イギリスのロンドンにあるDEMインダストリー本社、その中にある会議室では取締役員達が集まり怒号を上げていた。
何故ならDEMの所有する研究施設や工場が次々とグラトニーに潰され、さらには各地にある支社も軒並み壊滅させられたのだ。
「一体どうすると言うのだ!!もうほとんどの施設が潰され、我が社は最大の危機に晒されているのだぞ!!」
「送り込んだ部隊も誰1人として戻ってこず、残っている魔術師もかつての半数もいない!!」
「すでに取引先も多く離れている!このままではいつ孤立してもおかしくない!」
役員達はそれぞれ思い思いに喚き散らす。皆これまでになかった異常事態に焦っているのだ。
「………ふぅむ」
そんな中でただ1人、部屋の最奥に位置する椅子に腰掛けている代表取締役である男、アイザック・ウェストコットは思案に耽っていた。
「まさか、ここまでの事態になるとはね……」
落ち着いた雰囲気を出しているが、ここまでの事態になるのは彼にも予想外なことだった。
全ての始まりはあの報告からだった。DEMの所有する施設の一つがグラトニーによる襲撃を受け皆殺しの末に壊滅。
その後所有する施設や各地の支社が立て続けにグラトニーに襲われるようになり、そこにいた者達も軒並み殺された。
「(だが何故だ?何故グラトニーは極秘の施設も知っていたのか……いかに彼女が強大な力を持っていても、そんなことまでは知り得ない筈だが……)」
DEMは社内でも一部の者しか知り得ない極秘扱いの施設やラボをいくつか所有している。だがグラトニーはそんな場所も例外なく襲撃し、ことごとく壊滅させてきたのだ。
それはDEMへの復讐に燃える二亜が囁告篇帙で隠された場所を特定し、それを元にグラトニーが襲撃を仕掛けているからなのだが、グラトニーが封解主で世間から二亜に関する記憶や情報を封印してしまった為、裏で二亜が動いていることなど知るよしもない。
元々は二亜を捕獲し拷問などの類をしていたのに、今やその存在すら忘れてしまっているのだから、彼が真相に辿り着ける訳がなかった。
「そもそも精霊と関わるということ事自体が間違っていたのだ!でなければこのようなことにならなかったのだ!!」
「どう責任をとるおつもりですか!ミスター・ウェストコット!」
「こうなったのは元々あなたが好き勝手やっていたからなんですぞ!!」
いつしか役員達の矛先はウェストコットに向けられており、皆口々に責任の追及や罵詈雑言に近い発言を繰り返している。
「聞いているのですか!?だいたいあなたの行動は以前か「バグンッ!」……ら……?」
ウェストコットが思案していて何も返答を返さないことから、好き放題言っていた役員達だったが、突如その内の1人の首が消失した。
ブシャアアアア!!
一瞬の間を置き、一気に血飛沫が噴き上がる。
「ひ、ひぃっ!?な、何が起きたんだ!?」
先程までとは一転、突然の出来事に役員達はパニックに陥る。
グシュッ!
「ぎゃああああ!!う、腕があぁぁぁぁ!?」
さらに今度は別の役員の腕が無くなり、断面から血が噴き出る。
『全く、汚ねぇ声出しやがって』
そんな阿鼻叫喚の中、会議室に響く女の声。直後部屋の一角が歪み、大きな孔が出現する。
その孔から黒ずくめの服装をした女が姿を現した。その手には杖の様に巨大な鍵が握られている。
「よう、DEMのお偉いさん共。随分と顔が引き攣ってやがるなぁ?その感じだとオレが誰か知ってるみてぇだな」
彼女の言う通り、この場にいる者達は女の正体をよく知っていた。そしてこの惨状を引き起こしたのも彼女であることも理解してしまっていた。
「グ、グラトニー……!?」
「何故ここに……!?」
そう、目の前の自分達を見下すような笑みを浮かべている女こそ、DEMがここまで追い詰められることになった張本人。史上最凶の精霊、《グラトニー》であった。
「単刀直入に言う、DEMは今日終わる。当然この社内にいる奴らも全員、
「……ッ!?オレ達……だと……!?お前以外に誰が……」
ドォォォォン
『!?』
「始まったか……!」
突然部屋全体に響いた爆音に役員達に動揺が伝染する中、グラトニーはニヤリと笑みを浮かべそう呟く。
「今のはオレの仲間が襲撃を開始したんだ。今頃下の階は大騒ぎになってるだろうなぁ?まあこの社内の人間はオレの餌になるんだ、死のうが生き残ろうが誰1人逃がしはしねぇ」
「さて、本来なら今すぐここで全員喰っちまっても良いんだが、せっかくアイツの悲願が果たされるんだ。お前らには見届けてもらおうか、DEMが終焉を迎え、崩壊していく様をなぁ」
「な、なんだと……」
そう口にする男の表情は恐怖で顔が引き攣っていた。
「そうだ、その顔だ。その恐怖に染まった面、そういうやつを喰らうとどうにも味が良いんだよ。だからもっと恐怖してくれ、それがオレが喰らう時に最高のスパイスになる!」
猟奇的な笑みを浮かべたグラトニーが手に持っていたデバイスを操作すると、天井が開き巨大なモニターが出現する。
「さあ。アイツの復讐劇、とくと焼きつけな」
グラトニーがデバイスのボタンを押すと、下の階の光景が映し出された。
次回は二亜サイドのお話です。