シャドウ   作:ゆばころッケ

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うーん……どうなんでしょうか、この話。

休日にまとまて書いたので後二話、書き溜めがあります。

普段は書き溜めしないんですが……。

とりあえず来週も日曜、水曜であげようかと思っています。



第二十七話 俺 迷い

さて……クラス対抗戦の形式が変わったことで一つ面倒が発生した。

 

セシリアさん、櫻、鈴が敵になったということだ。

 

対戦する以上お互いの手の内は見せるべきではないのが普通なのだが、

 

セシリアさんや鈴はどう出るのだろうか。

 

「一夏さん、幸逆さん。私負けませんわよ。」

 

セシリアさんはテンションが高い。

 

そりゃそうだろう。

 

クラス代表を決めるための試合では俺には勝ったが、

 

素人()にそれなりの痛手を負わされ、一夏には負けている。

 

訓練で各二回やった模擬戦では俺達に全勝しているのだから、

 

公の場でその実力をはっきりと示したいのだろう。

 

ちなみに俺達が負ける理由は武装やISスペックがばれ、

 

動きがかなり読まれやすくなったからである。

 

一夏はともかく、俺はもっと動きを読まれないようにしないとな。

 

「訓練どうしようか?」

 

俺は懸案事項をぶちこんだ。

 

「どうするってどういうことですの?」

 

こいつ考えてなかったのか?

 

「試合するのにお互い手の内見せるのもあれじゃないかと……」

 

「そんなこと気にしなくていいんじゃないか。」

 

一夏が気楽に言う。

 

「一夏、勝ちたいならここはこだわるところだ。

一夏が一番伸びしろ高いから訓練の経過を見せないことで得られる

アドバンテージは一夏が一番大きい。」

 

俺は力説した。

 

俺としても授業で最近不甲斐ないので四組以外には勝ちたいところだ。

 

「そういうことですか……。

一夏さんや幸逆さんがそう言うのでしたら仕方がありませんわ。

私自身三組のシリアさんと連携の練習をしなければなりませんし。」

 

「その話ちょっと待った。」

 

そう言って割り込んできたのは鈴だった。

 

「一夏の指導員がいなきゃ、一夏のノビとやらも止まるんじゃない?」

 

「櫻に頼もうかと思っていたんだけど。」

 

「私?構わないよ。」

 

「はあ?あんたなに言ってんの。櫻だって対戦相手じゃない。」

 

どうせ勝てないからと言いたいところだが、そういう言い方は一夏が怒りそうだな。

 

「櫻には小細工は通用しないだろうから、

教えてもらった方がアドバンテージが大きいだろ。」

 

まあそれっぽい理由じゃないか。

 

「へぇ、じゃああたしには小細工が通じるってこと?」

 

うわぁ、そういう風に受け取るか。

 

「なあ、紅侍。お前の言ってることも分かるけど、

なにもそんなことしなくてもいいんじゃないか。

さすがに一週間前とかになったら作戦とか練る必要もあるし、

バラバラでやるべきだけど今からでなくても。」

 

一夏が少し優しい口調で言う。

 

どうやら場をおさめようとしているようだった。

 

『束さんも手の内を隠す必要はないと思うな。

それで勝ったとしてもいっくんらしくないし。』

 

いっくんらしくないね……

 

やっぱり俺は主人公には向いてないなぁ。

 

「分かったよ。じゃあ一緒に訓練しよう。」

 

「今日は私と剣道だがな。さあ行くぞ一夏。」

 

いつのまにか居た箒が一夏を引きずって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって俺、鈴、ハミルトンさんの三人はアリーナに居る。

 

というか全員ほぼ初対面なんじゃないか、これ。

 

「あの金髪は?」

 

「オルコットさんなら組んだシリアさんが男性嫌いらしくて、

俺がいるならパスってことで、別のアリーナで練習するってさ。」

 

