3000だとやっぱり少し楽です。
「全員、席についたな。」
「この時間もLHRだ。
時間をとるから、今から配るプリントに目を通せ。」
学園生活における注意とかISの扱いとかなどが載っているプリントだった。
にしてもこういうプリントって先生が読み上げるものだけど、
まあ個人で読ませた方が早いよな。
読まなくても困るのは自分だし。
そう思いながら読んでいると面白い一文があった。
『ISには危険はありませんが、
使い方を間違えれば人に危害を加える可能性があります。』
危険はないね。嘘にも程がある。
これがIS学園だけでなく、一般人にも配るパンフレットというのが救いだろうか。
勿論軍事的な危険があることを直接言うのは、
一般レベルではタブー視されていることが多い事を考えれば危険なんて書けない。
だが、いくらなんでもこれはないだろう。
だってどんなスポーツだって、危険がないものなんてない。
俺なんか既に死にかけたしな。
さすがに生徒向けの資料には
自分と相手がケガをしないようにすることの重要性についても書かれていたが。
「大体読んだか。読み終わっていない者は後で読んでおくように。」
千冬さんが言う。
まだ読み終わる訳ないだろ……。
「さて、この時間の本題に入ろう。」
本題?
「IS学園には諸君らの中学にはあっただろう委員会や係りといったものはない。」
少し間をおいてから、
「だが、クラス代表はある。」
あぁ、一夏がセシリアさんとなんやかんやしてからなるやつか。
「クラス代表の仕事は諸君らがイメージするような一般的役割だと思ってくれていい。」
だが、と千冬さんは続ける。
「クラスの顔という側面も持つ。
これは諸君らの将来において大きなアピールポイントになる。
例えば再来週行われるクラス対抗戦もその一つだ。」
将来か。
そういえば考えたことなかった。
今までIS操作できるかすら確信なかったから仕方ないかもしれないが、
この世界を生きる身としては、原作を越えた先まで生きるはずだからな。
「なおクラス対抗戦は各クラス代表が
各クラスの実力の程度を見せつけるものだ。」
「自薦、他薦は問わない。意見のある者は挙手しろ。」
一人の生徒がビシッと手を挙げた。
一人か。
ここIS学園でも日本人とは積極性のないものなのだろうか。
まあ俺も挙げる気はないけど。
「相川。」
ああ、相川さんだったか。
やけに元気だったもんな。積極性はありそうだ。
「私は織斑君を推薦します。」
その瞬間クラスが騒がしくなった。
否定的な雰囲気はなく、どうやら二名を除き、満場一致のようだ。
「千冬姉、ちょっと待ってくれ。」
ガタッと大きな音のすぐ後にバシーンと大きな音がしたが俺は気にしない。
にしても櫻は一夏に言ってなかったのだろうか。
自己紹介の時の反応もなんか驚いているような様子だったし。
俺は後ろを振り返る。
櫻は一夏の様子を見て笑っていた。
なるほど、わざと言わなかったのか。
俺がそんなどうでもいいことを考えている時一夏は必至に抵抗していた。
「織斑先生、俺はクラス代表になるつもりはありません。」
「推薦されたものは断ることはできない。」
うん、ここは原作通りか。
少しずつ原作と違うのでどこまであてにしたらいいのやら。
「話が逸れたな。おい、相川なに座っている。」
「はっ、はい。」
相川さんが緊張した様子で立つ。
千冬さんはやはり恐ろしい。
「他薦した以上、その理由まで述べろ。」
相川さんは少し戸惑ってから勢いよく言った。
「織斑君は世界に二人しかいない男性操縦者だからです。」
その理由だとさぁ……。
「なら俺は幸逆を推薦します。」
一夏がいきなり立って言い出した。
「挙手してから意見を言え。馬鹿者。」
バシーンッ
一夏の脳細胞が心配になってきた。
「ではこの二人ということでいいか。」
そろそろくるか……?
