暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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デアラのバースデイイベントもついにラストですね。まさか士道こと士織もやるのは予想外でした。まあ狂三とコンビになってるのは狂三優遇されてると思いました。(笑)

てな訳で52話。久々に彼女が登場します。


52話

「ふぅ…ちょっと買いすぎたなぁ」

 

六喰の霊力を封印してから半月が経ち、士道は食材や生活用品の入った袋を持って歩いていた。

 

「にしても……何か忘れてる気がするんだよぁ……」

 

ここ最近、士道は妙な引っ掛かりを覚えていた。何か大事なことを忘れている、そんな感覚を。しかし思い出そうとしてもそれが何なのか全く分からない。

 

半月前グラトニーが封解主を使い世界から本条二亜の記憶を封印したことで、士道達も二亜のことを忘れてしまっているのだ。

 

今この世界で二亜のことを覚えているのはグラトニーと百の2人のみで、それ以外は誰も二亜のことを覚えておらず、情報の類も全て封印されている。

 

そのため士道はこの半月の間何か違和感を感じながら過ごしていた。

 

「……まあ考えても仕方ないか。もうすぐお昼になるし、早く帰って飯作らないと」

 

思い出せないものは仕方ないと、このことを頭の片隅に置き、家で待ってる十香達のためにも帰る足を早める。

 

「ん……?」

 

しかしふと公園を通りかかった時、そこから人の声が聞こえてきて、耳を傾けてみる。

 

「ママー、あの人今日もあそこにいるよ?どうしたのかなぁ?」

 

「しっ!ダメよ、指なんて差しちゃ。さ、もう行きましょう」

 

そんな声が聞こえたと思ったら、1組の親子が公園から出てきて自分の横を通り過ぎて行った。

 

「なんなんだ、一体……」

 

好奇心に駆られた士道は、公園内に足を踏み入れる。

 

「あ……!」

 

すると奥に置いてあるベンチに人が1人座っているのが見えた。その人物は首を前に垂らし項垂れており、その長い髪によって顔は見えない。

 

「あ、あの〜……大丈夫ですか?」

 

士道はその人物に近づき、恐る恐る声を掛けてみる。

 

「………っ」

 

それに反応したのか、その人物はゆっくりと首を上げ顔が明らかになる。

 

「なっ!?お前は……!?」

 

その正体は士道もよく知っている人物だった。最後に会った時とは何もかも変わり果てていたが、その顔を忘れる筈が無かった。

 

「エレン……!!」

 

そう、かつて士道達の前に立ち塞がり交戦したDEMに所属する最強の魔術師、エレン・M・メイザースであったのだ。

 

「あなたは……五河、士道……」

 

だが今目の前にいる彼女にその頃の面影は皆無だった。着ているスーツはシワだらけであちこち破れ、髪はボサボサに伸び切り下半身辺りにまで届いている。さらに食事をしてないのか頬はやつれており、まともに寝てないのが分かるくらい目元には濃い隈ができていた。

 

「なんの用ですか……何もないのでしたらあっちに行ってください……」

 

掠れた声でエレンはそう言う。伸び切った前髪の間から見える目は虚ろで、何も映していない。

 

「お前……どうしたんだよその姿。それにその顔……ちゃんと食べて寝てんのか?」

 

「あなたには関係ありません……私に関わらないでください……」

 

士道の問いにエレンはそう返すと、ベンチから立ち上がりその場を立ち去ろうとする。

 

「……ぁ…」ドサッ

 

しかし歩き出してわずか数歩で、エレンは地面に倒れ込んでしまう。起き上がろうにも身体は言うことを聞かず、それどころか意識がだんだん遠くなっていく。

 

「お、おいっ!」

 

薄れていく意識の中、彼女が最後に見たのは、自分に慌てて駆け寄ってくる士道の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『た、ただいまぁ』

 

「あら、ようやく帰って来たみたいね」

 

買い物に出た割には少し遅い兄の帰りに琴里はそう呟く。既に五河家のリビングには美九と折紙を除いた精霊達が揃っており、皆士道の帰りを待っていたのだ。

 

「お帰りなさい、士…道……?」

 

玄関に行き出迎えた琴里だったが、思わず途中で言葉が止まる。

 

何故なら、買い物に行った筈の兄が見知らぬ女性を背負って帰ってきたのだから。

 

「し、士道!アンタ、どうしたのよそれは!?」

 

「まぁ、帰りにちょっとな……それより、すぐに診てやってくれ!かなり弱ってるみたいなんだ!」

 

そう言うと士道は買い物袋を床に置き女性を両手で抱きかかえる。その際彼女の顔が見え、琴里の表情が険しくなった。

 

「……士道、アンタその女が誰なのか分かってるんでしょうね?」

 

抱えられている女性、エレンを見ながら琴里は厳しい視線を士道に向ける。

 

「……ああ、こいつがエレンなのは分かってる。知ってる上で連れてきた」

 

「ッ!!アンタ正気!?彼女はDEMの魔術師で、ウェストコットの右腕よ!!」

 

琴里は声を荒げ非難する。今でこそグラトニーが最大の脅威となっているが、それ以前はDEMが最も大きな障害として立ちはだかっており、エレンには最強の魔術師として幾度も苦しめられたのだ。

 

「今ここには十香達もいるのよ!?それなのに、よりによって彼女を連れてくるなんて!?」

 

「俺だってそれは分かってるよ。けど……放っておけなかったんだ」

 

連れて帰れば色々言われるであろうことは士道も分かっていた。だが意識を失う程に弱っていた姿や全てに絶望しきった目を見てしまった士道は、彼女をあのまま放っておくことができなかった。

 

「例え敵だったとしても、俺はこいつを助けたい。連れてきた身として責任は俺がとるから、頼む!」

 

士道は琴里に向けて頭を下げる。するつもりはないが、仮にダメと言われても今更エレンを見捨てる気は無かった。

 

「………ハァ……ほんっとにお人好しねアンタは。ああもう……貸し一つよ、いいわね?」

 

「ッ!ありがとう琴里!!」

 

「とりあえずリビングのソファに寝かせるわよ。十香達にはアンタがちゃんと説明しなさい」

 

「ああ」

 

その後エレンを連れ帰ってきたことに他の面々も驚愕したが、なんとか十香達にも事情を説明し、エレンを五河家で看病することになった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

士道が十香達に事情を説明している頃、少し離れた所から五河家を見つめる一つの影があった。

 

「………」

 

士道がエレンを背負いながら中に入っていく一部始終を目撃していたその人物。

 

「あの女は……二亜姉様の……」

 

そう呟き、本条百はその場を後にするのだった。




久々にエレンが登場しました。ここからはオリジナルの話が続くと思います。

ちなみに二亜の記憶が封印され、士道達はグラトニーが百ともう1人と一緒にいるのは覚えてますが、そのもう1人が誰だったのかは覚えてません。
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