暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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42話です。ここの六喰は原作と違って独占欲がそれ程ない代わりにあることを酷く恐れています。

それには過去に起きたあることが関係していて……


42話

「……あれから2日経ったが、五河は上手くやってくれたかねぇ?」

 

士道に情報を提供し、ファントムと邂逅してから2日が過ぎ、グラトニーは二亜の囁告篇帙による結果を待っていた。

 

「いい知らせだよ。どうやら成功したみたい。今はこの天宮市にいて少年とデートしてるみたい」

 

「そうか、なら早速……」

 

「待ってグラっち。あたしも行くよ」

 

ターゲットが天宮市に降りたのを確認したグラトニーはすぐさま向かおうとしたが、二亜が自分も同行すると申し出た。

 

「それは、交戦する可能性があることを分かっての発言か?今のお前だとまともには戦えないぞ」

 

グラトニーは遠回しにだが二亜がついてきても大して役には立てないと言う。

 

「分かってる。でも、昨日からずっと考えたんだよ。あたしもいい加減覚悟決めなきゃいけないなって。だから、その覚悟をこれで示す」

 

そう言うと二亜は擬似霊結晶をグラトニーに見せた。

 

「……どうやら本気みてぇだな。分かった、百はどうすんだ?」

 

「百ちゃんには留守番しててもらうよ。この件はあたしの私情みたいなものだから、関係ない百ちゃんが出張る必要はないよ」

 

どうやら二亜はこの件に百を関わらせる気はないようだった。当の百は現在寝室でお昼寝中であり、彼女には黙って出撃するつもりのようだ。

 

「じゃあ、行くとするかぁ」

 

そう言いながらグラトニーは手をボキボキと鳴らし不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

現在士道は宇宙から連れ帰った精霊、星宮六喰とデートをしていた。グラトニーからの情報通り宇宙空間に彼女はいて、眠りながら漂っていた。

 

彼女は自身の天使で心を閉ざしていて、一度はあしらわれてしまうも、士道の尽力や精霊達のサポートもあって彼女の心を開くことに成功した。

 

その後の六喰はそれまでの姿が嘘のように士道に懐き、チャンスと見た琴里によって彼女の好感度を上げるべくデートをすることになったのだ。

 

しかしデートがある程度進んだ所で、士道は六喰から不穏な言葉を聞くことになった。

 

「主様は、むくを1人にせぬか?あのおなごたちも、むくの前からいなくなったりせぬか?」

 

「む、六喰……?」

 

さっきまで六喰は上機嫌でデートを楽しんでいて、精神も安定していると琴里からあったのだが、急にそんなことを言い出したのだ。

 

「答えてくれ、主様。むくは……1人は嫌じゃ…もう誰もいなくならないでくれ……」

 

明らかに様子がおかしい六喰に士道だけでなくフラクシナスで見ている琴里も何か違和感を覚える。

 

「六喰、大丈夫だ。俺はいなくならないし、十香達もこれから一緒にいる」

 

「本当か?誰も死なぬか?むくの前で、みんな殺されたりせぬか?」

 

「ッ!?それってどういう……」

 

 

 

 

 

「その通りの意味だぞ」

 

「ッ!」

 

突如会話に入ってきた第三者の声に、士道はそちらへと視線を向ける。

 

「流石だな五河。お前ならやれると思ってたぜ」

 

「グラトニー!」

 

「あたしもいるよ」

 

「ッ!に、二亜……!」

 

グラトニーの後ろから二亜が姿を見せ、士道は以前自身の迂闊な発言で彼女から痛烈な罵倒を受けたことを思い出し、表情がこわばる。

 

「き……貴様…貴様ぁ!!」

 

だが突然グラトニーを見て激昂した六喰に、士道はすぐさまそっちに視線を向ける。

 

「よくもむくの前に現れたな!また奪うのか、姉さまたちだけでなく、主様まで奪うつもりかっ!!」

 

「奪う……?」

 

怒りの形相でグラトニーに言い放つ六喰だが、士道は六喰の奪うという言葉に反応した。

 

「六喰、奪うってどういう……」

 

「むくはかつてあやつに全てを奪われたのじゃ……!父さまを、母さまを、そして姉さまを……あやつに殺されたのじゃ!!」

 

『っ!?』

 

六喰の口から明かされたまさかの事実に士道や琴里達は衝撃を受けた。まさか六喰も折紙と同じ……いや、折紙の時みたいに何か誤解があるのかもしれない、そう思いグラトニーの方を見るが……

 

 

 

 

 

 

「ああ、そうだな。そいつの家族を殺したのは紛れもねぇ。このオレだ」

 

グラトニーがあっさり自身が六喰の家族殺しの張本人と認めたことで、それが本当だということを思い知らされる。

 

「5〜6年前だったか?天宮市の外でオレが襲った場所に偶々いてなぁ。親の方は他の人間共々殺して喰らった。で、残ったそいつと姉を捕らえたんだが、気まぐれで聞いたんだ。どっちか助けてやるから選べってな、そしたら……」

 

 

 

 

 

 

 

『六喰を……妹を助けて!!私はどうなっても構わない、だからお願い!!』

 

 

 

 

 

 

 

「姉の方がすぐにそいつの方を助けろと言った。正直驚いたぜ、その選択を取れば自分が殺されるって分かってんのに、迷わず妹の命を優先したんだからな。で、それに免じて妹の方は見逃してやった」

 

「それで……どうしたんだよ」

 

「姉の方はそのまま殺した。そういう話だからな。骨まで残さずちゃんと喰ってやったぞ。助けられて呆然としているそいつの目の前でな」

 

「ーーーーーッ!!」

 

それを聞き士道は身体が熱くなるのを感じた。それが本当なら、目の前で家族を殺された六喰がどれだけ絶望したのかは想像に難くない。

 

「もう誰も奪わせぬ!姉さまたちだけでなく、主様まで……奪われてたまるかなのじゃあぁぁぁ!!」

 

「ッ!六喰っ!」

 

士道がそう思っている間に、怒りに満ちた六喰が霊装を纏いグラトニーへ襲いかかった。

 

「おっと、怒りに身を任せた割には正確だな。いいなぁ、ちょっと遊んでやるよ。オレを楽しませてくれよ?」

 

「あああああああ!!」

 

グラトニーは六喰の攻撃をかわすとどこかへ飛び去り、六喰は絶叫を上げながらそれを追いかけて行った。

 

「六喰っ!」

 

士道はそれを追い掛けようととするが……

 

「おーっと、行かせないよ」

 

今まで傍観を決め込んでいた二亜が立ち塞がった。




士道達の六喰の攻略についてはDEMの邪魔立てがなかった点を除けば原作とほぼ同じです。地球に戻ってから待ち構えていたグラトニーの乱入で本格的に原作と離れます。

そして六喰は原作では独占欲が仇になり家族に拒絶されてしまいましたが、ここではグラトニーによって目の前で家族を皆殺しにされたことで、大切な人を失うことをとても恐れています。
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