ってそんな時期でもないかもしれませんね。
武装の復習
光結晶:小さな球体にレーザーを大量に内包している結晶のような見た目の武装。
展開と同時に正面に大量のレーザーを放つ。
奇襲性とその威力の高さで一時期ものすごく有名だった。
ただかなりの拡張領域を喰う武装であり、通常は採用されにくい。
後今回後書きは番外編です。
紅侍君以外の視点で書く時はなるべく番外編にしたいので。
後あくまで番外編なので面倒だったら読まなくても大丈夫な内容です。
字数が案外少なかったので本文中に書きたかったけど
書けなかった設定を消費しつつなんとなく書いた話ですので。
『その様子だと私が何やったか分かってないか。
つまらないな、君はISに詳しいんじゃなかったっけ?』
現在俺は狭い檻の中にテンペスタを纏うシリアさんと共に閉じ込められ強制近接戦闘中だ。
『君はオルコットと戦った時、光結晶に気付かなくて負けてたし、勉強不足だ。』
紫電という切り札を失った俺はその原因が分からず、言いたい放題言われてしまっている。
『にしてもオルコットにもいつか八つ当たりしたいな。』
今はフレキシブルによる攻撃が続いている。
ただどうにも相手は本気を出してないらしい。
なんというか……覇気を感じない。
『あの女だってBT兵器の適正が高いってだけで、専用機を与えられて……。
イギリスで言えば、この学園内だけでもウェルキン先輩の方が腕前は上だ。』
『さっきから手加減しているの気づいているでしょう?そろそろ答え出た?』
『なら話しかけないで集中させてくれよ。』
『返事ないからろくに聞いてないって思ってた。』
『これ以上は期待できないか……。』
フレキシブルによる攻撃は激しさを増した。
どうにかしなければ……
今のままでは勝てない。
俺はわざと致命傷を喰らう位置に突っ込んだ。
これは賭けだ。
世界がスローになる。
俺は龍の尾が自分の腕と一体化することをイメージする。
ゆっくりと龍の尾が籠手になっていく。
スローな世界でなければ目で視認できない速さなのだろう。
よし、これで手は空いた。
そして俺は空いた両手に裂空を展開。
準備は整った。
スローな世界で俺にフレキシブルが迫る。
俺は星の欠片を展開し、その威力を削ぐ。
世界は時間を取り戻した。
俺は裂空でレーザー刃を出す。
シリアさんに十分近い位置から放たれたそれを避けることはできない。
彼女は吹き飛んだ。
俺はレーザー刃を連発する。
しかしそれはフレキシブルでガードされる。
そして左手のフレキシブルを腰に差し直し、トリピストラを展開。
こちらに打ち返してきた。
「いいね、そうこなくちゃ。」
彼女の口角は上がっていた。
こいつ、戦闘マニアなのか……。
「トリピストラがどんな武器かは知っていると思うけど、
この限定的な空間は相性良いと思わない?」
トリピストラはレーザーを三連続で出せる武装であり、
その三発のレーザーがなくならない限り、その射線上には居られないって訳だ。
俺が避けるのに集中しながらも、裂空で反撃をする。
だがテンペスタの速度は速く、一撃としてまともに当たらなかった。
一方でシリアさんの方には余裕はあり、時折フレキシブルを伸ばして攻撃しようとしてくる。
劣性だな……。
にしてもさっきはどうして裂空を展開できたのか?
