後書きって書くことあるんですけど、
前書きって書くことあんまりないんですよね。
なんだかんだで午後の授業は終わった。
一夏が千冬さんに連れていかれた後、俺達も第三アリーナに向かった。
着いてみると一夏は既に白式を纏っていた。
「一夏、問題ないか?」
千冬さんが普段と変わらぬ声で言う。
「大丈夫。」
隣で華蛇さんが静かに笑った。
おそらく千冬さんが一夏を気遣う様子が面白いんだろう。
まあこういうとこが根が優しいって話なんだろうけど。
一夏の呼び方戻ってますよ、千冬さん。
千冬さんがこちらを振り向いた。
やばっ、俺の考えたことばれたかも。
しかし一瞬苛ついた表情を見せた後、千冬さんの表情はすぐに複雑なものに変わった。
俺にはその理由は分からなかった。
「来てたのか、櫻……。後はお前に任せた。」
そう言うと千冬さんはいつもの覇気もなく去っていた。
「分かりました、師匠。」
神妙な顔つきで櫻が答える。
「おっ、櫻と箒、それに紅侍も来てたのか。」
一夏が手を振った。
ISって、男が乗ってもサマになるんだな。
「フォーマット、フィッティングは終わった?」
櫻が聞く。
「フォーマットは終わったらしいけど。」
一夏はISを纏った自分を不思議そうに見ている。
「一次移行を早くするため少し動かしてみて。」
そういえば俺の時は訓練機のデータを予め入れてもらったんだっけ。
「分かった。」
一夏はその騎士のようなISを自在に動かしていた。
どうなってんだよ!?
あれだけ動けてれば、恐らく無駄な加速はほとんどないだろう。
俺は歩行とかから始めたのに最初から飛行できてるし。
「次は武装を。」
「了解!」
櫻の指示を受けて、一夏は刀を取り出し、振り始めた。
横で一夏に見惚れていた箒はここにきて急に顔色を悪くした。
おそらく一夏が剣道を辞めたことに気づいたんだろう。
「なぜ……?」
箒が呟く。
「一夏は中学の時は剣道を辞めて、バイトしてたんだよ。」
櫻が箒に教える。
「生活の助けに少しでもなればって。」
「だが……千冬さんの稼ぎならば……」
「でも迷惑をかけたくなかったんだってさ。」
櫻は優しく言った。
「そうか。」
箒はそう言った後、目をつむった。
「少し気分が悪い。すまないが今日は帰らせてもらおう。」
そういう箒の顔は少し泣きそうだった。
「やっぱり少し難しいかな。」
櫻はそう言って箒の背中を見送った。
原作だと目の前の一夏に当たり散らしてたけど、
まあ辞めた理由が辞めた理由だしな。頭から否定はできないんだろう。
一夏も気づいたらしく、こちらに戻ってきた。
一夏は心配そうな目をしていた。
「やっぱり剣道辞めたのは……」
一夏の顔は複雑そうだった。
それから自分の考えを否定するようにつぶやいた。
「でも先に裏切ったのは箒だ。」
裏切った?何の話だ?
「あれは重要人保護プログラムのせいだって。」
櫻が少し悲しそうな顔で言った。
「分かってる、だからイーブンだ。
俺だって箒っていう競争相手や篠ノ之流を教えてくれる人を失ったんだ。
剣道を辞めたって仕方ないだろう。」
引っ越したことか?
一夏は原作でそのことをそんなに気にしているようには見えなかったが。
「櫻、次何すればいい?」
一夏はぶっきらぼうに言った。
「まずは落ち着いて。
ISは私達を見ているから、そんなに荒れてちゃよくないよ。」
櫻は宥めるように言う。
「……分かった。」
一夏は少し落ち着くとゆったりとした飛行を始めた。
「紅侍君。」
「なに?」
「今日は一夏のことを教えたいから自主練習でいい?」
もしかしたら俺が居たら、話しにくいこととかあるのかもな。
「分かった。櫻、一夏、また明日。」
俺はその場を立ち去った。
で……どこ行こうか?
他のアリーナとか行ってもいいけど、今の俺ぼっちだしな。
一夏という盾……
じゃなかった、英雄様がいないとさすがに注目されるだろうしな。
そんなことを考えていると……
「あれ?幸逆君?」
後ろから話しかけられた。
「あぁ、夜竹さんか。」
一応、5時間目と6時間目の間に挨拶だけは済ませた。
まあ席が隣の人とは仲良くしておきたいしな。
「こんなところでどうしたの?
