最近戦闘ばっかり書いていた反動でしょうか?
なんか内容が……
一夏達と無人機に関してあらかた聞かれた後、俺達は自室へ戻った。
「はあ、今日は色々あった。」
俺はベッドに横たわる。
「そうだな。結局あの無人機はなんだったんだろうな。」
「考えても仕方ないさ。」
「束さんと付き合いのある紅侍なら本当は何か知っていると思ったんだけど。」
さっきの事情聴取で俺は束さんのことは言わなかった。
まあ千冬さんにはやたら睨まれてたし、後で俺だけ追加をくらうだろう。
「どうして無人機を送ったのかは本当に分からない。」
この言い方だと束さんが無人機を送ったと言っているようなものだが、
なんというか俺が一夏を信じていないと思われたくなかった。
だから俺ができるギリギリで言えるセリフがこれだったのだ。
「……そうか。」
少し会話が途切れる。
その静寂を破ったのはノックだった。
「織斑君、幸逆君、居ますか?」
この声は山田先生だろう。
相変わらず少し子供っぽい印象を受ける声だ。
にしても先生が来たということはもう追加の取り調べを受けなきゃならないのだろうか。
それならさっき一人だけ残らせてやればいいものを。
俺はベッドから起き上がる。
一夏は既に扉の前に居た。
「先生、俺達に何か用ですか?」
「たぶん俺だと思うよ。」
仕方ないので俺もドアの所へ向かう。
「はい、幸逆君、正解です。
幸逆君に用があって来ました。」
「ずばり、お引越しです。」
あー、原作にもあったね。
そんなイベント……
っておかしいよね?
必要ないよね?
「俺がこの部屋からってことですか?」
「はい。皆にはまだ秘密ですが、
来週に三人目の男性操縦者が転校してきます。」
山田先生が小さい声で、口に指を当てながら言う。
こういう所が子供っぽいんだろうな。
「そのため、転校生の人に学園について色々教えなきゃならないので、
その大役を織斑君に任せようという訳です。」
それ……たぶん女子だけどな。
まあ今に始まったことじゃないか。
「そういうことなら分かりました。
それでどこに引っ越せばいいんですか?」
「……」
「山田先生……?」
「私は幸逆君を信じていますから。」
「はい?」
「お隣1026号室が空いています。」
「さゆ……夜竹さんが居たと思いますが……。」
「山田先生、そもそも空き部屋一つありませんでしたか?」
おぉ、一夏ナイスだ。
「ええと……そうなんですが、よく知ってましたね。織斑君。」
「箒から逃げるのによく使ってますから。」
それはどうなんだ?
「確かに一部屋空きはあったんですが、
もう一人転校生が来るのでその方にその部屋をあてることにしました。」
「その転校生も万が一男性なら俺と同室、
女性なら夜竹さんと同室というのが正しい判断じゃないですか?」
俺は絶望しながら言う。
なんとなくこの後の展開が読めてきたからだ。
「幸逆君の主張も最もです。
ですがその転校生の方、ああもちろん女性ですよ。
えっと……気難しい方でして。一人部屋がいいだろうということになりました。」
ラウラ……覚えていろ……
「紅侍と別になるのは少し悲しいけど、転校生は楽しみだな。
男子が増えれば、男子の権利が上がるかもしれないぞ、紅侍。」
一夏は他人事だと思っているのか、嬉しそうである。
ばーか、ばーか。お前も女子と同室になるんだよ……。
そうさ、そういうイベントは一夏だけでいいじゃないか……。
なぜ俺が?
「では土曜日までには引っ越しを完了させてください。
隣とはいえ、幸逆君は荷物が多いでしょうから。」
山田先生は部屋に積まれているISの書籍を見る。
「……分かりました。」
山田先生が去った後、
俺はあと少しで俺の物でなくなるベッドに寝転がる。
ここでシャルが寝るとか考えたら、なんか気恥ずかしくなった。
布団とかは回収してさゆかの部屋の新品と交換しておこう。
「……という訳で、全く意味が分からないと思うが、
今日からよろしくお願いします。」
俺はもうさゆかに申し訳なくて土下座すらしたい気分だった。
男子と同室とか俺が女子だったら、IS学園を訴えて慰謝料ぶんだくるレベル。
「えっと、なぜ土下座?」
……どうやら気づかぬ内にしてしまっていたようだ。
「マヤマヤから事情は聞いたよ。
別に紅侍が悪い訳ではないんだから顔上げてよ。」
「そうは言ってもな、実際生活すると色々と負担をかけることになるだろう。
当然俺としても最善は尽くす。
でも至らぬ点が必ず出る。その時のために今謝っておく。
いやもちろんその都度謝るけれど。最初が肝心だと思ってね。」
ちなみに俺はまだ頭をあげていない。
「実際紅侍の方がストレス溜まるんじゃないかな。
私はマヤマヤから話聞いた時、紅侍に迷惑かけるんじゃないかって心配になったよ。」
「いいやそんなことない。
こういうケースでは、必ず男子が悪というのが世の鉄則だ。
さゆかが迷惑なんてことはない。
なんなら明日から野宿してもいい。ただ荷物だけは置かせてくれ。」
IS関連の書物の中には高価なものもある。
両親から買ってもらった大切なものだ。
きちんとしたところに置いておきたい。
「私、なんかショックだな。」
どうやら既に至らぬ点があったようだ。
もういっそのこと学園長室にでも荷物を置かせてもらい、そこに住もうか。
同じ男性だし、問題あるまい。
「やっぱりそうだよな。男性と同じ部屋なんて……」
「それはそうだけど、でも……紅侍でしょ。
私は紅侍ならいいよ。
同室の件聞いたとき、
迷惑かけるんじゃないかって心配になったのと同じくらい……」
ここで俺は顔を少し上げた。
さゆかの顔は全体的に紅潮していて、興奮しているように見えた。
「ううん、それ以上に嬉しかった。
紅侍は嬉しくなかったかな?