正直また作戦が失敗することも覚悟していたのだが。
紫電の時は展開した瞬間、タイミングを見計らったように腕を止めやがったくせに。
タイミングを見計らったように……
あぁ……そういうこと……。確かに勉強不足だ。
『紫電の時はコンディションッドリフレックで対応したのか……?』
『ああ、今更?正解だけど、もうその件はどうでもいいよ。』
コンディションッドリフレックは日本語でいうと条件反射。
ISに意志のようなものがあり、ある種の生命性があるならば
人間が反射で早く反応できるように、ISでもできないかというのが元々の発想だ。
調査の結果、人間と同じような一定の刺激による反応は見られなかった。
しかし操縦者がその一定の刺激とその後の動作を指定することで、
人間の指示を介さない異常な速さでの動作が
可能になることをイタリア代表が発見した。
例えば今回の場合、『紫電という武装が展開される』という刺激、
そして『動きを止める』といった動作を指定したのだろう。
一見便利な機能だが、やや難点がある。
刺激も動作も決めておかないとならないので上手く使いこなせるとは限らないのだ。
決めた刺激に対して動作を行うというのは機械を思わせる面もあるが、
意志のあるISは柔軟性よくその指示を解釈してくれる分、機械とはかなり違うらしい。
ともかく分かったことは、
おそらく紫電以外の走馬灯での展開には反応できないということだ。
だったら話は速い。
「そろそろフィニッシュと行こうか。」
さっきから何発かのトリピストラを喰らっている。
俺がじわじわ追い込まれて来ているのは間違いない。
だが、チャンスだ。そしたら一夏の時のように
手足を縛るように星の欠片を展開して動きを止めてやる。
だが、それは通じなかった。
『一度見せた手品は通じない。』
一瞬手足が縛られたために動きが止まったが、
すぐにフレキシブルを伸ばして切り裂いてしまった。
『このケースは予想通り。次はどうする?』
……
あれから2回走馬灯に入った。
一回目、紫電と同じ方法で
公式戦初出番のレーザー兵器
こっちには条件反射が設定されており、あっさり壊されてしまった。
小雨の場合、ぶちあて、相手を飛ばしてしまえば、
収納して何度も奇襲を繰り返せるから、封じておく必要を感じたんだろう。
二回目、強奪者でフレキシブルを奪おうともしてみたが、
一本しかない強奪者では片手のフレキシブルを奪おうとする間に、
トリピストラで対応されてしまった。
そして今三回目……、
俺は……
万策尽きたぁーーーーーーーーーーー。
もうだめだ。
武装も攻撃のできるものは裂空しかないし……。
良い手が思いつかない。
ふと一夏のことが気になった。
走馬灯の中では思考する時間はたくさんあり、
もっと前から本来は気をつけるべきだったのだが、
シリアさんの対応に集中しすぎてすっかり忘れていた。
さて一夏は……
俺は驚愕した。
一夏はBTをもう既に五機破壊しており、
シールドエネルギーが少し減っていたものの、
零落白夜を発動するぐらいには全く問題なかった。
セシリアさんが倒されるのは時間の問題だろう。
仕方ない、一夏に頼ろう。
俺は一夏がセシリアさんを倒すのを待つ……。
俺は星の欠片で防御した。
世界は時間を取り戻した。
「消極的になったね。
もしかしてオルコットが危ないのに気付いた?」
『全くもってダメなやつ。
あんなのに専用機渡すなら私に欲しいぐらいだよ。』
『もう少し、篠ノ之博士が作ったISとあなたと
戦闘しておきたかったけど、終わりにするしかないか。』
レーザーと斬撃が激しさを増した……。
「さっきまでが本気じゃなかったのか!?」
「テンペスタに無理させなきゃね。
今はエネルギーとか使ってこれだから。」
本当に激しい攻撃だった。
俺はなんとか回避しながら一夏に連絡を取った。
『一夏、後どのくらいでとどめをさせるか?』
『紅侍か……。そっちはどうなんだ?』
『大分やばい。かなり追い詰められてる。』
『なら、俺が速く決着つけなきゃな。
でも紅侍にとどめをさした光結晶をどうしようかってな……。』
確かにどうしたものか……。
光結晶が出たタイミングで星の欠片を展開するのがベストだが……
あっ……
『それなら俺に任せてくれ。』
俺は自信満々に答えた後、シャドウに頼んでおく。
『ブルーティアーズが光結晶を展開したら、
ブルーティアーズと白式の中間に星の欠片を展開してくれ。』
準備は整った。
俺はそれからしばらく防御に専念した。
何度もピンチに陥り、そのたびに星の欠片を使った。
残量やばいな……。
条件反射で指定した分は残さなきゃいけないからな。
世界がまたスローになる。
もうこの試合何度目なんだろうか?
