とりあえずタイトル通りの話です。
俺は土曜日の午後一夏達と訓練した後、外泊許可を取りに行った。
「お前は日本政府を舐めてるのか?」
千冬さんを攻略しなければ許可とれない訳で……。
「はあ、いえそんなつもりはありません。」
「お前は実家に帰る意味もなければ、特に旅行好きという訳でもない。
にも関わらず外泊するというのは束に会いに行くことだろ?」
「……。」
確かに実家には保護プログラムのせいで両親は居ない。
「それに先週外出した時も途中で消えたって報告もあったしな。」
先週と言えば、裂空の件で行った時か。
「少しは監視されている立場というのは自覚しろ。
それに束に影響されすぎるとそっち側に引き込まれるぞ。」
俺は正直に白状することにした。
「どうしても新しい武装を月曜から間に合わせたくて。
今日の夜アイデアを言えば、一晩かけて作ってくれるというので。
上手く行けば日曜の午後から訓練できるそうですし。」
「新しい武装を……か。
今回はこれ以上言わないが、気を付けろよ。
お前は既に半分足を突っ込んでるぞ。」
そう言うと千冬さんは、俺の眼鏡をつかんですぐ離した。
その後無言で許可を出してくれたが、何か考え込んでいるようだった。
「そうだ一夏、俺今晩から外出するから。よろしく。」
今は自室だ。一夏は教科書と格闘中である。
「今晩からって、外泊するのか?」
「あぁ。」
「実家か?ホームシックになる気持ちも分からなくはないけど。」
一夏は少しうんざりしたように言う。
うんざりしているのは女子しかいないこの状況にだろう。
「えっと、まあそんなところかな……。」
なんとなく俺の返事が暗い調子だったからだろうか。
一夏が少し大きな声で明るく笑顔で言う。
「出かける前にこの問題だけ教えてくれないか。」
「櫻に教えてもらったら?」
「いや、櫻はISの訓練にも居なかっただろ?
土曜日はいつも開発室にこもってるみたいなんだ。」
うわ、あのチートは開発もできんのかよ。
「じゃあ箒。」
というかキューピッド的にはこっちを優先すべきだったか。
「箒か……。そうだな。でもこの問題だけ。」
「分かったよ。」
まあこういう面ならサポートしやすいしな。
それにサポートどうたら以前にこのくらいならやってあげるもんだ。
「料理、上手くなったね。」
俺は今束さんとクロエさんと夕食をとっている。
「いやー、おかげで束さんも毎日仕事が捗るよー。」
束さんはもりもりと食べている。
「でもまだまだですよ。」
そう言いながらも少しは自信がついてきたようだ。
クロエさんは少し恥ずかしそうにしながらも、褒め言葉を素直に受け取っていた。
ふと束さんと目が合う。
「じーくん、食後すぐに始めるからね。」
束さんのとろんとした目が一瞬真剣になったきがした。
「はい。」
俺は天井を見上げる。
大丈夫、アイデアは整理してきた。
どんなダメだしくらうか分かったものじゃないからな。
「でっ、どんな武器が欲しいの?」
束さんはクロエさんが出してくれたお茶を一気に飲み干す。
「レーザー兵器と盾です。」
束さんはクロエさんにおかわりを催促した後言う。
「レーザー兵器の方から聞こうかな。」
「そうですね、オルコットさんもといキンパツ戦で思いついた武装なのですが。」
セシリアさんには申し訳ないがキンパツと言わないと通じないだろう。
「あああのクソキンパツから学ぶことなんてあったんだ。」
今度は空中にディスプレイを出して、
空中に出したキーボードに何かをうちこんでいる。
「ガトリングシュトロームと実際に対面してきて思ったのは、
あれは範囲が広い代わりに狙いが雑すぎますね。
加えてリロードの時間が改になって短くなったとはいえ
やっぱりかかるのはよくないですね。」
「あれは有名な武装みたいだけど、束さんだったら即却下だね。」
「でも一度に多くのレーザーを出せるというのは良いと思うんです。」
「ふんふん。」
「ですからリロードに時間がかからない程度に、
できるだけ多くのレーザーが出せませんか?」
「束さんとしては拡張領域を喰いすぎるのは避けたいな。
だからそのバランスがいいのは10本ぐらいかな。
他に要求は?」
「ガトリングシュトロームの狙いが雑になるのは
距離が開くとどんどんレーザーが広がっていくからです。
ですから広がりの程度を三段階に分けられるというのはどうでしょうか。」
「そうだね、その広がりの程度は直径5、15、30mっていったとこかな。
放射上に広がりある程度広がったら直線軌道に移るって感じになるな。」
束さんはディスプレイで何かのデータを見ているようだ。
「最後に拡散型は威力が下がりますから、状況次第で
10本のレーザーを一本化して威力を上げられるようにして欲しいんです。」
ちなみにこれはセシリアさんが二つのBTで同時に俺を狙った時に思いついたことだ。
「当たりやすさ重視と威力重視を一つの武装でできる訳か。
まあ面白そうではあるね。作ってみるよ。」
「盾の方は?まず星の欠片があるのにどうして盾を必要と思ったか聞こうかな。」
「星の欠片は対ブレードには向きません。
レーザーのようなエネルギーを使い切れば消失するものの防御には向いていますが。」
無論、完全に使えないという訳ではない。
ある程度厚い星の欠片を使えばその威力を削ぐことぐらいはできる。
