それはともかく、原作と違う点が多い話です。
そもそも前々回の一夏就任パーティーって鈴が来る直前辺りでやってたんですね。
まあいいか……。
後前々回といえば素でのほほんさんを忘れるという不始末をやりました。
四月の下旬、俺達は今ISの飛行訓練の基礎の実習をしている。
「織斑、オルコット、華蛇、幸逆、試しに飛べ。」
最近の実習では……
「幸逆、展開が遅い。」
俺が専用機持ちの中で一番下手だ。
一応専用機を持たない女子生徒には負けていないので、
やっぱり男子なんて……といった空気でないのは幸いだが……
それでも少し悔しい。
ちなみに速い順で櫻、一夏、セシリアさん、俺。
一夏は一体どうしたというのだ。
原作では間違いなくセシリアさんより下手だったはずだが。
実際に飛んでみても、
「幸逆、動きに無駄があるぞ。それでは手本にならん。
お前はいつも右側にエネルギーをかけすぎる。」
いくらかクロエさんとの特訓で訂正したが、やっぱりまだ駄目らしい。
他の三人は綺麗に飛んでいる。
一夏とセシリアさんは何か楽しそうに会話していて、
櫻はだんまりだ。ISに乗ると話さなくなるからな。
はぁ、座学なら櫻はともかく、教科によっちゃあセシリアさんと良い勝負なんだけどな。
ちなみに一夏の座学は……馬鹿ではない。
覚えが良く、理解も早いので教えていて楽しかったりする。
「次、急下降と完全停止をやれ。目標は地表から10センチだ。」
まず櫻が行い、地面に綺麗に着地した。
おかしいよね。目標10センチって言ってたのに。
次のセシリアさんはほぼ目標通り。
一夏は櫻のマネでもしようとしたのかギリギリを狙いすぎて、
地面に少し突っ込んでしまった。
ただ普通にやれば10センチはできていただろう。
最後の俺……。
まあチキンレースだよ。これは。
俺は急下降を行う。
大丈夫、大丈夫。シャドウを信頼すれば必ずできる……
「幸逆、15センチだ。
お前のISは速いから、このての技術をできるようになっておくだけで大分変るぞ。」
千冬さんは厳しい言葉と一緒じゃないとアドバイスを言えないらしい。
15センチか。チキンだなぁ。俺は……。
次の武装の展開では一番下手なのはセシリアさんだった。
レーザー兵器ならともかく、
近接武器はセシリアさんもブルーティアーズも好きでないらしくかなり手間取っていた。
俺はというとまあわりと武装展開は得意だ。
こういうのが速いのも脳の活動が人の二倍とかいうのと関係しているらしい。
IS自体の展開速度が遅いのはISの補助がないと
自分の脳を上手く使いこなせてないからというのが束さんの見解だ。
「幸逆、試合の時のお前の展開速度はこんなものではなかったと思うが?」
威圧を受けた。
しょうがないじゃん、走馬灯の事は束さんに言うなって言われてるし。
その後は皆に訓練機が交代で渡された。
一夏が補助していたグループが一番地面に突っ込んだため、
一夏がグラウンドを片付けることになった。
一夏のISの知識が少ないから教えるのが下手な上、
一夏のことを見ていて女子の集中が欠けていたためである。
当然俺は手伝っておく。
櫻も手伝いに来てくれたので意外と早く済んだ。
他の女子は櫻を見習うべきだろう。
こういう所で好感度の差はつくのだ。
にしたって他の女子も手伝えばいいのにな。
一夏に好かれたいと本当に思ってんのかな。
「織斑君、幸逆君、おはよー。
ハンドボール部の相川でっす!
ねぇ転校生の話聞いた?2組に来るらしいんだよ。」
転校生……ああそんな時期か。
この時期の転校生といえば鈴だろう。
中国の代表候補生で、一夏のセカンド幼馴染……。
あれ?もしかして櫻がいるからサード?