どうにもこの走馬灯状態は脳に負担がかかるらしく、
連発すると頭痛くなるんだよな。
午後は4組戦か。
一夏には悪いが無理できそうにないな。
勝てる可能性のあるこの試合に出し切るとしようか。
その瞬間、俺の頭が割れるように痛み出した。
暗転
意識が一瞬飛んでいたようだ。
目の前にはフレキシブルが迫っていた。
直撃。
不思議なことに走馬灯にはならなかった。
シールドエネルギーが0になったのが分かった。
試合として0になっただけなので、シャドウは装着したままだ。
『一瞬、気失った?大丈夫?』
シリアさんからの連絡だった。
『心配してくれるとは思わなかった。大丈夫。』
『私を何だと思っているんだか。
バードゲージ収納するから戦闘に巻き込まれないよう端に行って。』
『了解』
俺は残っているわずかなエネルギーで宙に浮くととっとと移動した。
セシリアさんも俺とほぼ同タイミングで落とされたらしくこちらにやってきた。
結局試合は一組が勝った。
一夏はまだまだエネルギーを残している一方で、
シリアさんの方は俺からのダメージはともかく、テンペスタにガタがきていた。
スピードで白式とまともに競えない状態だった。
なんとか一矢報いるため、
零落白夜を仕掛ける一夏にカウンターを仕掛けようとしたシリアさんだったが、
一夏が剣術を鍛えていることに加え、エネルギーで刃が出来ているフレキシブルでは
零落白夜に無効化されてしまうためどうにもならなかったようだ。
「一夏、やったな。」
俺はピッドで一夏に駆け寄る。
悔しいけどやっぱり主人公に俺じゃあ勝てないんだろうな。
「紅侍、そんなことより、大丈夫なのか?
気絶したって聞いたけど?」
「誰から?」
「シリアさんから。
面倒見てやれって。」
あの人、結局何なんだ。
悪い人ではないのか。
「もう大丈夫だから。
ただ午後までは少し休む……。
ちょっと先戻ってもらえるか。後から行くから。」
「分かった。」
一夏は俺のことを心配しているようだったが、
俺が大丈夫と言った以上は大丈夫なんだろうと判断したらしく、立ち去って行った。
俺はそれを確認した後、束さんと連絡を取る。
『なんで俺は気絶したんですか?』
『走馬灯中に、遠距離での大型の星の欠片の展開したからだね。
じーくんが最後に走馬灯に入ったすぐ後にキンパツが光結晶を展開したんだよ。』
『薄々思ってはいたんですが、走馬灯って脳に負担かかりますか?』
『寿命削ってるかもね。』
なんか恐ろしいことしれっと言われた。
『でもISの生体防御があるから、大丈夫。』
……本当か?
プシュー
ピッドのドアを開ける空気の音がした。
見ると、シリアさんが立っていた。
「何の用?」
「そんな口聞けるなら、体調大丈夫そうね。」
そう言うと彼女は俺の横に座った。
「なんでそんなに心配するのさ。」
「もし体調悪くなったら、なんか私のせいみたいで気分悪いじゃない。」
そんな理由か。
「そういえばなんで八つ当たりなんだ?」
シリアさんは俺の言っている意味が分からなかったらしく首を傾げた。
「確かに俺が専用機持ってるからっていう理由でスジ通るけどさ、
普通あんまり自分から八つ当たりって言わなくないか?」
シリアさんは俺の言葉を聞くと声を出して笑いだした。
そんなにおかしいこと言ったか?