まあそうだよね、私のような女性と同室になってもうざいだけだよね。」
俺は慌てた。さゆかのネガティブスイッチが入りそうだったからだ。
立ち上がって、その手を掴む。
「俺だってさゆか以外の女子だったらきっと無理を通してでも断ったよ。
相手の女子にかける迷惑考えたら普通こんな話了解しないって。」
最初はネガティブスイッチを入れないために言い出したことだったが、
言っている内にこれが本心なんじゃないかって気もしてきた。
世界に二人しかいない男性操縦者だし、
よくよく考えればこんな話断ることなんてできたはずなのだ。
それでも断らなかったということは……
俺はもう土下座しない。
「俺と一緒に暮らしてくれるか?」
さゆかと目を合わせる。
「……うん、始めからそういう風に言ってくれたら嬉しかったかも。」
さゆかの顔は先程より緩んだ感じになり、
俺も頬が火照ってきた。
「紅侍君って案外大胆。もっとウブだと思ってた。」
なんかひどい評価だな。
「あれ以上土下座していたなら、
幸逆さんの評価を考えなおさなければならない所でしたわ。」
ああー、確かにセシリアさん的には最もダメな対応か。
「なるほど、ああいう風に言えばいいのね。」
俺のは男から女に対するセリフだからな?
「後で紅侍にも指導が必要なようだな。」
まだ俺は死にたくないんだが。
「なぁ、箒。『も』ってなんだ?
訓練ならともかく、指導ってなんだよ。今回俺なにもしてないよな?」
そんなつれないこと言うなよ。一緒に死のうぜ……
……ドア開けっ放しだった。
「いや、俺別に同居人に挨拶しただけだからね……?」
『俺と一緒に暮らしてくれるか?』
うわぁ録音までされてた……。
「ほう、これがただの挨拶だと?笑止。」
うぜぇ。
「このりこりんに対して今うざいと思ったことだろう。
だが、恋愛対象すらいないIS学園の女子からすれば一番うざいのはお前らだ。
爆発しろぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。」
ドアが荒く閉じられる。
後こいつが出るとマジで文字稼ぎみたいなセリフが出るから勘弁してほしい。
……つーか荷物廊下なんだけど。
あらかた一緒に暮らす上でのルールが決まった所で、
良い時間だったのでさゆかが先にシャワーを浴びている。
俺はというと……
なんか居づらいなぁ。
さっきあんなこと言って気恥ずかしいのもあるかもしれないが。
早く慣れてしまえば。
いや慣れるのもどうなんだ。
落ち着け、落ち着け。
どうせシャルが女性とばれるまでだ。
我ながらなんか情けないな。
でもそんな度胸を持つのもどうなんだ。
ええい、考えるの面倒だ。
やめやめ。
俺は布団に顔を突っ込んで思考を停止した。
にしてもさゆかのことは女性というよりは友達として見ていたんだけどな。
いや時々意識することはあったけどさ……。
こんな状態じゃあ意識せざるをえないよな。
日曜日、なんとか外出許可を勝ち取った俺は束さんの所へ向かおうとしていた。
「紅侍、出かけるの?」
「ああ、一日中出かけてると思う。」
「どこに?」
「どこにって……レゾナンスで買い物。」
さすがに束さんのところとは言えないので
あまり嘘はつきたくないが仕方ない。
「じゃあわたしも行っていいかな?」
……言い訳、言い訳を考えなければ。
「ああ……えっと……下着とか買いに行くから……。」
「その時だけ別々に行動すればいいんじゃないかな。」
「でも変なB級映画とか見ようかなって思ってたし。」
我ながら意味不明な言い訳だ。
「紅侍と私って趣味合うから、紅侍が見たい映画なら私も見たいな。」
なんか今日はやけにぐいぐいくるな。
いつもならネガティブスイッチが入ってもいいくらいな気がする。
……もしかして何かを隠そうとしているのがばれているとか……?
だったら面倒だな。
いっそのことばらしてしまえば楽なのに。
そうかばらしてしまえばいいんだ。
嘘の秘密を。
「実は……今日両親に会いに行くんだ。
重要人保護プログラムとかなんとかでなかなか会えなくてね。
だから一緒に行くのはまた今度でいいかな?」
さゆかは一瞬困ったような顔をした後謝った。
「ごめんなさい。
そうだったんだ。でもなんで黙ってたの?
最初からそう言ってくれればいいのに。」
「いやあまり言わないように政府に口止めされてたから。」
「そっか、そうだよね。
本当にごめんね。じゃあ楽しんできてね。」
「ああ。行ってくる。」
俺は部屋の外に出る。
手を振ってくれているさゆかに笑顔で返事をして
俺はドアをゆっくりと閉めた。
こういう展開にする予定はあったので、
前回の最後に山田先生が「お引越しです」
っていう所まで入れればよかったと書きながら後悔しました。
原作と時期が少しずれてはいますが、ここら辺が一巻の終了です。
紅侍が束さんに会いに行く日曜日が、
原作では一夏が弾に会っているところ(2巻の頭)だと思っていただければ。
……この話、下手したら弾、蘭の出番が0になる恐れが……
出せるだろうという展開の予定はあるにはあるのですが……