暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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49話、これでこの作品50話目になりますね。ここまで書き続けられるとは思いませんでした。しかもまだ書けますし……


49話

グラトニーside

 

「本条の奴、とうとうなったのか」

 

先程目に入っていたが、周りで燃える炎や自分と士道達を遮った炎の壁を見て、グラトニーは二亜が覚悟を示したことを確認した。

 

「さてと、じゃあ今のうちに……」

 

立ち止まっていたグラトニーは、再び倒れている六喰へ足を進める。

 

「よぉ、生きてるか?」

 

「う……ぐぅ…!」

 

上からそう話し掛けると、六喰がうめき声を上げながらグラトニーを睨みつける。

 

「その感じだと、もう戦える力もないようだな」

 

しかしグラトニーは六喰が攻撃どころか立ち上がることもできないことから、実質戦闘不能だと判断した。

 

「そんじゃ、さっき言った通り貰うぞ。お前の中にある霊結晶」

 

そう言うとグラトニーは足で六喰を転がし仰向けの体制にする。

 

「安心しろ、殺しはしねぇ。【吸収】」

 

そして右手を六喰の胸元に掲げると、士道にも使った技を発動する。

 

「うぐ……がぁっ……」

 

それと共に六喰は苦しそうに声を上げるが、グラトニーは止めることなく続行する。

 

すると六喰の胸元から淡い光を放つ黄金色の結晶が出現した。

 

「これがオリジナルの霊結晶か。言った通り全部はいらん。だからこうだ」

 

グラトニーは霊結晶を掴むとギチギチと力を込める。

 

バキンッ!!

 

すると音を立てて霊結晶は真っ二つに割れた。グラトニーはその半分を六喰の中へ押し戻した。尚六喰は【吸収】を受けている途中で力尽き気を失っていた。

 

「これで目当ての物は手に入った」

 

と、ここで自分と士道達を遮断していた炎の壁が消滅し、向こう側が明らかになる。

 

そこには士道達が唖然とした表情で霊結晶の片割れを持つ自分のことを見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは……」

 

『嘘……霊結晶!?』

 

士道はグラトニーの手の中にあるものを見て目を見開き、折紙やフラクシナスにいる琴里は驚愕する。

 

グラトニーが霊結晶を持っている。その色からして元の持ち主はすぐ側で倒れている六喰なのは間違いなかった。

 

「おーい本条、目的のもんは手に入れたぞ」

 

「グッジョブだよ、グラっち」

 

そんな士道達を無視し、グラトニーは二亜に手に入れた霊結晶を見せつけ二亜は親指を立てグッドサインを出す。

 

「そんで、仕上げだ」

 

グラトニーは片割れの霊結晶に自身の霊力を流し込んだ。すると割った部分がグラトニーの霊力で新しく形成され、半分黒でもう半分は黄金色をした一つの霊結晶となる。

 

そしてそれを手に付いた口で飲み込んだ。

 

「《封解主》」

 

グラトニーがそう口にすると、彼女の右手に鍵の形状をした天使が顕現される。見た目は六喰のそれと似ているが、全体的に黒みがかかっており、鍵の部分の形状が少し違っていた。

 

「グラトニー……お前……」

 

「ん?ああ、もうこいつに用はねぇから好きにしていいぞ。霊結晶も全部は奪ってねぇから死んではいねぇ筈だ」

 

「ッ!!お前、そんな言い方「口ばかりほざいてんじゃねえぞ!」……え」

 

グラトニーのあんまりにもあんまりな言い方に士道は憤りを覚えるが、その直後グラトニーから飛んできた罵声に言葉を遮られる。

 

「オレの言い方が気に食わねぇなら、直接殴りつけにでも来てみろ!」

 

「そ、それは……」

 

「まさかお前、この期に及んで躊躇ってんのか?精霊を攻撃するってことに」

 

「ッ……」

 

それを言われ士道はギクリとする。士道は精霊を救いたいという思いから、精霊に攻撃することに抵抗を感じてしまうのだ。実際先程の二亜との戦闘でも十香達と違い士道は直接攻撃をすることはできなかった。

 

もしそれをしてしまったら、武力を用いて殲滅もしくは捕獲するASTやDEMと同じなのではないかという考えがあったのだ。

 

「呆れるぜ、敵味方関係なく精霊を傷つけられねぇとは。そういうとこは好きになれねぇなぁ」

 

五河に今まで向けたことの無かったつまらない物を見る視線を送りながらグラトニーはそう言う。

 

「だいたいなぁ、こうなったのはお前らにも原因はあるんだぜ?お前らがオレの情報通りに動かなけりゃ、星宮を地球に連れ戻さなければ、こんなことにはならなかったんだ」

 

「うっ……」

 

自分のことを棚に上げた言動だが、士道はそれに反論できなかった。グラトニーの言っていることも間違ってはないからだ。

 

「ふん……本条、引き上げるぞ」

 

「はいはーい」

 

グラトニーは二亜に引き上げるよう言い、二亜もそれに応えグラトニーのすぐ隣に立った。

 

「【解】」

 

そして手に持った封解主を使うと、2人の背後に人が通れる大きさの孔が開かれる。

 

「ああ、そうだ。一つ言っとくぞ」

 

しかし孔に入る直前、グラトニーはふと足を止め士道の方へ顔を向ける。

 

「攻撃を躊躇う考えはすぐにでも捨てろ。これまではそうしなくてもなんとかなってたんだろうが、オレと本条が敵対した以上精霊との戦闘は避けられなくなったんだ。そんなんじゃ死ぬぞ、じゃあな」

 

そう忠告すると、グラトニーと二亜は孔の中へ入って行き姿を消す。それと同時に孔が閉じられ、その場には士道と精霊達が残された。

 

「くぅ……」

 

思わず士道は地面に拳を打ちつけた。今回は完全に自分達の負けだ。全てがグラトニーの思惑通りになり、自分達はグラトニーどころか二亜1人に最後まで阻まれて終わった。

 

そして六喰の霊結晶も奪われて……

 

「はっ、そうだ!?六喰っ!!」

 

と、そこで我に返り、士道は急いで六喰のもとへ走り、精霊達もそれに続く。

 

「六喰!大丈夫……っ!」

 

遠目でも分かっていたが、すぐ側で見て見ると酷いもので、纏めてあった髪は解け乱れ、全身が打撲や傷だらけで口からは血を吐いている。どう見ても重症なのは明らかだった。

 

「琴里!顕現装置は!?」

 

『手配済みよ!すぐにフラクシナスに回収するわ!あと数分で準備が整うから、それまで六喰をお願い!』

 

「分かった!六喰、しっかりするんだ!」

 

「う……主…様…?」

 

士道が必死に呼び掛けると、六喰がうっすらと目を開き掠れた声を出す。

 

「六喰、大丈夫か!もうすぐフラクシナスで治療されるから、もう少し頑張ってくれ!」

 

「うむ……分かっ……たのじゃ……」

 

六喰は士道の言葉に途切れ途切れにそう返すと、再び目を閉じた。

 

「皆んな!準備できたわ!そのまま動かないで!」

 

そしてインカムから琴里の声がすると、全員の身体が浮遊感に包まれ、フラクシナスへ回収された。




グラトニーが封解主の力を手にしました。他が霊力のみを取り込み劣化版の天使なのに対して、霊結晶の半分を取り込んだので(もう半分は自身の霊力で補った)通常通り使えます。ただし完全ではないので最大技である【放】は使えません。
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