「納得いきませんわ。」
はい、来ました。
バシーン。
この音はセシリアさんが机を叩いた音。
バシーンッ。
この音は千冬さんがセシリアさんを叩いた音。
「挙手してから意見を言え。オルコット。」
「クラス代表は最も実力のあるべきものがなるべきですわ。」
セシリアさんは千冬さんの出席簿アタックにもめげずに続ける。
「結局何が言いたい?」
「つまりイギリス代表候補生である私こそがふさわしいということですわ。」
「自薦か。いいだろう。
だが、最も実力があるという理由ならば華蛇だな。」
「ですが、入学試験で教官を倒したの私だけと聞きましたが?
代表といえど、極東の島国の猿では相手になりませんわ。」
さて……猿はどちらだろうか。
今このクラスには約30人居て、半分が日本人だ。
つまり半分は猿だそうだ。
ついでに言うとあなたの目の前の超人も日本人だ。
「華蛇はISの威力が高すぎることから試験は受けていない。」
千冬さんがゆっくりと言った。
「実力で決めたいというならば、それもいいだろう。
オルコット、織斑、幸逆の三人で総当たり戦をやれ。
それからオルコット、お前には華蛇と戦わせてやる。」
うわぁ、さすがにセシリアさんがフルボッコになりそう。
「華蛇、なんだ?」
どうやら櫻が手を挙げたらしい。
「師匠、死神の鎌は使っていいですか?」
その声は楽しそうだった。
顔は怒りではなく、興奮で紅潮しているように見えた。
「あれは威力が高すぎるからやめろ。
イギリスと日本の関係を悪くする気か。それぐらい分かるだろ?」
死神の鎌は櫻の専用機の初期装備だ。
モンド・グロッソでも禁止されたぐらいだから仕方ないだろう。
「分かりました。」
櫻は少しつまらなそうに答えた。
「あら?私は構いませんよ。」
イギリスのまずい料理の一つに油ベトベト系があったはずだ。
成程、火に油を注ぐのは確かに好きなようだ。
「……」
櫻は黙って席に座った。
その表情は笑っている訳でも、怒っている訳でもなかった。
気に留めていないが一番正しいだろうか?
「では来週、三日かけて第三アリーナで模擬戦を行う。」
現在、千冬さんに替わって山田先生がプリントの重要部分だけを説明している。
俺はそれを聞きながら来週の模擬戦について考えていた。
千冬さんによると一日目が俺とセシリアさん、
二日目が一夏とセシリアさん、三日目が俺と一夏ということだ。
で、その後セシリアさんの公開処刑だ。
そうしていたらいきなり、束さんから通信が来た。
『じーくん、任務を一つ与えよう。』
束さん、そういえばさっきから黙ってたな。
『いっくんをクラス代表にし、かつあのクソキンパツをフルボッコにすること。』
『そうなると一夏には負ければいいんですか?』
『いやいや、負ける必要はないよ。』
『でも俺が代表になっちゃうんじゃないですか?』
まあ原作だとセシリアさんが一夏に譲ってたけど。
『別に全勝した人を代表にするとはちーちゃんは言ってないよ。』
『じーくんはさ、どうしてこの時期にクラス対抗戦やるか、分かる?』
『生徒にIS操縦の具体的イメージを与えるためじゃないですか?』
『まあ間違ってはないと思うよ。
でもさ、ちーちゃん言ってたでしょ。
クラスの実力を見せつけるって。』
『あっ、つまり授業で学んで得た実力が
クラスごとにどれほどかを確認するためですか?』
『そういうこと。
だからいっくんかじーくんみたいな素人の方が本来はいいんだよ。』
『本来は?』
『最近は代表候補生とかがなりがちだって聞いたからね。』
『なんで内部事情知っているんですか?』
『さぁね。じーくんは束さんのことが気になる?』
『その言い方なんなんですか?』
『まあ、それはともかくさ、あのクソキンパツが勝ったらアウトなんだよ。
あいつが勝ったらあいつが代表になるって言いだすでしょ。』
『分かりました。なるべく勝ちます。』
『期待してるからね。』
まあたぶん負けても一夏に惚れるから大丈夫のはず。
キューピッド的にはアウトだけどな。
にしても一夏が静かだったな。
原作なら一夏が怒るところなんだけど。
前の一夏は背中しか見えず、その様子を察することはできなかった。
一夏の出番は次回です。
今回の話に入れようかと思いましたが3000字達したので……