シャドウ   作:ゆばころッケ

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最近少し忙しいです。

来週も忙しいのであまり話を更新できないかもしれません。

なるべく頑張ろうと思います。


三、一夏、距離

五年生の始業式、俺はクラス替えしたばっかのクラスに入る。

 

見慣れた顔もあったが、俺が一番探している人は居なかった。

 

「よっ、一夏。また同じクラスだな。」

 

「ああ、今年もよろしく。」

 

「岡田のやつは違うクラスらしいぜ。」

 

「へぇ……」

 

俺はあまり話を聞いていなかった。

 

「お前、櫻探してるだろ?」

 

俺って分かりやすいのかなぁ。

 

「……あぁ。」

 

俺はそう答えるしかなかった。

 

「あいつは違うクラスだぜ。」

 

まあそんな気はしてた。

 

「やっぱり気になんの?うん?」

 

「そんなんじゃあねぇよ。」

 

俺はムキになって否定した。

 

「まあ、いいけどよ。お前がそんなんだから……」

 

「そんなんだからなんだよ?」

 

「……なんでもねぇよ。」

 

その会話はそれで終わった。

 

先生が入ってきたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺たちは始業式を終えた。

 

再びクラスに集まった俺たちは先生の話を聞いていた。

 

「おはようございます。

始業式ということで今日は色々やることありますが、

その前に皆さんに新しい友達を紹介したいと思います。」

 

「凰さん、入って。」

 

先生がそう言うと扉が開いてツインテールの女の子が入ってきた。

 

「凰鈴音デす。よろしくおねガいします。」

 

その小さな少女は緊張した様子でそう挨拶した。

 

顔つきから見るに日本人ではないようで、その日本語は少しおかしかった。

 

「凰さんは中国から日本に来たばかりで

まだまだ慣れないことも多いと思うので皆さん助けてあげてくださいね。」

 

なるほど、中国人か。

 

言われてみればそんな顔してる気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凰さんはいつも一人でいた。

 

言語のせいもあって同級生と上手くいってなかったのだ。

 

俺はそんな孤独な凰さんを見て、自分と重ねていた。

 

強がっては居たが、どこか寂しげな様子が凰さんにはあったのだ。

 

「なぁ。」

 

俺は話しかけた。

 

凰さんは下を向いていた顔を少し上げ、俺の表情を一瞥するとまた下げた。

 

「今日の給食楽しみだよな。

欠席の人の分のあげぱんは譲らないぜ。」

 

俺は話す内容までは考えていなかった。

 

でも給食は小学生共通の言語だよな?

 

凰さんはまた顔を上げ、俺をキッと睨むと

 

「同情すルな。」

 

と言って、俺にグーパンチを喰らわせた。

 

周りの生徒は何事かと驚いていたが、俺はその場を収めた。

 

同情していたように見えたなら殴られても仕方ないと思ったからな。

 

でもグーパンチってなぁ。

 

最近喧嘩してなかったし、箒の竹刀も受けてないし、

 

結構こたえる一撃だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜俺は夕食を食べるために出かけていた。

 

千冬姉が居なくなってから、俺は料理をする気がおきず、よく外食していた。

 

食べてくれる人がいないのに作る料理なんてな。

 

「あれ、こんなところに中華料理屋なんてあったかな?」

 

それは小さな店だった。

 

チェーン店とかよりはこういう店の方が好きな俺は暖簾をくぐった。

 

「いらっしゃイませ。」

 

「あっ……。」

 

それはほとんど二人同時だった。

 

凰さんはポカーンとした顔をしていたが、

 

「おひトリ様デすか?」

 

さすがにお手伝い中ということもあってすぐに接客は再開された。

 

「はい。」

 

「こちらへドうぞ。」

 

俺は案内されたカウンター席につく。

 

凰さんの実家は料理屋だったのか。

 

それで引っ越してきたのかな。

 

とりあえずメニューを見る……。

 

 

 

 

やべっ、名前見ても良く分からない。

 

「ドうぞ。」

 

「ありがとう。」

 

水を渡してくれたついでに俺は聞いてみる。

 

「おすすめはありますか。」

 

「これ……。」

 

指さされていたのは酢豚だった。

 

「じゃあそれでお願いします。」

 

「お前はそれが好きだなぁ。」

 

カウンターから顔を出した男は大声で笑いながら言った。

 

「別にいいじゃなイ、おとーさん。」

 

