「思った通りだ。腐ってても大企業。顕現装置やバンダースナッチの設計図なんかも入ってやがる」
空中戦艦内にある研究室。そこではグラトニーが1人パソコンを操作しながら、モニターに映るDEMのデータを見ていた。
「これなら、コイツを直して完成させられるな」
グラトニーが背後へ視線を向ける。そこには一つの台座があり、その上にの
身体はボロボロで、頭にはコードが刺さり研究室内の機械と繋がっている。さらに少女の肌はあちこちが剥がれ落ちており、そこから見える内部は
「まさか、こんなもんを作ろうとしてたとはなぁ」
台座に眠るように置かれた少女を見ながら冷徹にそう吐き捨てるグラトニー。この少女、正確には少女型アンドロイドは廃墟と化したDEMのラボで見つけたもので、落ちていた研究日誌によると、どうやら元々はバンダースナッチに続く新たな戦力として開発されていたらしい。
しかし研究が行き詰まっていたのと、精霊である二亜を捕らえたことにより必要性が低くなったことで、開発の中止が決定。ラボ自体も破棄されることとなり、試作機もラボと共にそのまま放置されたとのこと。
その後ラボ自体は消し去ったが、残されていたこの劣化した個体と研究資料をグラトニーは回収し保管していたのである。
「本来ならあのまま闇に葬られたままだったんだろうが、オレが引っ張り上げてやる。今回手に入れたデータと、コレを使ってな……」
そう呟くグラトニーの手には一つの小瓶が握られ、その中には白い光を放つ宝玉が入っていた。
「………ふぅ」
グラトニーが戦艦内で1人研究室に籠る一方、二亜は自宅で一服しながらテレビを見ていた。
「ふふふ、どこも同じ話題取り上げてるねぇ」
二亜が見ていたのはあるニュース番組。DEMを壊滅させてから数日、どのチャンネルでもDEM社の報道がなされている。そしてニュースだけでなく、新聞や雑誌でもこのことは大々的に載せられていた。
"突然のDEM本社の壊滅、少し前にあった日本支社壊滅との関連性は!?"
テーブルに置いてあった新聞の表紙を思い出し二亜は笑みを深める。
「まさか世間もDEMを潰したのがあたしとグラっちの2人だなんて思わないでしょ。あの少年達も記憶を封印してるから、真実にはたどり着けないだろうし」
今頃DEM壊滅のニュースを見ているであろう士道達の反応を、そしてその真相が分からないであろうことを想像し二亜は嘲笑を抑えられない。
「あたしの復讐は終わった。これをあの少年が知ったら、どんな顔するんだろう……見てみたいなぁ…!復讐を止める筈があたしのこと忘れて何もできなかった少年の反応が……!」
復讐の影響でサドに目覚めている二亜は、記憶の封印を解除し何もかも手遅れになっていたと知った時の士道はどんな顔や反応をするのか思い浮かべ愉悦の笑みを浮かべた。
「二亜姉様、コーヒーを淹れたのでどうぞ」
二亜がそんなことを考えていると、コーヒーの入ったマグカップを持った百がやってくる。
「ん?ああ、ありがと百ちゃん」
百が部屋に入ってきたのに気づき、二亜は咥えていた煙草を消して灰皿に捨てると、コーヒーを受け取り口に運ぶ。
「うん、美味しいよ」
先程まで浮かべていた悪い笑みとは打って変わり、優しい笑みを百に向ける二亜。
「………!」
二亜から美味しいと褒められ、百は僅かに口元をほころばせる。感情をあまり顔に出さない彼女だが、二亜と交流している時はこうして少しだが感情を出すことが多かった。
「……グラトニー様は、また船内に?」
「まあね。帰ってきてからはずっと中に籠って開発をしてるみたい」
「そうですか………それにしても、二亜姉様。良かったんですか?ボクだけ行かずに留守番で」
「うん。元々この復讐はあたしが発端で始まったことだったから。関係ない百ちゃんが首を突っ込んでもらうのは悪かったからね」
「そうですか……」
「ああいやいや!気にしなくて良いんだよ!それに百ちゃんだってDEMに人生を壊された被害者だから、そいつらの顔もみせたくなかったんだよ」
「だから邪魔だったとかそんなんじゃないから、そんなしょんぼりした顔しないで、ね?」
「はい」
DEM本社への襲撃に参加しなかったことを気にしてる様子の百だったが、二亜からそう理由を話され納得したようだった。
「ほら、この話しはおしまい。コーヒー飲んだらなんか甘いもの食べたくなっちゃった。なんか甘いもの食べ行こっか」
そう言うと二亜はテレビを消して百を連れ自宅を出ていく。世間が大騒ぎとなっている中、彼女達は変わらない日常を過ごしていた。