シャドウ   作:ゆばころッケ

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前回の後書き通り、今回は華蛇さんの話です。
本作における華蛇さんの立ち位置はチートです。
主人公は一夏と共に成長していく、
そんな感じのタイプでいきたいと考えています。


第四話 櫻、チートも大概にしやがれ

華蛇櫻が代表になってから、日本は今まで隠していた華蛇の情報を開示し始めた。

 

そこには第二の織斑千冬になって欲しいという魂胆があるのだろう。

 

「えーと……」

 

かくいう俺も一応は公式サイトからプロフィールを見てみる。

 

やたら長いプロフィールだったが、まとめれば3文字だ。

 

 

 

 

『チート』

 

 

 

 

華蛇櫻はIS適正がSであったことから、8歳にして代表候補生となる。

 

勉学は優秀。日常会話程度なら英語、フランス語、ドイツ語、中国語が話せる。

 

運動もISの代表になるくらいだしできる。

 

趣味はふたつあるそうだ。一つはフルート。

 

音楽センスのない俺には分からないが、彼女の演奏はすごいらしい。

 

大会とかに出ればいいのに、あくまで趣味なので、

 

本気でやっている人に失礼だから、大会等に参加するつもりはないとのこと。

 

もう一つは料理。

 

こちらも非常に美味で、自作のレシピ集を近々出すとかなんとか。

 

父親は有名な芸術家、母親は合気道の達人だそうだ。

 

(え?俺の親?父さんが一応有名会社のサラリーマン、母さんが専業主婦ですが何か?)

 

だが今まで挙げた特徴なんて些細なものだ。

 

極め付けは……顔だ。かわいい。

 

大事なことなので二度言わせてもらう。かわいい。

 

専用機連中と比較しても遜色ないだろう。まあこの世界じゃあ、全員顔見たことないけどさ。

 

 

 

 

あっ……忘れていた。えっと専用機は「ブラッディッドリッチ」というらしい。

 

 

 

 

あれ?いきなり物騒な名前になったなぁ。

 

某ファンタジーのせいでリッチと言えば死神が思い浮かぶ。

 

それを踏まえて直訳すると、「血まみれの死神」……。

 

俺からはネーミングセンスについてはノーコメントで。

 

とにかくなんでこんな活発そうで、笑顔の眩しい子にこんなISを。

 

許せん、束!

 

じゃなかった、一旦落ち着こう。

 

俺が恨むべきは束じゃない。

 

だってそうだろ?いつだって人は不平等を嘆く時、やつの名を口にする。

 

 

 

 

 

 

「神さま、ふざけんな!神さまは平等なんて嘘だ!」

 

もうだめだ。おしまいだ。

 

だってこんなチートが同学年で、かつイケメンの一夏も居るんだよ?

 

俺空気じゃん。せいぜい一部の人に実験体としての興味持ってもらえるくらいだよ。

 

ちくしょう。まさかIS学園に入る前から絶望を味わうとは。

 

「少年よ、これが絶望だ。」

 

そう、これが絶望……って

 

「父さん、いきなり後ろからなんだよ。」

 

「いや、珍しく暗い顔しているから今の内に堪能しておこうかと。」

 

「そこは励ますとかするとこじゃないの?」

 

「パパは紅侍ならやってくれると信じてる。」

 

なにをやるっていうんだよ。まったく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして月日が経ち、第三回モンド・グロッソの日がやってきた。

 

うん、またモンド・グロッソなんだよ。この運命から逃れることはできないんだよ。

 

今回見るのは一回戦。華蛇櫻選手とオーストラリア代表の試合だ。

 

何故一回戦かというと話は大会開催前日に遡る。

 

前日になって、いきなり運営側から彼女の専用機ブラッディッドリッチの初期装備、

 

死神の鎌の威力が高すぎるため使用を禁じるとの通告が来た。

 

初期装備は外すことはできないのでISごと使用禁止になった。

 

前日に通告したのはおそらく日本への嫌がらせだろう。

 

日本はISのせいで無視できない存在である。

 

そのため別に日本のせいという訳でもないのだが、国際的に嫌われているのだ。

 

もちろん日本側は試合日程の変更など最低限の考慮を要求したが、その要求は棄却され、

 

運営が用意した打鉄で華蛇選手は戦うことになったのだ。

 