「ふーん、

あっ、彼女が二組のクラス代表で私のルームメイトのティナね。

一日同じ部屋で寝ただけど、良いやつよ。」

 

こういっちゃなんだが、いかにもアメリカという感じの見た目である。

 

金髪碧眼、グラマラスな体型、ニューヨーク街に合いそうな靴……

 

「よろしくね、幸逆君。」

 

「ああ、よろしく。ティナさん。

ティナさんが持ってきたISはヘル・ハウンドver1だね。

それは国有訓練機?」

 

国有訓練機とは国が専用機を持たない国家代表候補生のために用意した訓練機である。

 

国有とはついているが、実際EU圏、アジア圏、アメリカ圏が各二機ずつ保有している。

 

IS学園にいる専用機持ちでない代表候補生のための訓練機だ。

 

ティナさんは確かアメリカ国家代表候補生だったからそのつながりだろう。

 

「そう。噂通りISマニアだね。

ヘル・ハウンドなんて量産されてない有名じゃないISなのに。」

 

「IS学園内なら有名じゃないかな。

ほら先輩にver2の改造機を専用機に持っている人いたじゃん。」

 

「はあ、あんた詳しいわね。

確かにあんたから見たら手の内を見せないってのは重要かもね。

自分は相手のISを知ってるんだから。」

 

「まあ凰さんのは知らないけどね。」

 

「あたしは正直一夏の幼馴染だって分かってから急に注目された候補生だし、

腕で他の候補生に負けてたつもりはないけど。」

 

少しつまらなそうに鈴は答えた。

 

専用機が与えられたのは嬉しいが、一夏のおかげというのがつまらないのだろう。

 

自分の実力で掴みとりたいというタイプだろうし。

 

「じゃあ時間ないし、訓練始めようか。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はあ、結局訓練に集中するあまり、手の内ほとんどさらしてしまったか。

 

実際俺は鈴の甲龍も知っているから俺の利益ゼロなんだよな。

 

いや、実際の動きを生で見られただけいいか。

 

鈴はそんなにサポートできる性格じゃなさそうだな。

 

となるとサポートするだろうティナさんから潰すか。

 

耐久性もヘル・ハウンドver1の方が低いし。

 

なにせ古いISだしな。

 

量産型でもない限り訓練機なんてのになるのは操縦者が死んだ古いISだけだ。

 

何故死んだかは公表されてはいないが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在アリーナからの帰り道だ。

 

「あんたが一夏と同室なの?」

 

「当たり前だろ。男子二人しかいない訳だし。」

 

原作は違いましたけどね。

 

「何号室?」

 

……やっぱり聞いてきたか。

 

「1025号室だ。」

 

「OK、あっあたしちょっと寄るとこあるから。」

 

そういうと鈴はどこか行ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後寮まで移動した後、ティナさんと別れた。

 

で適当に夕飯を食堂で食べてから部屋に戻ると

 

ちょうど一夏が部屋に戻ってきたところだった。

 

鈴と一緒に。

 

「一夏、もしかしてずっとやってた?」

 

「ああ、アリーナよりも剣道場の方が開いている時間長いからな……。」

 

ISのアリーナが開いている時間が短いのは

 

ISの長期使用による疲れを考慮してのことらしい。

 

「箒って見た目通りスパルタよね。

それはそうと紅侍、帰ってきたばっか悪いけど部屋貸してくれる?