この世界で原作知識との食い違いはけっこう多いので気を付けたい。
「なんでこの時期に転入してくるんだろうな。」
「なんでも中国の代表候補生らしいよ!」
「中国か。じゃあ一般には公表されてない人だ。
同い年には居なかったはずだし。」
勿論俺は鈴が来るのを知っているが、鈴のことは公表されていないのだ。
知らない振りをしなければならない。
こういう時ISマニアでよかったって思う。
「あら?そうなんですの。
てっきり私を危ぶんでの転入かと思いましたが、
公表すらされない人ではたかが知れてますわね。」
いつの間にか隣に来ていたセシリアさんが言う。
「でも、この時期に来るってことはなにかあるんじゃないか?」
「そう、なんか専用機持ちらしいよ。
転入試験を偶々見た友達の友達が見たことないISだって言ってた。」
「そんな転入生のことなどどうでもよいではないか。
それより今日の剣の訓練についてだが、
クラス対抗戦は来月の半ばだ。じっくり鍛えておく必要がある。」
箒も来ていた。
おお頑張ってくれ。
キューピッドの俺はこういう所を気になくてはならない……。
まあ酢豚は二組だし、比較的脅威にはならないはず。
俺にもそんな風に思っていた時期がありました。
「一夏ー、居る?」
教室の扉の方から聞きなれない声がした。
俺はそっちの方を思わず見る。
そこには黒髪ツインテールのチビがいた。
間違いない。あれが鈴なのだろう。
「鈴!お前どうしてここに居るんだよ」
ガタッと大きな音をたて席から立ち上がった一夏は鈴に駆け寄って行った。
この時から既に違和感はあった。
「どうしてって必ず戻るって約束したじゃない。」
ない胸をはりながら鈴は言った。
「そうだよな、そうだったよな。
おかえり、鈴!」
そういうと一夏は鈴を抱きしめた。
それまで騒がしかった一組は一気に静かになった。
一夏はそのイケメンクォリティーから、
恋愛という程でない者も多いが一組の半数以上の女子に好かれていた。
今目の前の状況を見て受けるダメージは計り知れない。
ではご覧いただこう。一組の死屍累々たる惨状を。
まずは相川さん。
口を開けてあんぐりとしている。
その顔は女子としてアウトだと思うから早く戻ってきた方がいいよ。
次に岸原さん。
坊主のカツラをかぶって悟り開きましたみたいなポーズをとっている。
こいつはどうでもいいか。
ある者は天井を見上げ、涙を流す。
またある者は「信じていたのに……。」と呟く。
手には何か紙を持っている。
そこにはマンガが描かれていて、俺と一夏が……
もうよそう。
もっといい例はないのか。
おっ、いつも眠そうなのほほんさんが目をカッと見開いている。
よほどショックだったのか。
……あっ、違った。頭がこっくり、こっくりしている。
HR間近なこの時間に寝たら、HR開始時に千冬さんに叩かれるのは必然。
睡魔と闘っているだけだ。あれ。
仕方ない、少し早いがメインといこうじゃないか。
俺は原作ヒロイン達の方を見る。
セシリアさんは下を向いたまま震えていた。
今にも何かやらかしそうな雰囲気だ。
箒はどこからか取り出した竹刀をひたすら振っている。
その竹刀の一振り、一振りには負の感情が込められているに違いない。
で、この人をヒロインというべきか微妙な所なのだが……
『あんの子豚野郎。
もしあいつから抱きしめてたら間違いなくとさつしてたぞ。
いっくんは箒ちゃんのものなんだよ。』
束さんはお怒りのようで。
以上、一組+天才の惨状でした。
しかし俺自身も動揺している。
一夏ってこんなに鈴好きだったけか?