しかし逆に言えばその程度しかできない。
使用量に対して得られるメリットが少ない。
「そうだよね。実際いっくんと戦った時、ブレードの防御には一切使わなかったしね。
どんな盾がいいの?」
「一夏戦で思ったのですが、今の武装には超近接向きのものがありません。
巨人刀は小回りが利きませんから。
そこでトンファーのように使える盾とかどうでしょうか。」
「盾の表面に刃を立てればいいかな?」
「はい、それでお願いします。
後、手で持つだけでなく、腕に籠手のようにセットできるようにもできますか?」
束さんは少し考えてから、
「問題ないと思うよ。
じゃ、作業にとりかかるから。」
そういうと空中に表示していたディスプレイを消すと自室に帰って行った。
頭のウサ耳はピーンと立っており、どうやら集中モードに入ったようである。
俺は束さんの背中を見送りながら、案外話がスムーズにまとまったなと思った
所変わって、俺は今クロエさんと俺の部屋に居た。
今日は珍しくクロエさんの方から色々話していた。
料理の上達ぶりや束さんの事が中心で、俺は聞き役になっていた。
しばらくして話題もなくなってきたかというところで
俺は疑問に思っていたことを聞いてみることにした。
「束さんは俺の武装のアイデアにどうして何一つ突っ込まなかっただろう。」
「紅侍は束様が完璧主義なのを知っている?」
クロエさんはまるで子供に言うように優しく言った。
どうやら俺はクロエさんから見れば極々当たり前なことを聞いてしまったらしい。
「いやだからこそもっと何か言われるかと思ったからさ。」
「束様が完璧と思うものを作っても
シャドウにとって完璧でなくなる恐れがある」
俺はその言葉の意味が分からなかった。
そんな俺の様子を見てクロエさんが続ける。
「……まず何から言うべきかな。
シャドウが紅侍を理解しようとしているよね?」
クロエさんは困ったように俺に聞いた。
今の彼女にとって俺は物わかりの悪い生徒のようだった。
「それは知っているけど。」
「だから今シャドウは紅侍のことで頭いっぱい。
それを束様の考えた武装なんか入れたら、
今まで築き上げてきた紅侍のイメージが狂っちゃう。」
ISってそんなにデリケートなのか?
専用機だからなんだろうか?
少しはISに詳しいつもりでいたが俺はまだまだらしい。
クロエさんは俺の考えに一段落ついたのを確認してからさらに話を進める。
「それでも束様は紅侍に完璧なサポートをしてた。」
「えっ?」
「レーザー兵器の具体的な数値は束様が決めていた。
あれは紅侍の戦闘データに基づいて束様が導き出した最適値。
盾の方も大きさを紅侍は一切決めてない。」
「確かに。」
言われてみればそうだ。
そういうものを決めるのは俺自身ではまだ難しい。
勿論実際使いながら調整していけばいいが、
そうしたらいちいち束さんに修正をかけてもらう必要が出てくる。
……束さんはきっとあきてしまうだろう。
「だから束様に感謝して。」
クロエさんはずいっと俺に顔を近づけた。
どうやら少し怒っているらしい。
束さんのことが一番大事なクロエさんにとっては、
束さんが何も言ってないように言われるのは面白くないことなのだろう。
「いや別に感謝してない訳じゃないけど。」
でもそんなに顔が近いと感謝どころじゃないんだよな。
クロエさんが目を閉じているものだから……キスする前に見えないこともないし。
そう思うと途端に恥ずかしくなって俺は思わず顔を背けた。
俺の様子を見てクロエさんもこの状況に気付いたらしい。
「ならいい。」
顔を離すと黙ってしまった。
「でもIS学園では毎日こんなことがあるんじゃないの。」
しばらくしてクロエさんが言いだしたのは意図の分からないこんな発言だった。
「いくら女子が多いからってそれはないって。
それに一夏ばっかり人気で、俺はまあおまけだよ。」
自分で言っていて少し悲しくなったがしょうがない、事実だ。
「夜竹さんは……?」
クロエさんの口からその名が出るとは思わなかったので俺は驚いた。
眼鏡を通して、行動を逐一束さんに報告している(監視されているの方が正しい気がする)
状況だから、知っていること自体はおかしくないし、
さゆかと模擬戦したとき反省会もした。
でも何故このタイミングでそんなことを言うのだろうか。
「さゆかは友達だよ。趣味が偶然合った……」
「偶然?」
妙な空気が流れる。
その時だった。いきなり扉が開き束さんがやってきたのは。
「くーちゃん、ちょっと手伝ってもらっていいかな?」
「はっ、はい。」
クロエさんは少し取り乱したように返事をする。
そうして慌ただしく部屋を出て行ってしまった。
それにしてもクロエさんが束さんの仕事を手伝っているところなんて見たことないんだけどな。
天才篠ノ之束に手伝いは不要だからである。
となるとお茶くみでも欲しくなったのか?
俺は翌朝新武装を受け取り、
クロエさんとそれを使った訓練をした後、その日の午後にはIS学園に帰った。
束さんの仕事は完璧で俺は新武装の出来に満足していた。
お疲れ様でした。
実際今回の新武装を戦闘で使うのはまた後でにします。
戦闘シーン書こうかとも思いましたが、
これ以上話の進みを遅くしたくなかったので。
という訳で次の話で鈴出す予定です。
ちなみに自分はセカン党です。