ああ、なるほど。父親か。

 

「ハハハ、ところでその子は鈴の知り合いか?」

 

「ただのクラスメートヨ。」

 

「同じクラスの織斑一夏です。」

 

俺はペコっと頭を下げた。

 

「そうか、そうか。ワハハ。」

 

なんか豪快な人だなぁ。

 

「おとーさん、一夏君が困ってますよ。」

 

お母さんだろうか。凰さんにどこか似た女性がそう言った。

 

「そうか、そうか。ワハハ。」

 

さっきと反応が同じだったような。

 

まあいいか。

 

こういう雰囲気は嫌いじゃないし。

 

 

 

ちなみに酢豚は美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから俺はたまに中華料理屋に行った。

 

料理も美味しかったし、その家庭的な雰囲気が気に入ったのだ。

 

そんなある日、学校で凰さんに話しかけられた。

 

「ツラかせ。」

 

大分俗語も覚えたなぁ……

 

「分かった。」

 

俺と凰さんは廊下で二人並んで歩いていた。

 

どこに向かうんだろう。

 

その小さな背中について行った先は屋上だった。

 

「あんたはなんでウチの店に一人でよく来んの?」

 

転校してきてから二ヶ月ぐらいなのによくそこまで話せるなぁ。

 

俺は感心しながら答えた。

 

「なんでって、味が美味しいからじゃないか。」

 

「そーじゃなくて、ああもう。」

 

こっちの言いたいことぐらい分かれって感じだった。

 

「小学生が夕飯を一人で食べに来るなんておかしいでしょ!」

 

「ああ、そのことか。」

 

まあそのことだよな。

 

「俺の家族が今いないだけだ。」

 

そう言うしかなかった。

 

ちなみにこの事実はこの近辺では有名なことだ。

 

千冬姉の名が知れ渡りすぎたからな。

 

転校してきた凰さんは知らなかったようだが。

 

「家族が居ないって……。」

 

凰さんは少し困っていたようだった。

 

「今はって言っただろ。

俺には大事な姉が一人居るし。」

 

「親は?」

 

「小さい頃からいない。」

 

俺ははっきりと答えた。

 

凰さんは俺の気迫に少しおされていた。

 

「そうだったんだ……。」

 

凰さんの様子は……

 

「今俺に同情した?」

 

「えっ……?」

 

「これでイーブンだな。」

 

俺は笑った。

 

凰さんはポカーンとしていたが、

 

少しすると顔が赤くなった。

 

もしかして怒らせてしまったかな?

 

「……変なやつ。」

 

また言われた。

 

箒にもよく言われたし、俺って変わってるんかね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから俺と鈴は少しずつ仲良くなった。

 

なんとなく学校で話す機会も増えたし、

 

鈴も日本語が上手くなって元気になってきたしな。

 

そんな訳で小学6年になった俺たちはもう親友といってもいいぐらいになっていた。

 

「一夏、今日は夕飯ウチに来るの?」

 

一緒に遊び終わった帰り道のいつもの会話だった。

 

「そうだな、今日は遠慮しておくよ。

千冬姉から連絡来るかもしれないから……。」

 

千冬姉はドイツでの教官としての任務を全うしたはずなのだが、

 

現在の正確な行方は分かっていない。

 

たまに俺に連絡をくれるが、居場所が分からない分、不安は大きい。

 

でも俺にあまり寂しさはなかった。

 

「そう。」

 

鈴は少し落ち込んだような声で言った。

 

俺が店に来ないとなると大抵こういう反応だ。

 

逆に行く日は喜んでくれる。

 

「なあ、鈴。」

 

俺は真横に居た鈴を越して、鈴の前に出る。

 

後ろ歩きで歩きながら鈴の顔を真正面に捉えた。

 

「なによ?」

 

「俺、お前と会えてよかったよ。」

 

俺の心からの本心だった。

 

「い、いきなり何言い出すのよ。」

 

鈴の顔が赤く見えた。

 

もう夕暮れ時だからな。

 

「だってお前のおかげで俺はここ二年寂しくなかったから。」

 

「はぁ?あんたには私がいなくても友達がたくさん居たじゃない?」

 

確かにその通りだ。

 

「鈴はさ、一番誰と仲がいい?」

 

俺の質問が唐突だったからか、

 

鈴は少しまごついてから小さな声で答えた。

 

「一夏。」

 

俺はその答えを聞いて安心した。

 

「俺もだよ。」

 

鈴は顔を下に向けた。

 

「俺にはさ、互いに一番だって思える友達がいなかったんだ。」

 

……前は箒が居たんだけどな。

 

鈴は顔を上げると顔をますます赤くした。

 

風邪なのか?