日程の変更があれば日本側からもう少しましなISを用意できたろうに。

 

運営が用意した打鉄には初期装備の近接ブレードに加え、

 

申し訳程度の後付装備のライフルと物理シールドしかない。

 

あと日本がなんとか短期間で用意したのがバイザー。

 

バイザーをつける意味はよく分からないが……、

 

彼女はISの試合でバイザーをいつもつけているらしい。

 

でも後付装備がなんであろうと、

 

専用機持ちしかいないモンド・グロッソにおいて不利なんてレベルじゃないのは事実だ。

 

しかし当の本人は落ち着いていた。

 

『専用機が使えないということで、かなり不利になったと思いますが勝算はありますか?』

 

『勝算なんて元からありません。私はどんな状況でも私にできることをするだけです。』

 

『前日本国代表の織斑選手のことは意識していますか?』

 

『そうですね。武器がほぼブレードしかないというのは織斑師匠と同じですよね。

なんだか少し嬉しいです。師匠の名を汚さぬよう頑張ります。』

 

『最少年齢出場ということについてはどう考えていますか?』

 

『ISに年齢はそんなに関係ないと思っています。

勿論操縦時間が長い方が良いし、操縦者の能力が高い方が良いのも事実ですが。』

 

こんな感じだ。うへー、本当に同い年か、こいつ。

 

 

 

 

 

それはさておき今回の相手のISはオーバードライブ、

 

スラスターが大量につけられていることが特徴のISだ。

 

武装とかは一回戦ということで特には分かっていない。

 

『モンド・グロッソ第一回戦、日本国代表華蛇櫻対

オーストラリア代表エラ・マロリー戦が始まります。』

 

日本国代表が負けそうだからか実況のテンションも低い。

 

始まる前からお通夜ムードだ。

 

……試合が始まった。

 

オーバードライブがスラスターのせいか恐ろしい速さで距離を縮める。

 

迷彩柄のそのISは野生的な印象を受け、どことなく威圧感がある。

 

一方華蛇選手はブレードを片手に相手の接近を待っている。

 

迎え撃つつもりのようだ。

 

『おっとここでエラ選手、ドライブスピア―を出してきました。』

 

ISの名前の一部が入ってるってことは初期装備なのか?迷彩柄だし。

 

『喰らいな。』

 

オーストラリア代表はそう叫ぶとドライブスピア―を突き出して……

 

届く距離じゃあないだろうに……

 

 

 

 

 

と思った俺が甘かった。

 

次の瞬間に華蛇選手は吹っ飛ばされていた。

 

ドライブスピア―を見ると長さが伸びている。

 

どうやら伸びる槍らしい。

 

4メートルくらいはあったか?

 

今は縮んで元の長さに戻った。

 

『ちっ、よく対応できたな。

だがそのポンコツ装備じゃあ受けきれなかったみたいだな。』

 

対応?華蛇選手の方をテレビが映す。

 

見ると足元に真っ二つになったシールドが転がっている。

 

シールドを貫通して華蛇選手までスピア―は届いてしまった。

 

あの様子だとシールドエネルギーもかなり削られたみたいだ。

 

ただの伸びる槍であの威力は出ないだろう。

 

おそらく伸ばす動作にもスラスターを使っているとみた。

 

『今度はこいつを喰らってもらおうか。』

 

そういって出してきたのはライフルだ。

 

これも迷彩柄……といいたかったが赤色だった。

 

やたら銃口以外が太い。何か仕込んでるのか?

 

ドンッ

速い!こいつにもスラスターを使ってるらしい、

 

おそらく太い部分に小型のスラスター入れているのだろう。

 

『華蛇選手、対応できません!』

 

弾丸は華蛇選手に当たり、そして爆発した。爆発!?

 

『そいつは特注品でな、シールドエネルギーを感知して爆発するんだよ。ククク』

 

こいつペラペラしゃべるな。

 

それにしてもまたシールドエネルギーを大きく削られたみたいだ。

 

『このまま銃殺してやるよ!』

 

ライフルが再び放たれる!