一夏と話したいことあるから。」

 

この展開は想像してたけどさ。

 

鈴の性格的には譲るしかないだろうな。

 

「分かった、ちょっと出かける準備したいから待ってて。」

 

俺は部屋に入り、最低限勉強できる準備だけでも持ち出そうとした。

 

その時束さんから通信が入った。

 

『この部屋に眼鏡置いていってよ。』

 

『それは盗聴しろってことですか。』

 

『もしもいっくんがあの豚のことが好きなら、

束さんは素直にいっくんと箒ちゃんのことあきらめるよ。

確かめるためには手っ取り早い方法だと束さんは思うなぁ。』

 

俺は少し戸惑っていた。

 

俺に部屋を空けろというのは明らかに聞いてほしくないということだ。

 

『他の方法なら調べるのめんどいから、

そんな手間取るなら束さんとしてはとさつした方が楽なんだけどね。』

 

『早く決めてよ。』

 

威圧という程ではないが、いつものふざけた調子とは違った感じだ。

 

『……分かりました。』

 

俺は静かにベッドに眼鏡を置いた。

 

『そう、それでいいんだよ、じーくん。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「準備できたよ。」

 

俺は部屋の扉の前で待っていた二人に話しかけた。

 

「あれ?紅侍、眼鏡はいいのか?」

 

余計なことを聞くなぁ。

 

「ああ、あれは伊達眼鏡だから……」

 

「眼鏡つけてない紅侍って新鮮だな。

セシリアと戦った後もつけてなかったけど、

あの時はそんなこと気にするような場面じゃなかったし。」

 

「まあ俺の眼鏡のことなんてどうでもいいじゃないか。

話終わったら携帯に連絡くれ。」

 

そう言って俺は逃げるようにその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勉強の用意を持ってきたものの、

 

そんな気分にならなかった俺は学園内を散歩していた。

 

夜のIS学園は人気がなく、静かだった。

 

ふとアリーナの方を見ると一つだけ明りがついていた。

 

誰が使っているんだろうか。

 

俺はそのアリーナを見に行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アリーナではブラッディッドリッチが暴れていた。

 

死神の鎌を振るって次々と標的を破壊していくその姿は冷酷さが感じられた。

 

にしても本当にすごい威力だな。

 

モンド・グロッソで禁止された理由も分からなくもない。

 

「誰?」

 

俺は一瞬誰が話したのか分からなかった。

 

というのも聞いたことのない声の気がしたからだ。

 

ここには俺と櫻しかいないのだから、俺じゃなければ櫻だ。

 

「なんだ、紅侍君か。」

 

普段より声はやや低く、何か凄みがあった。

 

俺に気付いた櫻はISを纏ったままこっちへ来た。

 

「この時間はアリーナは使っちゃいけないことになってるのは知ってるよね?

どうして入ってきたの?」

 

「いや、明りがついてたから。

それにそれを言うなら櫻だって……」

 

「へぇ、じゃあ私と訓練する?」

 

そういうと櫻は死神の鎌を乱暴に振るった。

 

その威力は凄まじく、俺は思わず尻もちをついた。

 

「ねっ、こんなものが近くにあったら危なくて訓練できないでしょ。

だから私は特別に他の人と外れたこの時間に訓練することになっているんだ。」

 

俺は何も言えなかった。

 

そんな俺を見下ろしている櫻だったが、

 

「あれ?眼鏡してないの。」

 

余計なことに気付いた。

 

「ああ。」

 

我ながら情けないと思うが、俺は今恐怖を感じていた。

 

普段の雰囲気との違い、

 

俺にもシャドウがあるとはいえ、圧倒的な力の差……

 

「じゃあまた一つ忠告しておこうかな。」

 

そう言うと、櫻はISを解除した。

 

「眼鏡、どこに置いてきたの?」

 

櫻はいつもの雰囲気に戻っていた。

 

この時になって俺はようやく立ち上がることができた。

 

「ああ、部屋に置いてきたんだよ。伊達眼鏡だから……。」

 

「いつもつけてたのに?

