次は土日のどちらかにはあげたいです。
……あげたいです。
内容は少しシリアス?かもしれません。
さゆかの誘いをなんとか断り、なんだかんだで束さんの研究所に到着した。
「じーくん、早速走馬灯モードになれるか試そうか。」
着いた途端にこれだ。まあこれが束さんだよな。
「その前に走馬灯って本当に体に悪影響ないんですか?」
「あったとして、使うのやめる?」
……
「使うの控えるとか……?」
束さんの口角が上がった。
「ほら、やめないんでしょ。
すぐには体に影響はないからノープロブレム!
さぁ、さぁ早く、早く!」
すぐにはってなぁ。
「……分かりました。」
「じゃあアリーナに移動するよ。」
俺は束さんについて行く。
なんか違和感あるな……。
久しぶりに戻ったからだろうか?
あっ……
「クロエさんはどうしたんですか?
毎回戻るとすぐに……
いえ、いつも束さんと一緒にいるのに。」
「うーん、くーちゃん?
なんか最近元気ないんだよねぇ。
料理も焦げたものが久々に出てきたし……、
でもこげでさえもくーちゃんの愛でトッピングされてるからOK。」
元気ないのか……。後で話してみるか。
シャドウを纏う。
「じゃあやってみてよ。」
束さんは気楽に言う。
だが実際どうやってできたのかと言われるとなんとも言えない。
非常に感覚的であり、またできるのだろうか?
俺はまず自分のピンチを想像してみた……
できそうにない。
次に一夏のピンチを想像した……
やはりできそうにない。
「できない?
おかしいなぁ。ちょっとISのフラグメントマップ見せてよ。」
フラグメントマップとはISの自己進化の経路のことらしい。
束さんは俺に近づくと、シャドウにコードをさした。
「やっぱりできるはずだよ。
じーくんの覚悟が足りないのかな?」
そう言うと束さんは指パッチンした。
すると俺の目の前に空中投影型のディスプレイが出てきた。
そこにはクロエさんが映っていた。
ベッドの上でうつ伏せに寝ていて顔は見えないが、あれはクロエさんだろう。
しばらくすると天井から銃のようなものが出てきた。
その銃口はクロエさんの方を向いている。
そこからレーザーが発射される。
俺は焦った。
なんとか守らなければ……。
どうすればいい?
落ち着いて順々にやっていかなければならない。
まずはクロエさんの場所だ。
この研究所に人間なんて俺と束さん以外にはクロエさんしかいない。
生体反応を探す。
しかし俺と束さん以外は見つからない。
可能性があるとすれば別の建物にいるか、あるいは……
ISを纏っているかだ。
ISを纏っている場合、そちらの反応が強く出てしまい、
生体反応を感知するのはほとんど不可能となる。
ただ見たところISを纏っているようには見えない。
遠い場所であれば近くにISがあるだけで感知できなくなる。
近くにISがあるようには見えないが……
その時、俺は思いだした。
初めてクロエさんの専用機黒鍵を見た時、
彼女が黒鍵は黒鍵だけでは成り立たないと言ったこと。
黒鍵に紫電は撃つなと言われていたこと。
原作で千冬さんがクロエさんを生体同期型のISと言ったこと。
黒鍵を探せばいい。
ただ問題なのはコア登録されているISなら場所が大体分かり、
相互登録していれば正確な場所が分かるのだが、
おそらく黒鍵はシャドウとの相互登録はおろか、
公式な登録すらされていないだろうことだ。
でも何度も一緒に訓練してきたんだ。
コアが登録されていようがいまいがIS同士はコアを通じて何らかの交流がある可能性もある。
そうであるならばシャドウなら見つけられるかもしれない。
頼む、シャドウ見つけてくれ。
ある一か所が伝えられる。
位置座標をISが特定し、俺は星の欠片を展開する。
ディスプレイでは星の欠片が砕け散り、レーザーが消えた。
よかった……。
クロエさんに星の欠片の破片が当たり、こちらの方を向く。
最初事態が分からないのか、戸惑っている様子のクロエさんだったが、
しばらくして小さく頷くと、寂しげな様子で
「ありがとう」
と小さな声で言った。
それは本当に小さな声でISの補助がなければ聞き取れない程のものだった。
事態が収束するにつれて俺は怒りを感じ始めた。
束さんの方へ今にも掴みかかろうとする勢いで向かった。
「どうしてそんなに怒っているのさ。」
束さんは平然としている。
「どうしてもこうしたもありませんよ。
あなたは何を考えているんですか!?」
「何をって、今はじーくんとシャドウのことかな。」
不思議そうな顔で答える。
その顔だけ見たらかわいく見えるのだろうが、俺には憎たらしくすら思えた。
「この間の無人機の時も今回の事も、
あなたにとっても一夏やクロエさんは大切な人でしょう?