てっきり第3アリーナにいるものだと。」
「一夏のフィッティングに時間かかりそうだから自主練しようかなって。」
「ふーん、そうなんだ。
じゃあさ私と一緒に練習しない?」
俺はこの提案を意外に思った。
「訓練機は?」
「大丈夫、私ここの寮に入学の少し前から住んでて、その時手続きしておいたから。」
「熱心だなぁ。」
これは俺の素直な感想だった。
「ほら、せっかくIS学園にいるんだから、やれることはやらないと。」
彼女は少し背伸びして、腕をうんと伸ばしてそう言った。
……かわいい。
「じゃあどこのアリーナ使う?」
俺は前に向き直って歩きだした。
「私の借りたISが第4アリーナにあるからそこに行こうか。」
そういえばあそこに格納庫があるんだっけか。
「ISに乗ったことあるの?」
現在俺達は第4アリーナに居る。
「私、IS適正Aだから国家代表候補ではないけど、少し訓練したことがあるんだ。」
彼女はそう言うと、慣れた様子で打鉄を纏った。
「よし、何する?」
彼女は嬉しそうに尋ねた。
原作で受けた暗い印象は殆どない。
「操作したことあるなら、模擬戦でもする?」
正直俺がしたいだけなのだが。
それに対セシリアを意識するならやっぱり実戦での回避練習は必要だろう。
「OK!」
こうして俺と彼女の模擬戦が始まった。
結論から言うと勝負は五分五分だったがギリギリ俺が勝った。
性能差を考えると腕は向うの方が上のようだ。
「もう大分遅いから今日はここまでにしよう。」
今日は疲れているし、自分の練習をやめて俺を見ている人も増えてきたしな。
「幸逆君って上手だね。
私、まだまだ操縦始めたばっかの君には負けないつもりだったんだけど。」
夜竹さんは少し落ち込んでいるようだった。
「いやこのISのおかげだよ。」
実際最大の要因はシャドウだろう。
「そうかな。もしかして私がダメなだけ?」
夜竹さんはさらに落ち込んでしまったようだ。
もしかすると彼女は……
「あーあ……、こんなんだから代表候補にもなれないんだ。」
うん、一度ネガティブになると止まらないタイプだ。
「そんなことないって。射撃とかすごくうまかったし。」
なんとかフォローする。
「本当にそう思う?」
夜竹さんがじっとこちらを見てくる。
「本当だって。俺の星の欠片がなければすぐに勝負は決まってたよ。」
俺は視線をそらさずに力強く答えた。
実際事実だし。
「励ましてくれてありがとう、幸逆君。」
「別に事実を言っただけで。後俺の事は紅侍でいいよ。」
俺はそう言いながら、恥ずかしさで顔を背けたくなった。
何故かって嬉しそうにする夜竹さんがかわいかったからだ。
今になって気づいたが、俺のタイプの顔なのかもしれない。
「じゃあ私もさゆかでいいよ、紅侍。」
俺は仲良くできそうだと思った。
現在俺とさゆかは食堂で一緒に夕飯を食べている。
メニューは二人ともカレー。
さゆかがカレーを頼んだので、俺も頼んだ。
「そういえばカレー好きなんだっけ?」
俺は自己紹介の時の事を思い出した。
「覚えててくれたんだ。紅侍は?」
「俺も大好物だよ。」
そんな感じで和気藹々と食事をとっていると、
千冬さんがやってきた。
さゆかを一瞥すると俺に向き直って、
「幸逆、お前の部屋の鍵だ。」
部屋番号はやっぱり1025だ。
「俺が脱走した時の状態になってますか?」
俺は悪びれもなくきいた。
「さあな。」
千冬さんはそれだけ言うと早々に立ち去ってしまった。
「寮の鍵?何号室?」
さゆかが聞いてくる。
「1025号室だ。」
小さな声で言った。初日から多くの人に知られると面倒だしな。
「えっ、私の隣だ。私1026号室なんだよ。」
へぇ、席も部屋も隣なのか。
「改めてよろしくね、お隣さん。」
俺って笑顔に弱いのかなぁ。
「ああ、よろしく。」
また俺の顔は赤くなっているかもしれない。
夕飯を食べ終えた俺が部屋に行ってみると……
一つ穴の空いた扉がそこにはあった。
例え箒と一夏が同じ部屋でなくとも、やることはやるようだ。
俺は一夏と同じ部屋で、
部屋に逃げようとした一夏を追撃するため箒が破壊したものとみて間違いないだろう。
「うわぁ、ひどいね。」
さゆかがドアを見て、苦笑いする。
「……とりあえず入ってみるか。」
「頑張って。私も部屋に戻るね。」
さゆかが1026号室に入るのを見送った俺は一応鍵を開けて部屋に入った。
やっぱり部屋には一夏がいた。
だが一夏は何か考え込んでいるようで俺に気付いていない。
「えっと……ただいま?」
一応挨拶。
「あっ、紅侍。おかえり。」
なんとも間の抜けた返事が返ってきた。
「このドアどうしたんだよ。」
「ああ悪い。ちょっとな。」
それで済むなら警察はいらない。
「いやちょっとってなぁ。」
俺は荷物を置き、窓際じゃない方のベッドに座る。
窓際のベッドは既に一夏に占拠されていたからだ。