日本政府から聞いたよ、束さんと出会う前はつけてなかったんだってね。」

 

同じこと、千冬さんにも言われたな。

 

「えーと、ほら高校生デビュー……?」

 

「あれで束さんと連絡とってるんだよね?」

 

「……」

 

俺は何も言えなかった。

 

「隠さなくていいんだよ。今なら束さんにばれないし、

それに私は束さんの敵ではないから。」

 

じゃあ味方ではないのか?って疑問が頭に浮かんだが、

 

敵ではないのなら言ってしまっていいかという気分になった。

 

「確かにあれで連絡とってるけどさ。」

 

後で思い返してみるとこの時口をすべらせたのは

 

俺自身隠していることに苦痛を感じていたからだろう。

 

言い訳にもならないが人は秘密を持ち続けることに苦痛を感じるものだと思う。

 

 

「あれ、視覚情報と音送ってるよね。なんで部屋に眼鏡置いてきたの?」

 

「その前になんでそんなこと言えるんだよ?」

 

「だって紅侍君はたまにぼけっとするでしょ。

あれは連絡とっているからなんだろうけど、

そのタイミングがあまりにタイムリーなんだよね。

結構分かりやすいよ。」

 

俺は返事をしなかったが、表情でyesっていってるんだろうな。

 

「で、なんで部屋に眼鏡置いてきたの?」

 

「偶には束さんから解放されたいと思ってさ。」

 

「嘘つかなくていいよ。

束さんに言われたんでしょう。一夏と鈴の会話を盗聴するように。」

 

しばしの沈黙……

 

「違う?」

 

そう言った後、櫻は俺と目を合わせてはっきりとした口調でこう言った。

 

「あなたはどこまで束さんの言うことを聞くの?」

 

どこまで?

 

「もし束さんが危機に陥っていると仮定しよっか。

①簡単に助けられる。

②少し危険だけど助けられる

③死ぬかもしれないけど助けられる

④死ぬけど助けられる

⑤死ぬし、助けられないかもしれない。」

 

選択肢を述べている櫻の声は低く機械的なものだった。

 

「どこまでだったら助ける?」

 

束さんはある意味恩人である。当然②までは行くだろう。

 

では、③以降は?

 

③はともかく、確実に死ぬ④はどうなんだ?

 

ここでふとある考えが浮かんだ。

 

束さんがいなくなったら、後ろ盾が一切ない俺はどうなってしまうのだろう。

 

死ぬよりひどい目に会う可能性すらある。

 

そうしたら③も④も⑤も同じに思えてきた。

 

「どうしたの?」

 

今度の声はいつもの明るい声だ。

 

「④……?」

 

「④かぁ、⑤にしなかった理由は?」

 

櫻は笑っていた。

 

「③、④、⑤が同じものに思えたから……間をとって④。」

 

「随分とひどい答えだね。

自分の命は大切にしなきゃだめだよ?

それとも言葉だけならなんとでも言えるから言ったのかな……?」

 

櫻は心配そうに言った。

 

この時俺は思った。

 

櫻は俺の心配をしているのではなく、

 

俺がした行動によって起こるなにかを心配しているのではないかと。

 

「とにかく考えておいてね。どこまで言いなりになるか。」

 

言いなりか。先程より過激な表現だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫻はその言葉を言った後、立ち去って行った。

 

誰もいない暗いアリーナで俺は何もせずにいた。

 

時間は過ぎていき4月とはいえ、寒くなってきていた。

 

それでも俺はそこから動かなかった。

 

俺は知っていた。

 

目の前のものを見ずに遠くを見るあの視線を。

 

俺を正面に見据えていながら本当は別の物をみるあの視線を。

 

櫻は俺の心配ではなく、もっと別の何かを心配していた。

 

それがなにかは分からない。

 

櫻が俺の心配をする理由なんてない。

 

だから櫻がそういう視線をしても責めるべきじゃないし、

 

忠告してくれた束さんとの関係について考えるべきなのは分かっている。

 

分かっているんだが……。

 

あの視線は俺にとって大きなトラウマだった。

 

それは俺の前世に起因する。

 




お疲れ様でした。

書いていたらこういう流れになりました。






ちなみに国有訓練機はオリジナル設定ですが、

こういうものがあってもいいのではないかと思います。
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