それなのにこんなことをして……理解できません。」
「ああ、じーくんは二人があの程度のことで死ぬと思っているんだね。
大丈夫、二人ともあんなことじゃ死にはしないよ。」
「だとしてもです。
あなたには専用機も作ってもらったし、感謝しているけど、
これ以上こんなことが続くなら……」
「続くなら何?
でもじーくんは束さんのこと、命がけで助けてくれるんでしょ。
嬉しいなぁ。束さんモテて困っちゃう。」
えっ?
一体何を言っているんだろうか。
束さんの前でそんなこと言った覚えはない。
「この間のさっちゃんとのやりとりだよ。
眼鏡つけてないからばれないって考えていたみたいだけど、
さっちゃんも少し抜けているよね。
ISは束さんが開発して、世界に提供したんだよ。
危ないものを提供するのに、監視する機能がないはずないじゃん。」
束さんは心底おかしそうだったが、それから少し冷たい顔をした。
「まあ、束さんはさっちゃんの『人間らしいところ』嫌いじゃないけどね。」
人間らしいところ……?
その言い方も気になったが、もう一つ気になったことがあった。
「じゃ、じゃあこの眼鏡は一体?」
「ISを通じて得られる情報は少ないからね。
まああった方がいいんだよ。」
「……そうですか。」
シャドウを持つ限り俺は監視されているのか……。
「もうその話はいいかな?」
束さんはにっこりと笑う。
俺は力なくうな垂れた。
「この機会だから話しておこうか。」
束さんはそんな前置きで恐ろしいことを話し始めた。
「この間自爆の際、走馬灯が発動しなかった件だけど、
理由は二つあるんだよ。
一つ、あのISは無人機でね、他のISとは性質が異なるんだ。
だからシャドウにとって行動が予測しにくいんだろうね。
二つ、あの自爆はコアで起こったんだ。
知っての通りISはコアを強く感知する。
そのためにコアの崩壊を受けて、自爆による熱反応とかに反応できなかったんだろうね。」
俺は疑問が解決してスッキリなんて気分じゃなかった。
自爆がコアで起こる?
ということはシャドウも爆発させられるのだろうか。
分かっていたこととはいえ、俺は束さんの完全に手の中に居るのか。
改めて事実を列挙されると悲しくなってくる。
俺は……俺は……
その後しばらく走馬灯に関する実験を行った。
束さん曰くいつでも発動できるはずだが、
シャドウが制御しており、本当に必要だと考えた時しか使えないとのこと。
なぜシャドウが機能を制御してしまうか……、
それは後々調べていくそうだ。
時間が経ち、お昼の時間となった。
テーブルでクロエさんがご飯を運ぶのを待っている。
束さんはさっき取ったデータで何かやっているようだ。
クロエさんがやってきた。
「お待たせしました。」
確かに元気なさそうだ。
『いただきます。』
言ったのは俺と束さんだけだった。
食事はひどいものだった。
昔と違って異常に薄い味噌汁。
焦げた肉と野菜……。
俺自身さっきのこともあって気分の優れたものではなかったが、
クロエさんのことも気になった。
「クロエさん、大丈夫?」
クロエさんは顔を上げると困っている顔をした。
「えっと……まあ大丈夫……」
返事もなんだか曖昧だ。
「いや大丈夫そうに見えないが。」
「いえ……本当に大丈夫だから」
これは少し重症かもしれない。
「束さん、昼食後、データ取りの前にクロエさんと話していいですか?」
束さんはご飯にがっついていたが、手を一旦止めると顔を上げた。
「いいよ。」
簡潔に答えるとまたがっつき始めた。
許可をもらえたのは意外だった。
俺の事はともかくクロエさんのことはやっぱり大切なんだろうか?
