今回ついに二亜の復讐に決着がつきます。
「さ、これでお前の望んだ状況になったぞ」
「サンキューグラっち。アイツだけは、あたし自身でケリをつけたいからね」
二亜はグラトニーにそう言うと、ウェストコットに目線を向ける。
「ふふふ……」
辺りに血が飛び散り肉片も付く部屋の中、彼は椅子に腰掛け笑みを浮かべている。
元より人の絶望で快楽を感じる男である。目の前の惨状を見ても恐怖するどころか、役員達の最期や断末魔を見て聞いてひたすら悦に浸っていた。
そんなこれまでにない満足感に満ち溢れている彼の横にカツンと杖の音を立てながら二亜が立つ。
「また会ったね、クソ野郎」
「ふふ……はて、キミは誰だったかな?」
「っーーーー!!……ああ、そうだった。そう言えばこうしたのはあたしだった。グラっちお願い」
ウェストコットの言葉に一瞬怒りで頭が沸騰する二亜だったが、すぐにこうしたのは自分達であったことを思い出し、冷静になる。
「はいよ、《封解主》」
グラトニーは封解主を顕現するとウェストコットにかかっている記憶の封印を解除する。
「………なるほど、全て思い出したよ。まさかキミだったとはね、《シスター》」
記憶が戻り二亜のことを思いだしたウェスコットは笑みはそのままだが、目を少し見開き驚きが入り混じった表情を浮かべる。
「そうだよ。アンタらDEMに散々酷い目に遭わされたシスターだよ。ホントなら二度とお前の顔なんて見たくなかったけどね」
「手厳しい発言だねぇ。ふむ、確かにキミの天使であれば極秘のラボや施設も隠してる意味を成さないだろうね」
かつて一度捕らえたことで二亜の天使を知っていたウェストコットは、二亜がいれば秘匿している所など簡単に暴かれるだろうと納得する。
「お前のせいであたしは漫画家として機能できなくなった。だからこれは報復、あたしから大事なものを奪ったDEMをぶち壊す。そのためにグラっちと手を組んでここまでやってきたんだよ」
「そうか、そして私達はまんまとここまでしてやられたと言う訳か」
「言っておくが救援なんてもんは考えねぇ方が良いぞ。ここに来るまでに腕のありそうなやつは軒並み始末した。まあ仮に来たとしても、オレに勝てるかっていう話だがな」
「まさか、助けなんて期待していないよ。流石にここまでされては私も打つ手無しさ」
両手を上げて降参の構えを取るウェストコット。
「本来ならもっと凄いものが見れる筈だっただが、まあこんなにもたくさんの絶望を見せてくれたんだ。それなりに満足だよ」
「ホント気色悪いよ。絶望顔みて快楽感じるなんて。……まあ、あたしも似たようなもんに目覚めちゃったけど」
かくいう二亜も復讐を続ける内に人を痛ぶることに快感を覚えるようになり、今では立派なサドに目覚めていた。最も、目の前の男程タガが外れている訳ではないのだが。
「さあ、もうおしゃべりは終わり。いい加減お前の顔も視界から消したいし」
そう言うと二亜は杖は突きつけ、先端から青い炎を出現させる。
「ふふふ、私を殺し復讐を果たしても、キミ達の関係は終わらないのだろう?」
「…………」
「では、キミ達がこれからどうしていくのか、そしてあの精霊達がどんな結末を迎えるのか、地獄で続きを見ているとするよ」
「あっそ。じゃあさっさと死ね」
その瞬間、蒼炎がウェストコットを包み込む。身体が焼かれていく間、彼はずっと軽薄な笑みを浮かべ続けていた。
「終わったな」
「うん。これでDEMはもう終わりだよ」
ビルの屋上から燃え盛るDEM社を眺めながらグラトニーと二亜は言葉を交わす。
「どうだ、DEMに復讐できて満足か?」
「うん、スッキリした気分だよ。復讐は何も生まないみたいなことあの少年が言ってたけど、別にそんなことないじゃん。今物凄く嬉しいんだよ。あたし自身の手でDEMに引導を渡せたことがね」
そう話す二亜は燃え盛るDEM社を笑顔で見下ろしている。その表情には一切の後悔が感じられなかった。
「さてと、これでオレとお前との同盟は終わった訳だが、お前はどうすんだ?」
「決まってる、グラっちについていくよ。あたしの心は、もうグラっちに掴まれちゃってるから……ね」
そう言ってグラトニーの方に向ける二亜の顔は、十香達が士道に向けるものと同じだった。
「そうかい。オレの方も好きに暴れられたし、少しだが腹に溜まる感覚は感じられたし収穫はあった。それと、コイツも手に入れたしな」
グラトニーはポケットに手を突っ込むと、一つのUSBメモリーを取り出す。
「襲撃するだけじゃつまらねぇからな、社内にあったデータをコピーしてこれに写したんだ。勿論、オリジナルの方は本社と一緒に消えたがな」
そう、グラトニーはDEMの持つ様々な技術や情報が詰まったデータをちゃっかり手に入れていたのである。
「うわ、いつの間に。というか、それ手に入れた理由ってもしかして……グラっちが以前回収してたアレのため?」
「ああ、あの組織といいDEMといい、どこも考えてることは大して変わらねぇな。このデータがありゃ、アイツを完成させることができる筈だ」
「そっか、じゃあ早く帰ろっか。百ちゃんに留守番任せちゃってるし」
「そうだな、《封解主》」
グラトニーは封解主の力で孔を開くと、二亜と共にその場から姿を消した。
その日、DEM社、デウス・エクス・マキナ・インダストリーはたった1日にして跡形もなく壊滅した。
そしてそれは、1人の女の復讐劇が完遂された証でもあった。
これにて二亜の復讐は終わりました。そしてこれからは純粋にグラトニーの仲間として共に行動をします。
グラトニーと二亜が話していたアレについてはすぐに分かります。先に言っておくと、グラトニーの仲間は最終的に3人になります。