暴食の精霊 《グラトニー》   作:赫夜叉

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ハーメルンが使えなくなった時はどうなるかと思いました……

今回は前回のエレンとグラトニーの過去話です。


7話

今からおよそ6年前、エレンは出現した精霊、グラトニーを捕えるべく自らの隊を率いて出撃していた。

 

「見つけましたよ、識別名《グラトニー》。大人しくしてもらいましょうか」

 

周りを魔術師達で取り囲みながらエレンはレーザーブレードを突きつける。

 

「おいおい、こんなので脅してるつもりか?」

 

しかしグラトニーは全く動じず、身構えもしない。舐められていると分かったエレンは額に青筋を浮かべる。どうやら従うつもり無いようだった。

 

「そちらがそのつもりなら良いでしょう。手足の一本ぐらいは無くなっても後悔しないでくださいね?」

 

そう言うとエレンはレーザーブレード片手に一瞬でグラトニーの背後に回り剣を振り下ろした。

 

ガシッ

 

「は?」

 

しかしグラトニーはその場から一歩も動かず、振り返ることもなく背後からの剣を持ったエレンの腕を掴んだ。

 

「残念だったな。そら、お返しだっ!」

 

ドゴッ!

 

「がっ…!?」

 

エレンが一瞬固まっていた間にグラトニーは彼女に向けて強烈な回し蹴りをお見舞いした。蹴りを食らったエレンは思い切り吹っ飛ばされ近くの建物に激突する。

 

「ぐっ……おのれ、やってくれましたね……ん?」

 

体中が痛みつつも自身にのしかかる瓦礫から出ようとするエレンだが、ふとあることに気づく。

 

「なんですかあれは……?腕?」

 

自分を蹴り飛ばしたグラトニー。彼女の手には人の腕があったのだ。さっきはあんなもの持っていなかった筈。しかもその腕が握っている剣は自分が持っている物とそっくりなような……それにさっきから右腕の感覚がない……

 

「っ!ま、まさ、か……」

 

そこまで考えたエレンは恐る恐る自身の右腕へと目を向ける。そんな筈ない、違う。だって自分の腕はここに……。そう思いながら右腕を見ると……

 

 

 

自分の右腕の肘から先が無くなっていた。

 

 

 

「あ……あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!

 

 

 

その直後、襲ってきた激痛に絶叫を上がるエレン。そう、あの時グラトニーに蹴り飛ばされた時、同時に掴まれていた右腕も引きちぎられたのである。

 

「なんだぁ、偉そうな口叩いてた割に全然大したことねぇな」グチャボリ

 

引きちぎった右腕を喰らいながら嘲笑するグラトニー。実際エレンは魔術師の中で最強と言える強さを持つのだが、グラトニーにとってはそんなのさして問題ではなかった。彼女にとって魔術師も所詮は人間に過ぎないのだ。

 

「よ、よくも執行部長を!」

 

「おのれぇ!!」

 

エレンの絶叫を聞き激昂した彼女の部下数人が武器をもってグラトニーに襲いかかる。

 

「はっ、バカが」

 

しかしグラトニーは右腕と共に奪ったレーザーブレードでそれを迎え打つ。

 

ザシュ!ズバッ!

 

そして逆にグラトニーに首を刎ねられ殺された。転がってきた首の一つを踏み潰しながらグラトニーは上空にいる魔術師達を見る。

 

「さーて、今回も狩らせてもらうか」

 

そう言うと、グラトニーはレーザーブレード片手に魔術師達を次々と惨殺していった。中には死んでいく仲間を見て逃げ出そうとする者もいたが、その者達も残らず殺し、エレンを除いて隊は全滅した。

 

「ば、馬鹿…な…」

 

精鋭揃いの自分の隊の全滅が信じられず呆然とするエレン。目の前でグラトニーが死んだ部下達を食っているが、動くことはできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どれくらい経っただろうか。エレンの部下を全て食い尽くしたグラトニーは、未だ瓦礫の下敷きになったままのエレンの元へ歩いて行く。

 

そして目の前まで来た所で足を止め、視線を下にいるエレンに向けた。

 

「お前の仲間は全部食った。もうお前1人だ」

 

「ぐうぅ…!おのれ、おのれぇ……!」

 

グラトニーの言葉にエレンは憎しみの込もった視線を向ける。ただしそれは部下が全滅したことよりも、世界最強である自分をこんな無様な姿にさせたことの方が大きかったが。

 

「お前最初言ってたよなぁ?手足の一本ぐらい無くなっても後悔すんなって?だがお前はオレに右腕を奪われ、部下も全て失った」

 

「……黙れ」

 

グラトニーの言葉にエレンは俯き押し殺した声でそう言うが、グラトニーは口を止めない。

 

「自分が優位に立ってると思い込んでこのザマだ」

 

「黙れ……!」

 

「お前、びっくりする程惨めだな」

 

ブチッ!

 

その発言を聞いた瞬間、エレンの中の何かがキレた。

 

「黙れぇぇぇぇ!!!黙れ黙れ黙れぇ!!」

 

完全にブチ切れたエレンは腕の痛みも忘れ、目を血走らせながらグラトニーに喚き散らす。

 

「ふん、そんな姿じゃ怖くもなんともねぇな。まあ元々怖くねぇけどよ」

 

そう話すグラトニーは仮面の下でつまらないものを見る目をしていた。

 

「はあ……食う気どころか殺す気にもならねぇな。もういい、お前は見逃してやるよ」

 

「き、貴様ぁ!!まだ私を侮辱するのかぁ!!」

 

「あー、うるせえ。じゃあな」

 

エレンの怒号を適当に聞き流すと、グラトニーはエレンに背を向け立ち去り始めた。

 

「グラトニーィィィィ!!待てぇぇぇぇぇ!!」

 

エレンは去っていくグラトニーに向け絶叫するが、グラトニーは振り返ることもなくそのまま遠ざかっていき、ついに姿も見えなくなった。

 

「ああああああああああ!!」

 

右腕を失い、部下を失い、プライドもバキバキにへし折られた女の叫びがその場に響いた。

 




この後エレンはやってきた援軍に救助され治療を受けましたが、右腕だけは治らず義手を付けるしかありませんでした。
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