やっぱり俺には束さんのことは理解できない。
「何か用?」
「えっと……」
こういう時何を言えばいいのか。
一夏ならなんとかできるんだろうな。
「なら私から一言。」
まさかクロエさんの方から何か言われると思わなかった。
「もうあんな顔しないで。」
あんな顔?
「さっき食事中にした顔……。
束様のことが分からないって顔。あれだけは絶対だめ。」
俺はそんな顔してたのか。
「でも本当に分からないんだ。」
「分からなくていい。
私だって分からないことの方が多い。
それでも私は束様を信じるだけ。」
そこで俺の手を取った。
「あなたも束様の指示を信じればいい。」
目をいつも閉じているクロエさんはこの時も目を閉じていた。
それでも真剣さは嫌というほど伝わった。
手を取られていた時間は本当に短いものだったはずだが、
緊張からか、とても長く感じられた。
クロエさんは俺から手を離し、
少し顔を逸らすと小さな声で何かに逆らうかのように言った。
「……そしてできれば……もう少し自分の事を考えて欲しい。」
それからふぅっと一息ついたクロエさんは笑顔で言った。
「束様の所に行ってあげて。
待っていると思うから。」
少しだけ元気になったクロエさんを見て俺は安心した。
元気になって良かったと言おうとした俺は……
自分の愚かさに気付いた。
結局この会話で俺はなにもしていない。
それどころかクロエさんの不調の原因は俺にあるのではないだろうか。
俺との会話の後、クロエさんが元気になったのはそういうことに違いない。
彼女が俺に対して嫌悪を示したのは
束さんを分からないと思い、束さんを信じていなかったことだ。
ならば俺にできることは束さんを信じること、その一点だ。
きっと俺には束さんは理解できない。
クロエさんでもそうなのだからこれは仕方ない。
ではどうするか?妄信すればいいのだ。
理解するか、しないかという次元にいるから分からないという顔をする。
ただ妄信すれば、そんな顔はしなくてすむ。
もっとも、彼女は自分のことを考えろとも言った。
これは束さんを妄信することとは少し食い違うことだ。
よって自分自身について考えるのは束さんとの連絡が途切れる時、
つまり風呂や着替えの時に限定すればいい。
こういう時眼鏡は勿論、場合によっては腕時計になっているシャドウも外す。
そうすれば分からないという顔をしても許される。
許される?
……誰に許されるのか?
束さん?
クロエさん?
それとも……
そもそも許されるという考えはどこから来たのか?
……ああ、分かったよ。
やっぱり俺は変われないんだな。
前世を忘れられないということは
前世の生き方も変えられないということ。
前世に俺が母の期待に沿うように生きたように
今も誰かの期待に沿おうとしている。
誰の?
俺はアリーナに着いた。
そこで俺の思考は止まった。
監視されている限りは束さんを妄信するつもりでは居るけれど、
普段は束さん以外のことも当然考えなければならない。
ただ束さんが目の前に居る時ぐらいは、
本当に他の事も考えない馬鹿になろう。
そう思った。
お疲れ様でした。
ちなみに今回の「ISコアへの反応が強すぎて、生体反応を認識できない」
というのは勝手に作った設定です。
というか原作だとコア以外は認識できないんでしょうか?
そうでないとすると無人機とかすぐに分かっちゃいますよね。
元々無人機と戦っている時に書こうかと思っていた設定だったのですが、
上手く入れられなかったし、原作になかったからいいかと入れませんでした。