 

キンッ

 

『華蛇選手、ブレードで弾丸を跳ね返しました。素晴らしい反応です。』

 

『へぇ、いつまでもつかな?』

 

それからしばらくはライフル攻撃が続いた。

 

華蛇選手の最大の攻撃はブレードであり、ライフルも一応あるが決定打にはならない。

 

相手は万一の事を考えて近づきたくないようだ。

 

加えて華蛇選手のシールドエネルギーがおそらくライフル一撃で尽きるということ、

 

ライフルにも一度は反応できなかったということを考えれば妥当な判断だろう。

 

キンッ

 

キンッ

 

キンッ

 

キンッ

 

 

 

 

 

 

 

辺りには大量の弾丸が散らばっている。

 

『ちっ、しぶとい野郎だ。仕方ない……』

 

『ああっと、すごい速さでオーバードライブが華蛇選手に迫ります。』

 

弾切れだろうか、スピア―の方で止めをさすことに決めたようだ。

 

同じことの繰り返しになるかとも思われたが、

 

スピア―の圏内に入るか、入らないかというところで

 

華蛇選手がいきなり動いた。瞬時加速だ!

 

そしてスピア―の先めがけてブレードを振るう。

 

ちょうどスピア―を伸ばそうとしていたところだったのだろう。

 

辺りにすごい機械音と金属音が響き、火花が散る。

 

『専用機じゃないくせにこのスラスターの威力に勝てると思ってんのか!?』

 

『……』

 

不意に華蛇選手が力を抜きスピア―を流した。

 

スピア―を突き出そうとする腕にもスラスターを使っていたらしい。

 

止まることができず、体勢を崩したオーストラリア代表は背中を華蛇選手に見せる。

 

華蛇選手は打鉄とは思えない速さで振り返り、背中にブレードの一撃を喰らわせる。

 

『華蛇選手の反撃が決まりました―!』

 

地面に叩きつけられたオーストラリア代表……

 

その地面には勿論シールドエネルギーに反応し爆発する弾丸が散らばっている。

 

ドカーン、ドカーン、ドカーン

 

かなりの数が爆発したようだ。

 

『華蛇選手、エラ選手が動けないこの間にライフルで正確にスラスターを破壊していきます。』

 

本当に正確だ。爆発の際の煙があるというのによく当たるものだ。

 

ハイパーセンサーがあるとはいえ、見えるに越したことはないだろう。

 

『ちくしょう、だがまだドライブスピア―がこっちにはあるんだよ!』

 

なんとか起き上ったオーストラリア代表は再び華蛇選手に迫る。

 

先程よりもスピードは断然落ちている。

 

スピア―を振るおうとした時、

 

オーストラリア代表の視界をあの半分に割れたシールドが奪う。

 

どうやらいつのまにか量子化してここぞという時のためとっておいたようだ。

 

もちろんハイパーセンサーのあるISに目くらましはあまり意味がない。

 

ただ一瞬の隙を作るには十分だったようで、

 

再び華蛇選手のブレードがオーバードライブを地面に叩きつける。

 

ドカーン、ドカーン、ドカーン……

 

 

 

 

 

 

 この弾丸の爆発が決定打となった。

 

あれだけスラスターをつけてエネルギーを浪費するのだから、

 

防御力はあまり高くなかったのだろう。

 

あの速さなら当たらなければどうということはないとか思ってそうだし。

 

『試合終了!勝ったのは華蛇選手です。』

 

華蛇選手はバイザーをしているため顔は見えないが、ブレードを持った左手をつきあげる。

 

一応勝利のアピールだろうか?にしても試合中一言も話さなかったな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局華蛇選手が二回戦に進むことはなかった。

 

というのも打鉄がボロボロになっていたからだ。

 

二度敵の攻撃が直撃した上、打鉄の性能を最大限に引き出した機動が原因のようだ。

 

ブレードも弾丸を跳ね返す際、かなり傷ついたようだし、シールドは真っ二つ。

 

運営が代わりのISを用意するはずもなかった。

 

それにしてもあれがIS適正Sの実力なんだろうか。

 

専用機を打鉄で倒した、

 

その事実はISの浅い歴史に大きく刻まれることになるだろう。

 

 

 

 

 

……やっぱりあいつチートじゃねぇか……。

 




読んでいただきありがとうございました。
これにてモンド・グロッソはお役御免です。
長かった。でも次の開催って一夏が高1の時なんですよね。
原作8巻、9巻ではそのこと触れてあるんでしょうか……?
とにかく次の話からは主人公の紅侍君にも
解説役ではなく出番があります。
あらすじも後2~3話で書けるかなぁ……と。
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