「紅侍には悪いと思っている。」
一夏は頭を下げた。
「だからこのドアどうしてこうなったんだよ。」
大体検討はつくが一応聞いておきたいところではある。
「いや……」
一夏はなんだか言いにくそうだった。
「俺一人の問題なら言ってもいいんだが。」
一夏は難しそうな顔で下を向く。
ああ、理由はよく分からないがどうしても言いたくないようだ。
「分かったよ。過ぎたことを問うのはもうよそう。
それよりこのドアどうするんだよ。」
俺はあきらめた。
「ああ、そうだよな。」
一夏は俺に言われるまでドアの修理については考えてなかったようだ。
てっきり考え込んでいたのはドアのことかと思っていたんだけどな。
「寮長にでも言えばいいんじゃないか。」
一夏が気楽に言う。
「あのなぁ、一夏。寮長が誰だか知っているのか?」
「知らない。」
実に清々しい。
「……織斑先生だよ。」
「千冬姉か。」
一夏の顔も少し青くなった。
しばしの沈黙。
「俺が一人で行くよ。」
一夏が覚悟を決めた目で言う。
無駄にかっこいいが、お前の姉に会いに行くんだからな。
やれやれ仕方ないか。
「俺も行くよ。同室なのに無関係っておかしいだろ。」
「でもっ。」
「いいからいいから。ほら行こうぜ。」
二人で考えた言い訳はこうだ。
俺がバットで素振りをしていたら一夏もやってみたいということになった。
そこで一夏がやってみたところ、手を滑らせてという訳である。
「ほう、ドアに穴の空いたという報告も初めてだが、
理由も随分とおかしなものだな。」
ですよね。
「ほら金属バットですし。」
俺はてきとうに言い訳する。
まあ不可能ではないと思うんだが。
「正直に言った方がまだ楽だと思うが?」
うわぁ、疑われてる。
「千冬姉、今の俺にはこれしか言えないんだ。」
一夏は真剣な目で訴えた。
「織斑先生だ、馬鹿者。」
呆れたような目で千冬さんは一夏を見る。
「もういい、ドアは直しておくように伝える。
お前らはペナルティーとしてグラウンド6周だ。
それに反省文10枚明日までに提出しろ。」
「分かりました。」
おそらく何も知らない一夏が素直にうなずく。
「織斑先生、もう9時近いのですが。」
俺は慌てた。
IS学園のグラウンドは一周5キロである。
俺の記憶が正しければ20キロ2時間で走れれば速いはず。
つまり少なくとも3時間はかかる。
「織斑はやるそうだが。」
「グラウンド一周400mだろ。早く行こうぜ。紅侍。」
「一夏……。」
俺は色々とあきらめた。
まあ結果的にはよかったのかもしれない。
この地獄の30キロマラソンのおかげで一夏と仲良くなることができた。
結局俺達が部屋に戻ってきたのは1時を過ぎていた。
ゆっくり走ったのもあるが時間のかかったものだ。
「一夏、シャワー出たぞ。」
「俺もとっとと入るよ。」
一夏がシャワー室に入ったのを見てから俺は束さんに通信した。
『クロエさん、まだ起きてますか?』
『くーちゃん?起きていると思うけど……』
『今日の模擬戦の感想聞いておこうと思いまして。
クロエさんは俺のISの指導役ですし。』
『換わった。』
早ッ!
『どうだった?』
『全然だめ。』
なんかものすごく辛口だ。
『えーとどこがだめだった?』
『動きがまだ単調。
相手の射撃が上手なんじゃなくて予想されてるだけ。』
『そうか……。』
さゆかじゃないけど落ち込んできた。
『でも裂空のエネルギー刃の使い方はよくできてた。』
『ありがとう。
やっぱりヤマをはるっていうのがよかったよ。』
『……そんなISの操縦うんぬん以前の問題がある。』
『なに?』
『相手に見惚れて何回か動きがにぶったのが問題。』
あっ……ばれた。
『いやISってかっこいいし。』
『私と戦った時はあまりなかったと思うんだけど。』
『そうかな。』
正直クロエさんって子供みたいな見た目だし。
俺より年上なんだろうが、妹みたいな感じだ。
『そうだよ。とにかくあんなみっともない戦いはもうしないこと。』
『もしかして怒ってる?』
『そう思うなら反省して。』
『……はい。』
「やっぱり風呂じゃないと物足りないな。」
一夏が出てきた。
『クロエさん、また後で。おやすみ。』
『おやすみ。』
俺は一夏の方を見る。
「まあ風呂は大浴場が一つしかないみたいだし、
俺らのためだけには解放されないでしょ。」
「そうだよなぁ。休日実家に帰ろうかな。」
「まあそれもいいかもな。」
そんなくだらない話をしながら反省文をなんとか書ききって寝た。
俺のIS学園初日はこうして終わった。
お疲れ様でした。
次どうしようか今迷ってます。
一夏と箒の番外編はさむか、セシリア戦いくか。
紅侍に一夏が話すって展開でもいいんですが、
紅侍と知り合って初日なんですよね。
一夏はそういうこと気にしない気もしますが、
箒との関係もあるので話さないかなって思いまして。