ではどうぞ!
あれから六喰はしばらく泣き続け、やがて泣き疲れたのか再びベッドに横になり眠ってしまった。
取り敢えず後は令音に任せることにし、士道達は部屋を出て廊下を歩いていた。
「今はゆっくり寝かせてあげましょう。霊力を封印するのはその後でも遅くはないわ」
「もう封印できるのか?」
「ええ、元々いつでも封印できるくらい好感度高かったもの。今回デートをしたのも彼女がそれを望んだから、それを叶えてあげてその後キスをして封印……って流れだったんだけど……まさかこんなことになるとはね」
「グラトニーはこれを狙ってたんだよな……」
「六喰がグラトニーの被害者だったのは大誤算だったわ。それなら私達に六喰の情報を渡したのも辻褄が合うわ。自分が行っても無駄だから、面識の無い私達を差し向けさせた」
琴里は自分達がまんまとグラトニーに利用されてしまったことを思い返し、顔を盛大に歪める。
「これでグラトニーは私達の力に加えて六喰の力も手に入れた。しかも霊力とかじゃなく霊結晶をね」
「それに本条二亜も琴里の天使の力を手に入れてた。もう彼女単体でも十分な脅威と言える」
「まさか、灼爛殲鬼を二亜が使うなんて……」
グラトニーだけでなく二亜もパワーアップして、彼女達はさらに力を付けてきていた。
「もうハッキリ言ってDEMよりもグラトニー達の方が脅威よ。グラトニーは他の精霊と比べて実力があり過ぎる。二亜も2つの天使を持ってて、あの百っていう子も精霊と大差ない強さを持ってるわ」
七罪の一件以降介入が無くなったDEM(恐らくグラトニー達が原因か)、それに変わり現在はグラトニーが介入し場を掻き乱してくる。二亜を攻略させる気がないのは勿論だが、今回の六喰の語った過去の所業、しかも本人にそれを改める気は皆無。
同じ人間を襲う点でも、狂三とはまるで違う。時間を確保するため人間を襲う狂三と違い、グラトニーは人間を襲うこと自体が目的の一部なのだ。飢えを埋めるために獲物を狩って喰らう、ただそれだけ。
さらにグラトニーには事態を隠そうとする気もあまりないため、いつかとんでもないするかもしれないという予感が常にしていた。
「ふぁ〜あ……」
と、大きな欠伸を十香がしたことで場の空気が和らいだ。見ると十香だけでなく他の精霊達も半目になってたり目を擦っている。
「……ま、とりあえず皆んな今日はもう寝なさい。この話はまた後にして、今は身体を休めなさい」
「あ、ああ、そうするよ。行こう皆んな」
琴里の言葉に士道は素直に頷き、十香達を連れて施設の寝居スペースへ向かった。
「……ふぅ」
廊下に1人残された琴里は壁に背を預け一息吐く。
「………結局言えなかったけど、どうすれば良かったのかしら……」
そう、琴里には士道達に話していないことがあったのだ。それは、グラトニー達の対応についてだ。
ここにきてグラトニーはラタトスクに害を出し始めた。二亜の攻略の妨害、六喰の霊結晶を奪うために暗躍するなど。結果六喰の霊結晶は半分とはいえ奪われてしまい、二亜に至っては完全にグラトニー側についている。
狂三とは違う明らかな敵対。元々ラタトスク上層部もグラトニーについてはかなり問題視しており、保護対象から除外する意見を出す者も出ているのだ。
「(今はまだ結果は出てないけど、時間の問題ね……)」
そう遠くないうちに答えが出されると、琴里は確信していた。
ほぼ同時刻…… お目当てである封解主の力を手に入れ、自宅に帰ってきていたグラトニーと二亜。
「ぷはぁ、全て計画通りだったな」
「ここまでうまくいくなんてねぇ。今回のビールの味は格別に美味しいよ」
彼女達は計画の成功を祝っていた。テーブルにはいくつかの料理や惣菜が置かれ、それをつまみに酒を飲んでいる。二亜は缶ビール、グラトニーは日本酒をラッパ飲みしている。
「モグモグ……」
百は酒の代わりにジュースを飲みながら料理をつまんでいる。百も帰って来たグラトニー達から聞かされ全て知っており、一緒に食事をしていた。
そして祝杯を終え士道達も眠りについた丑三つ時……
「一応聞いとくぞ、本当に良いんだな?」
「うん、もう決めてることだから」
「二亜姉様の決めたことなら、ボクからは何も言いません」
グラトニーの手には封解主が握られており、彼女は今まさに果たそうとしていた。
封解主を手に入れる発端となった目的を。
「良い目してんな本条、オレそういうの好きだぜぇ。じゃあやるぞ。封解主ーーー【閉】」
二亜の覚悟の決まった瞳を見て笑みを浮かべたグラトニーは、封解主を掲げそれを発動した。
その夜、世界から二亜に関する記憶が封印された。
尚士道は翌日に六喰とキスをし残っていた霊力を封印しています。
そして着々と近づくDEM終幕のカウンドダウン、封解主を手に入れたことにより空間移動が可能になったのでもう本社も決して安全ではないです。