

 

「………」

 

グラトニーにそう言われて二亜はじっと手の中の宝玉を見つめる。これを受け取って早一ヶ月、未だ使うことなく持ち続けている。

 

「(でも、これを取り込めば……)」

 

二亜はこれを受け取った時に言われたことを思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ただし一つ忠告しておく。それを使うと、お前はタダの精霊じゃなくなるぞ』

 

『え?』

 

『今のお前は始原の精霊によって精霊になっている状態だ。もし始原の精霊が死んだりでもすれば、お前も精霊から人間に戻る筈だ』

 

『だがそれを肉体に取り込めば、お前は始原の精霊だけでなくオレ系列の精霊にもなる。つまり、それを使えばオレが死なない限りお前は精霊として生き続けることになるぞ。五河のとこにいる精霊達が人間に戻っても、ずっとな』

 

『ずっと……精霊……』

 

『そうだ。そのオレが作った宝玉、擬似霊結晶(ぎじセフィラ)を取り込めばな』

 

 

 

 

 

 

あの時グラトニーに言われたこと。それが二亜に擬似霊結晶を使わせることを躊躇わせていた。

 

精霊になってから27〜8年、知識の精霊として生きてきた自分。これを取り込めば戦える力が手に入る。

しかしその代わりに自分はさらに人ならざる存在へとなる。力は欲しい、だが決心ができない。

 

二亜にはまだ覚悟が足りていなかった、迷いを捨て去る覚悟が。事実今も迷っているのだ。自分の過去を捨てようとしているのに、その過去に縋り付いていたい自分もいるから。

 

「悩んでるみたいだな。ま、使いたくねぇならそれでもいい。これまで通りやっていけばいいさ」

 

「………」

 

その後グラトニーが人間を狩る(捕食する)ため外へ出て行ってからも、二亜は一言も喋らず、無言で擬似霊結晶を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

グチャボリバリボリ

 

「美味えな」

 

再び外へ繰り出したグラトニーは人気の無い場所で適当に捕らえた人間を喰らっていた。人肉を貪り、骨を噛み砕き、血を水のように飲む。二亜と行動を共にするようになってからは少なくなっていたが、以前はこんなことを毎日のように繰り返していたのだ。

 

「ふぅ……」

 

そして足りないが捕らえた人間達を喰い終えたグラトニーは余韻に浸っていた。

 

「……おい」

 

しかしすぐに雰囲気が変わり、自分以外いない筈のその場で誰かに声を掛ける。

 

「いるのは分かってんぞ、出てこい」

 

『……やっぱり気づかれてたんだ』

 

するとどこかから声がし、輪郭があいまいでノイズにしか見えない何かが姿を現した。

 

「成る程ぉ、お前が始原の精霊でファントムって言われてる奴か」

 

『そうだよ。この姿なのは失礼するよ』

 

「構わねぇさ。今目の前にいるお前は力だけを切り離した存在で、メインである本体は別にいる、そうだろ?」

 

『そこまで知ってるんだ。それもそうか、二亜が一緒にいるからね』

 

自身のことをよく知っているグラトニーにファントムは少し驚いた様子だったが、二亜の囁告篇帙によるものなら知っててもおかしくないと納得する。

 

「で、何のようだ。わざわざ姿を隠してまでオレの食事を見てやがって」

 

『うん、これ以上余計な手出しをしないで欲しいんだ。何十年もかけて積み立ててきた私の悲願をキミに邪魔される訳にはいかないんだよ』

 

「そう言ってるが、邪魔ならもうしてるんだろ?例えば、本条がオレと一緒にいることとかな」

 

『……正直予想外だったよ。まさか彼女があんなにキミに魅入ってしまうなんて』

 

そう、ファントムが士道に封印させる筈だった精霊達。これまで上手くいっていたのに、ここにきて二亜がグラトニーに惹かれてしまい士道へは好意を抱かず、むしろ決定的な亀裂が入ってしまったのだ。

 

「そりゃあお前が悪いだろ。お前は自分の悲願とやらのために人間を精霊に変えてたんだろうが、やったのはそこまでだ。精霊にした後はそのまま放置した結果が、この状況を生んだんだ」  

 

『言ってくれるね……でも今となっちゃ本当に後悔してるよ』

 

そう口に出すファントムの声は本気で過去干渉しなかったことを後悔しているようだった。

 

「で?どうするつもりだ?オレを始末して無理やりにでも本条を五河に当てるか?」

 

『……いや、辞めておくよ。今は二亜をキミに預けておくことにするよ。確かに予想外の事態だったけど、まだ修正はできる。私の悲願は、必ず果たす』

 

そう言うとファントムは姿を消した。気配もなくなっていることから完全にこの場からいなくなったようだった。

 

 

 

しかし少し先の未来、ファントムはこの判断を深く後悔することになる。この時グラトニーと交戦しなかったことに。まさか彼女が、あんな奥の手を隠していたなんて……




グラトニーはラタトスク、DEM、始原の精霊のいずれにおいても完全なイレギュラーな存在です。

そしてグラトニーには始原の精霊ですら無視できない凄まじいリーサルウェポンがあります。


擬似霊結晶

グラトニーが士道から吸収したある精霊の霊力と自身の霊力を混ぜ合わせ精製したオリジナル霊結晶。二亜と最も適合率が高かった精霊の霊力が使われているため、その身に取り込めば強大な力を得られる。

ただし大半がグラトニーの霊力で補われているため、取り込めばグラトニー系列の精霊になってしまう。
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