 

と思ったらいきなり真剣な表情になって、

 

「櫻とかいう子は?」

 

とか言い出した。

 

「櫻は……なんか違うんだ。」

 

「どう違うのよ。」

 

変なところに喰いつくなぁ。

 

「俺はともかく、櫻は俺の事をそんなに大切に思っていないんじゃないかって。」

 

あの日以来そう思うようになったのだった。

 

別に櫻の笑顔がおかしくなったからといって、

 

それまでの友情関係が変わったわけでもないし、

 

今でも大事な友人なんだけれど……。

 

櫻にとってもそうであるはずなのも分かってはいたが。

 

「ふーん、とにかく今は私が一番でいいのね?」

 

なんとなく気になる言い方だったが、違いはない。

 

「ああ。」

 

鈴の顔は明らかにおかしくなった。

 

「大丈夫か?」

 

俺は心配になって聞いた。

 

「大丈夫よ。

私、家の手伝いがあるから。」

 

鈴はそう言うと顔を下に向けて逃げるように走って帰った。

 

良く分からないけどあれだけ元気なら大丈夫か。

 

 

 

 

あっ、電柱にぶつかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中学生になって弾達とも仲良くなり、

 

中学の俺が寂しさを感じる事は全くなかった。

 

だが……

 

 

 

中学二年の秋ごろから鈴の元気がなくなっていった。

 

そんな鈴の様子に気づいていながら俺達は、

 

いや俺はまた何も言うことができなかった。

 

俺は……。

 

 

 

二月のある日、鈴に言われて俺は教室に残っていた。

 

鈴は教室に人が居なくなるのを待っているようだった。

 

冬の放課後には夕日が差し込んでいた。

 

人が居なくなると鈴は話し始めた。

 

「実はあたし転校することになったんだ。」

 

「えっ?」

 

俺はまた置いていかれるのか。

 

思わずそんなことを考えてしまう。

 

「そんな顔しないでよ。」

 

その言葉を聞いて俺はハッとした。

 

鈴だって転校したくってした訳じゃないだろうに。

 

「悪い、つい……。」

 

「いいわよ。別に。

一夏が……そう反応するのは予想ついてたし。」

 

鈴は落ち着いていた。

 

「でも一夏、安心して。

あたしは必ず戻ってくるから。」

 

鈴は嘘なんてつかないとは分かっていたが、

 

俺はなぜかその言葉を信じられなかった。

 

「信じられない?」

 

この時俺はどんな顔をしていたんだろうか。

 

「なら、約束しよっ。」

 

「約束……?」

 

「いつかあたしが料理上手くなったら、

あんたに毎日酢豚を食べさせてあげる。」

 

「遠くに居たんじゃ、無理な約束でしょ?」

 

鈴は笑顔でそう言った。

 

目には光るものがあった。

 

俺はその笑顔を見て気づいた。

 

そうだ、心配することなんてなかったんだ。

 

どんなに距離が離れようとも俺と鈴が友達であることには変わりなく、

 

俺と鈴の心は離れないのだから。

 

「分かった、俺待ってるよ。」

 

俺も笑顔で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「一夏、一夏、起きて。」

 

突然どこからか声がした。

 

世界は歪み、崩れていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一夏、一夏、起きて。」

 

俺は櫻の声で目を覚ました。

 

そうか、さっきのは夢だったか。

 

懐かしい夢だったな。

 

「おはよう、櫻。」

 

俺は櫻を見た。

 

距離が近かったので俺は思わず顔を下に向けた。

 

「どうしたの?」

 

櫻との距離がまた近くなった。

 

今度の俺は動揺しなかった。

 

櫻との距離がいくら近くったって

 

距離が遠いままだって気づいたからだ。

 

「なんでもないよ。」

 

俺はそう答えた。

 

また勉強漬けの一日が始まる。

 




この一夏は原作と違って鈴に依存しているかもしれません。

ちなみに鈴との約束は小学生の時のことらしいですが、

まあその辺は二次創作の範囲ってことにしておいてください。





後この後本当は千冬さん視点の話入れようかと思っていたのですが、

IS学園での話をいい加減書きたくなったので、次の章の終わりにします。

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