いや原作との違いベストテンには入るぞ、これ。
「恥ずかしいから離してよ。」
鈴は弱弱しくそう言った。
「ごめん、いやだったか?」
「嫌じゃないけど……唐突すぎんのよ、馬鹿」
うへぇ、朝フレンチトーストなんて食べたからからかなぁ、胃もたれしてる気がする。
甘すぎるよ、なんですか?この空間。
ISの半分はイチャコメでできていたはず。
そしてそのためには主人公が誰か一人にいれこむなんてあってはいけないはずなんだ。
この空気をぶっ壊してくれた千冬様が現れるまで、
いや現れた後でさえ、一組の面々は死んでいた。
ちなみにさゆかは苦笑しており、櫻は笑いを堪えていた。
そうか、櫻はこうなることを知っていたのか。
そんな空気のまま授業も行われた。
ほとんどのものがぼけーとしており、
最初は注意していた山田先生と千冬さんだったが、数が多すぎた。
結果俺や
小数人授業の状態と化し、密度の濃い授業だった……。
さて昼休みになった。
「「一夏(さん)。」」
「な、なんだよ。
二人してどうした。」
「どうしたもこうしたもありませんわ。
あの方はなんなのです?」
「そうだ、あいつはお前のなんなのだ。」
なんなんだろうね。俺の知ってるセカンド幼馴染なんてレベルじゃなかった。
「話なら飯食べながらでいいだろ。食堂行こうぜ。」
という訳で一夏、俺、箒、セシリアさんの四人は教室を出ることにした。
教室に出る直前、一夏は櫻の方に振り返った。
「櫻は行かないのか?」
「私はいいよ、今日は開発室にこもろうかなって……。」
櫻は笑顔で答えたように思えた。
食堂に着くと鈴が居た。
「一夏、待ってたわよ。」
「おお、鈴が居てよかった。
俺も鈴と食べようと思っていたからな。」
「一夏さん、どういうことですか。
私達と食べるという話だったじゃないですか。」
「いや、だからお前らも一緒に……。」
「早く食事とってきてよ。ラーメンのびちゃうから。」
鈴は面倒くさそうに言った。
「それもそうだな。今日も日替わりランチでいいか。」
一夏が食券を取りに行ったので、俺達もとりあえずその後ろについていった。
「さて、そこの方が何者か教えてもらえますか?一夏さん。」
「そこの方ってあんたねぇ。本人が居るんだから直接聞きなさいよ。
あたしは凰鈴音。中国の代表候補生で一夏の幼馴染よ。」
「では恋人とかそういう関係ではないのだな。」
箒が睨みをきかせて言う。
「恋人ってあんた……」
鈴が顔を赤くして一夏の方を見る。
「恋人ではないけど……。」
一夏は難しい顔をして答える。
「「けど?」」
箒とセシリアさんが今にもつかみかかりそうな勢いで迫る。
俺はというと横で黙って食べていた。
こういうやりとりに巻き込まれすぎると授業に遅刻しかねないからな。
「親友かな?少し違うか。」
やっぱり悩んでいるような感じだ。
「ええぃ、結局なんなのだ。」
箒がテーブルを叩いた。
「……セカンド幼馴染?」
一夏はなんとも間の抜けた返事を答えた。
「大体、幼馴染は私と櫻じゃなかったのか?」
またテーブルを叩く。
「ああ、箒が引っ越したのが小学4年、
鈴が転校してきたのが小学5年なんだよ。
という訳で箒がファースト幼馴染、
鈴がセカンド、櫻が幼馴染な。」
チートさんだけ序列ついてない。
櫻は転校とかしなかったからなんだろうけど……。
「ってことはあんたが篠ノ之箒?」
鈴がじろじろと箒を見る。
一夏から話は聞いていたんだろう。
「私のことはご存知ですよね?」
セシリアさんがわりこんできた。
「知らない。」
鈴はあっさりと答えた。
「なっ、このイギリス国家代表候補のセシリア・オルコットを知らない!?」
……驚きすぎだろ。
「ふーん、セシリアっていうんだ。まあよろしく。
っでそっちの黙って食べてんのが二人目の男子操縦者?」
「ああ。幸逆紅侍って言うんだ。よろしく。」
俺はとりあえず自己紹介しておく。
「あー、なんかニュースでその名前聞いたことあるわ。
そういえばこんな顔してたわね。」
そういえばってなぁ。まあいいけどさ。
「ところで一夏はクラス代表やってんだってね。
あ、あのさぁ、私がISの操縦教えてあげようか?」
鈴が少し顔を赤くしながら言った。
「二組のあなたは敵でしょう。
一夏さんには射撃のプロの私、
近接戦闘のプロの箒さん、
IS全般に詳しい櫻さんがいますわ。コーチは必要ありませんの。」
その顔を見て闘争心が掻き立てられたのかセシリアさんが一気にたたみかける。
「あたしは一夏に言ってるの。
敵っていうけどあたしはクラス代表じゃないから、別に一夏と戦う訳じゃないし、
