暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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今回は士道&二亜サイドです。


45話

グラトニーと六喰が戦いを繰り広げる一方……

 

「そらそらそら!」

 

「くっ……」

 

炎の精霊となった二亜は士道に向けて無数の火炎弾を放っていた。士道はそれをなんとか凌いでいるが、全ては捌ききれないのか服のあちこちが焼け焦げている。

 

既に周囲は二亜の放った炎によって青い火があちこちで燃え盛り、その中心である二亜と士道のいる箇所は凄まじい熱さだ。

 

赤い火よりも青い火の方が何倍も温度が高いので、それが周りで燃えていれば必然とここら一帯の温度も跳ね上がる。

 

「ハァ…ハァ……」

 

士道の息も上がり始めており、炎による高温で顔からは滝のように汗が流れ体力が奪われていく。

 

「今んところ何とか直撃は避けてるけど、だんだん反応が鈍ってきてるねぇ」

 

対する二亜は涼しい顔をしていて、汗も流していない。炎の精霊になったということもあって琴里と同じく火の影響を受けないのだ。

 

そのためこの場では士道が一方的に体力を削られているのである。

 

「ハァ…ハァ…うっ……」

 

そしてついに士道は膝をついてしまう。

 

「とうとう止まったね。……思えばキミは二度もあたしをブチギレさせてくれたよね。一度目は最初の対話の時、そして二度目はついさっき。口は災いの元ってのはこのことだよ」

 

そんなことを口走りながら二亜は嘲笑うような笑みを浮かべる。二亜の中で士道は甘い奴という認識であり、士道を(退屈させない玩具として)気に入っているグラトニーに対して彼女は嫌いな方だった。

 

「ほら、動かないの?逃げないとあたしの炎で焼かれちゃうよぉ?」

 

杖の先端を士道に向けながらゆっくり歩み寄ってくる二亜。グラトニーのこともあり殺すつもりはないが、自分に嫌悪感を抱かせたこともあり多少痛めつける気は満々だった。

 

「シドーー!!」

 

「ッ!ちっ!」

 

しかし突如士道を呼ぶ声が響き、二亜は舌打ちと共に士道から距離をとった。

 

「シドー、大丈夫か!」

 

「十香……!」

 

「私達も…います…!」

 

『士道くんボロボロだねぇ。でもよしのん達が来たからもう大丈夫だよぉ!』

 

現れたのは十香を筆頭とした精霊達だ。全員が限定霊装を展開し、士道を守るように立っている。

 

「……まぁ来るとは思ってたよ。けどあたしのやることは変わらない。キミ達をグラっちのとこへ行かせないよう、まとめて相手するまでだよ」

 

二亜は一瞬苛立たしげな表情をするも、すぐに気を持ち直し杖を構え臨戦態勢に入る。

 

それと同時に十香達も天使を顕現する。

 

「っ……本当に、戦わなくちゃいけないのかよ……!」

 

士道は二亜と戦わなければいけないことに唇を噛み締める。事実先程も二亜が士道に遠慮なく攻撃を仕掛けていたのに対し、士道はそれを対処するだけで攻撃自体はしていなかった。

 

敵対した精霊と言えば狂三もそうだが、狂三は士道に惹かれていることや自身の目的もあって士道に幾度も協力してくれた。

 

だが二亜は明確な敵意を持って立ちはだかり、グラトニー傘下の精霊へと変貌を遂げた。二亜は士道に恋愛的なものは全くないため、故に殺さないだけで痛めつけることに躊躇うものは無いのだ。

 

『……士道、もうどうしようもできないわ。こんなこと、言いたくなかったんだけど……二亜と……戦いなさい』

 

インカムから琴里の苦渋に満ちた声が聞こえる。精霊を保護するラタトスクにとって精霊と戦うのは矛盾している行為だ。だが六喰とグラトニーが戦闘を始めてしまい、二亜もその気な以上、もはや戦闘は避けることはできなかった。

 

「ッ!来るぞ、シドー!

 

「くぅ…… 鏖殺公…!」

 

やむを得ず、士道も鏖殺公を顕現させる。

 

「ようやくその気になったみたいだね。一人対多人数になったから、あたしもいくらかマジで行くよ」

 

そう言うと、二亜は全身から青い炎を噴き出し身に纏った。

 

「さあ、いこうか」

 

グラトニーと六喰の戦いの裏で、こちらの戦いも激化しようとしていた。




全ての精霊が救えるとは限らない。いや、むしろそうした形で救われることをそもそも望んでいない。本作の二亜はそれです。二亜にとって今の救いはDEMを潰すことに協力してくれることです。

士道を嫌悪するのも自分への失言もありますが、精霊を攻撃することに躊躇いを持つ甘さにも苛立っています。

ちなみに二亜が憎しみを向けるのはあくまで自分から漫画家としての自分を奪ったDEMに対してで、自身を精霊に変えた始原の精霊へはそこまで気にはしていません。
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