「だってあなたが男のIS乗りという才能を持っているように、
私もIS適正A+の才能があるでしょ。」
「それだけじゃない。
このIS学園に通っている人は皆、他と比べれば才能に恵まれている。
例えば頭もいい。でも頭良くてもIS操縦できない人も居る訳だ。」
「つまり私達は圧倒的に恵まれた側なんだよ。」
シリアさんは更に続ける。
「だから本来は私達が嫉妬や逆恨みされる対象なんだ。
でもその中の更に
「私はする方と、される方だからその無意味さをよく分かっているつもり。
だから八つ当たりなんだよ。」
「納得?」
すごい勢いでまくしたてられたので俺は思わず頷く。
「OK。勝負楽しかった。今度一対一でやろう。」
そう言った後彼女は去って行った。
去り際、その緑色の目は少し潤んでいたように見えた。
……専用機持ちに負けたの悔しかったのか?……
思えばこのクラス対抗戦、シリアさんとティナさんだけが専用機じゃないのか。
結局専用機には勝てないってことか。
私はあいつに勝負を挑んだ。
あいつが専用機を手に入れてから最初の一週間は私が優っていた。
しかし一ヶ月もすると私とあいつの立場は逆になっていた。
別にあいつが格段上手くなったわけではない。
専用機があいつに馴染んできたのだ。
本当は私が格段に上手くなって専用機の有利なんてぶち壊してしまえればよかった。
でもそんなことはできなかった。
そんな時に舞い込んできたのがIS学園への入学の話。
単純な技術面で見れば専用機持ちよりも上手な私を
煙たく思った政府が私を追い出そうとしての提案だった。
それを分かっていながら、私はその話に乗った。
世界が見る場で専用機を訓練機が叩きのめせば、
私の知名度は上がり、政府も私に専用機を渡さざるを得なくなると考えていた。
でも私は最も勝ちやすいと思われる二人の専用機持ちに勝てなかった。
「泣いているの?」
私は顔を上げた。
ここはピッド内で誰も入ってこないと思い、気が緩んでいたようだ。
確かに私は泣いていた。でも素直に認めなくなかった。
だから私はこう答えた。
「あなたがいるから泣いているの。」
だってそうでしょう。
この女、私の目の前に居るこの女は紛れもなく専用機を持つに相応しいやつ。
この才能には一生叶わないと思ってしまう。
天才が黙っていたので、私がまたしゃべることになった。
「もう2組と4組の試合は終わったの?」
彼女は少し笑った。
「大分前にね。だからあなたの試合を見てたよ。」
「やっぱり、日本代表候補生は違うわね。」
私は吐き捨てるように言った。
間違いなくこれは八つ当たりである。
彼女は少し困ったように笑みを浮かべた。
その顔は赤ん坊を見る母親のようで、
不思議と不快な気持ちにはならなかった。
「本当はどうして泣いていたの?」
彼女は私の隣に座った。
しばしの沈黙。
「専用機に負けたから?」
彼女は私を軽く抱きしめた。
「あなたは勝ったよ。
紅侍君と一対一には勝てていたじゃない。」
「あなたは何をしにここに来たの?」
私は彼女を弱弱しく引き離した。
「なんとなくあなたと話したかったから、それだけ。」
私は拍子抜けした。
彼女がどんな目的でここに来たのか知ったことではないが、
もう少しましな
「おかしい?」
彼女の黒い二つの目が私を捉えていたように、私も彼女を見つめていた。
「話を戻すけれど、あなたは間違いなく勝った。
一夏と最初から一対一で戦えば一夏にも勝てていただろうし、
私以外の一年の専用機持ちにも一人を除いて絶対に勝てるよ。」
一人を除いて……?
「誰か気になる?」
私は小さく頷いた。
「私のパートナーの更識簪。」
更識簪……織斑のせいで専用機がもらえなかった子だっけ?
「あっ。」
彼女は呟いた。
「そうだ、ここに来た目的は宣戦布告ってことにしよう。」
「明日の四組の試合、私がセシリアを倒すから、
あなたは簪と一対一で戦ってみない?」
何を言っているんだろう、この人は。
「彼女は専用機じゃないでしょう。」
「それはどうだろうね、
食堂にでも行ってみなよ、今頃出てると思うよ。号外。」
なにか含みのある言い方だった。
彼女は立ち上がった。
笑顔で座り込んでいた私に手を差し伸べた。
「行こうよ、お昼に。」
私はその手を掴み立ち上がった。
私はもう泣いていなかった。
「きっとあなたで二人目だよ。」
「何が?」
「訓練機で専用機を倒した人。」
……一人目はあなたじゃないか。
前回のモンド・グロッソでの一回戦……
「あなたと私じゃあ状況が全然違う。」
「それでも勝ったことには変わりないでしょ。」
彼女の笑顔は眩しかった。