それに櫻や箒ならともかく、一夏と付き合いの長くないあんたに教えられんの?」
「なっ……。」
セシリアさんは何も言えなくなった。
恐らく、セシリアさんが一番気にしている点を突かれたからだろう。
「付き合いなら私の方が長いぞ。」
箒が果敢に突っ込む。
「いや、箒は三年間ちょっと一緒で、鈴が丸々四年、櫻が八年だな。」
一夏が爆弾を投げ込んだ。が、それは奇跡的に不発に終わった
爆発させたところで得をするのはこの場にいない櫻だからである。
「そういえば櫻は?」
鈴がキョロキョロと辺りを見渡す。
「ああ、なんか開発室にこもるって。」
「ふーん、そうなんだ。」
「そういえば鈴は櫻のこと苦手だったよな。」
「だってあの子はいつも何か仮面つけてるっていうか。
上手く言えないけど変な感じするから。」
「櫻は表裏のない人間だと思うが。」
そう言ったのは箒だ。櫻のことを鈴は苦手で、箒は好きなのか。
「はあ……あんただってたまにおかしく感じる時あるんじゃないの?」
「櫻の話はいいだろ。」
一夏が強めに言った。表情も何か硬い感じだ。
「それより俺は鈴にも教えてもらいたいと思ってる。」
一夏が話を引きもどした。
俺もそろそろ会話に混ざりますか。
「まあ専用機持ちは互いに訓練し合うのが手っ取り早いしな。」
「あっ、そうだ。中国政府からあんたのIS見ておけって言われたんだった。
後で模擬戦よろしく。」
鈴がこちらを見て言う。
いや、それって本人の前で言っていいことなのか。
「ちょっと待ってくれ。今日は剣道の練習の日のはずだ。
ISの訓練はお前らだけでやってくれ。」
現在の一夏のスケジュールは平日二日剣道にあてられている。
この辺は俺がキューピッドらしく働いた部分だろう。
ISの訓練に混ざれないのなら、剣道の訓練で二人っきりにしとけばいいのだ。
ちなみに櫻も剣道の訓練に賛成したので、セシリアさんの反対もなんとか押しのけることができだのだ。
「そうでしたわね。
では本日は私と幸逆さんでこの方がコーチに相応しいか、見て差し上げますわ。」
「ふん、望むところよ。あたしの実力みせてあげる。」
「まあお手柔らかに。」
そんな感じで昼休みは終わった。
ちなみに俺以外の三人と一組女子は会話に集中しすぎてほぼ遅刻寸前だった。
一方鈴は一番話していたのにいつのまにか食べ終わっていた。
「これで授業を終わりにします。
この後HRをやるので少し残っていてください。
織斑先生からお話があります。」
普段は帰りにはHRをやらないのに一体なんだというのだろうか。
皆が不思議そうな目で山田先生を見る。
山田先生はそんな視線に耐えられなかったのか、
失礼しますって小さな声で言うと、逃げるようにクラスを出ていった。
「さて、諸君も知っている通り、隣のクラスに今日専用機持ちが転入した。
これでこの学年の専用機持ちは6人になり、これは異常な事態だ。」
「そこで来月のクラス対抗戦をチーム戦にして、
その実力を見ておこうということになった。」
それ、最早クラス対抗戦じゃないんじゃ……。
「ペアはこっちで決めさせてもらった。
一組がクラス代表の織斑と幸逆、
二組がクラス代表のハミルトンと転入生の凰、
三組がクラス代表かつイタリア代表候補生のシリアと
欧州連合つながりでオルコット。」
「私ですか?クラスが違いますが?」
「言っただろう、専用機持ちの実力を試すと。」
待てよ、ってことは……
「四組がクラス代表かつ日本国代表候補生更識と日本つながりで華蛇だ。」
やっぱりチートさん敵になちゃった。
四組優勝確定……
「織斑先生、優勝クラスに与えられるデザートの半年フリーパスはどうなるのですか?」
しっかりとした口調に驚いたが、今の質問はのほほんさんのものだった。
「ああ、今年はなしだ。
一組の専用機持ちがやりにくくなったら困るだろうからな。」
女子たちは残念そうな顔をするものがほとんどだったが仕方ない。
「以上だ。ちなみに総当たり戦で行われるからな。」
『じーくん、いっくんのサポート頼んだよ。』
束さんから通信が入る。
『シャドウはいっくんとペアを組むために作ったんだから
さっちゃんが居る4組以外には勝って欲しい所だな。』
……チートさんには勝たなくていいのか……
束さんからも認められてるチートさんまじチート。
お疲れ様でした。
最後の方にシリアとかいうオリキャラ出しましたが、
そんなに深く掘り下げるつもりはありません。
いや今回の話書いてて思ったのですが、
人数増えると文字数増えて、文字数増えると話進まないので……。